接物語   作:貝木

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プロローグから続く『接物語』「まよいメメント」と Bルートの「しのぶメイル」=「まよいモラトリアム」です。
  


【5】接物語 まよいメメント(Bルートの愚物語)

高校生の時だったら、ちょうど夏休みに入る頃合いの暑い日。

羽川の事務所を訪ねる者があった――――

 

扉を開けた羽川の前に立っていたのは、そう……八九寺(大人バージョン)だった。

 

「こんにちは。羽川さん、八九寺です。阿良々木さんに言われて来ました。私ならきっと、お手伝い出来ることがあるって」

 

「ようこそ! 八九寺さん、NGO活動に興味を持ってもらって嬉しい!ホントに真宵ちゃんが大人になられたんですね。まあ入って! 入って!」

 

初対面同士だが、まるで旧知の間柄のよう。

(オーディオコメンタリーで真宵21歳ver.・翼6歳ver.があった気がしますが、あれは別次元ですし)

 

椅子を勧め、お茶を用意しながら、羽川の口から出たのは、こんな言葉だった。

 

「阿良々木君から、こちらの世界においでになったと聞いて、

お会いしてNGO活動の話をと思ってたんです……。でも、実は急に大変な事件が持ち上がって……是非、協力して頂きたいんです。扇くんのことはご存じないと思いますけど、彼が動き出しているようなんです。

それで、どうやら狙いは貴方みたいなんです――――……」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

【5.5】まよいモラトリアム

 

羽川の語った大変な事件。本当はキスショッタ・アセロラロリオン・ハートアンダーティーンが現れてしまった……では無いことをお約束して、やっぱり、Bルート愚物語の前に、このBルートの終物語(中)のことを書かなければいけないような気がします。

 

心ならずもBルートになってしまった「こよみリバイブ」・「こよみスラップ」・「こよみスティック」は暦物語「こよみデッド」の続きで、Aルート(原作)の終物語(下)「まよいヘル」にあたります。

 

Bルートでは400年も昔に、死屍累生死郎は成仏してます。

北白蛇神社に灰となって吹きだまり、その後、復活することはありません……

 

死屍累生死郎が鎧武者となって現れない、Bルートの終物語(中)「しのぶメイル」はどんなお話になるのでしょう。

終物語(中)「しのぶメイル」のBルート=「まよいモラトリアム」――――

 

 

 

―8月23日の夜 神原との待ち合わせ場所、学習塾跡廃ビル2階教室―

 

「阿良々木先輩、おっひざー」

 

僕のほっぺに真空飛び膝蹴りが決まった。

「ぐえっ」

壁に背中が打ちつけられる。

「ぐええっ!」

 

「先輩、勢い余って行ってしまった3階に、机で作られたベットが用意されてたぞ!」

 

「心当たりがないんだが……ベット?」

 

[先日、羽川さんが使ったベットですね]

 

「またまた。とぼけちゃって」

 

「別に僕、とぼける系のキャラじゃないんだけど……」

 

 

[――――――廃ビルから50メートルほど、空間から湧きだすように出現した苛虎。廃ビルを鋭く睨んだあと、数歩進み、試すように2、3度廃ビルに向け短く炎を噴き、次に大きく胸を膨らませ、今まさに猛烈な炎を噴き出す――その刹那、苛虎の眼前に八九寺が立ち塞がった。

立ち塞がったものの、当然その先はなにも考えてる暇などなかった八九寺は焦りに焦った。消える約束をして、現れるのを止め。一方的な約束の見守りをしていたところ、わずか半日で、また現れることになってしまった。このような最悪の状況で。

 

「何だお前は!」「何故、吾輩の邪魔をする!!」苛虎は吠えるように言った。

「小さき者よ。どうやら怪異のようだが、お前に何が出来る!」

 

これでは蟷螂の斧だ。でも、でも――

「あのビルの中には人がいます。人がいるのにビルを燃やすつもりなのですか!」

 

嘲るように苛虎が答える。

「吾輩は燃やしたいものを燃す。中に人がいようと関係ない、ただの発火衝動だからな。邪魔をするなら踏みつぶすぞ!」

 

もう廃ビルは見えている。ここから迷わせることは不可能。でも、炎の行き先を少し迷わせることぐらいなら、と思った瞬間!『くらやみ』が出現した。というよりそこにあった。見えないものが確かにあった。

恐怖で全身が凍り付く。もう駄目だと思い最後に阿良々木さんのいるはずの廃ビルの方を見た。

すると遠くの路地を曲がって現れた小さな人影! ――斧乃木さん!

きわどい所で他の建物が遮って、斧乃木さんからは苛虎が見えないようだ。

彼女が苛虎に気付いた様子は無い、でも、確実に学習塾跡に向かっている。斧乃木さんがいれば

大丈夫なはず……そこまで考えると、八九寺は怪異としての実体化を止め、消えた――――――]

 

 

突然、教室の床が火を噴いた。

埋められていた対人用地雷が炸裂したかのかと思うくらいの、それは、火柱だった。

轟々と燃え上がる学習塾。建物全体が炎に包まれ、脱出ルートも確保できず絶望的な状況。

 

そのとき、廃ビルの2階の平面の壁を片手でつかんで自重を支えつつ、

残る片手でアンリミテッド・ルールブック――ダイナマイト消火版を放ち、

「――――こんなところで死ねると思うな。鬼いちゃんを殺すのはこの僕だ」

と言い放ったのは斧乃木ちゃんだった。

 

「僕は僕の仕事をしていただけだ――――その仕事先で、鬼いちゃんが知らない女と無理心中しようとしていたので、ひゃっほうこれは邪魔するしかないぜと思っただけだ」とも言った。

 

とにかく助けられた。合流した臥煙さんの話では、このところ数パーセント上昇していた怪異の発生率を下げるために、斧乃木ちゃんを派遣したとのことだった。

 

僕と神原の手伝いの必要性を何でも知ってる臥煙さんが感じたのは、その情報源が他のルートからも来ていることにあり、

他のルートでは、ちりじりになった死屍累生死郎の灰が寄せ集まり、とんでもないことになる可能性があったということらしい。

 

念のためエピソードまで呼ばれていた。

 

 

えっ。それじゃあ何故、苛虎と対決した羽川を助けに行ったのが、あんなギリギリのタイミングになったのかだって――――

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――それは秘密だ。

 

 




次回は 愚物語 「するがボーンヘッドリターンズ」 になります。



以前から希望としてアニメ化されるなら(上)からは初めずに(中)からスタートして暦物語のラストあたりを数話やって(下)をやる流れかなと書いてますがどんなもんでしょう?
素直に考えると7月の終物語アニメ化発表の時に(上)の箱絵使っていて、一挙放送では無い感じなので(上)・(中)・(下)で1クールなのでしょうか?ちょっと詰め込み過ぎな感じですが、
とりあえず、暦物語は飛ばされたようなので、そこで満足しなければいけないのでしょうか。
でも、(上)ってホントに映像化に向かないように、敢えて原作者が書いてるような作品のような気がして……時系列も(中)の後だし……


※2015年9月10日
アニメ終物語情報一挙に出ました。
終物語はまずは1クール全12話で、上巻と中巻をTVアニメ化、放送。
下巻はアニメ化決定、シナリオ制作終了。暦物語はアニメ化を企画中。
発表形態は検討中。ということで恐れてあえて書かなかった結果になってしまいました。

楽しみにしていた、終(下)がいつ見られるのか不明です。
終(中)も同じくらい楽しみなので、まあ良しとしましょう。
それにしても、暦物語ラスト2話以外もまだ可能性残ってるんですね。

暦全部やるくらいなら、暦ラスト2話+終(下)やって続終を早くやって貰った方がいい。
(下手に暦物語全話アニメ化したら叩かれそう)

「おうぎフォーミュラ」放送時には読売新聞の一面広告やるんだろうから「短々編」と共に、
講談社BOXではカットされてしまった「別マガ」にあった「読者への挑戦状」登場人物表付を再掲してほしい。
登場人物表は講談社BOXのサイズでは小さすぎたけど、新聞ならスペースは取れると思う。
まあ、ミスリード気味の登場人物表なんだけど、40人近くの難読な名前のクラスメンバーが、
次々に喋りまくり議論する、学級裁判の様なストーリーでの犯人探しなので、
話を追う上で、書き込み可能な登場人物表があった方が楽しめると思う。

読者への挑戦以上に「シャフトへの挑戦」と言われた「おうぎフォーミュラ」ですが、
「ハウマッチ」以外のクラスメイトは全員映さない上で、推理劇として最後まで誰が犯人かわからなく、お話として魅力的に見せる映像化の難易度が高い内容に、スタッフがどう挑んだのかを是非観ていただきたいとのことなので期待しています。

※追記 新聞の一面広告はありませんでしたし「2人・3人・4人組みを作ってもいつも1人余る阿良々木くんであった」の台詞もカット・全員分語らないのですから、メンバー表は不要な構成でした。(原作ではクラス生徒人数は37人のはすですよね~と扇ちゃんが迫る)
  

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