仮面ライダー電王LYRICAL   作:(MINA)

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みなさん、こんにちは。

皆大好です。

年末は見るテレビがないので、以前に録画したドラマやアニメなどを見ている日々です。

それでは第九話に行ってみましょう。


第九話 「反省は次のステップに」

怪植物の核となっているところにとある二人がいる。

ロッド電王とチーターイマジンだ。

現在、二人とも睨み合っている最中だ。

両者ともに人間のようにコロコロと表情が変わるわけではないので、側から見るとわからない。

ロッド電王は専用の飛行メカ『レドーム』から降りる。

降りてからデンガッシャーロッドモード(以後:Dロッド)の切先をチーターイマジンに向ける。

「悪いけど、後が立て込んでるんで早急に片付けさせてもらうよ?」

「なぁにぃ!?」

チーターイマジンの声に怒りが混じった。

その証拠に両腕の爪が急激に伸び出す。

今の挑発じみた台詞で少しは本気になったのだろうとロッド電王は判断した。

Dロッドを手元に寄せると、右手でDロッドの中間部を持ち、後方部を左手で持つという槍を構えるような型を取る。

そして、そのまま一直線に駆ける。

右手を離して、左手だけでチーターイマジンの鳩尾(みぞおち)を狙う。

突きが速かったらしく、避けられずにまともに喰らってしまう。

「げぇふっ」

そんな声を挙げるが、次の攻撃に動きを切り替える。

Dロッドを寄せた後、空いている右手を左手よりさらに下部に持ち、横から右脇腹を狙う。

Dロッドはデンガッシャーソードモード(以後:Dソード)と違い、『しなり』があるため、軌道が読み辛かったりする。

『斬る』ではなく、『叩きつける』という表現が相応しい攻撃だ。

「まだまだぁ!次行くよ!」

さらに踏み込んで、Dロッドの向きを下部を前にして掬い上げるような動作を取り、アッパーカットの要領で顎を捕らえる。

「!#$%&」

顎に直撃し、声にならない声を出すチーターイマジン。

このままやられっ放しというわけではないので、すぐさま先程伸張させた爪で攻撃を繰り出そうとする。

右、左、左、右と攻撃を繰り出すが、Dロッドで難なく防ぐ。

ある程度、距離が縮まると両者はどちらかが合図を取ったわけでもないのに後方へと下がる。

「そんなんじゃ僕は倒せないって」

ロッド電王は指をチッチッチッと鳴らす。

相手を逆上させて冷静さを欠き、動きを単調なものにさせる。それがロッド電王の戦闘スタイルだ。

「このぉ、なめやがってぇ!」

ロッド電王の策通りに事は上手く進む。

「センパイより単純だね?まっ、僕にとってはありがたいからいいか」

(それ、モモタロスが聞いたら怒るよ?)

と、深層心理の中にいる良太郎が苦笑した。

Dロッドを先程と同じように構えてから直進する。

チーターイマジンはDロッドから繰り出される攻撃に警戒している。

「なるほどねぇ」

動きから読み取ったロッド電王は裏をかくことにした。

Dロッドで攻撃すると、見せかけて飛び膝蹴りを顔面に喰らわせる。

「な、ななな……」

そのまま、あお向けになって倒れる。

「くっ!やりにくい相手だ」

チーターイマジンは起き上がりながら鼻元を押さえ、率直な感想を述べた。

じりじりと後方へと気取られないように下がっていく。

この場を離れて、別の翠屋JFCレギュラーを狩るのだろうとロッド電王は判断した。

イマジンならば目先の電王より契約完了を選ぶのは別に間違っていない。

「この場を離れて、契約重視?仕事熱心だねぇ」

それを知ってて皮肉をぶつける。

「!!」

この一言でチーターイマジンは『下がって契約執行』という選択肢を捨てる。

「貴様!とことん俺をコケにしやがってぇ」

伸張した両爪をクロスさせてから構える。

相手が本気になったと判断したロッド電王は右肩にもたれさせていたDロッドを構え直す。

両手ではなく、右手で持ったまま直進する。

同じ轍を踏むつもりはないらしく、素早く右側に避ける。

「後ろががら空きだ!!」

背後に回って後頭部を狙おうとするが、そこに後頭部(まと)はなく、左右を見回す。

「甘いよ!」

ロッド電王はどこかに瞬間移動したのではなく、その場に素早くしゃがみこんでいた。

背後にいるチーターイマジンに向き直ると同時に、Dロッドで左ふくらはぎを叩く。

「ぐうっ」

中腰ですかさず、左脇腹に狙いをつけて叩きつける。

「があっ」

左ふくらはぎのダメージも残っている状態なので、更に効く。

「もうひとつ、おまけ!」

と、左側頭部を狙って、思いっきり叩きつける。

左側頭部を押さえながら後方へとふらふらと下がる。

これは戦略的撤退をするための演技でなく、ダメージ蓄積によるものだ。

つまり弱っているということだ。

「さてと、相手(さかな)も弱ってきたので仕上げ(釣り)にかかるとしますか」

パスを取り出し、デンオウベルトのターミナルバックルにセタッチする。

『フルチャージ』

ターミナルバックルからフリーエネルギーで構築されたラインがDロッドの後方部に伝導される。

伝導されたフリーエネルギーは切先に向かって走っていく。

切先にフリーエネルギーが収束される。

ロッド電王はDロッドの切先を見て、完全に充填されたのを確認する。

そして、Dロッドを槍投げの構えを取り、チーターイマジンの心臓部に狙いをつける。

よろよろとしていても心臓部を隠そうとしている。

自身を守るための本能による動きだろう。

(ふぅ、焦らない焦らないっと)

釣り師を自称する以上、『待つ』ことの大切さも知っている。

チーターイマジンの心臓部をカバーしている両の腕がわずかにだらりと下がった。

(今だ!)

腰を右に大きく捻り、前に出ている左足は力強く地面に踏ん張る。

「せやああぁ!!」

Dロッドを標的に目掛けて投げた。

風も吹いていないので、ぶれることなく真っ直ぐに矢のように突っ走る。

心臓部に突き刺さると、体内に吸収されるようにチーターイマジンに入っていく。

Dロッドの姿が全てなくなると、青色のフリーエネルギーで構築された亀の甲羅のような網『オーラキャスト』が出現し、チーターイマジンの動きを封じる。

「ぐっううう……う、動けん。くそおおおおお!!」

敗北を確信したチーターイマジンは悔しさを紛らわすように喚くしかなかった。

「これで止め!」

ロッド電王は最後の一撃として、両足に力を込める。

そして、高く空中に跳躍して右足を前に突き出して、蹴りの体勢を取る。

狙いは『オーラキャスト』の中心部―――チーターイマジンの心臓部だ。

オーラキャストとロッド電王は何がしかの(ライン)で繋がっているのだろうか、正確に標的に突き進んで行く。

「せりゃあああああああ」

と叫びながらロッド電王の蹴り足はオーラキャストの中心部を捉えた。

その瞬間にオーラキャストに亀裂が入り、粉々になる。

それはオーラキャストと繋がっているチーターイマジンも同じことが起こるということだ。

全身に亀裂が生じ、自身を構築する以上のフリーエネルギーが強引に入り込み、肉体を維持できなくなる。

そして、

「うおあああああああああ」

チーターイマジンが断末魔の叫びを発して爆発した。

爆煙が立ち込めるが、ロッド電王に傷はひとつもついていない。

「さてと、僕達のお仕事はこれで終わり、あとは……」

(なのはちゃん達の出番だね)

良太郎の意見にロッド電王は頷き、レドームを呼び寄せて飛び乗り、なのは達がいるビル屋上に向かった。

 

高町なのはとユーノ・スクライアは、怪植物の核となっている場所付近から爆煙が立っているのをきちんと両目で捉えた。

「ユーノ君、あれって……」

「良太郎さんとウラタロスさんがイマジンを倒したと思っていいと思うよ」

「あ、ユーノ君、あれ」

なのはが指差す方向にユーノは顔を向ける。

「良太郎さん達だ」

レドームに乗っているロッド電王だ。

ロッド電王はレドームから飛び降りて、なのは達の前に着地する。

「後はよろしくね。なのはちゃん、ユーノ」

そう言うと、ロッド電王はデンオウベルトを外す。

外すと同時に、青色のエネルギー体がウラタロスとなり、電王の形が崩れ、良太郎の姿に戻っていく。

「ここから先は魔導師の領域だね。モモタロス、大丈夫?」

良太郎はグッタリしているモモタロスを労う。

「おお、だいぶマシになったがな。ったく慣れねぇことはするもんじゃねぇぜ」

首をボキボキ鳴らすモモタロス。

「センパイ、なのはちゃんの邪魔になるからこっちおいでよ」

ウラタロスが、手で「おいでおいで」をする。

「せかすなよ、カメ」

愚痴りながらも歩みを止めないモモタロス。

「今すぐ封印するからね!」

レイジングハートを目標の方角にかざすなのは。

「この距離からじゃ無理だ!もっと接近しないと!」

なのはの行動にユーノは注意する。

「できるよ!大丈夫!」

自信と決意を秘めた瞳をユーノにぶつけるなのは。

「大丈夫だよね?レイジングハート」

確認するように手に持つ相棒に尋ねるなのは。

『シーリングモード。セットアップ』

と応えるように自身の形状を変化させていくレイジングハート。

杖から槍に近い先端になる。獲物を一突きできそうな鋭利さがある。

レイジングハートに桜色の両翼が展開される。

「行って!!捕まえて!!」

レイジングハート先端前に桜色の球体が発生し、放つ。

一直線にジュエルシードを捉える。

『スタンバイレディ?』

レイジングハートがなのはに次の指示を促す。

「リリカルマジカル……」

なのはの詠唱に良太郎もモモタロスもウラタロスもそして、なのはの肩に乗っかっているユーノもただ、黙って見ている。

一言も発することが許されない儀式じみたものがその場の空気にはあった。

「ジュエルシード、シリアル10!!」

ジュエルシードのナンバーを口に出すと、レイジングハートの金色の先端は桜色に輝いていく。

魔力が完全に充填されたと感じたなのはは、詠唱から閉じていた両目を開き、決めの台詞を放つ。

「封印!!」

同時にレイジングハートから桜色の光線が凄まじい勢いで放たれた。

その証拠になのはのツインテールは激しくなびき、肩に乗っかっていたユーノも落ちないようにしっかりとバリアジャケットに爪を立てて、しがみついている。

良太郎、モモ、ウラも飛び降り防止のフェンスにしがみついている。

光線は怪植物の核―――ジュエルシードに向かっていく。

直撃すると、桜色の光は怪植物を全て包み込んだ。

 

すでに蒼く澄んだ空からオレンジ色の夕焼けになっていた。

レイジングハートはジュエルシードを自身に収める。

「ありがとう、レイジングハート」

なのはは感謝の言葉を告げた。

『グッバイ』

そう短く言うと、レイジングハートは自身の形を崩していった。

同時になのはもバリアジャケットから私服姿に戻る。

(この子、魔導師になって一週間しか経ってないと聞いてるけど経験積めば凄い事になる)

良太郎はなのはの魔導師としての資質に戦慄を覚えた。

自分も電王になって一年程だが、戦闘キャリアはそこそこ積んでいるため、他者の潜在的な資質を見抜く力が養われたのだ。

「……いっぱいみんなに迷惑かけちゃったね」

なのははジュエルシードを回収できたにも拘らず、浮かない声と表情をしていた。

「なのは……」

肩に乗っかっていたユーノはいつの間にか地に足つけている。

心配そうな表情で見上げるかたちでなのはを見ている。

どこか気まずい雰囲気が屋上にいる面々を支配していた。

なのはの独白は続く。

「……実はね、わたし、あの子が持ってたの気づいてたんだ」

ユーノ、良太郎、モモタロスは声にこそ出さないが、驚いていた。

ウラタロスは反対に予想していたのか平静を保っていた。

「でも、気のせいだ何かの間違いだって思って見てみぬ振りしてたの」

「なのは……」

隣にいるユーノはただ聞いている。

「そしたらこんな事になっちゃって……」

その場でしゃがみこんでしまった。

「なのは、元気出して。なのははちゃんとやってるよ。だから落ち込まないで!」

ユーノはその小さな身体で精一杯なのはを励ます。

「ユーノ君」

なのはの表情に少しだけ笑みが浮かぶ。

「失敗したと思ってるなら次は失敗しないようにすればいいんじゃないかな?」

良太郎がなのはの横、ユーノの逆側に座った。

「それに失敗したからこそわかったものだってあるでしょ?」

良太郎の一言になのはもユーノもはっとする。

「わたしは……」

「僕は……」

両者ともに互いの欠点を見つけることができたようだ。

なのはとユーノが互いに決意を秘めた瞳を向け合う。

「ユーノ君、わたし、これからは自分の意思でジュエルシード集めをする。だからこれからも手伝ってくれる?」

「もちろんだよ!僕もなのはに負担をかけないように頑張るから困ったことがあったら遠慮なく言ってよ。力になるからね!」

互いに笑みを浮かべた。

「さーてと、話が終わったんだから帰ろうぜ。腹減っちまったよ」

「もうしょうがないなあ、センパイは。二人とも早く帰ろう?センパイが駄々をこねない内にさ?」

場の雰囲気が明るくなっているのを感じ取ったモモタロスはわざととぼけたことを言う。

ウラタロスもモモタロスの意図を察しているため、苦笑混じりに言う。

なのはとユーノがどちらかが先にというわけではなく、笑い出す。

場の雰囲気が明るくなったことに満足した良太郎は立ち上がる。

「さてと、僕も夕飯の支度をしなきゃいけないから帰るよ」

「あ、良太郎さん、ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」

なのはとユーノが同時に良太郎に頭を下げた。

「そこまでお礼を言われることはしてないよ。だから、二人とも頭上げて」

良太郎はなのはとユーノに頭を上げるように言う。

自分は立ち上がるきっかけを与えたにすぎないのだから。

 

 

高町家とは逆方向にフェイト達のマンションがある。

幸か不幸か、怪植物の影響はさほど及んではいなかった。

あくまで家やビルが破壊されていなかったというだけで、地面は完全に抉れていた。

向かいからよろよろと一人のジャージ姿をした少年が歩いている。

良太郎はその少年を一瞥する。

何がしかに取り憑かれたかのような表情をしていた。

ただ、単純に疲れたんだろうと思った良太郎はそれ以上は気にせずに歩き出した。

マンションに着くと、エレベーターに乗り込み目的の階層のボタンを押す。

後から誰も入ってこない。

閉ボタンを押す、ゆっくりとではあるがドアが閉まる。

良太郎は壁に背を預ける。

「さすがにちょっと疲れた、かな」

慣れたとはいえ、電王になった後に来るこの感覚はいい感じがしない。

キンとエレベーターが停まり、ドアが開く。

フェイト達が住んでいる部屋前に立つ。

ドアノブを握ってから引く。

開いた。

「ただいまぁ」

と、良太郎が言うと住人であるフェイトとアルフが玄関まで走ってきた。

「お、おかえり。良太郎」

まだ言い慣れてないのか、フェイトはどもる。

「おかえり、良太郎」

アルフは真剣な表情をしていた。

「ただいま」

と、もう一度言うと良太郎は靴を脱ぎ、入ろうとするがアルフに遮られた。

「良太郎、アンタさ。一体何と戦ってきたんだい?」

「え?」

「あたしはさ、アンタが悪いヤツじゃないってことはわかってる。でもさ、アンタ何か隠してないかい?」

「ア、アルフ。良太郎だって色々と事情があるんだし……」

フェイトは胸倉を掴みかねないアルフを止めようとする。

「フェイト、アンタは知りたくないのかい?良太郎が戦っているヤツの事を!」

「そ、それは……」

良太郎はフェイトを見る。

知りたいと顔は語っていた。

「わかったよ。話すから居間に行こう。ここじゃ話すに話せないしさ」

良太郎の瞳は決意がこもっていた。

 

 




次回予告

第十話 「動き出す黒き魔導師」



あとがき
皆大好です。
これにて無印における第三話が終了いたしました。
次回は第三話と第四話の間の話です。
『なのは』の一話分はこちらでは三話相当になるという大まかな図式はこの時からできてきたのかもしれませんね。
現在の第四部ではすでにこの図式は崩壊していますけど……
それでは2013年も残すところ一カ月を切りました。
やれることはどんどんやってしまいましょう。
次回の掲載予定日は2013/12/7です。
それでは第十話でお会いしましょう。

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