とうとう6月も4週目に突入し、IMa公式戦の日がやってきました。
「アルガス、大丈夫かな?」
「にゃはははは! 大丈夫、大丈夫! アルガスはポテンシャル自体は高いんだから!」
確かに、やる気を見せた後のアルガスは、情熱をもってトレーニングに取り組み、棒に振った2ヶ月間を取り戻す勢いで力をつけました。御家再興のことしか頭にないので、扱いやすかったです。
「アルガス、調子はどう?」
「任せろって! 今の俺の力はランクSS相当だが、まだ申請が済んでいないからEランクなんだ。サダルファス家の復興も近いな!」
別の意味で大丈夫じゃない感じがしました。一応、自分のファームのモンスターなので応援したいのですが、ご覧の有様なので、一度オクレイマン先生辺りにお灸を据えていただいた方が良いかもと思ってしまいます。
しかし、アルガスはなかなか強いです。
アルガスの暗黒剣は相手の体力を吸い取って自分のものにする、ドレイン系の効果があります。プラント種やナーガ種にとっては、一発逆転の大技ですが、それを平然と操るのですから、かなりのものです。
「アルガス選手、怒涛の三連続KO勝ちだァーッ!」
実況のフジタさんも、大会初出場のニューフェイスの思わぬ活躍に興奮しています。
「さあ、本日最後の試合! ガルマッゾファームのアルガス選手対、やわらか銀行ファームのお父さん選手! どちらも無敗でここまで勝ち進んでいます! これは注目のカードです!」
対戦相手のお父さん選手は、一見するとただの犬に見えますが、そうではありません。この犬はポチといって、ライガーの特別派生種――いわゆるレアモンと呼ばれる、珍しいモンスターです。
ポチはライガー種の中でも特に知能が高く、雷や冷気を用いた攻撃を得意とする実力派モンスターです。
お父さんと呼ばれる犬は、暗黒メガコーポ「やわらか銀行」社の放ったエージェントです。今度のグレードE公式戦への参戦も、恐らく広報活動の一環でしょう。
総当り形式ですが、アルガスも、相手のお父さん選手も、ここまで全勝なので、これが決勝戦です。
試合開始のゴングが鳴ります。
「グレードDはお前にはまだ早い!」
流石にライガー種はスピードが持ち味のモンスターだけあって、アルガスは先制を許してしまいます。
お父さん選手の電撃が、アルガスを襲います。アルガスは弱点である丈夫さを補うトレーニングを重点的に行っていたので、肉体的には難なく耐えることができました。
しかし、相手の攻撃が電撃なのがまずかったようです。
「か……かあ……さん……た……たすけ……て……コケー!」
アルガスは、強い恐怖のためにニワトリに変身する奇病が再発しました。恐らく、敵から受けた電撃で、ガルマッゾさんが放ったジゴスパークやドルマドンといった電撃攻撃のおしおきで受けたトラウマが蘇ったのでしょう。
「アルガス! しっかりして! ガルマッゾさんのドルマドンに比べたら大したことないでしょ?」
「ハッ!? それもそうだ!」
ちゃんと正気を取り戻して、ニワトリから元の姿に戻ったので、ここで反撃開始です。
「神に背きし剣の極意、その目で見るがいい……闇の剣!」
アルガスが上段に構えた剣を降り下ろすと、血のような赤い光が相手を包みます。
アルガスの虎の子の闇の剣です。
「出たーッ! アルガス選手の必殺剣が炸裂! これは強烈だ!」
闇の剣は相手の体力を吸収するだけでなく、威力にも優れます。
ライガー種はスピードに優れる分、耐久力は心許ないのかのが常です。レアモンスターであるポチも例外ではありません。
闇の剣の一撃により、相手のお父さん選手はKOされました。
こうしてグレードE公式戦優勝決定戦にて、強敵お父さんに勝利したアルガスは、見事初大会を優勝で飾りました。