仮面ライダー電王LYRICAL   作:(MINA)

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予告を守れずすみませんでした。

第十七話を投稿します。


第十七話 「子供を泣かす奴は俺が泣かす!!」

ジュエルシードを一個、海鳴温泉街の林の中で入手し、相手魔導師との戦闘に勝利して更に一個を手にする事ができた。

これだけ良い事が立て続けに起これば、当人が意識せずとも『油断』が生じるものである。

それは普段から慎重にかつ迅速に行動する少女---フェイト・テスタロッサも例外ではなかった。

眼前に立ちはだかる怪人にとってはそれが獲物を狩るための最大の機会でもあるのだが。

フェイトが怪人の狙いを理解したのは眼前の怪人が自前の爪を振り下ろしたときだ。

「しまっ……はあっ!!」

バルディッシュで爪を受け止める。

「ぐっ、うううう」

だが、フェイトの顔は苦々しげな表情を浮かべていた。

爪を受け止めるためのバルディッシュも小刻みに震えている。

これはバルディッシュが震えているのではなく、握っているフェイトの手が震えているのだ。

怪人の一撃がフェイトが支えられる重量を超えているからこそ起こる事だ。

(もう……限界!)

力負けしている以上、押し出して下がることもできない。

となれば怪人が攻撃してくるときが最大の機会だ。

「このぉ、ガキの癖に粘りおってぇ」

焦れ始めた怪人は今まで使っていなかった左爪を使い始めた。

フェイトの右脇腹を狙う。

(来た!!)

フェイトは怪人が自分の右脇腹を狙ってくる事を目できちんと捉え、

「は、速……うわああああああああ」

られずにもろに食らってしまい、左へと飛ばされた。

受身もとっさに魔法で回避する事も出来なかったため、地面を滑るかたちで倒れる。

右脇腹辺りのバリアジャケットは裂かれているが、フェイト自身は裂傷を免れたのか一滴も出血していなかった。

「う、うううう」

バルディッシュを支えにして立ち上がる。幸い顔には傷はないが少々汚れていた。

「これが、イマジン」

顔の汚れを手で拭いながらイマジンを睨みつける。

対してイマジンはというと余裕な態度でフェイトの視線を受け止めていた。

「サイズモード」

バルディッシュが機械音声で発すると同時にデバイスモードからサイズモードへと切り替わる。

金色の魔力で構築された鎌の刃が出現する。

「ほぉ、それで俺と戦おうってのか?」

イマジンはまだ余裕の表情を崩さない。

「フェイト!」

獣姿のアルフが林の中から出てきた。

「アルフ、上手くあの三人から逃げ切れたんだね」

フェイトは使い魔であり、相棒であるアルフの姿を見て胸を撫で下ろすと同時に、心強い味方を得た気分だった。

転移魔法で別の場所に飛ばされただけなら、何とかなるから特に心配はしていなかった。

だが、共に転移したのが使い魔的フェレット以外に野上良太郎の仲間であるイマジン二体も一緒なのだから心配だった。

何せ、戦闘能力が未知数なのだから心配になるのは当然だろう。

「まぁね。でも思った以上にしつこかったから、来るのに手間かかっちゃったよぉ」

アルフは獣姿から人型へと変身する。

「コイツが良太郎が言ってたイマジンってやつかい?」

アルフがイマジンを睨みつけながら指をパキポキと鳴らす。

「気をつけてアルフ。魔導師と一緒だと思って戦うと痛い目に遭うよ」

そう言いながら、フェイトは先程の攻撃で裂かれたバリアジャケットの右脇腹部分を見せる。

「バリアジャケットを裂くだけの力があるってワケかい?」

「うん」

フェイトとアルフはイマジンを睨み、戦闘態勢を取っていた。

 

高町なのははフェイトに忠告された後、林の中へ彼女が溶け込んでいく姿をただ黙って見送っていた。

正確には追いかけようと思ったのだが、フェイトが放つ拒絶の気配に立ち入る事が出来ず見送るしかなかったというのが実情だったりする。

「あれー?カメちゃん、フェレット君。ワンちゃんじゃなくて、なのはちゃんがいるよ」

林の中から出てきたのは頭にフェレットを乗せた紫色のイマジン---リュウタロスだ。

「うーん、どうやら巻かれたみたいだねぇ。釣りでいうなら餌を食いちぎられた気分、かな」

続いて青色のイマジン---ウラタロスがキザな台詞を言いながら出てきた。

「なのは、一人?こっちにあの使い魔来てない?」

リュウタロスの頭に乗っかっているフェレット---ユーノ・スクライアがなのはに訊ねる。

「ううん、来てないよ」

なのはは正直に答えた。

「そっか」

ユーノはなのはに危害がなかったことに心底安堵していた。

「みんな!」

「オメェら!」

「なのは、ユノ助(ユーノのこと)、カメの字、リュウタ!無事やったみたいやな」

別の林の中から聞き覚えの声がしたのでなのは、ユーノ、ウラタロス、リュウタロスが顔を向ける。

出てきたのは青年と少女と赤色と金色のイマジンだ。

「良太郎、モモタロス、ハナちゃんにクマちゃんだ!」

見知った顔を見て、リュウタロスが名を言うことで場の雰囲気に和みの空気が漂い始めた。

「……あの、ユーノ君。ごめんね。その……ジュエルシードを一個渡しちゃった」

なのはは自身の不手際でジュエルシードを相手側に渡してしまった事をユーノに詫びた。

「仕方ないさ。相手がなのはよりも上手

うわて

だったんだから。それよりも、そんな魔導師相手に殆ど無傷で済んだんだから僕としてはよかったくらいだよ」

ユーノは首を横に振ってなのはを責めずに、無事だった事を喜んでいた。

一人と一匹によってその場の雰囲気が本格的に和みつつある頃。

「ん?」

「どないしたんや?モモの字」

赤色のイマジン---モモタロスが鼻を犬のようにクンクンしていた。

「良太郎、あっちにイマジンがいるぜ」

漂っていた和みの雰囲気を一瞬にして吹っ飛ばした。

その一言で場にいる全員が真剣な表情になった。

「あっちって……確か!」

モモタロスが指差す方向を見ていちはやく反応したのはなのはだった。

「良太郎さん!」

なのはが焦りが混じったような表情で声をかけた。

「なのはちゃん?」

良太郎には何故、なのはが何故焦りの色を浮かべているのかわからなかった。

「あっちの方向にはフェイトちゃんがいるんです!」

「何だって!?それ本当?」

なのはは自信を持って首を縦に振る。

「急ごうぜ!良太郎」

モモタロスが促す。

「うん!」

良太郎もフェイトがいる方角を睨む。

「よっしゃ、ここは俺の出番やな」

金色のイマジン---キンタロスは腕を組んで、同行する意思を表示する。

「あの、良太郎さん!」

これから向かおうとしている良太郎を呼び止めたのはなのはだった。

「わたしも、わたしも連れてってください!」

「なのは、もしかして……」

なのはの行動の目的を理解したユーノはなのはに確認するように訊ねようとする。

「それはダメだよ。なのはちゃん」

ユーノが訊ねようとする前になのはの申し出を拒否したのは良太郎だった。

「なのはちゃんはフェイトちゃんとの戦いで疲れてる。それに、時間が時間、だしね」

良太郎はそう言いながら、なのはに腕時計を見せる。

「あ……」

時刻を見てなのはは苦しい表情を浮かべる。

既に翌日になろうとしている時間だった。

正当な理由があって抜け出したとしても、叱責は免れないだろう。

ましてや自分は親友、両親には理由を明かしていない身だ。

帰る道が重くなり始めた。

「良太郎、なのはちゃんの事は僕達に任せてセンパイとキンちゃん連れて行ってきなよ」

申し出たのはウラタロスだ。

「ウラタロス?」

良太郎がウラタロスのいきなりの申し出に首を傾げる。

「この中でご両親と親友二人を納得させる理由をつくれるのは僕だけでしょ?」

「ま、ウラほどこういう役に適任っていないわよね」

コハナは納得していた。

「カメちゃん。お喋り、上手だもんね」

リュウタロスも納得していた。

「でも、わたし……」

なのははそれでも良太郎達と同行する意思を変えようとしない。

「なのはちゃん」

ウラタロスがなのはの前に立ち、しゃがみこむ。

「相手の子を助けたいっていう気持ちは立派だけど、今はダメだよ。釣りでもそうだけど、焦ったっていい事は何一つないよ?」

「ウラタロスさん……」

「なのはちゃん、おじさんやママさん|(桃子のこと)を悲しませちゃダメだと僕、思うんだ」

リュウタロスは自分なりに考えた言葉でなのはを説得しようとする。

なのはは二人の言葉を聞いて心が揺れ、冷静に考え始める。

ウラタロスの言うように、今は気持ちばかりが先走っているだけだ。仮に良太郎達と共に行ったとしても足を引っ張りかねないだろう。

リュウタロスの言うように、いくら正しい事を自分が行っているとはいえ身内を悲しませるのは本末転倒だ。

なのはは魔導師になって初めて自分の未熟さを恥じ、無力を呪った。

「良太郎さん、モモタロスさん、キンタロスさん」

「ん?」

「何だよ?」

「どうした?」

三人がなのはの呼びかけに三者三様の態度をとる。

「えっと、その……わたしが言うのも変なんですけど、フェイトちゃんをよろしくお願いします!」

「僕からもお願いします!」

なのはとユーノがこれから戦場に向かおうとしている三人に頼んだ。

「うん、任せて」

「しょうがねぇなぁ」

「大船に乗ったつもりでおり!」

そう言いながら三人はフェイトがいる方向に駆け出した。

(ユーノ君、どうして?)

念話の回線を開き、頭を下げてくれているユーノに訊ねた。

これは言ってしまえば自分のワガママだ。

それを人に委ねるのだから、頭を下げるのは当然だが、ユーノまでが頭を下げる必要もなければ義理もないはずだ。

(なのはは二回しか遭った事のない、しかも自分に攻撃を仕掛けてきた子の為に頭を下げたんだよ。それなのに僕が何もしないと思う?)

(ユーノ君……)

なのははユーノの気遣いが嬉しくなり、回線を切った。

その後、バリアジャケットから私服へと戻るとウラタロス、リュウタロス、コハナと共に旅館への帰路を辿りながら口裏を合わせる打ち合わせをした。

 

フェイトとアルフは息を乱しながらも、イマジンと戦っていた。

フェイトのバリアジャケットはあちこちが爪で裂かれており、肌が露出していた。

羽織っているマントも新品同様に設えたものでなく、どこか長旅に出て長期間羽織り続けていたように

ボロボロになっていた。

それはアルフも同様だった。

「はあはあ……フェイト!大丈夫かい!?」

使い魔は口元に付いている血を手で拭いながら主の安否を探る。

「だ、大丈夫だよ。アルフ」

そう言っているが、それが強がりというのは言った当人が一番理解していた。

バルディッシュもサイズモードからデバイスモードに戻っていた。

今となっては無駄な魔力消費でさえ、命取りになるとバルディッシュ自身が判断したのだ。

フェイトは眼前の怪人を睨む。

「ジュエルシードをよこせぇ!」

まるで呪いのように先程から同じ事しか言わない。

またフェイトに向かって飛び掛る。

フェイトよりは体力が残っているアルフが行く手を阻む。

イマジンの手から足から繰り出される攻撃をアルフは的確に自身の手足で捌いていく。

「くっ!しつこいねぇ!」

アルフの表情も曇り始めていた。余裕がなくなっている証拠だ。

フェイトはアルフと肉弾戦をしているイマジンを見る余裕が出来たので冷静に考える事にした。

(どうして、このイマジンはジュエルシードを知っているんだろう)

イマジンがジュエルシードを知っている事がフェイトには腑に落ちなかった。

良太郎が以前に教えてくれた事を思い出しながら対峙しているイマジンと照らし合わせる。

イマジンは契約者の望みを叶えることで、契約者が最も強く記憶している過去へと飛び、タイムパラドックスを生じさせることが目的、いや使命だ。

そして、契約者の殆どがイマジンの契約執行方法と想像していた契約執行方法が大きく違っている事実を知り、後悔する事になると言っていた。

(このイマジンの契約者は間違いなく、ジュエルシードの価値を知っている)

『ジュエルシードの価値を知っていてイマジンと契約を交わす』それだけでフェイトにしてみればかなり的が絞れた。

(契約者は管理外世界(ここ)の住人でもないし、良太郎が住んでいる異世界の住人でもない。わたしのいる世界の誰か!)

だが、明確に誰かなんてのはわからない。

「あなたの契約者は誰ですか!?」

フェイトはアルフの右突きを避けながら、左フックを仕掛けようとするイマジンに訊ねる。

フェイトにしてみれば駄目もとだった。

「契約者が誰だぁ?そんなの知らねぇよ」

「え?」

イマジンの返答はフェイトにしてみれば意外なものだった。

彼女が想定していた台詞は「俺がそんな事を喋ると思っているのか?」だったからだ。

「契約者だって、イマジン

俺達

のことをいちいち訊ねずに契約するんだぜ。それと同じだ」

イマジンはアルフと距離を取って自らの返答に付け加えた。

「さてと、そろそろジュエルシードをよこせぇ!」

イマジンがアルフより反応するより速く、フェイトに向かっていく。

「フェイト!!」

アルフが「逃げて!!」という想いを込めて主の名を呼ぶ。

フェイトはというと、

(まずい!やられる!?)

イマジンの魔手に葬られると思ったとき、口が動いた。

「……う」

その声は最初は小さく、余程聴力が発達した者でなければ聞き取れないほどだ。

「りょ……う」

先程よりは大きいが、それでもまだ小さい声だ。

「良太郎」

自分が知る中で今の状況を打破できる人物の名を言う。

イマジンとの距離が限りなくゼロになり、自分の頭上に振り上げられている爪が月の光で輝く。

「良太郎!!」

「ジュエルシード、いただきぃ!!」

フェイトが両目を閉じて叫び、イマジンが爪を振り下ろす。

イマジンの後を追いかけていたアルフは主の無残な姿を見るかもと予想し、目を閉じてしまったときだ。

「「「うりゃああああああああ」」」

「げべえええ」

この場にはない三人の声が突如、フェイトの耳に入りイマジンの声が自分から遠くなった。

フェイトは自分がイマジンの手にかかっていないとわかると、閉じていた瞼を開く。

見慣れた背中がひとつ、あとふたつは赤色と金色の背中だった。

見慣れた背中の人物がこちらに向いてしゃがむ。

「フェイトちゃん、遅くなってごめん。大丈夫?」

「良太郎!」

自分が待ち望んだ人物だとわかるとフェイトは全身から力が抜けた。

 

良太郎、モモタロス、キンタロスはフェイトを襲おうとするイマジンに飛び蹴りを放って距離を開けた。

「フェイトちゃん、遅くなってごめん。大丈夫?」

良太郎はすぐにフェイトの方に向き、安否を気遣う。

「良太郎!」

フェイトは良太郎の顔を見て安心したのかその場に座り込んでしまった。

全身の張り詰めていたものが一気に削がれたのだろう。

「ったく、また犬かよ。今日は厄日だぜ」

モモタロスがこれから戦うイマジンの姿を見てげんなりした。

「ははははは。まっ、今回はモモの字の出番はないっちゅうこっちゃ」

キンタロスはモモタロスの肩を叩きながら言う。

「フェイト、無事でよかったよ!良太郎、アンタ遅すぎるってばぁ!」

アルフが良太郎やフェイトのいる場に駆け寄ってきた。

良太郎の頭を叩いた後、フェイトを抱きしめた。

「ア、アルフ痛いよ!」

抱きしめられたフェイトは力を込めて抱きしめているアルフに抗議する。

「あ、ああ。ごめんよ」

アルフは離れても、フェイトを守るようにして前に立つ。

「しかしまあ、いくら契約のためとはいえ子供を襲うとは許せんなぁ」

キンタロスがイマジンを睨みつける。

「良太郎、このイマジンの目的はジュエルシードだよ」

フェイトは自らが得た情報を提示した。

「契約者に心当たりは……ないよね?」

「うん。誰なのかはわからないけど、わたしが住んでいる世界の住人が契約者だと思う」

「そうなんだ。わかった。アルフさん、フェイトちゃんをお願いします」

良太郎はそう言うと立ち上がり、二人のイマジン同様にこれから戦うイマジンを睨みつける。

既に自らのチャクラで具現化させたデンオウベルトを呼び出し、巻きつけていた。

右手にはパスが握られている。

「良太郎、行くで!」

キンタロスが良太郎の横に並び、股を開いて四股を踏んでいた。

キンタロスが気を引き締める際に行われる仕種だ。

「もちろん!!キンタロス、行くよ!」

良太郎はキンタロス同様に気を引き締める。

「変身!!」

パスをデンオウベルトのターミナルバックルにセタッチする。

プラット電王に変身してから、フォームスイッチの金色を押す。

ソードフォームともロッドフォームとも違うミュージックフォーンが流れ出す。

プラット電王がもう一度、パスをターミナルバックルにセタッチする。

「アックスフォーム」

デンオウベルトが音声で発すると、プラット電王の胸部周辺にオーラアーマーが出現して一周くるりと回る。

回ってからソード電王時に胸部となっていたアーマーは背部に、ソード電王時に背部となりロッド電王時に展開されていたアーマーは閉じたまま胸部へと、肩部もソード電王時のアーマーを前後逆にした状態で装着されていく。

斧を思わせるレリーフが眼前に停まり、外側の左右には「金」の字が象られたパーツが展開して、電仮面へとなった。

電仮面とオーラアーマーが装着を終えると、全身から黄金の色をしたフリーエネルギーが放出された。

キンタロスの力を纏った電王、電王アックスフォーム(以後:アックス電王)が現れた。

「わたし達が戦った時とは姿が違う」

「あたし達と戦った奴は確か、赤色だったよね?」

フェイトとアルフが初めて見たソード電王とにいる今自分達が見ているアックス電王と比べた。

「貴様、何者だ!?」

(え?何で?)

イマジンの台詞に疑問を持ったのはアックス電王の深層心理の中にいる良太郎だった。

「どないしたんや?良太郎」

キンタロスの精神が良太郎に訊ねる。

(以前、ウラタロスと一緒に戦った時のイマジンに名乗ったんだけどね)

良太郎はイマジン同士に何がしかのネットワークがあるのではないかと考えていた。

でなければ、自分の世界にいたイマジン達が電王という名や風体を知る事が出来ないからだ。

だが、この世界のイマジンにはそういったイマジン同士のネットワークがないのかもしれない。

あるならば、先程のような台詞は決して吐かないだろう。

「まったく、しゃあないなぁ。お前に仲間がおるんならどないかして伝えとけ!俺は電王や」

両手をパンと合掌して相撲取りが試合を始める前の構えを取ってから言う。

 

「俺の強さにお前が泣いた!!」

 

構えを解いてから両腰にあるデンガッシャーの内、右と左のパーツをひとつずつ抜き取ってから縦連結させる。

その仕種はゆっくりであり、ソード電王のような派手さはない。

右のツールを腰元から抜き取ってから縦連結させたパーツの一番上に更に縦に連結する。

最後に左腰に余っているパーツを抜き取って、縦連結させた一番上のパーツの横に連結させた。

フリーエネルギーがデンガッシャーに伝導され、斧の刃とも思われるものが出現した。

イマジンはアックス電王の仕種に苛立ちを感じたのか、先手を取るようにして間合いを詰めて右爪で胸部を狙う。

フェイトとアルフはその一撃をまともに食らうのだから、後方に吹っ飛ぶと予想していた。

だが、

「何!?」

イマジンが驚愕の声を上げる。

吹っ飛ぶどころか先程から一ミリも下がっていないのだ。

「そおりゃぁぁぁ!」

右手に握られているデンガッシャーアックスモード(以後:Dアックス)を振り上げて、イマジンの胸元を狙って振り下ろした。

「がああああああ」

あまりの激痛に後方へと下がるイマジン。

アックス電王は走らずにゆっくりとイマジンに歩み寄ろうとしていた。

 

「おいクマ!さっさと片付けちまえ!」

モモタロスが戦っているアックス電王に応援どころかヤジを飛ばしていた。

アックス電王は先程と同じスタイルでイマジンに攻撃をしていた。モモタロスの言葉を左から右へと聞き流しているようだ。

「あ、あのぉ」

フェイトがモモタロスに恐る恐る話しかけてきた。

「あん?何だよ?」

モモタロスが声のする方向に向き、隣に座る。

「貴方達もイマジンなんですよね?」

「ああ、そうだよ。それがどうした?」

モモタロスは別に隠す事もないので素直に認めた。

「その、今戦っているイマジンと比べると何か違うような感じがして……」

「どう違うんだよ?」

「そう聞かれると答えようがないんです。ただそう思っただけなんで……」

「良太郎といる時間が長かったからな。それでじゃねぇのか?」

モモタロスもどう答えたらいいのかわからないのでフェイトには適当に言った。

「おっ、そろそろクライマックスだぜ」

モモタロスがフェイトとアルフに戦いが終盤になってきたので見逃さないように促した。

 

「くっ、契約者の望みは目の前にあるというのに!!」

イマジンは契約を完了できそうにない悔しさとアックス電王に対する憎しみを混ぜた声を発した。

「………」

アックス電王は何も発しない。

「くそおおおおおお」

イマジンが突っ込むがアックス電王の左平手打ちを右頬に食らい、吹っ飛んだ。

(キンタロス、今だよ!)

「わかっとる。そろそろ詰みやな」

パスを取り出し、ターミナルバックルにセタッチする。

「フルチャージ」

ターミナルバックルから音声が発すると、フリーエネルギーがDアックスへと伝導される。

Dアックスの刃にはフリーエネルギーで充填されており、バチバチと音を立てている。

「はあっ!!」

両足を広げ、助走もなしでその場を跳躍する。

跳躍の最高地点に到達するとDアックスを振り上げる。

最高地点からイマジンに向かって落下が始まる。

同時に、Dアックスを下ろしていく。

イマジンの頭に刃が触れると、ケーキを斬るかのように縦一文字に真っ直ぐに下ろしていく。

イマジンは自身の許容範囲以上のフリーエネルギーで真っ二つにされたので耐え切れずに爆発した。

「うおああああああああああ」

と、いう悲鳴を残して。

爆煙が立つがすぐに晴れていき、そこには技を繰り出したままのアックス電王がいた。

「ダイナミックチョップ」

技名を告げると、姿勢を崩してベルトを外す。

外すと同時にアックス電王の形が崩れていき、キンタロスが良太郎の身体から離れた。

「ふぅ。終わったね」

良太郎はその場にいる全員に告げると、フェイトとアルフの元に歩み寄る。

「モモタロス、キンタロス。僕達はこれで」

フェイトに上着を着せると、良太郎はその場から自分達が宿泊している旅館に向かって歩き出そうとする。

フェイトは二人に頭を軽く下げ、アルフもまた主を助けてくれた者達なので渋々だが軽く下げてから、林の中へと向かっていった。

海鳴温泉街(ここ)にあったジュエルシード一個となのはちゃんから奪ったジュエルシード一個、そフェイトちゃんが個人で入手した一個、そして僕が渡した一個を合わせて四個か)

良太郎は夜空を見上げながら、確信した。

 

ジュエルシードを巡っての戦いはこれからが始まりなのだという事を。

 

 

 

 




次回予告

第十八話 「想イ絡マリ」


あとがき

今年ももうすぐ終わりです。
ここ一カ月バタバタしてて執筆ができませんでした。
ここでの投稿もたまにおろそかになってしまいます。
次回の投稿は明日としています。

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