まだ本編に行くまで時間がかかるな。あと2~3話ぐらいいくかも。
第二ラウンドから2時間・・・この激闘に終止符が打たれようとしていた・・・
ドガッ!バキッ!グシャ!
「ぐべあっ!」
「ごふうっ!」
金次が殴りかかるも、蘭豹がカウンターをし両方とも吹っ飛ぶ。
・・・やばい・・・死ぬ・・・マジで死ぬかも・・・もう足が言う事聞かない・・・多分次が最後だ・・・
今体にあるすべてのエネルギーを、力を集めて悲鳴をあげる体に鞭をうち立ち上がる。
向こうもだいぶ無理してるらしく、膝が・・・体中がガクガク震えている。
あれ?なんで俺こんな事してるんだっけ・・・思い出せない・・・まあ今は関係ないか・・・
「おあえ・・・タフやな・・・」
顔を殴られすぎてうまくしゃべれないらしいな・・・
「・・・・・・」
俺は喋る事すら出来ないけど・・・
ふらふらの足取りで互いに相手の拳のレンジまで近づく。
あと3m・・・あと2m・・・
一歩一歩、確実に・・・そして、拳のレンジに相手が入る。
「「!!」」
ヒュウッ!
互いの拳が交差する。そして・・・
ボガッ!
顔面に相手の拳がめり込む・・・そして、大尉はそのまま意識が遠のくのを感じた・・・
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その頃・・・
「いやぁ、まさかシュレディンガー准尉もこっちに来てるとは・・・」ズズズッ
「それはこっちのセリフですよ少佐。」ムシャムシャ
武偵高の教員科の5階・・・彼らは今そこにいた。
なぜかと言うと・・・
「でも少佐が校長先生になっている事が一番驚きましたよ。」
そう、前世で部隊の指揮官であった少佐が東京武偵高の校長をしていたのだ。
机の上には”東京武偵高校長 緑松武尊”と書かれた札が置かれている。
一端食事している手を止める。今は少佐から茶菓子を出してもらったので人の状態になっているのだ。
「成り行きでね。ホントはこんな仕事死んでもいやだったんだけど給料がバカみたいに良かったからやってるんだよ。」
「切実ですね~~。」
何年も一緒に戦ってきたからわかるが少佐も大尉も随分丸くなった。
大尉はもともとかなり丸かったが家族と過ごしてからはそれが顕著になった。
少佐はダイヤみたいな何しても形変わりそうにない感じだったのに今はそこまでの感じはしない・・・
「いや~・・・そういえば大尉もこっちに来てるのか?」
「そうですね~・・・今拳で語り合ってますよ。化け物みたいな怪力女と。」
「あっはっはっ、とても大尉らしいな。まあ、大尉が戦うのなら何か彼にも感じる事があるんだろう。」
「そんなもんですか?」
「そんなもんさ。なんせ第二次大戦から大尉の上官だったんだ。」
そう言われると納得してしまう。たしか大尉を部隊にスカウトしたのは少佐本人だったそうだ。
大尉とはかなり長い付き合いにあるはずだ・・・
「彼はとても優秀な戦士だよ。命令に忠実で、戦う相手を選び、そして何よりも・・・ここぞと言うときはキチッと自分を通す。私は大尉のそう言うところを気に入ってるんだ。」
そのまま少佐は続ける。
「君もそうだろう?なんせ大尉がいなかったら君はあの薄暗い研究所でモルモットとして死んでいただろうから・・・」
「・・・っ!」
・・・一瞬あの頃の記憶がよみがえる。あの忌まわしいクソ共に体を滅茶苦茶にいじくられた事を。
その研究所がソ連の侵攻で破壊された事を・・・そして大尉がソ連兵が火を放った研究所から命がけで僕を救ってくれた事を・・・
「その顔を見ると相変わらず大尉に頭が上がらないみたいだな。」
「・・・やめてくださいよ少佐・・・あの頃の事はあまり思い出したくないんですよ。」
少し睨むと少佐は肩をすくめて話すのをやめた。
「すまない。少ししゃべりすぎたな・・・」
少佐が言い切るより早く、机に置かれた電話がなる。
「はい、緑松です・・・はい・・・・・・・・はいそうですか。じゃあお願いします。」
話し終わったらしく電話を戻す。
「ふふふっ、大尉もどうしてなかなか・・・」
「・・・大尉になんかあったんですか?」
「大尉の奴、負けたらしいな。すぐに救急車が来るそうだ。」
「えっ!?」
言われるがとてもじゃないが信じられない。あの大尉が負けるなんてそんな・・・
「・・・そろそろ帰ります。」
そう言って席を立つ。
「そうか・・・そうだ大尉には僕が少佐だという事は伏せていてくれ。」
「わかりました。」
「・・・それとな・・・」
「なんですか?」
「・・・僕が言えた筋合いじゃないが・・・悪い思い出なんてすっぱり忘れていい思い出だけ覚えなさい。」
それは多分生前の少佐ではなく緑松校長なりの・・・僕に向けられた励ましなのだろう・・・
「ありがとうございます緑松校長先生、良い時間でした。」
「ああ、それでは。」
そう言うと僕は部屋を後にした・・・
ーーーーーーー
「ぐあっ!?」
相手のパンチが顔面に入り思いっきりつんのめりながら倒れる。
そして、そのまま戦った相手・・・遠山金次をみる。
(・・・負けたな・・・こりゃ・・・)
彼はまだ立っていた。二つの足でしっかりと。
(はあ・・・くやしいな・・・生まれて初めて負けたな・・・)
そんな事を考えていると。
「おぉ~~い、生きてるかぁ」
「蘭豹先生~~どこですか~~?」
どうやら終わったのを感じ取って同僚達が様子を見に来たらしい。
「あっ!いましたよ!大丈夫ですか~~?」
おっとりとした声の主は高天原だろう。
「生きてたかぁ・・・こいつかぁ、お前と殴りあった命知らずのバカって・・・」
けだるそうに遠山に近づくのは尋問科の綴だ。そしてその後ろからぞろぞろと救護科の教官・3年生の生徒がついてくる。
「ああ・・・そいつむっちゃつようてな、負けてしもうたわ・・・」
「ん?たぶん負けてねえぞ、お前」
「?」
そう言うと綴は立っている遠山を軽く押す。すると・・・
ガクッバタッ
「えっ?」
逆らう様子もなくそのまま前のめりに倒れてしまった。倒れた後もピクリともしない。
「たぶん最後の一撃で気力を使い果たしたんでしょう・・・それでも良く立っていた事を褒めるべきですね。」
「・・・」
「ちんたらすんなよぉ、さっさと運べぇ。」
綴が救護科の生徒の尻を蹴飛ばし、担架を持っている奴をせかす。
「あぁ・・・そうだ忘れてた・・・蘭豹ぉ・・・」
「ん?なんや?」
「校長が治療が済んだらすぐ来るようにって言ってたぞぉ」
「!?・・・マジ?」
東京武偵高の校長と言えばどんな凶悪犯でも震え上がるような人物だ。
顔も普通、特に目立った特徴もないがそれが彼の一番恐ろしい特徴だ、なぜならあまりにも普通すぎて顔を覚える事が出来ないのだ。いつあっても「あれ?こんな顔だったっけ?」ってなるほど。
「いややああぁぁ・・・行きたくないぃぃ・・・」
「はいはい、さて運びますよ。じゃあお願いしますね。」
言われた生徒がうなずき遠山、蘭豹は担架で運ばれていった。
「あ~~あ、蘭豹の奴クビにならないといいけど・・・」
「修理費すごそうですねぇ・・・」
二人の前には戦いの末、穴ぼこになり天井がぶち抜け、11階建てになった強襲科の実習棟がそびえていた。
どうだったでしょう?意見・感想随時待ってます。いつでもどうぞ。
次はあの人が登場しますよ。