仮面ライダー電王LYRICAL   作:(MINA)

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寒さで風邪をひきかけている皆大好です。

予告通りに第十三話を投稿したいと思います。

本日PSVITAで発売されるSAOの新作を予約してまいりました。

足元見られてます。通常版より高いですね。


海鳴温泉
第十三話 「探し場所は海鳴温泉」


「僕もジュエルシード探し、手伝うよ」

 

対面に座っている野上良太郎の一言がフェイト・テスタロッサの耳に入った瞬間、彼女の心は激しく揺れ動いた。

フェイトは横に座っているアルフをちらりと横目で見る。

良太郎の申し出に自分と同じように激しく心が揺れ動いているようにみえた。

ここは海鳴商店街の焼肉屋。ちなみに三人ともまだ何も頼んでいなかったりする。

「フェイトちゃんのように魔法で探すなんて事はできないけど、それでも一人より二人、二人より三人の方が早く集まると思うよ」

良太郎は激しくもなく、落ち着き払った声色でフェイト達に告げる。

「でも、良太郎。ジュエルシードは……」

フェイトは良太郎の申し出が正直に言えば嬉しかった。だが同時に自分の私情に巻き込んだことに申し訳なく思っていた。

「危険なんでしょ?だったら余計に二人より三人、だよ」

良太郎は語気を荒げることもないが、先程よりは若干押しを強くして言う。

「それはその……そうだけど」

もう一度良太郎を見る。

真剣な眼差しでこちらを一回も逸らさずに見ている。

どうしてこの人はこんなにも親身になってくれるのだろう。

(ど、どうしよう。良太郎を巻き込みたくないって思ってるのに、一緒に探してくれたら嬉しいって気持ちもあるし、どうしよう)

隣の相棒をちらりと見る。

(アルフ、どうしたらいいと思う?)

念話で話しかけることにした。

(あたしとしては、良太郎に手を貸してもらうってのはアリだと思うけどねぇ)

(でも、良太郎は……)

(たしかに魔法は使えないけどさ。ジュエルシードを横取りしようとする奴らからフェイトを守る力はあるしね)

アルフは電王のことを言っているのだろう。あの力なら自分を守ってくれるだろう。

(それに良太郎の顔見て何も気づかなかったわけじゃないだろ?)

(えと……それは、その……)

(良太郎は絶対に考えを曲げないよ。フェイト、自分の本当の気持ちに正直になりなって)

アルフが念話の回線を切った。

(自分の本当の気持ち……)

アルフの最後の一言にフェイトはもう一度自分の気持ちを見つめ直した。

(わたしは……)

良太郎は誠実だし、優しい。それに、自分にはない強さがある。

自分にはない強さというものは電王としてもそうだが、人間としての強さが大部分を占めている。

良太郎と共にジュエルシード探しをしているところをイメージする。

心の中を『安心』が覆った。

とても温かく、優しく、そして安らいだ。

フェイトの心は決まった。

「良太郎」

フェイトは良太郎の瞳を真っ直ぐと見つめる。

「あのね。その……ジュ、ジュエルシードをさ、探すの、手伝ってくれりゅ?」

フェイト自身は気づいていないかもしれないが、実は頬を赤くしてどこかいっぱいいっぱいの表情になっていたりする。

(わたし、何やってんの!?思いっきり噛んじゃってるし!!)

折角、自分の心に正直になって言ったのに。

フェイトはこの時、初めて「穴があったら入りたい」と思った。

「あのフェイトちゃん。大丈夫?」

「う、うん!だ、大丈夫だよ。それより良太郎、その……さっきの返事は?」

「もちろん。喜んで手伝わせてもらうよ」

良太郎は迷いなく笑顔で答えた。

「あ、ありがとう!良太郎!」

「そんな……、頭を下げてもらうようなことじゃないよ。ジュエルシードの事は僕も他人事じゃないからね」

「良太郎?」

「他人事じゃないってどういうことさ?」

フェイトアルフは良太郎の台詞に疑問を浮かべる。

「僕にはフェイトちゃん達にジュエルシードを渡した責任があるからね」

良太郎はそう言うと、メニューを広げた。

「深刻な話はここまでにしてと。さて、何頼む?相当高いものでない限り大丈夫だよ?」

「え、あ、うん。そうだね。アルフ何がいいと思う?」

フェイトは良太郎の切替の早い台詞に促されるようにメニューを見る。

横にいるアルフも上から覗くようにして見ている。

「あんまり高いのはダメなんだったら安くて(あぶら)がのってるヤツがいいねぇ」

「だったらコレにしようよ。値段も安いし脂がのってるしね」

フェイトがアルフに薦めたのはロースだ。

「わたしはコレにしようかな」

フェイトが選んだのはハラミだ。

「僕はコレとコレとコレとコレ、あとはご飯だね」

良太郎が選んだものはフェイトにはメニュー越しなのでわからなかった。

良太郎が付近にある呼び出しボタンを押す。

店員がやってきた。

「あたし、ロース五人前」

アルフが先陣を切った。

「わたしはハラミを三人前で」

店員がそれを伝票に素早くメモしていく。

「僕はタン塩三人前にカルビを五人前、あとレバーとハツを一人前ずつで、ご飯を……、フェイトちゃん達はご飯はどうする?」

「わたしも欲しいかな」

「あたしもいるー」

二人の意見を聞いて良太郎は、

「ライスは三人前で」

と店員に告げてオーダーを締めた。

「かしこまりました」

と店員はお決まりの接客用語を述べてから軽く頭を下げて離れた。

それから十分後にオーダーしたものが全てテーブルに揃った。

「さあて、食べるぞぉ」

アルフの瞳が肉食獣じみた光を帯びていたのをフェイトは見逃さなかった。

「アルフ、はしたないよ。でも、食欲はそそられるね」

フェイトはアルフをたしなめながらも箸を構えている。

「それでは」

良太郎は両手を合わせる。

その仕種をみたフェイトとアルフは釣られるようにして同じ仕種をする。

 

「「「いただきます」」」

 

食材に対する感謝を述べた後、三人は獰猛な獣となった。

 

 

雲が我が物顔に泳ぎ、月が輝く舞台がないと思われる夜。

場所はフェイト達が住んでいるマンション。

良太郎達はテーブルに地図を広げて今後の対策会議が開かれていた。

「それでフェイトちゃん。ジュエルシードを探すってどうやって探すの?このままじゃ海鳴市全土をしらみつぶしに探すしかなくなるよ」

「探索魔法で探るんだ。でも、大まかな場所しかわからないから後は地道に探すしかないけどね」

フェイトはそう言うと、目を閉じた。

精神を集中して探知魔法を発動させて捜索するのだろうと良太郎は判断したのでテーブルから離れることにした。

それから十分くらいが経過してから、フェイトはテーブルに広げていた地図にサインペンで赤マルを付けた。

「良太郎、アルフ。この辺りにジュエルシードがあるみたいだよ」

「えーっと」

「どれどれ」

離れていた良太郎とアルフはフェイトが記した赤マルの場所を見る。

「結構、広いんだね」

良太郎の言うようにフェイトが付けた赤マルは結構広い範囲を指していた。

魔法なしにたった三人で地道に探せば、下手をすれば数ヶ月はかかるだろう。

「ごめんね。家で探索するとなるとわたしの力だとコレが限界なんだ」

「家で、ってことはもし現場に行って探索魔法を使えばもっと場所を絞れるって事?」

良太郎の案にフェイトはというと、

「うん、そうだね。もっと絞れると思うよ」

自信を持って頷いた。

「よーし!目的地がわかったんだ。後は行って探すだけだね!そうでしょ?フェイト、良太郎」

今まで黙って聞いていたアルフが場を盛り上げるようにして咆哮に近い声を上げた。

「うん」

「そうだねってあれ?フェイトちゃん。ジュエルシードのある場所ってここなの?」

フェイトが頷き、良太郎も頷こうとするが何かに気づいたようだ。

「うん、そうだよ。良太郎、どうしたの?」

「ここ、温泉街だよ」

「オンセンって何だい?良太郎」

アルフが訊ねる。

「ああ、そうか」

アルフが何故こんな質問するのかわからなかったが、二人を見合わせて納得した。

二人は自分と同じで異世界人だ。

日本独特の文化に疎いのも頷ける。

だが、良太郎も他人に「温泉」を説明できるほど知識人ではない。

「わかりやすく言うとね。大きなお風呂、かな」

「「お風呂?」」

「うん。実際には直に見たほうがわかりやすいかもね」

良太郎は二人に自分なりの解釈で説明を終えると、一冊の薄い本を持ってきた。

「なにそれ?」

フェイトは持ち主なのにそれが何なのかわからないようだ。

「タウン誌だよ。海鳴市の事ならコレを見たら大体はわかるはずだからね。えーと温泉街はと……」

ページを捲る良太郎はフェイトはじっと見ていた。

「ん、どうしたの?」

「え?な、何でもないよ。本当だよ!」

フェイトの視線が気になったのか良太郎はタウン誌から目を離し、フェイトを見るが彼女はいきなり目が合ったのか慌てていた。

「そう?あ、あった」

良太郎はフェイトとアルフに見せる。

「えーと、『ここは海鳴温泉街。来て満足!入って満足!温泉マニアも太鼓判。日頃の疲れもここで全部洗い落とそう!』だって」

アルフがフェイトに聞かせるようにタウン誌を読み上げた。

「今から予約取れるかなぁ」

良太郎はケータロスで旅館のひとつに電話をかける。

「良太郎、旅館って直に行ったら泊めてくれるんじゃないの?」

フェイトの尤も質問に良太郎は苦笑いを浮かべる。

「そうなんだけどね。予約しないと受け入れてくれない所もたくさんあるから、念を入れてね」

『もしもし』

男の声が良太郎の耳に入った。

「あ、すいません。実はそちらに泊まりたいんですけど、どうなんでしょうか?」

『今のところは空き部屋もありますし、予約していただければ大丈夫ですよ』

「そうですか。では明日伺いますのでよろしくお願いします」

『承知いたしました。来客は何名でしょうか?あと、お客様のお名前は?』

「大人二人と子供一人の三名です。あと野上です」

『野上様ですね。ご来館お待ち申し上げております』

そう言うと、通話が切れた。

「明日からってことにしたけど、もしかして都合悪かった?」

良太郎は二人の断りなしに日取りを決めてしまったを少々悔いた。

対して二人はというと、

「え?全然。むしろ一刻も早く探して手に入れたいからいいくらいだよ」

「そうそう。良太郎の判断は間違っちゃいないさ」

フェイトとアルフに異存はないようだ。

「それじゃ、二人とも明日に備えて準備するよ」

「うん」

「はーい」

良太郎の一声にフェイトとアルフは各々の返事で返し、明日の準備に取り掛かることにした。

 

太陽が燦燦と輝き、旅行者にとっては幸先がよいとも思われる朝。

「二人とも準備はいい?」

女性二人分の荷物と自分の荷物を持った良太郎がマンション入り口で確認を取っていた。

「うん。わたしは大丈夫だよ」

「あたしも問題なし!」

三人は海鳴温泉街行きのバスに乗車し、向かった。

バスの中は思ったよりもガラガラで殆ど三人の貸しきり状態となっていた。

「乗客がいるとバスって狭く感じたけど、いなかったらこんなに広かったんだね」

良太郎は感想を述べながら一番後ろの座席の中央に座っている。

「アルフ、いくらガラガラだからってウロウロしちゃダメだよ」

フェイトは良太郎の右隣に座りながらアルフに注意する。

「フェイト、いくらあたしでもそのくらいの常識はわきまえてるって」

外見はフェイトより年上のアルフだが、精神の方はどちらかといえば年下ではないかと良太郎は思っていたりする。

アルフはフェイトに注意されながらも好奇心には勝てないのか吊り革を両手で持ってぶら下がったりしていたりする。

良太郎は旅行用バッグからタウン誌を取り出す。

パラパラと捲りながら自然と笑みを浮かべる。

「良太郎、嬉しそうだね」

隣のフェイトが良太郎の笑みを見逃さなかった。

「そうだね。温泉なんていつ以来かなと思って、さ」

「そうなんだ」

「うん。フェイトちゃんは初めてなんだから思いっきり楽しんでね」

「え、う、うん。わかった」

フェイトは戸惑いながらも首を縦に振った。

(まさか、いくらなんでもこの場所でぶつかるなんてことはないよ、ね?)

良太郎は一瞬、最悪の出来事を想像したがすぐに払うことにした。

バスが海鳴温泉街に到着したのはそれから三十分後のことだ。

 

ひとつの光が現れ、まるで自分の意思を持っているかのように温泉街をふわふわと徘徊していた。

その光は、何かを考えたのか林の中に隠れた。

それはまるで、目当ての獲物をじっと待ち続ける猟師のように。

 

海鳴温泉街に到着した三人は前日に予約した温泉旅館に着いた。

「予約していた野上ですが……」

良太郎がそう言うと、法被を着た中年男数名と和服を着た妙齢の女性一人が笑顔で迎えた。

「これはこれは、ようこそお越しいただきました。ささ、お部屋にご案内させていただきます」

女将らしき女性がそう言うと、中年男が良太郎の前に寄ってきた。

「お荷物をお持ちいたします」

「お願いします」

良太郎は荷物を全て渡した。

部屋に案内された良太郎達は荷物を受け取り、部屋の端に置くとそれぞれ自由な行動をとった。

「きれいな景色だねぇ。フェイト」

「うん、でもわたし達は旅行じゃなくてジュエルシードを探しに来たって事を忘れちゃダメだよ」

フェイトとアルフは部屋から景色を眺めている。

良太郎は三人分の茶を淹れていた。

「二人とも、お茶淹れたよ」

そう言うと良太郎は二人に茶をテーブルに置いた。

「ありがとう。良太郎」

「お菓子ないのー?」

フェイトは素直に受け取り、アルフはお菓子の催促までしてきた。

「この中に入ってると思うよ」

テーブルの上に最初から置いてあった丸い木製の蓋付き容器をアルフの前に差し出した。

「さて、どうする?フェイトちゃん。まだ日が暮れるまで余裕はあるから今から探す?」

「そうだね。今日は日が暮れるまで探そう。アルフは?」

「あたしは先に「温泉」に入るよ。フェイト、後で感想聞かせてあげるからねぇ」

アルフはバスタオルと浴衣を持って浴場に向かった。

「あ、うん。楽しみにしてるよアルフ」

良太郎とフェイトはアルフを見送った後、旅館から出た。

 

旅館から出た良太郎とフェイトは早速ジュエルシード探しに取り掛かっていた。

「フェイトちゃんはアルフさんと一緒に浴場に行かなくて良かったの?」

「うん。人が多いの、苦手だから」

良太郎はフェイトがアルフと浴場に行かなかった理由を尋ねた。

フェイトが九歳の少女らしい好奇心を持っていることを良太郎は知っていた。

アルフが浴場に向かった後、フェイトは探索魔法を部屋で使用したのだが、地理がわからない状態だったのか今ひとつ曖昧な結果となった。

地理さえ理解すればもっとはっきりとわかるらしい。

フェイトにこの辺りの地理を記憶してもらうために、旅館から出たということだ。

「ごめんね。良太郎」

隣に並んで歩いているフェイトが申し訳なさそうに謝ってきた。

「そんな、謝らなくていいよ。フェイトちゃん」

そう言いながら良太郎はフェイトの頭にぽんと手を置き、フェイトの目線に合うようにしゃがむ。

「え?りょ、良太郎!?」

「この温泉街のどこかにあるっていうのはわかってるんだからさ、後はフェイトちゃんが細かいところまでこの場所を把握すれば見つかったも同然じゃない。違う?」

「あ、うん。そうだね。そうだよね」

「そうだよ。だから前向きに考えよう。ね?」

「うん!」

フェイトは良太郎に励ましに応えるように頷いた。

「いい返事だね」

良太郎は笑顔になり、フェイトの頭に置いていた手を動かし、頭を撫でた。

「りょ、良太郎。その……恥ずかしいよ」

フェイトは撫でられるたびに顔を真っ赤にする。

「ああ、ごめんね。フェイトちゃん」

フェイトの抗議に良太郎はあっさりと引き下がり、フェイトの頭から手を離す。

「あ……」

離れた瞬間、フェイトは残念そうな声を漏らした。

「フェイトちゃん?」

「あ、ううん。な、何でもないよ!行こう!良太郎」

フェイトは照れを良太郎に見られたくないのか早足で歩き出した。

「フェイトちゃん、どうしたのかな?」

良太郎はフェイトが何故早足に歩き出しのか理解できていなかった。

九歳とは思えない早足なので良太郎は走って追いかけた。

 

良太郎は知らない。

自分が予想していた最悪の出来事が現実のものになることを。

フェイトは知らない。

警戒すべき相手は、既にこの温泉街に潜んでいる事を。

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

第十四話 「イマジンと魔導師の息抜き」


あとがき
冒頭で言った通り、風邪をひきかけている皆大好です。
皆さんはどのようにして風邪を治しているでしょうか?
ちなみにみなひろはひたすら食べて風邪薬を飲んで、体を温めて寝るという事をしています。
あとは気持ちとしては前向きにしておくことですね。
次回は2013/12/21を掲載予定としています。

それでは次でお会いしましょう。

皆大好でした。

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