モンスターファーム・キルジョーカー   作:標準的な♂

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はじめての大陸対抗戦!(前編)

 ある日、私たちのもとにパブス先生が訪ねてきました。

 パブス先生は知らない人のいない名ブリーダーです。身体に白いペンキを塗った目立ちたがりやのモッチーを相棒に、IMaの頂点を極めた、生ける伝説です。

 

「グレードDの代表になってみんか?」

 

 パブス先生の用件は簡潔でした。そう、二大大陸対抗戦の予選の案内です。

「アルガス、これは有名になれるチャンスだよ! 活躍すれば、向こうの大陸にも名前が売れる。サダルファス家再興にまた一歩近付くね!」

 そう、二大大陸対抗戦で活躍すれば、別の大陸にまでその名を轟かせることになるのです。名誉欲の塊であるアルガスには、もってこいの大会と言えましょう。

「お、オレが、世界的なスターに……」

 わたしはいつものようにアルガスを焚き付けます。

 

「にゃはははは! FIMBAでも有名になれるよ! やったねアルガス!」

 ガルマッゾさんも後押ししてくれています。滅多にない珍しいイベントに、ピンク色の芋虫のような身体をくねらせて、喜びを表現しています。

 

「でもガルマッゾさん、選抜大会まであんまり時間がないよ」

「そうだね。あまり無茶なトレーニングはできないかな」

「そこでなんだけど、この前の公式戦の賞金でお買い物なんかどうかな?」

「良いね!」

 

 そういうわけで、わたしたちは最寄りのアイテム屋さんへ向かいました。

「あら、いらっしゃい!」

 この人は、アイテムショップのベルデおばさんです。昔はかなりの美人さんだったと、もっぱらの噂です。

「そっちのブリーダーさん……ああ! 前のバトルGP会長さんにそっくりだわ!」

「にゃははは、ガルマッゾだよ」

「やっぱり! ガルマッゾさんだね!」

 やはりモンスターバトル協会の会長さんともなれば、メディアへの露出も多いのでしょう。下手なブリーダーよりも有名なのは間違いないです。ブリーダーとしても有名な人でしたから、尚更です。

 

「何かオススメの商品はありますか?」

「そうねえ、この前、なんか変な腕輪を仕入れたのだけど」

 どう見ても刻命館の契約の証でした。アルデバランが心を入れ換えたという話は本当だったようです。

 しかし、今は不要のものです。モンスターを直接強化したり、体調を整えたりするのには役立ちません。そのうち世界征服がしたくなったときにでも買いましょう。

 

「そこの紫色の星形の石は?」

「これかい? マデュライトっていう石らしいけど……」

「マデュライト?」

 ベルデおばさんも、この星形の石については、よく知らないようでした。

 それについて、ガルマッゾさんが説明してくれました。

「マデュライトはね、マ素がいっぱい含まれている石だ。マ素はモンスターの力の源なんだ」

「そうなんだ。じゃあ、小屋に置いておくと、モンスターも元気になるかな?」

「是非ともそうしよう! マ素をいっぱい浴びると、ぼくみたいになれるしね」

「じゃあいいです」

 ガルマッゾさんはブリーダーとしては尊敬していますが、あんな風になりたいかと言われれば、それはノーです。

 チラシの「激安激ヤバ即ゲット」という言葉に偽りはありません。確かに激ヤバです。ガルマッゾさんみたいなのが増えるなんて!

「もっとこう、何かモンスターの育成に役立つアイテムは無いですか?」

「そうそう、そうよね! 今日は新しい商品を入荷したのよ」

 

「最近流行りのソンナ・バナナだよ」

 ソンナ・バナナ。それは寿命が伸びたり縮んだりする不思議なバナナです。究極のモンスターを育てるために、長い寿命を獲得させようと、モンスターにたくさん食べさせる育成が流行っているらしいです。きっと、今年のグレードSの大会は魔境になっていることでしょう。

 しかし、ベルデおばさんは何か勘違いしているのか、さし出したのは、バナナっぽい外見のナーガ種のモンスターでした。そんなバナナ!

 後でモンスター図鑑を確認してみると、これは本当にソンナ・バナナという、珍しいナーガ系のモンスターのようでした。よって、間違ってはいません。

 これはこれで、模擬戦等のトレーニングには、ちょうど良いかもしれません。

 

 初めてのお買い物にソンナ・バナナを持ち帰り、私たちは帰路につきました。


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