仮面ライダー電王LYRICAL   作:(MINA)

1 / 43
ここでは初めまして。

皆大好です。

こちらでも投稿してみることにしてみました。

末永くよろしくお願いします。


別世界 魔導師との出会い
第一話 「新たなる針路は別世界」


時の列車『デンライナー』

 

次の停車駅は、過去か未来かそれとも・・・・・・

 

別世界の過去か?

 

 

死郎率いる怨霊達が起こした『幽霊列車事件』が解決してから一週間が経過した。

モニュメント・バレーを思わせる荒野『時の空間』をデンライナーは速度を速めることも緩めることもなく、レールを自動的に敷設、撤去という工程を繰り返しながら走っていた。

デンライナー食堂車も変わり映えすることなく、相変わらずの面々がそれぞれ行動していた。

食堂車にいる面々にコーヒーを淹れているナオミ。

そのナオミが作ったチャーハンに自前の旗を立てて、落とさずに食べることに異常なまでに拘るデンライナーのオーナー。

そんなオーナーとイマジン討伐という目的のために契約を交わした少女―――コハナはナオミの手伝いをしていた。

そして、絶対に人間には見えない四人がいた。

「よぉーし、今度はこれだっと!」

そう言いながら赤一色で桃太郎に登場する鬼の容姿を持ったイマジン―――モモタロスが、青一色で海亀のイメージが具現化されたイマジン―――ウラタロスが広げているトランプの一枚を抜き取る。

「ふふん取ったね。センパイ」

「あん?」

ウラタロスが笑みを浮かべている。それはしてやったり、というような笑みだ。

モモタロスは自分が抜き取ったトランプを見る。

「げっ」

ジョーカー、つまりババだった。

「やーい、モモタロス。ババ引いたー」

モモタロスがババを引いたのがわかると、紫色でドラゴンのような容姿をしているイマジン―――リュウタロスがはやし立てる。

「うるせぇ!小僧!」

モモタロスは怒鳴るがいつものことなので誰も特に気にする様子もなく、ババ抜きは進行している。

「カメの字、早よ俺の引かんかい」

ウラタロスに自分の手札を引くように促しているのは黄金で、がっしりした体型をしたイマジン―――キンタロスだ。

「あ、ゴメンね。キンちゃん」

キンタロスの手札から一枚抜き、自分の手札と同じ数字があったのでトランプが重なっている山に捨てる。

「クマちゃん、クマちゃん。早く、引いてよー」

リュウタロスはそう言って、キンタロスに手札を引くように急かす。

「おお、悪いな。リュウタ」

キンタロスは引いて、数字が揃ったので山に捨てる。

「おい、小僧。次はオメェが俺のを引く番だぜ」

モモタロスはずずずいっと、手札をリュウタロスに向ける。

「ふふーん。絶対にババは引かないもんねーっと」

そう言いながら、リュウタロスが引いたものはというと、

「げっ」

ババだった。

「モモタロスに引かされたー」

リュウタロスはそれが屈辱なのか喚く。

「どういう意味だ!?小僧」

それから先のババ抜きは誰かが勝ち抜けたとかはなく、ただババがあっちにいったり、こっちにいったりとした何の進展もない状態になっていた。

四人とも既に飽きがきたのか、最初ほどの覇気はなかった。

そんな中ウラタロスは、とある人物の事を思い出していた。

 

野上幸太郎

のがみこうたろう

野上良太郎

のがみりょうたろう

の孫で仮面ライダーNEW電王に変身し、テディという青鬼をモデルにしたイマジンと契約を交わした青年だ。

 

「ねえ、センパイ」

ウラタロスは退屈しのぎの話題になると思い、切り出した。

「何だよ?カメ」

「幸太郎は良太郎の孫だって言ってたよね?」

それは確認するかの口調だ。そう言いながらも手札をモモタロスに突きつける。

「ああ、そう言ってたな」

一枚引く。数が揃ったので山に捨てる。

「それがどないかしたんか?カメの字」

ウラタロスはキンタロスの手札から一枚抜く。

「ん?ちょっと考えたんだけどさ。良太郎の奥さんになる人ってどんな人かなってさ」

「カミさんと幸太郎がどう関係あるんだよ?カメ」

すでに四人ともトランプそっちのけになっていた。

「センパイやリュウタにわかりやすく言うけどさ。良太郎が結婚しない限り、幸太郎は絶対に生まれないよね?」

良太郎の子供が幸太郎の親なのだから当然といえば当然だ。

「ああ、そうだな」

「うん、そうだね」

ウラタロスは続ける。

「でも、良太郎の周りってあんまり女の子がいないからさ。どんな人と結婚するのかなって思っちゃってさ」

「確かにカメの字の言う通りかもしれんな」

「オメェもかよ。クマ」

「モモの字、おまえ良太郎が女と何かしとるの見た事あるか?」

キンタロスの指摘にモモタロスは思考をフルに回転させている。

リュウタロスもモモタロスの真似をしていた。

「……そういや、ねえな」

「あ、でも僕、良太郎が女の人とご飯食べてるの見た事あるよ!」

リュウタロスが自信満々に言う。

「リュウタ。一応言っておくけどさ、愛理

あいり

さんはナシだよ」

「カメちゃんの意地悪ー!」

図星だったため、リュウタロスはウラタロスに文句を言う。

ちなみに愛理とは、良太郎の姉の野上愛理のことだ。

「オッサンに訊きゃ早ぇじゃねぇか」

モモタロスはオーナーに聞いたほうがいいのではないかという案を出した。

「確かにそうだね。センパイ冴えてるぅ」

「モモの字、ええアイデアやけどどないしたんや?」

「モモタロス。頭打った?」

三者三様で冴えたアイデアを出したモモタロスを誉めてるのか、貶しているのかわからないコメントを出す。

「・・・・・・・おまえら」

ここでキレて三人を殴り飛ばそうかと考えていたが、それはいつでも出来るので今の最優先事項を実行することにした。

「なあ、オッサン。アンタ知ってんだろ?」

手札をテーブルに置いて、モモタロスは旗付きチャーハンを食べているオーナーに詰め寄る。

残りの三人はお開きだと感じたため、トランプを片付け始めていた。

「ちょっとモモ!もうちょっと訊き方ってものがあるでしょ!」

ナオミの手伝いをしていたコハナが注意する。

「うるせぇ!オマエだって気になってるんだろうがコハナクソ女!げふっ」

コハナがモモタロスの腹に正拳を食らわした。

毎度のこととはいえ、痛いものは痛い。

モモタロスが腹を抱えて、痛みを堪えている頃にはオーナーはチャーハンを食べ終え、自前のステッキを持って、皆がいる場所から中央になる場所に立った。

「確かに、幸太郎君とテディ君を連れてきたのは私ですからねぇ。その経緯で良太郎君が誰と結婚するのかも知っていますよぉ」

その一言で皆がオーナーを囲むようにして集まった。

オーナーは少々、自分を囲んでいる皆の異常な視線に気圧されながらも続ける。

「ただし、この一件はかぁなぁりぃデリケートなものですからねぇ。軽はずみに言って、幸太郎君の存在を消滅させてしまう可能性もありますので、今、名前は言えないんですよぉ」

「なぁんだよ。期待させやがって」

モモタロスはガッカリする。

「まあまあセンパイ」

ウラタロスが宥める。

「まっ、知る楽しみが出来ただけ良しとしとこうや」

キンタロスは前向きに受け止めることにした。

「どんな人かなあ。お姉ちゃんみたいな人だったらいいなあ」

リュウタロスはスケッチブックを取り出して、想像を描き始めていた。

「オーナー、良太郎ちゃんの奥さんになる人ってどんな人なんですかぁ?」

ナオミはコーヒーを淹れながらオーナーに別視点で尋ねる。

コハナも興味津々の表情をしていた。

「そうですねぇ」

オーナーは『時間』に影響を受けない程度で説明できる言葉を探す。

「強くもあり、優しくもあり、可愛さもある。そんな女性ですかねぇ」

その答えにナオミとコハナが良太郎の妻となる人物により一層の興味が湧いた事は言うまでもないことだ。

 

 

「うん、今日はそんなに酷い目に遭わなかったかな」

道路の脇道を自転車で走っている青年が、本日の自分に起きたことを思い返して、そう評価した。

といっても、自転車で電柱にぶつかったり、車に撥ねられそうになったりと、常人からしたら十分に酷い目なのだが、不運が当たり前のこの青年にとっては、この程度のことは日常茶飯事なので、落ち込んだりするほどのものではないらしい。

 

野上良太郎

のがみりょうたろう

 

 

それが彼の名前であり、仮面ライダー電王(以後:電王)としてデンライナーにいる面々とともに『時間』に関する様々なトラブルを解決した実績がある青年だ。

当初は気弱で、何事に対してもあまり自信のなかった彼だったが、電王として戦っていく内に肉体的にも精神的にも成長し、今では気弱な部分は人を想う優しさとなり、どんな困難にも堂々と立ち向かい、いかなる真実からも目を逸らさない勇気を持つ青年となった。

ペダルをこぐ回数を増やしながら、姉の愛理が経営している『ミルクディッパー』へと向かっていく。

やがて、看板に書かれている文字がはっきりと見え始めている距離に到達した頃だ。

良太郎にとっては懐かしいミュージックホーンが後方から聴こえ始めた。

後ろを見ると、空間が揺らぎ、そこからデンライナーが走ってきた。

常人がその光景を見たら驚いて腰抜かすが、良太郎にとってそれはごく当たり前の感覚に近いため、大して驚きはなかった。

(また、何か事件でもあったのかな)

と考える余裕があるくらいだ。

デンライナーは良太郎の前で停車し、ドアが開く。

開いたドアから出てきたのはナオミで、いつもの笑顔で良太郎を迎えた。

「良太郎ちゃん、お久しぶりでーす」

「どうも、ナオミさん」

良太郎は特に慌てることもなく、自転車を『ミルクディッパー』入口前に置き、盗難防止の為に鍵とチェーンロックをしてからデンライナーに乗った。

 

デンライナー食堂車に入ると、イマジン四人とコハナの姿はなく、そこにはオーナー一人が一人前とは思えないほどの量のチャーハンを前にして待ち構えていた。

「お久しぶりですねぇ。良太郎君」

「ど、どうも。お久し振りです」

良太郎は軽く会釈する。

「ところで、良太郎君。お昼は済みましたかぁ?」

「いえ、まだです」

「そうですか。ならば一緒にどうです?」

「えと、それって……」

オーナーの目の前にある巨大チャーハンを一緒に食べるということだ。

「申し訳ありませんが、私のワガママにすこぉしだけお付き合い願いませんかぁ」

「はあ」

良太郎はオーナーの対面に座る。

「はい、良太郎ちゃん」

ナオミは良太郎にスプーンを渡す。

「あ、ありがとう。ナオミさん」

良太郎はスプーンを受け取り、チャーハンの山に挿そうとした時だ。

「そぉのまえにぃ、良太郎君。本題に入りましょう」

そう言うと、オーナーは懐に手を突っ込み、何かを取り出した。

その物体は青い石だった。

神秘的な輝きを持ち、宝石愛好家などなら誰もが手にしたがるほどの美しさを持っていた。

「それは、一体?」

良太郎が尋ねると、オーナーはテーブルに置く。

手にとって見てみろということだと判断した良太郎は、手にして見てみる。

正面から上からも下からも斜めからも見てみるが、ただの青い石にしか見えなかった。

「何なんですか?この石」

「わかりません。ただ、この石が我々の『時間』に大きな影響を及ぼすかもしれないとターミナルの駅長は言っていましてねぇ」

「は、はあ」

オーナーは続ける。

「それに、この石は我々の世界には存在しないものなんですよ」

「え?」

良太郎は手にしていた青い石をもう一度見る。

「どうも別の世界のものでしてねぇ」

「じゃあ、どうやって僕たちの世界に来たんですか?」

良太郎の疑問にオーナーはというと、

「時の空間

ここ

で拾ったものですから、恐らく別世界の時の空間から流れてきたものかもしれませんねぇ。本来、このようなものが時の空間

ここ

にあるはずないんですけどねぇ」

あるはずないものがあるということはそれだけ異常な代物だということは良太郎にも理解できた。

「もしかして、僕達が今向かっている所って・・・・・・」

「そうです。その石、仮の名として『ブルーストーン』としておきましょう。ブルーストーンがあった世界に向かっています」

オーナーの答えに良太郎は疑問が浮かんだ。

デンライナーは現在、過去、未来に運行可能ないわゆるタイムマシンだ。別世界、いわば並行世界に運行可能だとは思えないからだ。

「あの、オーナー」

良太郎がどのようにしてデンライナーで別世界に行こうとしているのか尋ねる。

「良太郎君の考えているとおりですよ。デンライナーでは別世界に行くことは不可能です」

良太郎はなら、どうやってともう一度尋ねる。

「まずは、我々の世界の十年前の『時間』に行きます。そして、我々の世界の時の空間と別世界の時の空間を繋いでいる『橋』を渡って別世界に行くというわけです。どんな世界にも『時間』は存在しますからねぇ。『時間』が存在していれば時の空間も存在しますわけですからこのような荒技ができるわけです」

オーナーの説明に良太郎は概ね理解した。

「もしかして、モモタロス達は?」

「ええ、先程説明した方法でモモタロス君達は一足先に別世界に行ってもらいました。ブルーストーンの事を何かつかんだかもしれませんねぇ」

「そうですか」

「では、良太郎君。いただきましょうか?」

オーナーは眼前のチャーハンにスプーンを挿した。

良太郎も「いただきます」と言ってから、チャーハンにスプーンを挿した。

 

 

夜。

満月が我が物顔で空に佇んでいる中を二人の少女が夜空を飛翔していた。

一人は金髪で黒いマントのようなものを羽織り、右手には鎌のような杖を持っている外見年齢は十歳にも満たない少女。

もうひとりは金髪少女よりは年上で自分のスタイルを強調している衣装を纏った少女だ。趣味なのかどうかはわからないが、獣のような耳と尻尾がある。

「ジュエルシードの反応はこのあたりで感じたんだけど……」

金髪少女は目を閉じ、もう一度意識を集中し始める。

「それらしいものは見当たらないねぇ」

獣耳少女は金髪少女の言葉を信じているらしく、肉眼でその『ジュエルシード』と金髪少女が呼称した物を探そうとしている。

「ダメ。誰かが回収したのかも・・・・・・この辺りにはもう感じられない」

金髪少女は閉じていた瞼を開き、否定を表すように首を横に振ってからキョロキョロしている少女にそう告げた。

「・・・・・・そうかい」

獣耳少女はがっくりと肩を下ろした。

「それで、フェイト。どうするんだい?今日はもう切り上げるかい?」

「・・・・・・そうだね。帰ろうアルフ」

フェイトと呼ばれた金髪少女はアルフと呼んだ獣耳少女に本日の探索の打ち切りを告げた。

二人が住居であるマンションに帰ろうと進路を切り替えようとした時だ。

空間が揺らぎはじめ、穴のようなものができた。

そこから線路が敷設されていき、そして、列車が当然のように敷設された線路の上を走ってきた。

「!?」

「!?」

フェイトとアルフもその光景を見て、ポカンとするしかなかった。

だが、そのままポカンとしたままではいけないと先に感じ取ったのはフェイトだ。

列車の線路は確実に自分達がいる位置に向かっている。

このままでは自分達は列車に確実に撥ね飛ばされる。

隣でまだポカンとしているアルフの肩を掴んで揺らす。

「アルフ、アルフ。このままじゃ私達、あの列車に撥ねられちゃうよ」

「え、ああ、うん。ごめんよフェイト。いきなり非常識なもの見ちまったからさ」

フェイトとアルフはこの世界に来る際にそれなりの知識をもってから来ている。それでも、空をまるで、陸地のように走っている列車というのは非常識なものなのだろう。

列車がフェイト達のいる位置に近付いた時だ。

線路がフェイト達を避けるようにして敷設されていき、列車は何事も問題なく走っていった。

「!!」

列車が自分達を避けて通り過ぎようとしていた瞬間、フェイトはジュエルシードの反応を感じた。

フェイトは列車に顔を向ける。

今から全速力で追いかければ充分に追いつける距離だった。

「フェイト?」

「アルフ、あの列車からジュエルシードの反応を感じたから追いかけるよ」

「あいよ」

二人の夜はまだ終わらない。

少女はまだ知らない。この行動が後々、自分の『時間』に多大な影響を及ぼすことになることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

第二話「俺、別世界でも参上!!」


あとがき

前書きでも書きましたけど皆大好(みなひろよしみ)です。
最初にこの作品は自分のサイトである『終着駅みなひろターミナル』にも掲載しております。
思い返してみると、これがネットで二次小説を投稿した最初の話なんですね~。
つい懐かしくなってしまいました。
次の投稿予定日は11/16と考えています。
それでは第二話のあとがきでお会いしましょう。
皆大好でした。

投稿日 2013/11/12

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。