モンスターファーム・キルジョーカー   作:標準的な♂

2 / 11
一匹目
はじめてのモンスター!


 わたし、コルティア。皆からはコルトって呼ばれてます。お茶とお煎餅で有名なコラート地方のガロエ村出身で、今年で14になります。1000年3月4週付をもって調教助手になりました。

 

 無事にブリーダーとして牧場経営の手続きを済ませたわたしたちは、早速、モンスターを手に入れるべく、パークへと向かいました。

 初めてのモンスターです。きっと忘れられない相棒になることでしょう。

 

 しかし、最初にいきなりトラブルが発生しました。

「困ったね、円盤石が無いよ」

 そうなのです。

 モンスターが封じられた円盤石は、しばしば遺跡で発見されます。大昔の遺品なのですから、それなりの値段で取引されます。ブリーダーとしての道の第一歩は、この円盤石を手に入れることです。

 しきし、わたしたちは、その円盤石を持っていないのです。

 

「いらっしゃいませ!」

「ウィオラさん!」

「そちらの方は……ブリーダーさんですか?」

 一目見ただけでガルマッゾさんをブリーダーだと認識できたのはすごいことですが、冷静になってみれば、この人は他国のモンスターバトル協会の会長だった人なので、知っててもおかしくありません。

 ウィオラさんは、モンスターマーケットの店員さんです。

「モンスターが欲しいんだけど、円盤石が無くてね」

「それでしたら、そこに三匹のポケ……モンスターが居るでしょう?」

 そこには三匹の人間がいました。

 全員ピクシー種やマジン種のようなヒューマノイド系のモンスターのでしょう。人身売買にしか見えません。

「再生したモンスターがお気に召さないというブリーダーさんって、結構居るんです。そういうモンスターを市場で引き取っていまして、別のブリーダーさんに紹介しているんです」

 

 そんなわけで、わたしたちの最初のモンスターを、三匹の中から選びます。最初が肝心ですから、ガルマッゾさんとも慎重に話し合い、ウィオラさんのアドバイスも参考にして決めます。

 

「ガルマッゾさん、最初は素直な子の方が育てやすいと思うけど……この子なんかはどう?」

 わたしは幸の薄そうな女の子を指します。手にはウォーハンマーを持っています。その子はその辺にいる野良ライガー(青い毛皮の犬のモンスター)をミンチにし、微笑みを浮かべ、それからライガーの死体を食べました。

「少女はノースティリス地方にあるパルミア王国で取引されている、一般的なペットです。犬くらいには素直なので育てやすいですよ」

 狂暴で知能が低いように見えました。しかし、あの狂暴性と残虐性は、モンスターバトルで大いに役立つかもしれません。

 

「わたしのオススメはこの子です」

 ウィオラさんは、黒いトレンチコートを着た灰色の大男を勧めてきました。

「タイラントは見た目は怖いですけど、言うことを忠実に聞く良い子なんですよ」

 どうやらウィオラさんは傘社の回し者だったようなので、この意見はするーすることにしました。

 

「ところで、そっちの子は駄目なんですか?」

 わたしは緑色の法衣を着て、頭にターバンを巻いた、眉目秀麗という言葉がふさわしいイケメンを指しました。彼は曲がりくねった二本の角が生えているので、ちゃんと人間との区別がつきます。

「すみません、このアークデーモンは売り物じゃないんですよ。逆ハーレムを作るために養殖中なので」

 欲望を全く隠そうとしないウィオラさんから、バックステップで距離をとりつつ、最終的な決定権を持つガルマッゾさんの意見を聞きます。

 

「うーん、ぼくはこの子の方ががいいかな」

 ガルマッゾさんは、人相が悪くて性格も悪そうな男の人を推しました。

 この国にも貴族はいます。それはアメンホテプとかハムオウジのような、金と白を基調とした色合いのモンスターを飼うことをステータスにしているような人達です。目の前の子は、特権階級にありがちな選民意識に凝り固まった、悪い意味での貴族に見えます。

「アルガスはジークデン砦に数多く生息する亡霊騎士のモンスターです。欲望に忠実なので扱いやすいですよ。頭はあまり良くありませんが、力は強いですね」

 見た目よりは扱いやすいモンスターのようでした。

 

「大丈夫、大丈夫! ぼくは昔はモンスターマスターだったからね、モンスターの扱いはお手のものだよ。それに、育て難しは忘れ難しって言うしね。この子にするよ」

 ガルマッゾさんは経験豊富なだけあって、私が尊敬する名ブリーダー、パブス先生と同じことを言っています。

 

「というわけで、よろしくね、アルガス!」

「家畜に神はいないッ!(アルガスの鳴き声)」

 

 わたしたちはアルガスをファームに連行しました。どんな子に育つのかな?

 期待と不安が入り交じった複雑な感情を胸に、わたしたちは一路ファームへと向かうのでした。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。