仮面ライダー電王LYRICAL   作:(MINA)

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第二話を投稿します。

この話から電リリが始まったといってもいいのかもしれませんね。




第二話 「俺、別世界でも参上!!」

満月が妖しく光を魅せている夜。

金髪で黒いマントを羽織り、右手に鎌のような杖を持った少女---フェイト・テスタロッサは、獣耳で尻尾を生やしている少女---アルフと共に、先程自分達を通り過ぎた非常識な列車を追いかけていた。

夜空を鳥のように飛んで追いかけている自分達もこの世界の人間達からしたら立派な非常識なのだが。

「ねえ、フェイト」

「どうしたの?アルフ」

アルフは腕を組んで、考えていた事を声に出すことにした。

「あたしらのこの世界の知識ってさ。やっぱり古いのかな?」

アルフがこのようなことを言うのは、間違いなく先程の非常識な列車を見たからだろうとフェイトは推測した。

実際、自分も少しだけアルフと同じように考えていたからだ。

「・・・・・・アレは違うと思うよ。アルフ」

とフェイトは自分に言い聞かせるようにしてアルフに言った。

「!!、ジュエルシードの気配がさっきから同じ場所で留まってる?」

「どういうことだい?フェイト」

「多分だけど、あの列車が何処かで停車してるんだと思う」

フェイトは速度を緩めずに自らの仮説をアルフに話した。

「何処かって何処なんだい!?フェイト」

フェイトは目を閉じて、ジュエルシードの気配を探り、右手の杖でその場所を指差す。

高層ビルだ。

「あのビルから全く動いていない。あそこにあるよ。急ごうアルフ!」

「あいよ!」

二人は飛行速度を更に上げた。

 

二人がその高層ビルに到着した時には、その列車は現れた時と同じように空間の揺らぎでできた穴に向かって、線路を敷設しながら直進していき、空間の揺らぎがなくなると同時にその姿を完全に消してしまった。

「あー!!くそっ!一足遅かったってわけかい!!」

アルフは心底悔しそうに空中であるにも関わらず、地団駄を踏んだ。

対してフェイトはというと、

「・・・・・・動いていない?」

フェイトは今の状況をもう一度整理する。

あの列車からジュエルシードの気配は確かにした。

列車は何処かに消えたというのに、高層ビルからは気配が続いたままだ。

それはつまり、ジュエルシードはあの列車の中に転がっていたり、車体にめり込んでいたりするのではなく、列車に乗っている誰かが持っているという事になる。

そして、列車は消えてもジュエルシードの気配は依然あの高層ビルからするということは・・・・・・

高層ビルにはジュエルシードを持った誰かがいて、列車はその誰かを高層ビルで降ろすために停車していたことになる。

そこまでわかると、フェイトは次に自分が取るべき行動に出た。

ゆっくりとだが、高層ビルに近付いていく。

「あ、ちょっと待っとくれよ。フェイトー」

アルフもゆっくりとだが、フェイトの後を追う。

高層ビル屋上の全容が肉眼で捉えることができる距離まで来た。

「・・・・・・人?」

「人だねぇ」

屋上には人が一人いた。

「・・・・・・あの人からジュエルシードの気配がする」

「ホントかい?」

アルフは確認するかのように尋ね、フェイトは首を縦に振る。

「アルフ」

「あいよ!」

フェイトは杖---バルディッシュを握る力を強め、アルフは指をパキポキ鳴らしながら屋上にいる人物からジュエルシードを奪うタイミングを窺うことにした。

(ごめんなさい)

という謝罪の気持ちを秘めて。

 

 

「それでは、良太郎君。宜しくお願いしますよぉ」

「良太郎ちゃん。頑張ってください!」

とオーナーとナオミに見送られてから、野上良太郎はデンライナーから降りた。

降りた場所は高層ビルの屋上で、デンライナーは良太郎が降りるとドアが閉まり、線路を敷設しながら揺らいだ空間に直進していった。

デンライナーを見送ると、良太郎はズボンと上着のポケットの中に入っている二つのものを取り出した。

ひとつは財布で、この世界でのお金が入っている。何をするにしても先立つものは必要だという、オーナーの粋なおはからいだ。ちなみに財布の中には百万円入っていたりする。

もうひとつは、今回この世界のこの時間に来る原因となった青い石---ブルーストーンだ。

それ以外に持ってきている物といえば赤色の携帯電話---ケータロスと、黒色のパス---ライダーパス(以後:パス)だ。どちらもこれからの行動、というよりも時の運行などでは必ず必要になる必需品だ。

ブルーストーンを上着の胸ポケットに、財布をズボンのポケットに入れてから良太郎は今からのことを考えていた。

周囲をまず見回す。

満月の輝く夜で、夜なのに空には曇り空の時と違う明るさがある。

ビルの下を恐る恐る見る。高所恐怖症ではないが、夜ということも相成って恐怖心がひょっこりと顔を出しているので、そんな動きしかとれなかった。

夜といっても殆ど深夜といってもいいくらいの時間帯なので、自動車などは全く走っていなかった。

「とにかく、モモタロス達と合流しなくっちゃ」

まずは、先にこの世界に来ているモモタロス達と合流することを考えた。先に来ている以上、自分よりこの世界やブルーストーンの事を知っているかもしれないという考えだ。

ケータロスを取り出し、モモタロス達に連絡しようとした時だ。

ケータロスが専用の着メロを鳴らし出した。

良太郎は通話ボタンを押して、耳にあてる。

「もしもし」

とお決まりのことを言うと、

『良太郎。俺だ俺!』

と聞き覚えのある声だった。

「モモタロス」

良太郎は声の主の名を口にすることで、心の中で安心感が生まれた。その証拠に笑みを浮かべている。

『オマエもこっちに着いたのか?』

「うん、さっきね。それよりモモタロス達は今何処にいるの?」

『ん、ああ。俺達はな。翠屋っていう喫茶店にいるんだ。っておい、クマ!そのケーキは俺のだろうが!!って小僧!テメェも人の分取ろうとすんじゃねぇ!!』

それからすぐにモモタロスの声がしなくなり、通話が切れた。

キンタロスとリュウタロスから自分の取り分となるケーキを死守するために通話を切ったのか、それともコハナに「うるさい!!」と言われて腹を殴られて痛みのあまりに声が出なくなり、通話が切れたのだろうかと良太郎は想像し、失笑した。

それからまた数秒後にケータロスが鳴った。

「モモタロス?」

と先に声を発した良太郎。

相手はというと、

『あー、悪ぃ。俺だ』

モモタロスだった。

「ハナさんに殴られた?」

『……あのコハナクソ女め』

とコハナに対して、恨み言のような声を漏らした。

「・・・・・・やっぱり殴られたんだ」

『うるせえ。そうだ良太郎。オマエに言っておかなきゃならねぇことがあるんだ』

「言っておかなきゃならないこと?」

苦笑を浮かべていた良太郎の表情が真剣なものになる。

『ああ、オーナーのオッサンから青い石ころ貰ってねぇか?』

良太郎は上着の胸ポケットからブルーストーンを取り出す。

「うん。貰ってるよ」

『それの本当の名はジュエルシードだとよ。どうやら持ち主の願いを叶えてくれる石ころらしいぜ』

良太郎の頭の中ではブルーストーンという名称は消去され、ジュエルシードという名称に書き換えられた。

「誰から聞いたの?」

『ユーノとかいうしゃべる変なネズミじゃなくてイタチでもなくて、ええと確かフェレットにだ』

「この世界じゃ動物が言葉を話すの?」

『いんや、コイツだけじゃねぇのか。小僧なんて飼い主のなのはと一緒に猫かわいがりだぜ』

「そうなんだ」

良太郎はリュウタロスがそのフェレットを可愛がっている姿を想像して真剣な表情からまた笑みを浮かべる。

『んじゃ、翠屋で会おうぜ良太郎。まだ、話すことはあるしよ』

「うん、わかった。それじゃねモモタロス」

通話が切れて、良太郎はケータロスを折り畳んでズボンのポケットに入れた。

「さてと、とにかくここから動こう。何か嫌な予感がしてきたし・・・・・・」

野上良太郎には不運の他に、もうひとつ天から与えられし才能がある。

それは、悪い事限定の第六感で、今までこの第六感がはずれたことは一度もない。

そして、この予感を感じる時の殆どがとんでもなく厄介なことの前触れだったりする。

一番代表的なものといえば、モモタロスと初めて出会ったときだろう。

あの時もこんな予感がしたことは今でも憶えている。

確かに厄介事に巻き込まれた事は事実だが、それだけではなかった。

それ以上に得たものもあるからだ。

苦楽を共にできる最高の仲間と、自分の周囲に起こった出来事の『真実』だ。

この二つを得た時はこの第六感も悪くないな、と考えたこともあった。

それからは「嫌な予感」と口には出しても、否定的に考えることはなくなった。

訪れたなら訪れたで、それを受け止めて場合によっては徹底的に戦う覚悟ができたからだろう。

もちろん、今から何か厄介なことが起きても戦う覚悟は出来ている。

目を閉じ、深呼吸をしてから非常階段に向かう。

今日はどこかの安ホテルで一泊過ごし、明日の朝にモモタロス達がいる翠屋に向かおうと良太郎は考えていた。

距離にして十メートル程の距離になった時、満月の空から良太郎の前に何かが降りてきた。

 

 

フェイトとアルフはジュエルシード所持者である青年の前に立ち塞がった。

フェイトは青年を一瞥する。

身長は自分はもちろんのことアルフよりも高く、顔立ちも端正な部類に入り、全体的には優しそうな雰囲気がする人だと感じた。

(この人にはいろいろと聞きたいことがあるけど・・・・・・)

フェイトは青年を前にして自らの知的好奇心を満たしたかったが、優先すべきことを忘れてはいない。

バルディッシュから黄金色をした鎌のような刃を出現させて、バルディッシュサイズモードにする。

隣にいるアルフも拳を作って構えを取る。

青年は状況を呑みこめているような呑みこめていないような表情をしていた。

はっきりいえば表情から何を考えているかを読み取ることは出来ない。

(ごめんなさい)

心の中で二度目の謝罪する。

自分達がこれから行うことは完全に強盗だ。

目の前の青年を気絶させてジュエルシードを奪うのだから、それ以外に言いようはない。

「ごめんなさい」

フェイトは小さな声だが、青年に謝罪の言葉を告げるとそのままバルディッシュを構え、青年に向かって駆け出した。

 

「ごめんなさい」

目の前にいる金髪少女がそう小声で言ったような気がした。

「え?」

正確に聞き取れたわけではないので、良太郎は聞き返そうとした。

だが、金髪少女から来たものは台詞ではなく黄金色をした鎌による攻撃だった。

良太郎は咄嗟の判断で後方にリズミカルなステップで下がる。

コンクリートの地面は穿たれていて、穴が開いていた。

(避けてなかったら僕の頭、こんなになってたんだ)

穴を見て、良太郎は一瞬青ざめるがすぐに気持ちを切り替える。

金髪少女は振り下ろした鎌をもう一度構え直す。

そして、また良太郎に狙いをつけて駆け出す。

首元を狙ってきての攻撃は瞬時にしゃがんで避ける。

「ちょ、ちょっとぉ!」

そのままだと確実に上段からは格好の的なので、すぐさま態勢を整えて金髪少女に背を向けて間合いを開けることにした。

全力で走りながら少女を見る。

この世界に来て早々、何故自分が襲われるのか見当がつかなかった。

だが、金髪少女は自分を狙っている。

良太郎は自分が誰かに恨みを買っているのではないかと考えたが、すぐに取り消すことにした。

理由としてはまずこの世界で自分は恨みを買うほど何もしていないからだ。来てまだ一時間も経っていない上にこの世界の住人とトラブルを起こしてもいないのだから当然といえば当然だ。

では、なぜこの金髪少女は自分に襲い掛かってくるのだろうか。

怨恨ではなく物取りだと仮説を立てる。

物取りを前提に考えると、彼女がこのような行動を起こすほど欲しがっている物を自分は知らず知らずの内に持っているのではと考えることが出来る。

良太郎は現在、所持している品を思い浮かべる。

財布(オーナーから貰ったもの)

パス。

ケータロス。

そして、ジュエルシードの四つだ。

その中で、現在自分に攻撃を仕掛けてくる金髪少女と先程から一向に戦闘に参加しようとしないもう一人の獣耳少女が欲しがるような物を想像する。

パスとケータロスは真っ先に違う。

この二つは使う場面が限られているため、強盗をしてまで手に入れるほどの価値はない。

財布も、違うだろう。

これは過去に何度も経験しているから間違いない。

で恐喝をする人間は皆、共通して下卑た笑みを浮かべて無駄に凄むものだからだ。

金髪少女はその二つを使わずに、自分に襲い掛かってきたから違うと断言できた。

三つが違うとなれば、残り一つこそが彼女が強盗まがい《こう》までして欲しがるものだ。

良太郎はジェルシードが入っている上着の胸ポケットを押さえる。

そして金髪少女を見ようとするが、正面にはいなかった。

「それを渡してください」

背後から声がしたので、振り向くと宙を浮いている金髪少女がいた。

彼女の瞳と自分の瞳が合った。

綺麗な瞳だと思った。だが、同時に何か影があるようにも思えた。

押さえていた胸ポケットから手を離し、ゆっくりと下がる。

だが、後ろには獣耳少女が腕を組んでいた。

(完全に挟み撃ち、だよね……)

前門の金髪少女に後門の獣耳少女だ。

「あのさぁ、アンタ」

後ろの獣耳少女が声をかけてきた。

「渡してくんないかなぁ。痛い思いしたくないでしょ?」

獣耳少女は愛想を振りまいて脅してきた。

良太郎の背中に悪寒が走った。

ジュエルシードを渡せば、この場は万事解決になるだろう。

しかし、それでいい筈がない。自分はまだ、この石の事を何一つ知らないのだ。

今助かりたいために渡してしまえば必ず後悔する。

「悪いけど、渡せない」

良太郎は、静かに、だが意思を込めて金髪少女と獣耳少女に言った。

「・・・・・・アルフ」

金髪少女は獣耳少女に戦闘に参加するようにアイコンタクトをする。

「あいよ。フェイト」

アルフと呼ばれた獣耳少女はフェイトと呼んだ金髪少女のアイコンタクトを受けて頷いた。

良太郎は二人を交互に一瞥する。

二人の動くそぶりのようなものが見えない。

だが、二人の意図のようなものは何となくわかる。

自分が逃げの素振りを見せたら確実に挟み撃ちで仕掛けてくるだろう。

完全に八方塞だと良太郎が感じた時だ。

ケータロスが着メロを鳴らし出した。

フェイトとアルフは静かな中でいきなり出したメロディーに緊張の糸が切れかけた。

二人の意識が自分に向いていないとわかると良太郎はケータロスを取り出して開き、コールボタンを押す。

『よぉ、良太郎。俺だ俺』

モモタロスだった。

「どうしたの?モモタロス。今、僕ちょっと立て込んでるんだけど・・・・・・」

『いやあ、翠屋の場所教えてなかったからよ。教えとこうと思ったんだけど、今オマエ何処にいるんだよ?』

「さっきと同じ所なんだけど・・・・・・」

良太郎は苦笑いを浮かべて答える。

『はあっ!?オマエ何やってんだよ!?』

「だからちょっと立て込んでるんだって、さっき言ったじゃん」

モモタロスが呆れている事は声色でわかった。

『んでよ、その立て込んでる事ってのはおまえ一人で何とかなんのかよ?』

モモタロスは電話越しだが、自分の安否を気遣ってくれた。

恐らく、自分が戦闘に巻き込まれていることもおおよそ予想しているのかもしれない。

「できるなら、一人で何とかしたいけどね。でも・・・・・・」

『でも、何だよ?』

「戦うしかないと思う」

『・・・・・・・俺はいつでも準備いいぜ。良太郎』

そう言って、通話が切れた。

良太郎は意識を集中する。

自らの内に存在するエネルギーの一つである『チャクラ』を利用して、あるものを実体化させる。

良太郎の腰に出現したのは銀色のベルト---デンオウベルトだ。

完全に巻けている状態ではないのできちんと巻く。カチリという音がした。

ポケットからパスを取り出した。

もう一度、フェイトとアルフを見る。

二人共、緊張の糸をもう一度張りなおしたようだ。

「モモタロス、行くよ」

良太郎は真剣な表情で、ここにはいないイマジンに同意を求める。

「おう!」

と威勢の良い声が聞こえた気がした。

デンオウベルトのターミナルバックルのそばにある四色のフォームスイッチの赤色を押す。

専用のミュージックホーンが流れ出す。

「変身!!」

叫ぶと同時に、良太郎はパスをデンオウベルトのターミナルバックルにセタッチ(セット&タッチの略)した。

「ソードフォーム」とデンオウベルトが音声を発すると同時に姿が変わり、黒を基本とした電王プラットフォーム(以後:プラット電王)に変身する。

その直後に、プラット電王の上半身の周りにオーラアーマーというイマジンのオーラやフリーエネルギーで構成された鎧が宙に現れ、一周した後にそれぞれの部位に装着される。

最後に果物の桃をモデルとした仮面---電仮面が眼前に走り、仮面の形になっていく。

自らを右親指を立てて指し、そして左手を前に右手を後ろにして歌舞伎役者のような大仰なポーズを取ってから電王ソードフォーム(以後:ソード電王)は荒々しく自信を持って、吼える。

 

「俺、別世界でも参上!!」

 

と。

 

 

 

 

 

 




次回予告

第三話 「電王と魔導師と使い魔と」



あとがき

みなさん、お久しぶりです。
皆大好です。
最近、本当に寒くなってきており朝起きるのが正直つらかったりします。
今回は第二話を投稿しました。
「にじファンの頃から読んでいたので、こちらに登録した」と聞いたときはすごく嬉しかったです。
(自分はそのような経験はないので)
さて、この電王LYRICALですがサイトで掲載しているものと違いはありません。
唯一の違いはこちらでは常にあとがきが書かれているくらいですかね。
次回の掲載予定は2013/11/17としています。つまり明日ですね。
それでは第三話でお会いしましょう。
皆大好でした。

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