先に「するがボーンヘッド」をお読みでない場合は、
意味不明となりますので、ぜひ原作を読まれることを、
お勧めいたします。
「ねえ。神原先輩。神原先輩」
「なんだい。扇くん」
「また、こんなゆるい企画で、大丈夫なんですかねぇ?」
「ゆるい企画と言うな!扇くん!!ゆるい企画と!……しかたないじゃないか!!!」
「神原先輩。そんな裏返った声で、怒らないでください。大人げないなあ」
「扇くん。私はまだ大人じゃないし、別に怒ってるわけじゃないよ。
ただ、前の話が、
『私の高校生活最後の夏休みは、どうやら今までで一番、長い夏になりそうだった』
で、終わっちゃったんだよ!
未開封のふすま、まだ七枚もあるんだよ!
それに、信じられないよ。なんであんな、ノリノリで君と仲良く冒険活劇して、木乃伊(ミイラ)をゲットする展開になってるんだい」
「そう言われましてもねぇ。確かに僕も煽りましたけど。
先輩本人が、『私にとって望ましい、いつも戦う愚か者の、神原駿河になろう』 って言ったんですよ。
それに、今、どうにもならない状態になってるのは、木乃伊をゲットしたせいじゃなくて、神原先輩が阿良々木先輩を、また怒らせちゃったからじゃないですか。本当に愚か者ですねぇ」
そうだった――――……
「まったくもう!『部屋は阿良々木先輩に謝って頼んで泣きついて仲直りして片付けてもらう』
って言ってたのに、完全に失敗してますよ。
メールの返事は来ないから、電話することにして何度目かに、やっと出てもらって、謝って、方付けに来てくれるところまで持って行ったのに、急にあんなこと言ったら、怒るに決まってるじゃないですか。
『うん。私は阿良々木先輩に部屋を片付けてもらったら、地図を作って木乃伊のパーツを集める大冒険に出発するのだ!』 ってなんですか!
話を聞いてた、僕の心臓の方がビックリして、あの世に出発するかと思いましたよ」
「私は嘘をつくのが苦手なのだ。まして相手が阿良々木先輩だったのだぞ……。
阿良々木先輩が『暑いさなかに片付けるんだから、終わったらかき氷を食べに行こう』などと言うから、つい、次の予定を口走ってしまったのだ」
「スピーカーフォンにしてたわけじゃないのに、良く聞こえましたよ。
『木乃伊のパーツを集めるって何だ――――!』って阿良々木先輩、怒鳴ってましたね。
数ヶ月前に苦労の末、忍ちゃんに木乃伊食べてもらったのに、何も説明無しにまた、木乃伊のパーツを集める宣言しちゃうって、本当に愚か者ですねぇ」
本当に怒ってたなぁ阿良々木先輩。
普段あんなこと言ったら、逆に心配して飛んで来そうだけど、先日の諫言の件、まだ許してもらったわけじゃなかったからなぁ。
酷い冗談言ってると思われて、怒って電話切られちゃった。頑張って、すぐ、もう一度電話してみたけど、電源が切られていた……
うーん困った。昨日、木乃伊のパーツをゲット後、帰宅して寝るにあたってのスペースを作るために、ふすまの角材も、他の部分も一応、後から分かるように、置いたつもりだったのだが、
今日になってみると『ごちゃあ……』といろんな物にまぎれてしまって、ゴミと区別が付かない。ふすまの組み立てが不可能だ……
対策として、阿良々木先輩が方付けに来てくれたときに、ゴミと、ふすまの角材や他の部分を分別してもらって、ついでに組み立ても手伝ってもらって、ふすまを元の場所に戻す予定だった。
そして、阿良々木先輩が帰った後に、方付けてもらってできた、広々としたスペースで、新たな、ふすまを分解して角材を並べて地図を読み解き、再び、木乃伊のパーツを集める冒険に、出発するはずだったのだ。
こうなってしまうと、新たに、ふすまを分解するなど言語道断。2枚分の、ふすまの部品とゴミが、ごちゃ混ぜになったら、組み立てなんてもう不可能。
おじいちゃんとおばあちゃんに怒られてしまう。
進退、極ってしまった……
朝食後に来て、阿良々木先輩に電話するように、促してくれた扇くんに一応聞いてみる。
「扇くん。部屋の片付けと、ふすまの部品の分別・発掘作業を手伝ってもらえないだろうか?」
「無理です。そんなスキルも時間もありません。すでに予定が入っています。
今日は神原先輩に、阿良々木先輩へ電話をするようにお話をして、電話が通じたら結果を確認して、すぐ帰るはずでした」
即答だった……「ああ。そうだったのか」と私は力なく返事をする。
「明日か明後日でも、構わないのだが」とも言ってみる。
「ごめんなさい。そんなスキル自体、本当に無いんです。
神原先輩。もう電話しても阿良々木先輩、出てくれそうにないんですから、直接行って謝った方がいいと思いますよ」
――――そうだな。自分ではお方付け出来ないのだから、もう直接、謝って片付けに来てもらうしかないか……
玄関のチャイムを押して、土下座待機していれば、話ぐらい聞いてもらえるのかな……などと考えていると。
「神原先輩、もう帰りますね。この話は続けると刀語みたいになっちゃうんで、たぶん業物語ではやらないですから、あまり深刻に……」
「扇くん。刀語とか業物語って何のことだ?」
「はっはー。これは失言しました。忘れてください。とにかく行きますね。愚かな巨乳先輩に『存在するはずのない人を狙ってるという』 あらぬ疑いを掛けられていますから、それを晴らす必要があるんです。Bルートとはいえ、愚かしい限りです」
「扇くん。Bルートって何だ? さっきからわけの分からないこと言ってるぞ!」
「はっはー。また失言です。本当に忘れてください。ふすま分解の時はご連絡ください、お待ちしています」そう言って帰って行った。
あれ、携帯の番号なんて聞いてたかな?…… まあいいや、いるベきときには、絶対隣にいるんだろうから……
さっきの電話の時、自宅みたいだったから、まだいるかな阿良々木先輩。
阿良々木先輩いないのに、玄関前で土下座待機するのは、ありえない。
そうか、家の車庫に車があれば、先輩いるのか。でも、チャイム押して、阿良々木先輩以外の人が出て来ても困るし。(火憐ちゃんだったら、最悪だ)
そうだ、見張ってて、阿良々木先輩が家から出てきたら、あの丸い車のルーフの上で、丸くなって土下座待機すれば、親ガメの上に子ガメといった感じで全て丸くて、丸く収まりそうな気がする。
(アニメではあの家、正面からしか描かれてないけど、玄関の反対側に車庫がある)
いや、やっぱり、あの車、ルーフ高いから、土下座してても、頭上げたら私と阿良々木先輩の目の高さ、同じくらいになりそう。土下座してるのに、同じ高さ目線だとまた怒られそう……
結局、車の前で土下座して、頭を踏んでもらうことにして、私も家を出た……