ソユーズ少佐の皇国軍戦記   作:kuraisu

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駄目だ。私の文才ではシド様のカリスマを完璧に表現することが出来ない。
なにか違和感があってもOKという方はどうぞ。


開戦

メロエ地区。

オリエンス大戦以降、ミリテス皇国と朱雀領ルブルムの国境が接する地。

メロエ地区の中央に国境線が引かれていて、西が皇国領、東が朱雀領となっている。

ここ10年に渡ってメロエ地区中央部の領土を巡り、激しい紛争が繰り広げられた地である。

そんな土地の皇国領側にある国境要塞。

この要塞は南北を貫く大きい要塞であり、この西側はパクス・コーデックス調印以来皇国領であるが、東側は時代によって朱雀領になったり皇国領になったりを繰り返している朱雀と皇国の領土争いの激戦地だ。

皇国軍は第一軍から第五軍までの5個の軍からなる軍隊で各々の軍は4~8個の軍団で構成されている。

1個軍団は歩兵を中心とした歩兵師団と鋼機(こうき)(他国では魔導アーマーと呼称している)を主力とした機甲師団が幾つかに砲兵部隊や航空部隊が付属する為、各軍団は6万人前後の兵力となっている。

現在、その皇国軍の内、3個軍70万の兵力が朱雀侵攻の為に国境要塞の西の広場に集結している。

それ以外にも広報部や外務庁の役人も幾人か混ざっている。

普段の朱雀との国境紛争だと最大でも敵味方合わせて10万前後の兵力の激突であったことを考えるといかに皇国が今回の朱雀侵攻に本気かが窺える。

 

「それにしても圧巻だな」

 

ルーキンが私に話しかけてくる。

私とルーキンは士官学校の同期で現在は友達以上、親友未満の関係である。

 

「そうだな。軍事パレードでもないのに3個軍が集結しているところをそう拝めるもんじゃない」

「確か今回の侵攻作戦は大きく分けて3つだったか」

「ああ、私たちが参加する朱雀西部攻略する【津波(つなみ)】作戦と朱雀中部から東部を制圧する【(はやぶさ)】作戦。そして朱雀首都奇襲して電撃的に制圧する【日蝕(にっしょく)】作戦だな」

「【日蝕】作戦には【白雷(はくらい)】がでるってきいたが?」

「らしいな。カトル准将自ら指揮を取るそうだ」

 

カトル准将。

帝位継承権第八位でありながら軍部に入り、シド元帥に才を見出されて数々の武功をあげて若くして准将になった人物。

皇国のエースパイロットであり、鋼機の操縦で彼の右に出る者は存在しない。

将官でありながら前線に立ち続けており、【白雷】【白き死神】【完全帰還者】などの二つ名を持っている。

軍部はおろか、都市部の人間ならば知らない者がいないほどの有名人である。

 

「それにルシまで同行するなら、首都攻略はそんなに心配ないか」

「ああ、一番かわいそうなのは【隼】作戦に参加する奴等だな。空中戦艦で物資も兵員も運ばなくてはいけないから苦戦は確実らしい」

「でもって俺らは朱雀の精鋭と正面から激突だ。激戦は確実だとよ」

「そうだ。朱雀の西部方面軍と戦うわけだ。方面軍司令部があるイスカ地区のリンボス要塞を陥落させれば、戦略目標のメロエ・イスカ地区の制圧は勢いをかって可能だろう。他の方面軍は別働隊の対処で援軍を出す余裕はないだろうからな」

「随分簡単に言うな。それが一番難しいだろうが」

「お喋りはそれくらいにしろ。ルーキン少佐にソユーズ少佐」

「「ハッ!ハーシェル中佐!」」

 

私たちは各々の指揮下の部隊に戻り、整列する。

すると広場の壇上に一人の男が現れた。

この男を知らぬ者はミリテス皇国内に誰一人存在しないだろう。

シド・オールスタイン元帥。

10年前に37歳という若さで国家元首にまで上り詰めた男。

慢性的な食糧不足や貴族の腐敗により苦しんでいた国民は彼を熱狂的に支持している。

なにしろ彼は自分達と同じ平民出身だからだ。

皇帝の専制政治で運営されてきたミリテス皇国では非常に珍しい事だ。

なぜなら皇帝が政治をしない時は有力貴族が宰相として国政を担ってきたのだから。

だが、彼は戦場で数々の功績を立てて軍部を30代で掌握した。

それに加えて技術者としても一流以上であり、クリスタルジャマーなどの兵器は彼が設計したものだ。

その上、演説の天才でもり多くの貴族や国民を味方につけて彼の権力は国政を担う前から凄まじいものだった。

だから皇帝が行方不明になっても誰も当時37歳の彼が国政を代理で行うことに異を唱えなかった。

その後執政者としても才能を存分に振るい、彼が国政を担うようになってからミリテス皇国の景気は急激に回復した。

文字通り皇国の英雄であり、天才と呼ぶに相応しい人物である。

 

『よく集まった同胞諸君。だがまだ我が皇国は朱雀に宣戦布告をしていない』

 

全員がその言葉を聞き、一斉に思った。

既に朱雀侵攻の作戦も軍の末端まで伝わっており、侵攻する準備も万端である。

そして後数十分で各作戦を開始し、国境を越えるまでさほど時間はかからないだろう。

それではだまし討ちではないか?と。

シド元帥はそういうと首を捻り、軽く手を振ると壇上に三人ほど文官が上がってきた。

彼らが持っている通信機が300年ほど前に使用されていたかなりの旧型である。

それは現在朱雀の外交を担当している渉外局との窓口である。

最新の通信機では暗号化されており、朱雀の魔導技術でできた装置と交信するのは難しい。

かといってまさか暗号の解読方法を教えるわけにもいかずこのような旧式の通信機を使っている。

シド元帥は通信機から受話器を取る。

 

『朱雀領ルブルムの渉外局です。どのような御用件でしょうか?』

 

会話の内容も周りのスピーカーから聞こえ広場に集まっている兵士全員に伝わる。

 

『用件か?用件は宣戦布告だ』

『はっ?』

『貴国がここ数年幾度となく無用の紛争を起こし、昨年に至っては我がミリテス皇国の領土に侵攻して国内の町を攻撃し、国民を虐殺するという愚を犯したにも関わらず貴国は現状の改善を図ろうとしない。ゆえに遺憾ながらも我が国は貴国に対し軍事的に制裁を加える事が決定した』

『お、おまちください!いま、局長を呼びますのでしばしお待ちを・・・』

『いらん。既に朱雀に対する制裁は政府内の統一された意志なのだ。時間稼ぎなど無意味だ』

『で、ですが――』

 

シド元帥は局員の言葉を最後まで聞かずに受話器を通信機に置いた。

そこで一息おき、軍集団を見渡して――

 

『たった今、宣戦布告がなされた。皇国軍元帥より全軍へ勅命である!!』

 

『ミリテス皇国の栄光に道に立ちふさがる障害!朱雀を薙ぎ払え!!』

 

『黒き暗黒の時代を切り開き、我等は(きぼう)の道を歩み出さんとしている』

 

『時は来た! さぁ、新たな時代の幕開けだ!!!』

 

「「「「「「 オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!! 」」」」」」

「「「「「「 ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!! 」」」」」」

 

シド元帥の演説が終わると同時に皇国軍将兵70万人の鬨の声があがった。

この光景は皇国全土に生中継された。

事前にこの時間にTVで重大発表がある(それが朱雀との戦争突入なのは報せていない)と告知していた為、国民たちは突然の開戦宣言に一瞬呆然とした後、口々に長年紛争で小競り合いを続けてきた朱雀への制裁を叫んでいた。

時に鴎暦842年水の月(2月)3日午前六時三十八分ミリテス皇国は名実共に隣国朱雀領ルブルムに宣戦布告。

361年にパクス・コーデックス調印されて以来、約500年ぶりにオリエンス四カ国全てを巻き込む大戦が勃発した。

そして午前七時に皇国軍は進軍を開始、突然の宣戦布告に対して朱雀側は対応に遅れ、国境地帯にいつもの小競り合いに対応できる兵力しか配置できておらず、圧倒的戦力差により国境を突破された。

続けて皇国軍はメロエ地区を一望できるリウナン丘陵を占拠。メロエ地区最大の都市メロエに向けて攻勢を行うことになる。




 津波作戦  :作者が適当に作戦名を考えました。
  隼作戦  :上に同じく。
 日蝕作戦  :クリスタリウムお歴史に記述あり。
シドは平民出身:オリ設定

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