世界は酷く美しい   作:人差指第二関節三回転

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001   箱庭学園生徒の殺害依頼

 生徒会執行部会生徒会長黒神めだかが、荒唐無稽で前代未聞で暴力的なまでの暴挙によりフラスコ計画を根本から破壊して、すこしした頃、めだかや人吉善吉、生徒会メンバーの知らないところで、ひとりの少年が暗躍していた。

 

 光るような漆黒の黒髪を後頭部に結び、小さなポニーテールのような感じになっている。特徴のない前髪からは生涯半目の気だるげな目が覗く。手足は細く、胴体も平均よりは細くか弱い印象を持たせてしまうだろう。平均よりも10センチほど低い身長の彼の名前は―――かの有名な実力派殺し屋、灰ヶ峰消炭であった。

 

 灰ヶ峰消炭(はいがみねけしずみ)

 

 己の持ちうる異能力に悩み妬み、嫌っている殺し屋。

 

 他者を、他人を殺すことだけにひたすらの高い評価を持っていて、業界でも相当な人気を誇っていた。彼が動くには、一度の殺人依頼で八桁の金額が動いたとも言われているが、依頼人を含めて、彼を囲む全ての人間が死んでいるので、真実を確かめることはできない。依頼主も彼が殺したのかもしれないし、けれどそうとも言い切れないところがあった。

 

 彼を知っているのは彼だけだし、また彼も知っているものは彼だけである。

 

 世界の全てに興味はない。彼が興味を欲すのは、殺害殺戮という行為のみ。人を殺してでしか生き甲斐を感じることができない。生まれながらの殺し屋―――それが、灰ヶ峰消炭だった。

 

 生きながらに死んでいるという言葉はあるが、しかし彼の場合こう表現したほうが、正しいだろう。『生きながらに殺している』―――と。

 

 

「……………」

 

 

 そして今も、消炭の目の前には死体が転がっていた。現在彼は仕事の最中で、その仕事がたった今終わったところだった。手に持っていた短剣で空気を裂いて、血みどろになった短剣から血液を引き剥がす。それでもべったりと血が残っているが、面倒になったのか小さな鞘に短剣をしまった。

 

 短剣を直し終わってから、太ももから微振動が伝わる。

 仕事のためにといやいやながら持たされている携帯電話を開く。使い方はあまり理解していないが、通話に出られる程度には弄ることができる。通話に出ると、明るい女性の声が届いてきた。

 

 

『YA―――! チィーッス! 元気だったかなズミズミちゃん! 今回の依頼はどう? 結構難しめだけど殺されてナーイ?』

 

 

 

 彼女の名前は垂水佳子(たるみずよしこ)。殺し屋の依頼を請け負って、自分の担当する殺し屋に依頼を持っていく仲買人のようなものだ。消炭にとっては、彼女は依頼を回してくれる便利な存在なのだ。

 

 個人的に苦手な人間であるのだが――― 一応不愛想なのも悪いと思い、ちゃんと返事は返す消炭は、きっともともといい子なのだろう。

 

 

「一応。人数分きちんと殺した」

 

『おーよかったよかった。あんたに仕事を回したのは私だけど、実際ちょっと心配だったんだ。なにせターゲットが72名だぜ。なんだこの数、ソロモン王の悪魔の人数かっての』

 

「何を言っている」

 

 

 常人よりも知識を持つ相手と離すのは疲れると、消炭は面倒ながらにそう思った。

 

 

「で、何の用?」

 

『おーそうだったそうだった忘れるところだった! うっかり世間話をするところだった』

 

 

 危ないところだった。

 

 

『で、仕事が終わったところ申し訳ないんだけど―――ちょっと難しい依頼が回ってきちゃったんだよねぇ。あんたもそうだけど、次の相手はかの有名な箱庭学園の生徒よ』

 

「箱庭、学園……」

 

『そう。1組から13組まで存在する超大規模なぶったまげた学園さ。そこは基本的に超人的なパフォーマンスを見せるいわゆる《天才》ばかりが中心に入学している学校だ。そこらへんの一般人とはひと味も二味も違う』

 

 

 世界には超人的な技量を持つものと、人外的な損害を持つ者がいる。

 異常性《アブノーマル》と、過負荷《マイナス》である。

 

 

『それで今回の相手っていうんだがね………箱庭学園3年13組、宗像形っていうのさ。けど、ちょっと心配なところがあってね。情報によるとそいつ、大量殺人鬼らしいなんだよ………だからくれぐれも、気をつけるんだよズミズミ! じゃ!』

 

 

 ツー、ツー、ツー。

 

 依頼を受けるとも行っていないのに、勝手に話が進んでしまう。これは垂水佳子と話しているとよくあることで、いつのまにか会話のペースを握られてしまうのだ。元々口数が少ない消炭には通用しにくいものだが―――それでもこうも嵌ってしまうところを見ると、相当な話術を持っているようである。

 

 消炭は携帯をしまうと、消炭はまずどうやって侵入しようか考えることにした。人を殺すことに関しては何の躊躇もないが、知らない組織に(それが学校といえど)侵入することには抵抗があった。

 

 灰ヶ峰消炭。

 

 彼にとっては日常の1コマでありながら、同時に人生の分岐点ともなろう物語が、ここで始まる。




―――灰ヶ峰消炭

職 業:殺し屋
血液型:AB型
過負荷:無差別殺戮

備 考:オリキャラ


―――垂水佳子

職 業:殺人依頼の斡旋
血液型:AB型
好 物:珈琲

備 考:オリキャラ

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