仮面ライダー電王LYRICAL   作:(MINA)

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赤い霊柩車シリーズを見ながら、「いつ完結するんだろう?」なんて家族と談話して

結論は「あの二人が結婚しない限りありえない」という事に首を縦に振ってしまうみなひろです。

それでは第四話を開始いたします。


第四話 「食べ歩きと一日の終わり」

人が神や天使に見えるときというものは大抵自分が追い詰められている時に限る。

野上良太郎が今まで、自身が体験した中で導き出した答えだ。

先程まで敵として戦っていた少女の申し出は良太郎にその事を思い出させるほど衝撃的なものだ。

しかし、簡単にその申し出を受けるわけにはいかない。

何故ならば、相手は女の子。

そして、自分は男だ。

間違いが起こる筈ないと良太郎は断言できるが、それでも、ということもある。

「ご両親は僕を泊める事を許してくれるかな?」

と、とりあえずお決まりの質問をする。

「わたしとアルフしか住んでないから大丈夫」

あっさりと返された。

「フェイトちゃんはそれでいいとしても、えと、そのアルフさんは・・・・・・どうなのかな?」

良太郎はアルフを見る。

「ん?あたし」

自分を指差すアルフ。

「別にいいんじゃない?アンタがあたしらに変なことをするようなヤツには見えないしね」

どうやら彼女の中で自分はそれなりに信用されているらしい。

「でも・・・・・・」

それでも良太郎は申し出を受け入れを渋ってしまう。

「良太郎、他にアテがあるの?それともイヤなの?」

フェイトが上目でどこか悲しい表情で良太郎を見つめてくる。

良太郎としてはそれだけで何か自分がやましいことをしたのでは、と思ってしまう。

「フェイトとあたしがいいって言ってんだからさ。ありがたく受けなよ」

アルフが良太郎に覚悟を決めるように促す。

良太郎はフェイトとアルフを見る。

二人は善意もしくは先程の贖罪で申し出ているかもしれない。

善意なら受けないと無礼だと考える。

贖罪ならお門違いだと考えてしまう。自分は先程のことで罰を下す気などないからだ。

良太郎は二人のもてなしを善意だと思うことにした。

「それじゃお言葉に甘えて、お世話になります」

良太郎は二人に頭を軽く下げた。

 

非常階段がカンカンと音を鳴らしながら、揺れている。

三人の人間が現在使用しているからだ。

良太郎、フェイト、アルフだ。

ちなみに降りている順番はアルフ、フェイト、良太郎になっている。

この順番を提示したのは良太郎でそこには男ならではの諸々の事情がある。

ただし、それは女性に明確に説明することは出来ない事情だが。

良太郎はフェイトの服装が先ほどと違うことに気付き、訊ねてみることにした。

「さっきの服ってもしかして戦闘服みたいなものなの?」

前で階段を下っているフェイトが良太郎に顔を向ける。

「え?」

「いや、今と違うから」

「バリアジャケットって言うんだけど・・・・・・知らないよ、ね?」

「うん。やっぱり戦闘服って思っていいのかな?」

「いいと思うよ」

フェイトも魔法の事を知らない良太郎にどう説明しようか悩んだが、良太郎の解釈は大まかには正解と思ったのでそれで通すように言った。

「二人ともー。早く来なよー」

先頭で非常階段を降り終えたアルフが促してきた。

「行こう。良太郎」

「そうだね」

良太郎とフェイトが非常階段を降り終えたのはそれから十分後だった。

非常階段を降り終えて良太郎は地に足をつけた。

やっと大地に立ったという気分になった。

そんな余韻に少々浸っている良太郎にアルフが声をかけた。

「ねぇ。良太郎」

「なに?アルフさん」

「アンタが乗ってたあの非常識な乗り物って何なのさ?」

「ア、アルフ!非常識だなんて失礼だよ。良太郎の世界では当たり前のことかもしれないのに・・・・・・」

フェイトは相棒のあまりの物言いを注意する。

「ううん、アルフさんの言う通りだよ。あとフェイトちゃん。僕のいる世界でもアレは非常識の部類に入るから気にしなくていいからね」

良太郎は苦笑いを浮かべながらもアルフの質問に答えようとする。

「あの列車はデンライナーっていって、ええと、『時間』を運行することが出来るんだ」

「タイムマシンみたいなもの?」

フェイトが自分が保有する知識でデンライナーの解釈を良太郎にぶつけてみた。

「そうだね。うん、それが一番適当な解釈だよ」

自分の解釈が正鵠を射ているとわかったフェイトは驚きを隠せなかった。

「それって凄いよ!ね?アルフ」

良太郎は驚きの表情を浮かべているフェイトを見て驚いた。

(こんな顔も出来るんだ)

と。

「そうだよ!時空管理局でもそんなもの所持しているなんて聞いたことないしね」

「時空管理局?」

良太郎が聞き慣れない言葉を二人に尋ねる。

「次元世界を管理、維持するための組織、かな」

フェイトが良太郎にわかりやすく説明する。

(警察みたいなものかな)

と、口には出さずに勝手に解釈することにしようとした時だ。

「あっ」

ぐぎゅるるぅと良太郎の腹の虫が鳴った。

「そういえばお昼に食べたっきり、何にも食べてないや」

腹をさする良太郎。

「凄く鳴ってたね」

フェイトが笑みを浮かべる。

だが、どこかその場の雰囲気を和ませる為に作られた笑みに感じた。

心の底から笑っているように思えないと良太郎が感じた直後。

ぐぎゅるるるるぅと別の所から聞こえ出した。

音の出所を良太郎とフェイトは目で追う。

アルフだった。

「あは、あはははは。あたしもさっき戦ったからさ。その・・・・・・ね」

「アルフ・・・・・・もう」

フェイトは相棒に呆れ、一歩右足を踏み出そうとする。

ぐぎゅるるるるるるるるぅとこの中で一番豪快な音が鳴った。

出所はわざわざ探らなくてもわかることだった。

「あの・・・・・・聞こえた?」

腹の虫を鳴らした少女は顔を真っ赤にして青年と相棒に確認するように訊く。

「あー、凄い音だった、ね」

青年は苦笑しながらも何かフォローになる言葉を捜そうとする。

「あは、あははは。そ、そうだね」

相棒は笑うしかないという選択肢を取った。

「・・・・・・・・意地悪」

少女は顔を真っ赤にしてぼそりと呟いて歩く速度を速めた。

「フェイトちゃん?」

「ちょっと待っとくれよ。フェイトー」

二人はちょっと拗ねた少女の背中を追いかけた。

 

 

「とにかく、喫茶店でもレストランでもいいから何か食べれる所を探そう」

良太郎は、空腹に対しての打開策として二人に進言する。

「そうだね」

フェイトも機嫌を直したのか、良太郎の言葉に耳を傾ける。

「とはいっても、あたし達もこの辺りの地理を知ってるわけじゃないしねぇ。自分の家の周りくらいしか知らないよねぇ」

「うん」

アルフの一言にフェイトは首を縦に振る。

「え?そうなの?」

良太郎は二人がここで住んでいるものばかりと思っていた。

「それにこの辺りを歩いたのも初めてといえば初めて、かな。家までの道は知ってるけど他の所は知らないんだ」

フェイトは周辺を見回しながら言った。

「それ、本当?」

「うん」

良太郎の歩みが停まる。

二人の私生活等に疑惑の目を向けてしまう。

妙な推測までしてしまう。

もしかしてこの二人も僕と同じで別の世界から来たのか、と。

ジュエルシードを集めるという目的の為にたった二人でこの見知らぬ場に来たのでは、と。

だが、そんなことを問うても二人がはぐらかす可能性はあるし、好奇心を満たすためだけに他者のプライバシーを侵していい筈がない。

良太郎は今の事に頭を切り替える。

二人は自宅までの道のりを、迷いなく進めている。

「良太郎、どうしたの?」

「早く来なよー」

フェイトは心配し、アルフは早く来る様に促している。

「ごめんごめん。置いてかないでよー」

良太郎は右手で謝罪のポーズを取りながら二人のもとに駆けた。

それから十分ぐらいが経過し、フェイト達の自宅に向かう中で一軒のコンビニを発見した。

三人はドアの前に立つ。

入口は手動ドアなため、真正面に立っていても開閉はしない。

「お腹空いたね」

「・・・・・・うん」

「戦ったもんねー」

三人とも既に食欲という魔物に憑かれている。

通りすごすという選択肢はない。

だが、何故か入ろうとしない。

正確には良太郎は入りたいのだが、フェイトとアルフが入ろうとしないのだ。

「二人とも、どうしたの?後ろに人が来たら迷惑になるから早く入ろうよ」

良太郎が促すが、二人の足は先程とは打って変わって岩のように重くなっている。

「良太郎、その・・・・・・」

「あたしたちさ・・・・・・」

二人が何を言おうとしているのか何となく理解できたので自分から声を出した。

「お金持ってきてないんでしょ?」

「・・・・・・うん」

「あははは・・・・・・」

フェイトは申し訳なさそうな顔をし、アルフは笑って誤魔化そうとしている。

「大丈夫、僕が奢るからさ。食べたい物は遠慮せずに選んでいいよ」

「でも、それじゃ・・・・・・」

「そうだよ。いくら何でも悪いよ良太郎」

良太郎が奢るといった直後、二人ともしおらしくなってしまう。

どうやら、人にたかるといった行為に慣れていないらしい。

「僕がいいって言ってるんだから、素直に厚意に甘えたほうがいいよ、ね?」

アルフが自分を泊める際に言った台詞を今度は良太郎が自分なりにアレンジを加えて言った。

「・・・・・・うん、それじゃ」

「お言葉に甘えて・・・・・・」

こうして三人はコンビニの中に入って行った。

 

コンビニの中に入ると、フェイトとアルフはそれぞれ欲しい物を予め目星をつけていたらしく、他の物には目もくれずに向かって行った。

「さてと、僕は何を買おうかな、と」

買い物カゴを手にする。

オーナーから百万円も貰っているのでコンビニに置いてある商品で買えない物はひとつもない。

だが、深夜であるため目玉商品のようなものは殆ど陳列されていない。

空腹を満たすとしたら、陳列されている比較的ハズレに近い弁当かお菓子かカップ麺かおにぎり系かパン系もしくはレジ前に置かれているフライドチキン系しかない。

買い物カゴを見てみると、菓子パンひとつと牛乳ひとつにレンジでチンすると温かく食べることの出来るハンバーガーが十個ほど入っていた。

(誰が何を食べるのかすぐにわかっちゃうね)

良太郎はフェイトのそばまで歩み寄る。

フェイトは弁当コーナーである商品を見上げていた。

「何か欲しいものあった?」

「ひゃっ!りょ、良太郎。な、なに?」

フェイトはいきなり声をかけられて驚いたが、すぐに平静を取り戻す。

「ずっと見上げてたからさ。何か欲しいものでもあるのかなって思ってさ」

「ううん、ないよ。本当だよ!良太郎」

ムキになって否定しているのが益々怪しく感じた良太郎はフェイトが見つめていた商品を見る。

洋風ハンバーグ弁当だった。

目玉商品の最後の一品だ。

良太郎は最後の一品を迷いなく取る。

フェイトが残念そうな顔を一瞬したが、すぐに驚きの表情になった。

良太郎がそれをフェイトに渡したのだ。

「え?」

「入る前に言ったよね?遠慮しなくていいって」

「でも・・・・・・・」

良太郎は笑みを浮かべフェイトの頭にポンと手を置き、優しく撫でる。

「フェイトちゃん。もっとワガママになっていいんだよ」

「う、うん。ありがとう。良太郎」

フェイトは顔を俯き、頬を赤く染めながらも洋風ハンバーグ弁当を受け取った。

その後、フェイトはスティック系のお菓子を数箱、カゴの中に放り込んだ。

ワガママと呼ぶにはまだまだ可愛い部類だが。

良太郎が買い物カゴをレジ場に立っている店員に渡して精算してもらう。

オーナーから貰った財布を取り出し、その中に入っている一万円札を一枚渡す。

おつりとしてジャラ銭数枚に千円札数枚を受け取った。

「ありがとうございましたー」

と店員の声を聞きながら三人はコンビニから出た。

 

三人の周囲には様々な匂いが立ち込めており、皆それぞれ先程購入した食べ物を堪能していた。

「うん。おいひぃ」

とアルフはハンバーガーを豪快に食べている。既にもう五個目だ。

フェイトは一番最初に買った菓子パンを食べながら牛乳を飲んでいる。

アルフのように顔には現れていないが、堪能していると思われる。

ちなみに良太郎は歩きながら食べるものは一切購入していない。

「あそこで食べよう」

と良太郎はバス停留所を指す。ちょうどベンチもあり、ゴミ箱もある。買った物をすべて消化するにはもってこいの場所だろう。

なにせ、弁当を歩きながら食べることは出来ないからだ。

良太郎が買ったのも弁当だ。

ベンチに座り、良太郎は袋の中に入っている二つある弁当のうちハンバーグ弁当をフェイトに、アルフにはハンバーガーが五個入っている袋を渡した。ちなみにスティック菓子は弁当が入っている牛乳が入っている袋に入っており、フェイトが持っている。

「「いただきます」」

良太郎とフェイトが食物に対する感謝の儀式を行う。

良太郎は自分が選んだカルビ弁当の蓋を開け、食べ始めた。

カルビにタレがよくかかっていてご飯とマッチしている。

フェイトもハンバーグ弁当に手をつけ始める。

それかからしばらくして先程まで豪快に食べていたアルフがぽかんと口を開けている。

二人とも容姿に反して凄まじい勢いで食べているのだ。

味わって食べているのか、ただ単に胃袋の中に放り込んでいるだけなのか傍から見るとわからない。

そして、

「「ごちそうさまでした」」

二人は同時に手を合わせた。

「アンタ達、それ狙ってやってる?」

「え?」

「アルフ?」

「いや、何でもないよ。同じタイミングで食べ始めて食べ終わるなんてさ、まるでひとつの芸みたいだと思っただけだよ」

アルフの言っていることを今ひとつ理解できない二人だった。

 

夜食が終り、また目的地に向かう一行はただひたすら歩いていた。

「良太郎はさ・・・・・・・」

先程まで皆黙って歩いていたが、フェイトが沈黙を破った。

「ん?なに」

「一体何者なの?」

「え?僕、うーん説明が難しいね」

良太郎は頬を指で掻きながら、どう説明したらいいか考えあぐねていた。

「いーじゃん。教えなよー」

とアルフも良太郎の素性に興味を持ったのか教えるようにせがむ。

「そうだなあ。僕はまず、この世界とは別の世界から来ているんだ。そして・・・・・・」

二人は自らの聴覚を良太郎の次の言葉を聞き漏らさぬように研ぎ澄まさす。

「元いた世界のこの『時間』から更に十年後の『時間』から来たんだ」

「・・・・・・」

「あー、ややこしいなー」

フェイトは考え込み、アルフは考えることを放棄した。

「あ、良太郎着いたよ」

しばし考えていたフェイトだったが、見知った場所に着くととりあえず後日考えることにした。

「ここなの?」

良太郎は二人の生活拠点となるマンションを見上げている。

高級なマンションでとてもではないが自分が住めるような場所ではない。

フェイトちゃんの親はきっと高給取りなんだな、と良太郎の頭によぎった。

三人はマンションの中に入っていく。

エレベーターに乗り、チンと鳴ってから扉が開く。

そこがフェイト達が生活している部屋がある階層なんだろう。

フェイトは上着のポケットからカードキーを取り出して、ドアに通す。

ガチャリと音が鳴りドアを開ける。

「どうぞ」

フェイトは良太郎に中に入るように促す。

「お邪魔します」

中に入って見回す良太郎。

室内は広い。だが、どこか寂しげな雰囲気を感じた。

生活感のようなものがまるで感じないのだ。寝る起きる食べるの最低限のことのための空間ともとれる。

部屋というには入れ物のようにも思えた。

「フェイト―。シャワー浴びるけど一緒にどう?」

アルフがすでにバスルームに入っているらしく、フェイトを誘う。

「うん、わかった。今行くよ。アルフ」

そう言ってフェイトもシャワールームに向かった。

「良太郎」

「なに?フェイトちゃん」

「良太郎はそんなことをする人じゃないと思うけど・・・・・・」

フェイトが何を言おうとしているのか良太郎には理解できた。

「わかってる。早く行っておいでよ。アルフさん、待ってるよ」

「・・・・・・うん」

フェイトは何故かわからないが、良太郎の返答に不満を抱き、パジャマを持ってシャワールームに向かった。

フェイトの姿がなくなると良太郎はケータロスに財布にパスをソファのそばにあるテーブルに置いて自身は寝転がった。

(今日はほんといろいろあったな)

と思い、

(でも、何とかなってよかった)

と思いながらシミひとつない天井を見上げた。

フェイト達がシャワールームから出てきたのはそれから三十分後だった。

その時には良太郎は熟睡していた。

 

明日もまた無事に過ごせたらいいな、と願いながら。




次回予告

第五話 「チームデンライナー集結」



第四話 あとがき

完全に忘れていました。申し訳ありません。
もう既に23日になってしまいました。
今回は戦闘終了後の話です。
執筆の際にはテレビに映っている食べ物関係を見ていたような気がします。
日常を描くときはとにかくキャラクターを損なわないようにイメージしながら書いてましたね。
「コイツならこう言う」とか「コイツは絶対にこんなことは言わない」とかね。

それでは第五話でお会いしましょう。

第五話の投稿予定日は本日、つまり2013/11/23です。

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