接物語   作:貝木

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原作が書かれないことを理由に書き始めたわけですが、原作が完結し、続終物語もほとんどスピンオフ状態ですので、原作と一方的にコラボして遊んでみます。

アニメーターから終物語のアニメ化がリークされましたので(2015.06.30)、終物語のアニメ化までの繋ぎにどうぞ。

先行して書いてしまった「こよみリバイブ」が、原作にどう収斂していくか、お楽しみください。



【3】こよみスティック(終物語 下「まよいヘル」)

目が覚めたら場所は相変わらず北白蛇神社、両手にはレプリカの『心渡』を握りしめ、忍が咆哮したところだった。

 

北白蛇神社といっても、暦と忍が修復に行かなかった、滅んだ世界 (Zルート) の北白蛇神社だ。

 

 

こうなる前に実はひと騒動あった。

 

 

前の話で、忍野の絶妙なパンチを食らって、僕が気絶させられた理由は、覚醒しているときには不可能な10式戦車の操作・操縦法 (主に砲手) を八九寺式睡眠時コンタクトで短時間で叩きこまれるというものだった。(八九寺は戦車の操作法を今回の一連の作戦と同時に、忍野からダウンロードするように既に受け取っていた。なんかPCのレベルだし、マトリックスみたいだな、八九寺パネー)

 

でも、実際には10式同士の格闘戦にはならず、話し合いになった。

 

この動向変化の一番の切っ掛けは、10式の戦車の中で八九寺とのコンタクトを終えた直後、忍野の元に、講談社BOX「物語シリーズ」が傷物語から終物語(下)まで17巻、コミック版攻殻機動隊に出てきそうな、怪しげなバイク便で時刻指定で配達されてきたことによるらしい。(宛先は○市○町○番○号 元学習塾焼失跡地前路上違法駐車10式戦車内 忍野メメ様)

送り主は当然何でも知ってる臥煙さん(Aルート)で、物語の作者の正体は西尾維新でなく、誰でも想像出来そうな、西尾維新がペンネームの羽川であった。

西尾維新の創作物は当然、西尾維新が書いているのだが、物語シリーズに限っては羽川が絡んでいるそうだ。担当するのは物語シリーズのみ、ゴーストライターではなく、羽川が西尾先生に降臨して書いている状態らしい。

 

 

数ある並行世界の中でも、八九寺を助けた後、偶然とはいえ世界を修復しないで元のルートに直接戻ってしまったのは、Qルートの暦(僕ではない)だけとのことだった。

理由はZルートが将来修復されないのを察知した臥煙さんが、他のルートの急進派の3人の臥煙さんと頻繁に連絡を取り始め、それが引き鉄になり時空が乱れたから。Zルートで、生身のロリ八九寺を助けた暦が元の世界に戻ろうとしたら、他の場合と違い、正しく元のQルートの現代に戻ってしまい、Zルートの修復をすることもなく、戻ったら、現在の怪異の八九寺に飛びつかれ、結果、滅びた世界を見ることも、21歳八九寺に会うことも無く、戻った世界は何一つ変わっておらず、時間旅行が完全な夢落ちに終わってしまった。

 

話を少し戻して整理すると、この物語を初めから読んでくれている読者ならご存知のように、僕も忍も忍野もAルートの住人である。(と実は思い込んでいただけらしい)

Aルートの僕がなんでまたZルートに来て、焼身自殺に失敗したキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードと対峙することになるのか……

 

理由は簡単、Qルートは時空の結節点が妙なルートで、簡単に暦と忍を連れだせないんだそうだ。

で、目の前にいる僕が駆り出された。

 

戦車の中で講談社BOX「物語シリーズ」を読んだバランサー忍野は、これこそ本来のAルートで自分は実は分岐したBルートにいることを知った。

この世界はBルートだ……いつの間にかAからBに移動していた。

分岐したのは400年も昔、死屍累生死郎が成仏してしまったときらしい。

(『本当はAルートで終物語(中)が書かれたあたりで分岐したんだろう?』と、忍野がBルートの臥煙さんにボソっと聞いたらしいが、彼女は黙秘したようだ)

 

とにかく忍野は修復されないZルートの救済が急務だと自覚した……バランサーとしての本能ではないかと思う。

臥煙さんたちが、戦車で現れたとき、急遽、忍野はAルートから臥煙さんを召喚し(切り札として最後に使ったらしい)幸いなことに彼女はそれに答えた……臥煙さんは忍野の戦車の砲塔に仁王立ちとなり、全ては一時停止した……

 

 

 

Zルートの臥煙さんは自分のルートが修復されないことを知り、バランスを欠いた道に走った。

何でも知ってる能力を生かし、各ルートの中でも急進派の自分を選別した。

ノーマルな臥煙さんは忍野を、他のルートに飛ばしはしない。

厳選して、説得できそうな3人の過激な臥煙さんと通信端末を共有して、今回のZルートを中心とした所業に出た。

 

 

そして、不思議な話だが今回、過激な臥煙さん達は『やり過ぎでしょ!元に戻すべき!』という、

忍野にAルートから召喚された、臥煙さんの勧告に素直に従った。

鏡の中の自分に平手打ちを食らって、正気にかえるような感覚?……良く分からない……

 

 

僕はAルート臥煙さんが説得に失敗し、戦闘になった場合の要員だった。

失神後は手際良く、砲手のコックピットに移され、すぐ八九寺がコンタクトして来て、1分ほどでインスタント砲手完成。その他の状況レクチャーは30秒。脳を上手く揺すって、意識を奪うだけに特化した、ハイスキルのパンチだったので、外傷も内出血もなく。レクチャー終了後30秒で覚醒。滑腔砲に自動装填装置で特別なお札が貼り付けられた徹甲弾を装填し、スタンバイ完了。

操縦士の八九寺さんも準備OK、10式いけますよ!で『滑り止め完成』

臥煙さん達、境内到着予測時刻まで後1分。

車長の忍野は『切り札』を切って、Aルート臥煙さん召喚作業開始――――

 

 

 

結果は前出のとおりで、戦車同士の戦いは回避。

忍野に、今後の希望を聞かれたので、『現状復帰。細かいことはお前に任せる』と回答。

殺されて、あの世へ送られる途中、生き返り、インスタント砲手にされ、今はクタクタ。

話し合いは忍野に任せ、安堵感と疲労感で、コックピットでしばらく、ぐったりしていた。

同じく、安心したのか八九寺さんも、しばらく放心状態だったが、さすが大人の女性、カップに熱いコーヒーを注ぎ、僕に手渡してくれた。八九寺の居場所も聞かれたので、普通の人間に戻り、もう彼女は見えない僕であったが、さっきレクチャーしてくれたときと同じだろうと思い、僕の隣の狭いスペースを教えた。八九寺さんは熱いコーヒーを注いだカップに砂糖とミルクを入れ、お供えするように、八九寺のいるであろう場所の前に置いた。物理的には飲めない彼女だが (お供え物って、立ち上る湯気が消えたら、飲み終わったってことだっけ?) きっと美味しく飲んでるんだろう。

 

境内の隅からキスショットが現れ、僕の方へに完全体のキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードが歩いてきた。僕も戦車から飛び出した。

「よう。お前様」と、キスショットは極上に凄惨な笑みを浮かべ、「阿呆が。心配させおって」と、僕の頭をくしゃりと撫でた。

その後、「は!「はは!「ははは!と笑いなら、抱き付かれ、というか抱え上げられ、さんざ振りまわされ、賞翫されつくされた。うれしいが、あまり八九時には見られたくない図ではある。

 

(彼女は完全体になった後、僕が復活予定なのを知るとBルートの北白蛇神社境内の隅っこの結界の中に『ミスタードーナッツ・キスショット専用店』を物質構成能力で作り、好きなドーナッツを思う存分食べ、のんびりゲームしていたとのこと……)

 

キスショットは忍野と臥煙さん達の話し合いに加わった。僕も行きかけたけたけど、お前に任せると言った手前、自制した。

 

15分ほどで話し合いは終り、「それで良いのじゃな。お前様」とキスショットは言った。

彼女も僕と同じように現状復帰を望み。元の幼女に戻る選択をした。僕たちは吸血行為ならぬ給血行為のやり過ぎによる、僕自身の吸血鬼化をもう繰り返さないと誓い、今後の予定も承服した。

彼女は僕の影に潜ったかと思うと、臥煙さんにペアリングを戻してもらい、すぐさま元の幼女に戻った状態で、僕の影から出てきた。(この後の嫌なことは、一刻も早く終わらせたいらしい)

 

忍は僕の手を取り「いくぞ! お前様よ。」と、Zルートの現代へ時空移動した……時空移動のショックで気を失い、まだしっかり覚醒しない僕の両手にレプリカの『心渡』を握らせ。

忍は咆哮した。徐々に僕は覚醒し始めた。

 

 

そして、冒頭のシーンに至る。

 

 

二度目とはいえ自殺に失敗したキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードを見るのは非常に悲しく、居たたまれなかった。

忍も同じ気持ちのようで、血の涙を流し、彼女の「こんな可能性もありえたのじゃな……」という言葉を再び耐えがたいものを聞くという感じで聞いていた。

 

結果、このルートのキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードも前回と同じ提案をし、世界は修復され、僕たちはBルートに戻った。

 

だいぶ慣れたようで今回は気絶しなかった。すると斧乃木ちゃんが呼ばれていて臥煙さんに、僕が保管しているお札を取って来るようにいわれた。アンリミテッド・ルールブックで自宅へ行き、保管していたお札を慎重にポケットに移し、斧乃木ちゃんとジャンプして北白蛇神社へ戻った。

 

 

さすが臥煙さん、この状態の八九寺とも話せるようで、戻ったら向こうサイドの話は決まっていた。説明されて僕は驚いたけど、最善手なのかもしれない。八九寺は僕が保管していたお札を呑み、案外あっさり神になった。(最初にキスショットに話した時の臥煙さんの腹案では、別の神様の予定だったらしい)

 

今から考えるとBルートの臥煙さんが持っていた『心渡・夢渡』は違うルートから臥煙さんが持ち込んだもののようだ。

 

 

全てが終わったような気がした。時計を確認すると僕が心渡で惨殺されてから30分も経っていなかった。3月13日早朝7時半すぎ。

 

とりあえずは、と臥煙さんはいった。

「こよみんには受験に向かってもらおうか」

 

「じゅ、受験とか……」

 

いや、これだけいろいろあった後に、神様とその神様が違うルートで成長した21歳の生きてる女性と臥煙さん5人とアロハの中年と戦車2台と特殊弾頭付RPG-7を背負って現れた4人目の臥煙さんが乗ってきたオフロードバイクがある神社で、いきなり日常に返されても。

 

「ま、まあ――がんばりますけれど」

コンディションがいいとはいえないけど――

 

「あと、私はまだ君に話さなければいけないことがあるんだよ。扇ちゃんのことだけどね。まあ、明日でいいけどね。会おう。明日からもうひと仕事あるよ。明日になれば、私は1人になってるから君ももう混乱しないだろう」

(Zルートに元から居た忍野と共にZルート残り、万一の場合に備えて「二の矢」を用意していた忍野達も、元から居た忍野以外の2人は元のルートへ戻るそうだ)

 

 

「全部片付けるよん」

 

 

 

まだ、終わってないから、とりあえずの仮後日談。

 

忍野から講談社「物語シリーズ」を読ませてもらったのだが、未来の「花物語」なんてのがある。

 

(花物語の件では『あくまで、Aルートの話だからね』と釘を刺された。終下は忍野が34ページまで読んで自分がAルートの住人と誤認している事実と、自分が物語りに大きくかかわる近未来の話と確認した時点で、即座に焼却処分したとのこと)

 

神原を焼き肉店に連れ込むのは許せるにしても、謎の貝木ストライドで神原を軽々と抜き去るのは許せない。人間業じゃないだろあれ。大体、今あの詐欺師、存在自体不明不定だろ。

絶対会っていろいろ問いただしてやる。

 

会えないなら、スピンオフで登場させて喋るように根回しするからな。

 

忘却探偵より北白蛇神社の八九寺神と僕の絡みが読みたいかな。

 




読んで頂いてありがとうございました。

ヶ原さんには今のところ内緒なのですが、
八九寺さん大人バージョンには、このルートに残って貰いました。

いろいろお話したいことが……


え? こよこよ?……後ろで呼ぶ声が、

ヶ原さん!そんなに文房具、ど、どこから持ち出して来たの?
まず、おはなにゃしをををを……――――――――


※追記 愚物語で、あの世にいる遠江さんが駿河に『貝木に会うことがあれば伝えてくれ』という発言をしたので、貝木はあの世にいない可能性が高くなったと言えると思います。
  

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