仮面ライダー電王LYRICAL   作:(MINA)

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時空管理局介入
第二十九話 「最強の電王と最大の組織」


「クライマックスフォーム」

 

ケータロス装着のデンオウベルトはターミナルバックルにパスをセタッチする事で、電子音声を発した。

M良太郎の姿からプラット電王へと変身するが、それは今までのプラット電王とは違っていた。

身体の部分部分に銀色の線路のようなライン---デンレールが装飾されていた。

赤色が主体となっているオーラアーマーが出現し、両肩と胸部と背部に装着されていく。

青、金、紫の光球となった三体のイマジンはそれぞれの電仮面へと姿を変えて、各々が装着箇所へと浮遊しながら移動していく。

ウラタロスは電仮面ロッドとなって、右肩に向かっていく。

キンタロスは電仮面アックスになって、左肩へと。

リュウタロスは電仮面ガンとなり、胸部へと移動する。

三種類の電仮面がそれぞれの位置に到着すると、その場で一回転してから右肩、左肩、胸部へと装着されていく。

電仮面ロッド、アックス、ガンが装着されると、頭部から電仮面ソードが走り、固定の位置で停まってからソード電王と同じように展開されてからさらにもう一段階、モモタロスいわく「皮が剥けた」状態になった。

全身からオーラが発せられる。

仮面ライダー電王クライマックスフォーム(以後:クライマックス電王)が戦場に降臨した。

「わー、やっぱり別世界でもくっついた!でも、気持ち悪さは変わってなーい!」

リュウタロスの声(以後:リュウボイス)を出して、クライマックス電王は胸を張りながら、左右へと跳ねてから両人差し指でつんつんとする。

「うるせぇ!二匹とも仕留めるぜ!」

モモタロスの声(以後:モモボイス)を出したクライマックス電王は胸部の電仮面ガンに一言言うと、両肩に装着されている電仮面達に次に移す行動を高らかと言う。

「おっしゃあ!」

キンタロスの声(以後:キンボイス)を発しながら電仮面アックスは張り切っていた。

「いつでもどうぞ!」

ウラタロスの声(以後:ウラボイス)を発しながら電仮面ロッドは右腕のみをウラタロスお得意のポーズを取った。

 

クライマックス電王が降臨を目の当たりにした魔導師サイドの面々は目を丸くして、声を出して驚きたいのを必死にこらえていた。

これから戦闘が始まるのにその空気を壊さないための配慮である。

(ユーノ君、説明できる?)

高町なのはは念話の回線を開き、ユーノ・スクライアにクライマックス電王について訊ねてみる。

(なのは、僕が自信を持って説明できるのは僕自身が身近だったりする事や、本で覚えたことだけなんだ。とてもじゃないけど、あの電王については説明出来ないよ。ただ、なのはもわかってるんじゃないの?あの電王がとんでもなく強いって事は、さ)

(うん。でも大丈夫かな……)

なのははどこかクライマックス電王に対して感じていた不安をユーノにぶつける。

(何が?)

(だって、モモタロスさん達ってしょっちゅう喧嘩してるから、その……)

ユーノはなのはの言いたい事が理解できた。

(上手くあの電王が機能しないんじゃないかって思ってるんだね?)

なのはの言いたい事をユーノが先に告げた。

(うん)

(大丈夫だと思うよ)

なのはにしてみればユーノの意見は意外なものだった。てっきり自分と同様、もしかすると自分以上に不安を感じ取っているのではないかと思ったからだ。

(どうして?)

(なのは。変身するまでのやり取りを思い出してみてよ)

ユーノに促されて、なのははクライマックス電王に変身する前の事を記憶の引き出しから引っ張り出した。

先程の事なので割と鮮明に残っている。

モモタロス達の息はバッチリだった。

その場の雰囲気は「勝ったも当然」というような感じがしたくらいだ。

(みんなの想いはひとつ。て感じだったね)

(でしょ。それにこれは僕の仮説だけどね。あの電王はモモタロスさん、ウラタロスさん、キンタロスさん、リュウタロスの四体の『呼吸』、もしくは『想い』がひとつにならないと成立しない変身じゃないかと思うんだ)

(てことは、わたしが言ってたことって……)

(もし、なのはの言った事が現実になってたとしたら変身そのものが成立していないと思うよ)

(そう、だよね)

なのはとユーノはクライマックス電王がどのようにしてあの二体のイマジンを倒すのかじっくりと観察する事にした。

 

(クライマックス電王

あれ

はあたし達の常識通じるのかい?フェイト)

(アルフ、聞かないでよ。絶対に通じないよ)

アルフとフェイト・テスタロッサも念話の回線を開いて、会話をしていた。

(電王ってさ、てっきりイマジン一体だけが良太郎に入り込んで戦うスタイルだと思ってたよ)

(今まではそういうスタイルしか見てないから、そう考えるのも仕方ないよね。わたし、電王って今いるのを含めて三形態しか知らないよ)

自分は『電王』の戦闘スタイルを全て知っているわけではないのだ。

フェイトが知る電王とは、最初に戦ったソード電王と海鳴温泉街で自分を襲ったイマジンと戦ってくれたアックス電王、そして今戦おうとしているクライマックス電王の三形態だ。

(フェイトは三形態なんだ。あたしはええと、前にいるヤツ含めて四つだよ)

アルフが知る電王は、ソード、アックス、クライマックスは同じだが、ガン電王も見ているので一つ多い。

あの時フェイトは気を失っていたので知らなくて当然といえば当然だが。

(あのイマジン二体、強いよ。電王一人で大丈夫かい?)

アルフが心配げな表情でフェイトを見る。

対して、フェイトは自信と確信を持った瞳でアルフを見つめ返した。

(一人じゃないよ)

(え?)

(電王は良太郎とイマジンの一人と一体で一人の戦士、ううん二人で一人の戦士なんだ。だけど、今の電王は……)

(五人で一人、かい?)

(うん。大丈夫だよ。電王はイマジンに負けたりなんかしない!)

フェイトは電王の勝利を断言した。

(そうだね。フェイト、始まるよ)

アルフがクライマックス電王とイマジン二体の戦いが始まろうとしているので、フェイトに見るように促した。

 

ギャラリーとなっている魔導師サイドの内、二組が念話で会話を行っている頃、一人あぶれたというか取り残されているというか念話をするほど、親しい相手がいない時空管理局執務官クロノ・ハラオウンは腕を組んで、今から戦いを起こそうとしている一人と二体を自身が持っている情報で分析していた。

(イマジンと呼ばれる怪人二体は一体でも戦闘能力は極めて高い。即席とはいえ、こっちは向こうの三倍の数で戦ったのに、奴等はそれと対等に戦いきれるんだ。それをたった一人でどう戦うつもりなんだ?)

クライマックス電王を見る。

バリアジャケットとは違う仕様だということは一目でわかる。

それに、一つの身体に四種類の声がした。

声マネでもあれだけ高度なものはできないだろう。

それに戦闘が始まる際に、そんなことをする意味はない。

(今はイマジンと戦っている以上、味方と判断していいが……。今後どうなるかはこの戦いが終わってから、だな)

クロノは他の観客達も見る。

誰もが今からの戦闘を見届けるつもりなのだろう。

クロノがもう一度見たとき、クライマックス電王は歩き出した。

 

クライマックス電王は右腕をぐるりと回してから、まるで散歩でもするかのように歩き出す。

「何、歩いてるんだ!お前!」

「待て!!弟よ!」

コッドイマジン兄の制止をきかず、コッドイマジン弟が握っている剣の一振りをクライマックス電王に向けて振り下ろす。

振り下ろされる剣をクライマックス電王は左人差し指と左中指で挟むようにして受け止めた。

「そんなんで泣けるかい!」

キンボイスを発して、剣を挟んでいる指の力を強めていく。

「ぐ、ぐぐぐ。何て力だ!」

「オラオラ、もっと力入れろよ?そんなじゃ、俺の身体に届かねぇぜ?」

モモボイスでクライマックス電王が煽る。

バキン、という音がした。

指で挟んでいた剣を折ったのだ。

「折った!?俺の剣を!?」

「そんなことでショック受けてていいのかい!」

ウラボイスを発して、右腕が正拳突きでコッドイマジン弟の顔面を狙い撃った。

「ぐはああああ」

後方に派手に吹っ飛ぶ。

コッドイマジン兄が受け止めるが、それでも二体は大きく下がっていく。

「ちょうど二匹くっついたな。仕留めるにはもってこいだぜ」

モモボイスで今の戦況を声に出してから、ゆっくりと歩いてコッドイマジン兄弟との間合いを詰める。

「あー!何か来るよ!」

リュウボイスが言うと同時に、クライマックス電王の胸部にフリーエネルギーの弾丸が直撃した。

しかし、クライマックス電王は倒れるどころか歩みをやめていない。

「痛ーい!何で僕だけぇ!?こういうのはモモタロスの役割なのに!」

リュウボイスで愚痴るクライマックス電王。

「うるせぇ!胸にいるテメェが悪いんだろうが!」

モモボイスで言い返すクライマックス電王。

言い合いをしている間に、コッドイマジン兄弟は態勢を立て直して、兄が銃口をクライマックス電王の右肩を捕らえて、引き金を絞った。

クライマックス電王の右肩に直撃した。

「センパイ!リュウタ!言い合いをやめて集中してよ!僕、当たっちゃったじゃない!」

ウラボイスで喧嘩を止めようとするクライマックス電王。

更にもう一発フリーエネルギーの弾丸が左肩に直撃した。

「コラァ!モモの字!遊んどらんと早く決着つけんかい!食らっとるの俺らだけやないか!」

キンボイスで抗議するクライマックス電王。

「言われなくてもやってやらぁ!」

右拳を、左手でパシンと受け止めてからクライマックス電王は走り出す。

「今度こそ仕留めてやる!」

コッドイマジン弟が残った一振りの剣を両手持ちにして、走っているクライマックス電王に向かって斬りかかろうとする。

クライマックス電王は走りながら、左腰にあるデンガッシャーのパーツ二つを手にして横連結させる。

そして、横連結させたパーツを宙に浮かせた瞬間に右腰に収まっているパーツ二つを瞬時に手にして、横連結させたパーツの上下から挟むと先端からオーラソードが出現し、Dソードを完成させた。

コッドイマジン弟の刃は確実にクライマックス電王の首元を狙っている。

Dソードの刃をコッドイマジンの腹部を狙う位置に構える。

やがて、コッドイマジンとクライマックス電王の距離がゼロになる。

クライマックス電王は上手く首と上体を曲げて刃が直撃するコースから外す事に成功し、通り過ぎると同時に構えていたDソードで目標となる部位を狙って斬りつけた。

「ぐおおおおお」

痛みに苦悶の声を挙げるコッドイマジン弟。

お互い通り過ぎ、向き合うかたちになる。

この場合、先に切り込んだほうが勝ちとなる。

クライマックス電王が上段で構えを取ってから振り下ろす。

コッドイマジンは振り下ろされるDソードを剣で受け止めるが、パキンと折られて左肩にDソードの刃が届くことを許してしまう。

 

「必殺!俺達の必殺技!!」

 

モモボイスでそう発すると同時に、Dソードの刃が赤色、青色、金色、紫色のフリーエネルギーがオーラソードに伝導されていく。

時折、オーラソードから稲妻のようなフリーエネルギーが溢れている。

バチバチと音が鳴るところが、斬られる側にとってはたまったものではないのだが。

 

「クライマックスバージョン!!」

 

そのまま袈裟斬りをしてから、Dソードの構えを変えてから逆袈裟でもう一度斬りつける。

「ぐうおおあああ。兄ちゃあああああああん」

コッドイマジン弟は外部からのフリーエネルギーに耐え切れなくなって爆発した。

「弟よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

遺された兄は弟の死を悼みながら叫んだ。

「残るはテメェ一匹だぜ?」

Dソードを右肩にもたれさせながら、クライマックス電王はコッドイマジン兄を煽る。

「ぐっうううう。貴様ぁ、よくも弟を!!」

コッドイマジン兄は二丁の銃の銃口を向けて、引き金を絞りながらクライマックス電王と距離をとる。

接近戦で戦って勝つ事は無理だと判断したのだろう。

「行くぜ行くぜ行くぜぇ!」

クライマックス電王は避けることができる弾丸は避けながら、コッドイマジン兄との間合いを詰めていく。

そして、左袈裟斬りから右薙ぎ、左薙ぎへと斬激箇所を素早く斬りつけていく。

「ぐおおおおお」

よろよろと後ろへと下がっていく。

「ええい!くそぉ!」

ダメージを受けた箇所を押さえながら、コッドイマジンは海へと飛び込んだ。

勢いよく飛び込んだが、飛沫はさほどあがっていない。

「へっ!逃がすかよ!」

クライマックス電王はコッドイマジンが逃げていると思われる海を睨んでから、パスを取り出してデンオウベルトに装着されているケータロスのボタン中央に大きくある円型のボタン---チャージアンドアップスイッチを押してからターミナルバックルにパスを展開してからセタッチし、更にパスを閉じた状態でセタッチした。

「チャージアンドアップ」

電子音声が発するとその直後に、デンオウベルトからDソードの柄部分を経由してフリーエネルギーがオーラソードへと伝導されていく。

一定量伝導されると、クライマックス電王はDソードを両手で持って、正眼と違い、騎士が構えるような構えを取る。

「俺の必殺技、パート3!」

オーラソードがデンガッシャーから離れ、デンガッシャーとオーラソードはフリーエネルギーの糸のようなもので繋がっている状態になった。

釣竿のようにして振り下ろす。

オーラソードがコッドイマジンを追尾する。

「ぐおっ」

「うええっ」

などという声がするところからオーラソードがコッドイマジンにダメージを与えているということだろう。

飛沫が上がり、そこからドリルのように回転しながらコッドイマジンを押し上げているオーラソードが現れた。

オーラソードは海中から出て、一定の高さまでコッドイマジンを押し上げるとデンガッシャーへと再連結される。

Dソードを構えて、クライマックス電王は跳躍する。

 

「とみせかけてストレートど真ん中!クライマックスバージョン!!」

 

叫ぶと同時にDソードを振り下ろしてコッドイマジンに直撃させ、エネルギー許容量を超えたために空中で爆発した。

爆煙からクライマックス電王が抜け出て、見事に着地した。

 

イマジン二体が滅び、クライマックス電王がデンオウベルトを外して野上良太郎、モモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロスへと戻っていった。

誰もが良太郎とモモタロスの帰還を喜ぼうとした瞬間の事だった。

突如、なのは、ユーノ、クロノに向かってオレンジ色の魔力光が飛んできた。

飛ばしたのは空中でオレンジ色の魔法陣を展開し、オレンジ色の光球を溜め込んでいるアルフだった。

「おい良太郎!アイツ空飛べるのかよ!?」

「一度だけだったから忘れてたけどアルフさん、空飛べるんだった」

モモタロスの問いに良太郎は自身もさっき思い出したように答えた。

「フェイト!良太郎!退却するよ!」

アルフの一声でその場にいた面々は今この場で何をすべきなのかを思い出す。

アルフはもう数発、魔力光を放つ。

フェイトはタイミングを見計らって、宙に浮いているジュエルシードを回収するために浮揚した。

アルフの放った魔力光が地に激突して、砂煙が立ち始める。

砂煙を回避するために、なのは、ユーノ、クロノはその場から離れる。

フェイトはそのまま左手を伸ばしてジュエルシードを取ろうとする。

だが、

青色の数発の魔力光がフェイトに向かっていった。

数発がフェイトに直撃し、フェイトは急速に落下していく。

アルフが落下するフェイトより速く、地上に移動して背中で受け止めた。

「ア、アルフ……」

「フェイト、大丈夫かい?良太郎!いるんだろ?逃げるよ!」

アルフはフェイトの安否を気にしながら、良太郎を呼びかける。

砂煙が晴れていき、その場にいた者達の視界がクリアになっていく。

クロノが杖の先端をフェイトに向けていた。

先端から魔力が収束されていた。

「フェイトちゃん、アルフさん。行って!」

クロノの前に両腕を広げた良太郎が立った。

なのはもまた、同じようにして立ちふさがった。

「やめて!撃たないで!」

二人が立ったことでクロノはフェイトアルフを狙えなくなった。

「………」

クロノは構えていた杖を下ろした。

フェイトとアルフはこの機会を逃すはずなく、その場から去っていった。

なお、今回のジュエルシードを入手したのはクロノである。

 

「おいカメ!これどうなってんだよ!?」

「イマジンが出てきてしばらくは共同戦線ってかたちになってたんだよ」

砂煙が晴れ、何故手を取り合ってる状態からいきなり戦闘になったのかわからないモモタロスは、ウラタロスに訊ねた。

「あの黒いのも、もしかして石ころ目当てか?」

「多分な。俺らもようわからんのや。なのはとあの子供の戦闘を止めに入ったりとな。」

クロノのことをモモタロスはキンタロスに訊ねるが、モモタロスが望む回答は得られなかった。

「じくーかんりきょく、て言ってたよ。あの黒いヤツ」

リュウタロスが自分が記憶している事を良太郎とモモタロスに教えた。

「時空管理局だって」

「良太郎、知ってるのかよ?」

モモタロスを筆頭に他のイマジン及びなのはやユーノまで集まっていた。

「フェイトちゃんがそんなことを言ってたな、と思ってね」

「で、それは何なんだい?」

ウラタロスも答えが知りたいようだ。

「警察みたいなものだと僕は解釈しているけどね」

「「「「「なるほどぉ」」」」」

モモ、ウラ、キン、リュウ、なのはは頷いた。

「え?みなさん。今のでわかるんですか?」

ユーノは時空管理局に関する知識は恐らく、クロノを除いて一番知っている。

自分が説明するより早く、良太郎なりの解釈で頷く面々に驚いた。

「まあな」

「長い説明よりはわかりやすいよ」

「知ってるもので例えてくれるのはありがたいで」

「良太郎は偉いんだよ!」

「凄くイメージしやすかったです!」

イマジン四体となのはは良太郎を大絶賛した。

「あ、ありがとう……」

良太郎は照れ隠しに頬を掻いている。

「良太郎さん、説明ありがとうございます」

ユーノは単純な説明で人を納得させる事が出来る良太郎に敬意と感謝を持って礼を言った。

「いえいえ・・・・・・」

「あー、君達。盛り上がっている所申し訳ないんだが……。僕の話というより、僕の上司の話を聞いてほしいんだ」

クロノがその場から数歩離れると、宙に描かれている魔法陣に一人の女性が映像のように映っていた。

「誰?あの美人」

ウラタロスが女性を見た瞬間に口説こうとしていた。

「「テメェ(オマエ)は黙ってろ(とれ)!」」

モモタロスとキンタロスが魔法陣に向かおうとしているウラタロスを取り押さえた。

「ちょっと!センパイ、キンちゃん!?」

「カメちゃんのスケベー!」

おしおきなのかリュウタロスが取り押さえられているウラタロスの頭をペシペシと叩く。

「ごめんね。続けて」

良太郎がクロノに謝ってから促した。

「なかなか愉快な方達に囲まれているのね。貴方」

女性が穏やかに率直な感想を述べてくれた。

「はあ……いつもこんな感じです」

女性の感想をどう受け止めたらいいのかわからない良太郎。

「貴方達にはこれから私達の艦『アースラ』へ来てもらいます。色々と聞きたいことがあるし、ね?」

口調は柔らかだったが、任意ではなく強制だと誰もが感じた。

「どうする?良太郎」

モモタロスが耳元で他者に聴こえないように訊ねてきた。

「行こう」

即答した。

 

アースラに転送された良太郎、なのは、イマジン四体、ユーノはクロノの背中を追うようにしてついていった。

良太郎は歩きながらも周囲を見回す。

映画で見るような狭苦しい感じがしていると思ったのだが、内装が想像していた以上に広かったのには声には出さないが、驚いていた。

ちなみになのははまだ、バリアジャケットのままである。

イマジン四体は珍しいのか周囲をキョロキョロしている。

ユーノはなのはの肩には乗らず、てててと四本足で歩いてた。

どこかの部屋の前になると、クロノは歩む足を止めて後ろを向き、なのはに言う。

「いつまでもその格好じゃ、窮屈だろう?バリアジャケットとデバイスは解除して平気だよ」

なのはその言葉に従い、解除した。服装は聖祥学園の制服姿へと戻る。

それからクロノはユーノを見る。

「君も元の姿に戻ってもいいんじゃないか?」

クロノに言われて、ユーノは何かを思い出したかのような顔をしていた。

その直後、ユーノは身体全身を輝かせていた。

やがて姿がハッキリすると、なのはとイマジン四体は驚きの声をあげずにはいられなかった。

「貴方は驚かないのか?」

「まあ、コレより異常なことを体験したりしているから特に、ね」

一人驚かない良太郎にクロノは訊ねてきた。

良太郎は過去の体験を思い出しながら苦笑いを浮かべて答える。

ユーノ、なのは、イマジン四体はまだ騒いでいた。

「艦長に会う前に僕個人として訊きたい事がある。貴方と逃亡した二人の関係は?」

プチ事情聴取と良太郎は判断した。

「家主と居候、かな」

良太郎は『真実』は隠したが、『嘘』は言っていなかった。




次回予告

第三十話 「容疑者!?野上良太郎」


あとがき
今回から新章に突入します。
そして、時空管理局の登場です。

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