魔法少女リリカルなのはで盗掘中   作:ムロヤ

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今後の指針

「……おはよう、イオリ」

 

《Guten Morgen(おはようございます)》

 

「お、起きたか。おはよう、ラヴィエ。それとエファンゲーリウムも」

 

 しばらく寛いでいるとラヴィエが目を覚ましてきた。挨拶をしながら俺は朝食を用意しテーブルに置くいてラヴィエに席に着くように促す。

 俺に促されるままに寝惚け眼で席に座りラヴィエはゆっくりと食べ始めた。

 

「食べながらでいいから聞いてくれ」

 

「……ん」

 

 ラヴィエが小さい口にパンを頬張りながらこちらを向いて頷く。

 

「今後の活動指針だが、どうにも嫌な予感がする。その関係でいくつか調べたい事と欲しい情報がある。一つは機動六課という部隊について」

 

「……きどうろっか?」

 

 まだ眠いせいか呂律が回っていない。このまま話しても頭に入らない気もするが、そこはエファンゲーリウムがいれば問題ないだろうと話を続けることにした。

 

「あー、昨日のリインフォースⅡ。ラヴィエの友達がいる部隊のことだ」

 

 

 何て説明しようか迷った末、ラヴィエが一番わかりやすいように俺はそう説明する事にした。リインフォースⅡの名前が出たことでラヴィエの目がしっかりと覚めたようだ。

 

「……ん、リインにまた会う」

 

「それは出来れば避けたいなぁ」

 

「……ダメ?」

 

 ラヴィエが無表情の顔の中にも悲しそうな雰囲気を込めて尋ねてくる。俺は困った表情で頭を掻きながらどう返事をしようか考える。

 

(流石にダメとは言いにくいな。でも会わせると俺が一緒だと俺は捕まるし、ラヴィエは捕まらないにしても保護は確実。保護ならいいけど、変なとこから横槍が来ると実験体にされかねないし。うーん)

 

 機動六課の面々に関してはラヴィエ個人が会いに行けば、意外とすんなりリインフォースⅡに会わせてくれる気がする。最悪でも保護されるだけだろう。経歴や情報にある人柄を信じる限り、その予想はほぼ確実だと思う。だが管理局と秘密裏に取引してる身としては、あの組織の裏というか闇を嫌というほど知っている。

 彼女達がラヴィエを保護したとしても、何処かで情報が漏れ確実に横槍が飛んでくる。それは避けたい。かといってラヴィエにダメとも言い難い。

 

「……ダメ?」

 

 ラヴィエが再度質問してくる。

 

「う、うーん、ちょっと色々準備したら可能。かなぁ?」

 

 考えた末に俺が出した答えがコレだった。

 

 兄妹としては末っ子のお願いを聞いてやりたい。俺は頭をフル回転させて必要な工程を考える。

 

 まずラヴィエの知識面での教育に《M》の完全調整と戦闘訓練によるラヴィエ自身の戦力向上。万が一戦闘になっても独力で逃走できるくらいが最低ラインだ。

 

 次いで根回し。

 管理局の上層部は俺についてかなり情報を持っている。先日の機動六課とラヴィエの戦闘の情報から、《M》が完成した事を察している連中もいるはずだ。なのにそれらしい動きや接触の気配がない事から、現状は干渉する気は無いと考えていい。だが確実というわけでもないので、幾つか根回しによる念押しが必要だ。

 

 あとは場所の確保。

 何処でいつ会うかも重要になってくる。当然管理局のお膝下であるミッドチルダは論外。出来る限りこちらに有利なフィールドが望ましいが、あからさまな場所だとあちらが罠を警戒して会う事に応じない可能性が高い。

 

 そして最後に土産だ。

 ラヴィエがリインフォースⅡに会う間と別れる時、その主人である八神はやてがこちらを見逃す事を渋々ながらも認めるような土産が有れば最良。

 あれだけの面子を揃えた部隊を率いているからには、それなりに腹芸が出来ないと話にならない。なら他の面子よりは裏取引に応じる可能性は高い……はず。

 

「よし、考えは纏まった。なんとかいける! ……気がする」

 

「……リインに会える?」

 

「ああ、多分な。ちょっと大変だし、ラヴィエに協力してもらう必要もあるけどな」

 

「……ん、がんばる」

 

 そう言ってラヴィエは残っている朝食を急いで食べ始めた。

 

 ────―

 

 朝食を摂り終えた俺は早速目的の世界へ移動するための準備を始めた。

 まずは命綱と言って差し支えがない《転移結晶》。これがないと万が一の場合俺は詰む。

 

「……コレ何?」

 

 ラヴィエが興味を持ったのか俺が広げていた道具の一つを持って差し出してきた。それは長さが30cm程の杭だ。

 

「それは《ビーコン》だ。いい機会だし少し説明するか」

 

 収集家(コレクター)と呼ばれるくらい古代遺物(ロストロギア)を集めている身としては、こうした説明をするのは楽しく、熱が入る。

 

「《ビーコン》は厳密には古代遺物(ロストロギア)じゃない。《ゲート》と呼ばれる古代遺物(ロストロギア)の技術を解析して俺が作成した転移用の道具だ」

 

 効果としてはアジトに設置してある《ゲート》に帰還するだけだが、本来は次元航行艦が必要な距離でもある程度の距離なら帰れる。現代の技術で作ったにしてはかなりの性能だと自信を持って言える。

 

「……便利。でもこの前使わなかった」

 

「まあ、問題もあるんだ。展開するにも多少時間がかかるし、通った後も一定時間が過ぎるまで《ゲート》と繋がったままになる。だから近くに誰かがいるとアジトまで乗り込まれる」

 

 一応《ゲート》の所に登録者以外が来ると発動する罠を仕掛けてるけど、安全確認が出来ないと俺には怖くて使えない。だからどうしても緊急時は《転移結晶》になってしまう。

 

「……《ゲート》は?」

 

「こっちは完全な古代遺物(ロストロギア)だ。本当は対になるゲートがあってそこを自由に行き来できるんだけど、俺が見つけたのは片方だけ。今は色んな古代遺物(ロストロギア)の合わせ技で無理矢理使ってる状態だ」

 

「……探さない?」

 

「無理だ。元々超長距離移動を目的にした古代遺物(ロストロギア)だからこれの近くにはない。そもそも壊れてない保証がない」

 

 一時期は探そうかとも考えたが、元が次元間移動のための物。当時の記録もない状態で探すとなれば複数の世界を虱潰しに探すしか方法がない。例えるなら海で拾った二枚貝の片方を、ヒント無しに海から探そうとしている様なものだ。とても現実的ではないと諦めた。

 

「……こっちから起動は?」

 

「それも無理。多分セキュリティだと思うが、繋げるためにはどちらかの起動時に出る魔力パターンをもう片方に入力する必要がある。まあ、好きなように繋げられると防犯って意味だと不味いし当然だろうな」

 

 説明されて納得したのかラヴィエも諦めたようだ。

 

「まあ、ラヴィエならエファンゲーリウムに補助が有れば生身でも次元間移動も出来そうだから、あんまり関係ないけどな」

 

「……ん、でもおもしろい。あとイオリ楽しそう」

 

「ははは、実際楽しいからな。ラヴィエも興味を持ってくれて嬉しいぞ」

 

 そんなのんびりとした会話をしながら俺は準備を進めていく。

 戦闘用や移動用、補助に緊急用。多岐にわたる古代遺物(ロストロギア)を並べては吟味し、時にはラヴィエが興味を持って説明する。その繰り返しで2時間ほで準備が整った。

 

「さて準備完了だ。ラヴィエ、出発するぞ」

 

「……ん」

 

 先程話した《ゲート》の前へ移動する。

 

「《天の眼(ウラノス・アイ)》起動。経路の測定を開始」

 

 俺のその言葉で義眼となっている片眼が起動する。

 

《現世界座標の読み取り……完了 》

《目標世界座標の読み取り……完了》

《次元間経路の測定……完了》

 

 普段あまり使う機会のないデバイスから音声が出る。

 

「《ゲート》の起動。及び《回廊》の接続を開始」

 

《ゲートの起動を確認》

《回廊の接続を確認。オールクリア》

 

「次元路展開」

 

《次元路形成……完了》

 

 先ほどまで向こう側が見えていた《ゲート》に黒い渦が現れた。

 

「よし、それじゃあラヴィエ出発だ」

 

「……ん」

 

 開かれた次元路へと俺達は身を投じた。

 

 




小説再開して改めて感じましたが、個人的には万能型で最強系の俺Tueeeeee主人公よりも器用貧乏や特化型でいろいろ足りない主人公が頑張る系統が好きです。

決して最強系が嫌いなわけじゃないです。

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