Muv-Luv Alternative ~take back the sky~   作:◯岳◯

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11話 : 電撃侵攻

揺れる船の中。ターラー・ホワイトは、出航する前日のことを思い出していた。場所は、大東亜連合の軍本部の建物の中。無骨な机を間に、自分と彼は向かい合っていた。彼とはアルシンハ・シェーカル、軍の最高位にいる元帥閣下殿だ。東南アジア戦線が崩壊しないように支え続けてきた遣り手の指揮官とも言われている。事実、彼は英雄部隊のお膳立てを全て整え、運用してみせた。今では連合の実質的頂点に立つ男である。大東亜連合の最高幹部とも太いパイプを持っているため、政治面での発言力も高い。世界的にも有名な軍人で、高級軍人のほとんどを派閥に加えている。最近では東南アジアの巨人と呼ばれ始めているそうだ。

 

そんな彼は淡々と、告げた。

 

「と、いうことだターラー少佐」

 

「………元帥閣下。それは、命令になるのでしょうか」

 

「どちらとでも。元帥としての命令であり、俺自身の懇願でもある」

 

用意していた、と言わんばかりの即答だった。それを聞いたターラーは顔を歪めた。そしてその言葉を発した男を観察して、言う。

 

「かつての面影はどこにやら。老けたな、アルシンハ。白髪が目立つ」

 

ターラーが敬語を抜いて話す。それは本音を話せという、サインでもあった。その言葉に、アルシンハは即座に応えた。

 

「肯定しよう。本当に疲れたよ。ここ最近は特に――――世界を滅ぼしたいという馬鹿が多くてな」

 

ため息まじりに返答する。事実、アルシンハ・シェーカルという男の髪には、年齢を鑑みると多すぎる白髪が目立ってきていた。顔にも、隠せないぐらいの皺が刻み込まれている。見るだけで、心身に刻まれた深い心労を察することができるぐらいには。そんな男から出る過激な言葉に、ターラーは一瞬だけ我を忘れ、絶句してしまっていた。

 

世界が、滅びる。

 

不穏に過ぎるその言葉は、一個の軍の元帥としても、そして個人であっても発するべきではない。戸惑うターラーをよそに、アルシンハは苦笑しながら話しかけた。

 

「なあ、ターラー。例えばもし、自分にしかみえない銃があったらお前はどうする?」

 

アルシンハは自分の蟀谷に、人差し指を当てた。

 

「その銃は非常に頑丈だ。そして弾の威力は十二分。銃は、地球の全人類の蟀谷の隣に浮かんでいる。引き金は一つで、それも手が届かない場所にある。自分一人の力では壊せない。誰かに協力を求めようにも、自分しか見えないので説得力は皆無。届かない場所、もしも引かれれば大半が死ぬ。不発に終わらない限り、確実にだ」

 

アルシンハは人差し指を、トリガーを引くように動かした。その目には、火のような煌めきが灯っていた。ターラーの目は、戸惑うばかり。二人の視線が、宙空で衝突する。だが、耐え切れなくなったターラーの方が視線を逸らした。途端、アルシンハは椅子に背を預けてまた苦笑した。

 

「そして銃を銃と知らない内に、せっせと弾を詰め込む馬鹿が居る。止めようにも、そいつもバカみたいに強すぎて止められない………全く、馬鹿らしいにも程があると思わんか?」

 

「元帥の、権限があれば。個人であれば、どのようにでも出来ると思いますが」

 

「肯定しよう。だが、届かないんだよ。不可能に近い。正面から挑んでも、日本の言葉でいう、“鎧袖一触”に終わるか。そして時間は有限だ」

 

ため息が部屋の壁を揺らした。そして、沈黙の後。

 

「知っているからこそ、止まれないことがある………失いたくない人の、その蟀谷に銃がつきつけられている。それを見て動かない人間がいないように。そして抗う術があれば、尚更だ」

 

アルシンハは笑った。そして疲れたのか、また黙って。そして再度、笑った。それは酷く乾いた笑いだった。だが、その目には覚悟があった。ターラーとて、歴戦の勇である。そんな彼女でも迂闊に言葉を発せない、それだけの威圧感が空間に満ちていた。理屈ではない。だけど嘘ではないと、そう感じさせる凄みが。ターラーとて直視できないぐらいには。

 

(まみ)えることも出来ないまま、ターラーは尋ねた。

 

「要領は得ませんが、命令には従います。自分は軍人ですから。それに、内容も望む所なので文句はありませんが―――」

 

だけど、その目的は何なのでしょうか。声にせず、視線で問いかけるターラーに対し、アルシンハは待ってましたと言わんばかりに答えた。

 

そうして、ターラーはつぶやいた。あの時に、アルシンハ・シェーカルは何の含みもなく言ってのけたのだ。

 

「世界を救うために、か」

 

聞くものの居ない言葉は、荒波に呑まれて消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かの、必死な叫び声が聞こえる。それは通信の徒が発する悲痛だった。

 

「――――!」

 

HQの中は、外にも負けない嵐になっていた。雨と風の代わりとして、悲鳴が束となり室内に反響していた。

 

島根、そして鳥取。そこに沸いた赤の光点が。深く切られた傷のように、赤い波は増殖している。

 

「――――――っ!」

 

悲鳴のような報告が飛び交っていた。その報告をする者の顔は青く、また報告を受けている者の顔は赤い。通信の向こう、声が届いた先から帰ってくる返信の声が、ぶつりと途切れた。

 

「――――――――っ!?」

 

赤が更に増殖した。中心にある宍道湖の水色だけが、妙に綺麗だった。

 

 

 

1998年、7月9日。台風が中国・近畿・四国地方に居座っている最中、日本の本土防衛戦は次なる展開に移っていった。北九州での戦闘が終わった翌日、大規模のBETA群が本州に上陸したのだ。

中国地方の日本海側、島根県と鳥取県の境目に、師団以上の数のBETAを確認。

 

報告があった直後、西部方面軍は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。即座に対処が可能な迎撃戦力が不足しているからである。帝国の本土防衛軍は、本州沿岸部付近のあらゆる場所に配属されている。当然として、中国地方にも少なくない戦力が配置されている。だが、それは保有する戦力を分散してのことだ。防衛線に穴を開けられないがために、戦力を均等に配置しているが、それが裏目に出た格好である。加え、上陸したBETAの数のその多さである。海岸近くで確認された数、そして間断なく湧いて出る海からの赤い点。

 

大陸で実戦を経験した軍人たちは、すぐさまに結論を下した。今後に相手が展開してくる総戦力は、九州のそれとは比較にならないだろうと。相手の数は多く、こちらの数は少ない。戦争における勝敗の道理より、帝国軍側の完敗が必然になりつつあるのだ。だがその一報で帝国軍の上層部は慌てることなく、冷静な対処に努めた。戦力比からBETA共を完全に止めることはできないが、時間を稼ぐことは出来ると判断したのである。最悪に近い状況に陥ってはいるが、これも今まで予想と想定が繰り返されたシミュレーションの、その内の一つでもあった。

 

故に命令が出されたのも、迅速だった。下された指示、その内容は主には二つ。まずは、中国地方方面軍に対して告げた。すでに接敵している部隊は、足止めを主として動くこと。次に九州に在している戦術機甲部隊に。内容は艦隊を動かし、上陸しているBETAの横っ面に突っ込ませることだ。

 

正面から受け止め、時間稼ぎをした後に、正面と側面から十字砲火のような形でぶつかろうという策だった。九州より東へ、戦術機甲部隊が飛ぶ。その中に、武達もいた。

 

まだ風と雨が残る中、海岸線沿いに匍匐飛行でもって移動している

 

武は雨の音だけを聞きながら、先の会話を思い出していた。作戦の内容が告げられた後に話された、隊の指揮をする者についてのこと。聞いた後に頷かず、問い返した。

 

それは、隊の総意なのか。俺が指揮を取ることを、全員が許したのかと。それに対する答えは、沈黙の首肯だった。しかし納得しきれず、武はマハディオに問うた。自分なんかが指揮官でいいのか、と。マハディオは、愚問だと笑った。

 

「全員で決めた。お前ならば生き残れると、そう皆が判断した結果だ」

 

「愚策だろ。死ぬ気かよマハディオ。前衛の小隊をまとめたことはあるけど、隊そのものを指揮した経験なんか無いぜ」

 

「………3年間だ。3年間だぜ。お前は見てきただろうが、あの人の指揮を」

 

マハディオは言葉と視線で弾劾した。

武も、名前は出されていないがその人物の名前は理解していた。

 

それはかつての蔑称、“鉄拳”という名前の意味を、逆転してしまった人のことだ。

 

鉄拳(ブレイカー)”、ターラー・ホワイト。

それはいかなる苦境や困難をも打ち砕いた、硬き鉄の衛士の名前だ。

 

同じ隊で彼女と共に戦った衛士達がいる。武はその中、古い方から数えて二番目。ラーマを除けば、白銀武はあの隊の最古参であった。そして、少年の教官でもあった。二つ名の由来に憤り、その名前の意味が変わったことを本人よりも喜んでいた。

 

だからこそ、とマハディオは言った。

 

「この国がどういう状況にあるのか、分からないとは口が裂けても言わせねえぞ。とびっきりの苦境がやってきた。なのにお前は、やってみようともしないのか」

 

防衛に向かない土地で、海よりやってくる化物共を退治する。対抗する戦力と敵と不安要素、勝算をマハディオは計算している。武も分かっていた――――苦しい戦いになることを。それも、元帥の裏の助けもなしにどうするのか。二人共口には出さなかったが、結論は同じだ。窮地にも程がある、と。しばらくの沈黙の後、マハディオは言った。

 

“逃げるのか”、と。武は苦虫を噛み潰したような顔になった。まるで棘が刺さったようだからだ。内から、そして外から、刺すような痛みが止まらない。

 

欠けている記憶があった。事実がある。マンダレーハイヴの攻略に成功した、あの作戦。あの中で同期の全員が死んだということ。

 

マリーノ・ラジャ。

 

バンダーラ・シャー。

 

イルネン・シャンカール。

 

アショーク・ダルワラ。

 

そして、泰村良樹。

 

かつてのチック小隊の同期である。もう一人、ソ連より亡命した衛士が居たが、その彼女も死んだらしい。辛い時を共に過ごした、友達だった。訓練の辛さに泣き、時には喧嘩して、気まずいままインドで別れもしたが、シンガポールで仲直りした。クラッカー中隊とはまた異なる、同世代に近い友達だった。戦友だったのである。一緒の戦場を駆けたこともある。隊の違いはあれど、同じ場所で戦えることに心が震えることもあった。

 

だけど、もれなく全員があのマンダレーで死んだのだ。それが、厳然たる結果であることは承知していた。ハイヴ攻略作戦の中、あいつらは戦死したのだ。その死因も分かっている。“あれ”が今も問題とされていることは、東南アジアでも有名な話だ。

 

そして、自分は誰よりも近くでその光景を見たはずだが、それを覚えていないのだ。

 

(それだけじゃあ、ない)

 

武は歯噛みする。なぜなら自分は、あのビルマ作戦の、その終盤のことを覚えていないのだ。

 

記憶に残っているのは、地面がひっくり返るんじゃないかというほどに大きい震動と、爆発音と、その直後の衝撃と。そこから病室で目覚めるまでの記憶が、すっぽりと抜けていた。

医者は、何か辛いことがあったのだろうと言っていた。耐え切れない記憶を前に、時に人間は覚えることを放棄すると。

 

(だからこそ、か)

 

失った記憶が責めているのだ。戦わなければならない、と。

そして武は、何故か確信できることがあった。

 

逃げると自分はどうなるのか。かつてより遥かに深く思い軍事の知識を持つようになっていた武は、何も言うことはできなかった。結末は見え透いていた。BETAが東進し続けるとどうなるのかなど、分かりきっていると。その証拠を示すかのように、フラッシュバックする光景があった。

 

あれは、いつか見た夢の最後。

 

―――兵士級に連れて行かれる純夏の姿。それだけが、今も目に焼き付いて離れないでいる。

 

《それ以上は、絶対に見ようとするなよ》

 

声の念押しも、いつもの通りだ。それより先はやめておけと、声は珍しく遊びのない声色で忠告してくる。あのあと、純夏が一体どうなったのか。それは分からないが、きっとろくな目に遭わないのは確かだった。

 

「どちらにせよ、帰る家もないか」

 

武はやってみるさと頷く。どの道もう決定事項で、迷っている時間もなく、悩みは戦場では重しにしかならない。決断は出来る限り迅速に、が鉄則なのである。

 

《それでも変に気張るなよ。いつも通りにやればいいさ。苦戦は必至だろうけど》

 

武は文句はあるが、取り敢えずはやめておいた。概ねは声の言う通りだったからだ。中国地方を南北に分断するのは山である。山陰にいるBETAが山陽に辿り着くことが何を意味するのか。そして、それ以外の見えていない不安要素が決して少なくないだろう。

 

そこまで考えた時に、武に向けて通信が入った。発信者は橘操緒だ。彼女はいつもの仏頂面を画面に出してすぐに、問うた。

 

『失礼します。隊長、と呼んだ方が?』

 

『自分で判断すればいいさ』

 

『それは命令でしょうか』

 

『提案にしといて欲しい。それよりも………橘少尉、聞きたいことがあるんなら正直にどうぞ、だ』

 

言われた操緒は、その言葉に一端口を閉ざし。しかしまたすぐに口を開き、武に尋ねた。この後の展開をどう見ますかと。武は試すようなその言葉と意図には反応せず、ただ自分なりの予測を説明しはじめた。

 

今回の中国地方からの上陸、これは日本からすれば横っ腹を叩かれた形に等しい。北九州の時は東へ侵攻するBETAだけを防げば良かったのだが、中国地方から上陸したのであれば、そうはいかない。西に南に東に、3方向にばらけるBETAに対処しなければならないのだ。かといって、京都の守りは捨てられない。京都の北、若狭湾よりBETAが上陸する可能性はゼロではないのだ。北陸や東北地方も、警戒態勢に入っているだろう。

 

『どこからでもやって来る可能性はある。それだけで動きは封じられるってこと』

 

『天然のステルスであると………しかし、敵が見えないのは本当に大問題ですね』

 

深刻にもほどがあると、操緒は若干青い顔になった。武も同意し、頷いた。相手が人間であれば、戦力の予測はできよう。人が海を渡るとすれば船は必須で、迎え撃つ側としては船を発見さえしてしまえば如何様にも対処できる。だけど、BETAは個単位で海を横断してくる。そうなるともう、偵察のしようもないのだ。なにせ好き勝手にそこから上がってくる可能性があるのだ。しかもレーダーでは、海にいるBETAを見つけることができない。海の全てが敵の姿を隠す、暗幕になってしまっている。上陸して陸地に姿を現すまで、どこにいるのか分からないなどと、悪夢のようだった。

 

『それでも防げますよね。西部方面の軍は精鋭で、京都に展開している軍も。それにあの斯衛だっているし―――』

 

聞いていられないというような口調での通信を発したのは碓氷風花だった。彼女は期待するような声で安心できる材料を並べたてた。が、武はそれを即座に否定する。中国地方に上陸するBETAならば、どうにかなるかもしれない。だけどそれ以上に、恐れていることがあると。

 

『あの規模のBETAよりも、警戒すべきことがあるって』

 

『分からないか。なら、昨日の戦闘が終わった後のことを思い出してみるといい』

 

言われた風花は、考え込んだ。昨日、戦闘が終って色々あったが、喜んだ。

しかし、再度上陸の報を聞いた時は衝撃を受けた。

 

『聞かされた時はまさか、って思った………え、だけどそんな』

 

そこまで聞いて、風花は思いついた。そして何が問題となっているのか、理解した途端に震えた。

聞く前は知らなかった。聞いた後に知った。でもまた、次がないとも限らない。

 

終わりがないかもしれないと、気づいたからには震えずにはいられなかった。

 

『終わったと思ったから喜んだ。だけど、事実は違った。つまり………今の帝国軍は“戦闘の終わりがわからない”。証拠が今日の報だ。敵の戦力の総数も配置も、帝国軍は全く把握できちゃいない』

 

大陸の戦闘では、ハイヴよりやって来る一団を潰せば終わりだった。防衛線も、見えるBETAを倒せば終わり。しかし、海を境に迎え撃つのではそうもいかない。全て倒せたと、そう判断できる材料があまりにも不足していた。

 

そして、海は広い。帝国軍は悪ければずっと、この警戒状態を維持しなければならなくなる。

 

『今の状況はそう悪くない。むしろ運がいいと言っても良い方だ。昨日のは、上陸するのが一箇所づつ、それも一日という時間を挟んでいた………だけど、今後もそうなるとは限らない』

 

武は、それ以上は言わなかった。海岸沿いに飛んでいる自分たち、その横っ面を叩くように新たなBETAが“今にも”やってくるかもしれないなどと。しかし、気づいていた操緒はまた口を挟んだ。

 

『もしかしなくても、挟撃が起こると?』

 

『その上で、上陸したBETAは陸を駆けるだろう。南に北に東に西に、な』

 

鹿児島からやって来るかもしれない。山口から、横っ面を叩くように。福岡より再度上陸するかもしれない。あるいは、上陸した島根よりあぶれたBETAが西進する可能性も。

 

その上で起こる惨劇は、考えたくもない未来だ。補給を経て命じられた場所へ移動するその途中で、何が起きるのか。武は途中の基地で補給を受けている間も決して言葉にはしなかったが、声は耐え切れないとばかりに言葉にして断じた。

 

《死ぬだろうな。大勢の人が死ぬ。関西より西にはまだ残ってる。それを考えれば、万で済むはずがないな、10万でも収まらない。100万単位か、もしかすれば、いやしなくてもさ》

 

再び、あの悲劇が起こるのだろう。苦い敗戦に民間人の虐殺、あの忘れられないタンガイルと同じように。あるいは、話にだけしか聞いたことのない、かつての中東や欧州で起こったことがここ日本で再び現実のものになるかもしれなかった。死という言葉が何千万も。それは悲観的な想定ではなく、有りうる範囲での現実だった。

 

山陰にも、山口、鳥取、島根、そのどれにも疎開しきれていない人はいるはずなのだ。

そしてその大半の命運は決定された。生き残ろうとする者はいるだろう。しかし、逃げ道のほぼ全てが封殺されている。上陸地点の最中、もしくは以西にいればもう山を越えるしかないのだ。

だけど、果たして何人が無事にそのルートを選択できるというのか。

 

『それを止められるのは、私達だけなんだね。昨日と同じように』

 

『ああ。いつもの通りともいえるがな』

 

『いつもの通りって、そんなにあっさりと………鉄少尉は、怖くないの?』

 

『怖いのは怖い、でもな』

 

死ぬことも、誰かの命を背負っていることも。問いかける風花に、武は同じ言葉を返した。いつもの通りだということを。それは別に特別なことではない。衛士ならば誰だって、ひとたび戦場に立てば同じ条件に放り込まれるのだ。

 

要撃級を相手に間合いを読み違えたら死ぬ。突撃級の突進を避けられなかったら死ぬ。要塞級に踏み潰されても死ぬし、溶かされても死ぬ。高く飛べばレーザーで蒸発して死ぬこと間違いなし。戦車級に取り付かれて、そのまま何もできなかったら齧られて死ぬ。機体が故障したら目も当てられない。動かないからとて脱出したとしても同じ事。物陰に隠れても、隠れんぼの達人である兵士級に見つけられたら死ぬ。味方の誤射によっても死ぬし、狂乱して暴走して血迷われた挙句に背中から撃たれて跳躍ユニットが爆散、そうして焼かれて死ぬ。

 

だけどそれは、民間人の前に。自分の死が誰かの死に繋がる可能性がある以上、今回の防衛戦もいつもの通りだった。死にたくないし、死なせられない。

 

『備えなんて気休めだ。そう割り切ってしまえば、何とか震えは隠せる』

 

『………隠せる、か』

 

言うなり、風花は苦笑した。

 

『ほんと理不尽だね、戦場って』

 

『ん、それには心の底から同意できるな』

 

いつも思っていることだった。こんなに無茶苦茶で、理不尽な場所もないだろうと。だけど今は、上陸地点より西が“そんな”場所になっているのだった。だが、想像できている範疇を越えてもっと酷いと言えるかもしれない。自分たちとは異なり、装備も心得も無い民間人である。あいつらに発見された時点で死んだも同然になるだろう。あいつらが通り抜けた後に生存者など、息が出来ているはずがないのだ。人間にとってBETAという存在は、そんなものだった。

 

そして武とマハディオだけは、その惨劇の具体的な光景を想像できた。さんざんに、タンガイルで見せられたからである。逃げ惑っていた人々がどんな風に潰され、どんな風に喰われ、どんな様になっていったのか。その時の浮かんだ感情と刻まれた記憶を思い出してしまった武が、黙りこんだ。

 

思考が暗い方向に移っていく。だがそんな時に、通信が入ってきた。

武はまた横入りか――――と思ったが、発信者の顔が映るなり姿勢を正した。

 

(何故、こんな人が?)

 

その人物は特徴的な外見をしていた。両脇を剃りあげた髪型。軽いモヒカンのようになっている髪型をしている人物など、一目見たら忘れようはずがないものだった。武も出発前に見たが、東南アジアではあまり見なかった髪型に驚いていたのだ。

 

そして、名前が呼ばれた。

 

『赤穂、大佐………連隊長、閣下殿』

 

『閣下とはまた大仰だな………ああ、何で通信をってか? いや、知っているというのも厄介なことだと思って、ついな』

 

『………厄介、ですか』

 

通信の言葉に、武は無表情を装いながら対応した。話を聞いていた上に、何を考えているのかを予測していたかのような言葉である。かといって指摘するのに意味はない。そう判断した武は努めて平穏な声で、通信を返した。

 

『知っているからこそ、という面もあります』

 

『そうかもしれん。だが、それでも知らないほうが良かった―――と思ったことはないかよ、少年』

 

『思ったこともありますが、自分で状況を選べたことはありませんので………と、どうしました?』

 

見れば、赤穂は少し驚いたような表情をしていた。

 

『いやいや、何でも。しかしなんだ、それなりに修羅場は潜ってきているようだな』

 

『………まあ、状況に左右の頬を叩かれるのには。ですが、だからこそ学べたことも多いです』

 

武は上官である赤穂の軽口に応酬しながらも、自分の考えを告げた。学べたことは多い。それは操縦技量であり、戦友でもあり。だからこそ武は思う。戦死した者がほとんどで、今はもうほとんどがいないけれど。知ってしまったからには。そしてあるものは活用するのが軍人としての正しい在り方である。経験も、知識も。そこまで告げた武に、部隊長は笑いかけた。

 

『いや、部下にも見習わせたいぐらいだ。紛うことなき軍人だな、貴官は』

 

連隊長と呼ばれた人物の口調が変わる。それは、軍人が軍人に話す時の声だった。

 

『赤穂涼一だ。試してすまんな、無礼だった。だが先ほどの話が聞こえてしまっては、どうにもな』

 

『鉄大和です』

 

武は試すという言葉を無視しながら、気になることを問い返した。無礼もぶしつけな言葉も、一昔前は日常的だったからだ。それよりも何かまずいことでも言ったのか、それを意識していた。やがて表面に漏れでた警戒を察したのか、赤穂は苦笑しながら提言した。

 

『そう警戒してくれるな、カラス君よ。まあ面識はないから、仕方ないかもしれないがな』

 

『それは、まあ………知らない人にはついていくなと、厳しく教えられましたから』

 

軽口で躱す武に、赤穂が乗った。

 

『と、何やら苦い顔をしているが、嫌なことでも?』

 

『いえ、言いつけを破った時のことを思い出して』

 

『ほう、何が起きたんだ』

 

問いかける上官に、武は嫌そうな顔をしながら答えた。

 

『………男に告白された挙句、脱がされそうになりました』

 

あやうく正義最後の砦(パンツ)まで。武が心底苦い顔で言った途端、赤穂は虚をつかれた顔になって。そして直後、笑い声を零した。口を手の甲で押さえるが、漏れでた息が証拠になった。

 

『ふ、くく………いや、すまん。君にとっては笑い事ではないな』

 

『どちらかというと、泣き言の類ですね』

 

武は肯定しながらも、目の前の人物を見た。いや、笑ってますよね、盛大に漏れてますよね―――とは言わず、視線だけで訴える。

 

『しかし、パンツは正義か』

 

『野郎でノーパンは悪かと』

 

『違いない!』

 

そうして、ようやく笑い終えたのだろう赤穂は武に向きなおった。災難だったなと労いの言葉をかけながら表情を真剣なものに変える。

 

『前戯は終わりだ。さあ、本番といこう』

 

『お願いします。隊の整備班長………“赤穂”軍曹殿から、何かお聞きになられたようですが』

 

『そして、鈍くもないと』

 

武は頷く。そもそも、隊以外の人間の前でカラスという言葉を口に出したことはない。そして、顔立ちもどことなくあの整備班長に似ていた。つまりは、自分のことをいくらか赤穂軍曹から聞いたのだろう。武はそう察して、そして話しかけてきたのには理由があると考えた。戦闘前の時間は貴重であり、無意味なことをするようでは大佐という地位には登れない。そう結論づけた武に対し、赤穂は悪くないと言いながら笑った。それは肯定を示すものだ。

 

嬉しそうに、話が早いと武に様々な質問を浴びせていった。

内容は主に、先ほど話していた内容から、BETAの今後の侵攻ルートについてだった。その上で、彼は武に問うた。

 

『遠慮は取り敢えず、棚上げにでもしておいてくれ。鉄少尉、貴官の意見が聞きたい』

 

『余所者の、しかもこんな子供の意見を?』

 

『使えるものは使えと、そう言ったのは貴官だろう? それに貴官は、この事態を予測していたように見えるが』

 

告げた赤穂に、武は沈黙を返した。

 

《まあ、BETAが相手なら“備えあれば嬉しいな”ってレベルだけどよ》

 

黙れ。武は声に告げながらも、答えに窮していた。そして沈黙の後、口を開いたのは、赤穂大佐からだった。

 

『沈黙は肯定と取る。それで、島根の一団が、こっちに向かってくる可能性が高いと?』

 

『………はい』

 

観念をした武は、決心を後に付け加えた。加えていえば、赤穂軍曹も無軌道な人には見えなかった。そんな人が話したのだから、意味があるはずだ。武はチャンスでもあると自分に言い聞かせながら、自らの意見を口にし始めた。

 

『東に、壁をされていますから。南は山で、大軍が通るには狭くて移動も遅くなります。そしてこの規模の侵攻なら、あいつらは停滞しない。それこそ水のようにあちこちに漏れでて来るかと。そして山間部の平地を抜けて南に………四国も悠長に構えていられない筈なんですが』

 

武は、今回の防衛戦は大陸で経験したそれより長期間になるだろうと見ていた。何より海の向こう、朝鮮半島の近くにはハイヴが乱立している。巣窟の3つより東進する一団の数、それが少ないはずがないのだ。長く、苦しい戦いになるのは間違いなかった。

 

そして長期戦を耐えぬくには、不可欠なものがある――――兵站だ。戦術機とて、弾薬も燃料なしに、BETAを抑えることはできない。だからこそ、兵站の肝となる四国は絶対に落とされてはならない、守らなければいけない要衝なのである。首都である京都の防衛戦において、四国からの側面支援の有無は継戦能力に大きな差が出てくる。万が一落とされでもすれば京都防衛の兵站に重大な問題が発生するだろう。

 

だが幸いにして、本州と四国の間には海がある。山陽まで侵攻されたとしても、瀬戸大橋を破壊してしまえば陸路での侵攻はなくなるだろう。BETAの習性を考えれば瀬戸内海沿いに進み、そのまま近畿へと進路を変えると見られている。

 

だが、と武は不安に思っていた。それも橋が無ければ、ということが前提であるのだ。依然として、瀬戸大橋が爆破されたという情報は入ってきていない。要因は色々と考えられるだろう。台風の影響だってあるかもしれない。だが、この状況にまでなっておいてそれでは遅すぎるのだ。武はまた、言い知れぬ不安を感じていた。それは先の言葉に同意した連隊長も同じだった。

 

『四国の橋が残っているのが気に食わないか』

 

『はい。半島から入水の報があった時点で、橋は爆破しておくべきだったと考えています』

 

正直な言葉に、赤穂は苦笑した。選ぶなとは言ったが、こうも変わるものかと。

 

『それほどまでに山陽側の防衛網は心もとないか』

 

『はい。山陽側の防衛のラインは第一が岡山市付近、第二が姫路市でしたよね』

 

『ああ。近畿に点在している部隊が移動中とのことだ』

 

対BETA戦においては、大戦力が展開できる平野、かつ海が近い場所で戦うのは鉄則でもある。だが、岡山市周辺の平野といえば瀬戸大橋があるのだ。もし移動中の部隊が間に合わなければ止めることはできない、そのまま四国まで素通りだ。そして台風は現在、九州の東から近畿・中部地方に移動していた。

 

『だけど、間に合わないという可能性も十分にありえます』

 

待ち合わせを時間通りに、を盲信するのは危険であると武は言う。あの強風が生易しくないことは、先の戦闘において確認してきた所だった。

 

『………近畿圏内は米軍や国連軍の協力もある、問題なく“固め”られるだろう。反面、中国地方に展開している両軍の数は少ないか』

 

『はい。出てきても、期待できるのは姫路あたりが限界かと思われます』

 

武は断言する。特に国連軍に関しては、部隊ごとに練度が違いすぎることがあった。もし指揮官が“ハズレ”だった場合、岡山で迎え撃つのは危険だと判断するかもしれない。その“言い訳”を助長する勢力の影も、あるかもしれない。不安な要素は大きく、それでいなくても岡山は遠いのだ。

 

『それよりは瀬戸大橋を落とし、姫路に退くことを進言する………そうだな、機甲師団をより多く展開できる方を選ぶか』

 

『その方が賢明でしょうね。意思疎通が万端であるならば、というのが前提ですが』

 

国連軍や在日米軍が提言したとして、そのまま受け入れられるのか。四国を地元にもつ人間、もしくは権力の基盤をもつ人間ならば瀬戸大橋を落としたくないと考えるだろう。爆破して落とすというのは最終手段で、できるかぎりは無事なまま、そう考える。だからこそ四国方面が大事な人間は、岡山に防衛線を築いて、そこで敵を食い止めたいと考える。

 

そして瀬戸大橋は、莫大なコストをかけて建てられた建造物である。故に壊すのには、多方面からの承認を得なければならない。間違いでした、ではすまないのだから。かといって、橋を渡られました、では笑い話にもならない。

 

『どちらにせよ、島根のBETAですね………倒せなくても、時間稼ぎは必要だ』

 

『四国の連中の酔いが覚めるまで待つ必要があると、こういうことか』

 

『はい。侵攻の足音が直に聞こえるまでは覚めない、なんてことは思いたくないんですが』

 

言いつつも、武はそうだろうなと思っていた。何より悠長、対策が遅すぎると。武の不満を何となくを察した赤穂は、そこで苦笑した。言うこともわかるが、それはあくまで机上の戦略という観点からである。

 

政治的な面が関わってくると、話は途端にややこしくなってくるのが常だ。

 

『………誰にとっての最善なのか、危地にあってもそれを模索したがる変人はいる』

 

『知ってます。それを言い訳に使いたがる人種も』

 

だから不満も、目立つようには出さないと武は言った。思うことは止められませんが、と皮肉を付け加えながら。

 

『しかし、やはり………爆破が完了するまでは岡山は死守するべきだと言うか。他の場所を放棄してまでも』

 

岡山以外は、例えば足元の山口や南の広島は。残っている人間はいるはずだが、と。問われた武は、無表情のままに返した。

 

『もう、今は。間に合わない場所が多すぎます。あのポイントに、しかもあの規模で上陸された時点で上陸地点より以西の人は………』

 

逃げるとしよう。だけど車で移動しても、安全圏まで逃げ切れる人は1割、あるかどうか。山陽を東に、近畿地方へと免られる人間が果たして何人いるのだろうか。舗道が壊れていればそこまで。戦術機でも運べるかもしれないが、それも一機に対して一人だけ。加速度病を発病すれば死ぬ可能性があるし、そもそもこんな状況でそんな真似ができるはずがなかった。だからこそ、報を知った時に叫ばずにはいられなかったのだ。

 

そのまま黙り込んだ武に、赤穂はまた謝罪をした。

 

『すまんな、意地の悪い質問をした』

 

『本当です………大佐殿。そして、聞きたくはないのですが――――もしも“そう”したいと願う衛士がいれば?』

 

助けたいと希う衛士がいるのなら。赤穂は武の問いに、早い意趣返しだと首を横に振った。

 

『許さんな。絶対にさせんさ。聞かなければ、降りた時点で射殺しよう』

 

巌とした口調だった。それを聞いた武が、複雑になりながらも安心した。もしも感情を優先し、勝手な独断を許す隊長であれば、自分たちは生き残れなかったと考えていたからだ。今は何より最終ラインを決めて、最悪は絶対に回避すべきであった。場当たり的に行動すれば致命的な瞬間に間に合わなくなり、そうなれば比じゃない数の人が死ぬ。武は、マハディオの言葉を思い出していた。

 

―――誰と誰を、守るのか。

 

手が二つしかない人間の、限界を示す言葉でもあるのだ。だからこそ四国を優先的に守るべきですと、武は主張を曲げなかった。赤穂は武の断固としての意見について、理由を再度問うた。それに対して武は、現存する戦力、その場所に問題があると答えた。

 

『山陰側に侵攻してきた一群は、兵庫の北あたりで止められるでしょう。日本海側の艦隊は、質、量、共に充実していると聞いています。戦術機甲部隊も同様に、高性能の第三世代機が多く配属されている』

 

京都には不知火も多い。艦隊も、日本海側ならば、国連軍や米国の艦隊がいる。一方で、瀬戸内海の艦隊は不十分であった。

 

帝国の上層部が日本という国の懐、内側ともいえる内海へと他国の艦隊を招き入れるのをよしとしなかったがためだ。

 

『一方で、山陽側は充実していない。何より四国を落とされでもすれば、海路での補給も期待できないんです。抜けられれば近畿にまで踏み込まれるのは、山陽側も変わらないのに』

 

『その先にあるのは、京都か』

 

『はい。だからこそ、姫路を最終ラインと定めるならば、四国の死守は絶対です。万が一でも落とされれば、BETAの大軍を継続して迎えるのは不可能になってしまう』

 

そして姫路で止められなければ、京都が窮地に立たされる。首都に刃をつきつけられれば、軍も国民にも動揺が広がることだろう。武にとっての最悪は、それであった。何よりも今、近畿圏内にBETAの牙を届かせるわけにはいかないと主張する。

 

『最終ラインに拘るが、その理由は』

 

『………自分は、近畿圏内に。あるいは京都のすぐ東、中部地方に残っている“避難民”の数はまだ多いと見ています』

 

九州と中国地方に住んでいてる民間人に避難命令が下されたのは、半島にBETAが入水してすぐ。十分な時間とはいえず、だからこそ近畿圏内や中部地方に留まっている人の数は多い。電車や車での移動にも限度があるし、何より今は機甲師団も動いているのだ。

 

琵琶湖より続く運河も、その一因を担っている。戦艦が移動できるというメリットの裏、デメリットが出てきてしまっていた。というのも、張り巡らされている運河が、車での移動を停滞させるのが原因だった。近畿より東に行こうとするならば、運河は絶対に通らなければいけないものである。そして戦艦をも通れる河であるというのは、同時に橋の構造を変えなければいけなくなるということだ。

 

武の言葉を聞いた赤穂は、そうか、と何かに気づいたように返事をした。

 

『橋は跳ね上げ式に………戦艦の移動も多い、常時降ろしてはおけんか』

 

『どうしても交通量は制限されるはずです。それに、東から移動している部隊も………道路のいくつかは規制されていると見ますが』

 

『そう、だな。しかし………』

 

赤穂は先の言葉に別の違和感を覚えていた。

 

『京都より、東か』

 

最終の防衛ラインの向こう、そこにあるのは本拠である首都。だが、それより東、先にある地方について言及する武に、赤穂は思わずとつぶやいてしまった。それに武は、淡々と答えた。

 

『………BETAが京都で止まる、なんて保証はどこにもありません。最悪は更に東にまで進むかもしれない』

 

その可能性の方が高いのだ。そうすれば、人が更に死ぬ。避難したと安心した多くの人間も諸共に、それこそ何千万もの人間が殺される。そのような理不尽な犠牲を防ぐのが軍人であり、自分たち衛士の本懐である。だからこそ、防ぐ手段を模索するのが義務であるのだ。

 

『以上、あくまで私見ですが――――と、どうされましたか、赤穂中佐』

 

『いや、分かった。理解させられた、とでもいうべきか』

 

言葉の途中で、赤穂は口を閉ざした。

 

『副長か、どうした』

 

『そろそろお時間です。それに………』

 

女性の声。そして告げられた内容に、赤穂は息をつまらせた。

 

『分かった…………鉄少尉、君の予想通りになったようだな』

 

間もなく、データが更新された。島根に集う赤の点、その突端が伸びていた。

 

南に細く、そして西に太く。

 

『感情も糞もない怪物では、挟撃にはならんか。だが――――全機、傾聴!』

 

そうして、命令は出された。その内容は、進撃の後に撃破というもの。リスクは多分に存在する。

それでも島根の、向こうさんの部隊を見捨てるわけにはいかん。

 

それが連隊長としての結論だった。

 

 

 

――――間も無くして、戦闘が開始される。向こうにいる島根側の戦術機甲部隊との挟撃ではあるが、尻をつついた形ではない、向い合っての戦闘になっていた。

 

武は、BETAの群れの構成がいつもと異なっている事に気づいた。BETAとの戦闘、そこでまず一番にかち合うのは突撃級である。しかしここでは、要塞級が敵の多くを占めていた。

 

『群れの後ろに近いからか………各機、光線級に気をつけろ! ここは群れの後ろだ!』

 

つまりはいつもは後ろに引きこもっている奴が多く、いつ光線級が束で出てきてもおかしくない。少し高度を上げれば、レーザーで撃ちぬかれる。短距離であれば宙空での高速移動で照射を外せるが、それも限界があった。要塞級が多く、スペースが少ないのも問題があった。

 

武は視界の端で、回避しあった戦術機どうしがぶつかり、倒れこむのを見た。

間髪入れず、衝角の一撃でコックピットが溶解液に包まれ、断末魔が通信を蹂躙した。

 

『各機、今の光景を活かせ。同じ死に方だけはするな』

 

武は言った。それが手向けであると、努めて冷酷を装い、言い放ちながらも脅威の群れの中へと吶喊した。スレ違いざまに長刀を一閃し、受けた要塞級が矛先を武に向ける。周囲にいるBETAも、一斉にその破壊行為を武へと集中するが―――

 

『さんざんに見たんだよ!』

 

狭いスペースは武が得意とする場所だった。そして敵の攻撃の兆候をほぼ完全に見切ることが可能な武にとっては、図体に反して動作が鈍い要塞級などいいカモでしかない。最小限の動きで衝角による一撃を回避する。合間に戦車級が飛びついてくるが、その跳躍の寸前を見きって、また回避。

 

即座に反撃に移り、動かない置物へと変えていく。脇を抜ける度にカーボン刀の銀閃が煌めき、汚い液体が地面を汚す。対する陽炎に、一切の傷はない。戦車級にぶつかった時に塗装が剥げたりもしているが、それだけだ。

 

噛み付かれた跡は存在せず、溶解液による損傷も皆無だった。そしてまた、機体は左右へと滑り、BETAが道化のように踊らされていく。まるで約束稽古のように繰り返される。常軌を逸した光景、それを見てしまった操緒は、戦いながらも絶句していた。

 

額には汗が、そして背中に流れる冷や汗はその何倍もあった。鉄大和という衛士の卓越した技量は知っていた。乱戦が得意とは事前に聞いていた。北九州の時よりも酷い状況にあるのも分かっている。

 

だからこそ戦意は高く、その技量が十全に発揮されているのだと予想はできる、だけど。

 

(あれが、人間にできること? たった15の、私よりも年下の少年が!)

 

操緒は内心で叫んだ。理解ができないです、と。あれだけの密度のBETAが相手になっていないなどと、夢物語の範疇である。機体は陽炎で高機動、自分の撃震よりも性能は上であろう。だが、とても真似できない機動だった。噂の不知火でも、こうはいくまいと、操緒をしてどこかで確信できるものがあった。

 

―――そして。

 

『こっちに注意を集める! 第二世代機だ、王も役目を果たせよ!』

 

『言われなくても!』

 

指示が飛ぶ。縦横無尽に駆けながらも、味方が見えている証拠だった。そして指示が出されるその間も、戦闘とは呼べない一方的な蹂躙は継続されていた。要塞級の一撃は触れれば溶ける必殺の矛だが、武は触れそうな程に近く在り、しかし決して触れずに。組み付いて噛み付こうとするその戦車級の手は、短刀による迎撃や短距離の跳躍、果ては体当たりで“いなす”。

 

使用している主な兵装も、短刀か、長刀のみ。折れればあちこちに落ちている、堕ちた機体の兵装だったであろう長刀を拾い上げ、新たな武器としていった。突撃砲の消費も、噴射跳躍の回数も数える程しか使っていない。明らかに長丁場の戦闘を意識してのものだった。

 

見た目にはピンチの連続にみえよう、そんな中で武機はまるで生真面目な事務職のように。自分の脅威となる敵、その“手前側”から丁寧に対処し、一定のリズムで一字一句、綺麗な文字を刻むように撃墜のスコアを上げていった。関節部に斬撃を受けた要塞級が倒れていく。回転しながらの斬撃に、3体一度に首を飛ばされた戦車級もいた。

 

たまに後ろに出てくる要撃級も、触れた途端に斬って捨てられた。風強い宙空の中で首が舞い、地面にどさりと落ちていく。

 

そして大敵である光線級も隙間から湧いて出たが、黙って見逃すような間抜けな衛士など、この戦場には存在しなかった。

 

『待ってたぜ!!』

 

王が即座に反応、何よりも優先して行うべきだと、尽くを潰していった。武の命令である。前衛遊撃に集中することになった王は、発見次第に突撃砲を斉射し、レーザーを撃つ隙を与えない。

 

そのまま、傍目には圧倒的な戦闘が続いていた。BETAの矛先が後衛にいる4人に向かう回数は、数えるほどに少ない。それは、本来の戦術機中隊の理想だ。長刀や短刀、近接の兵装を使う以上、武機はBETAに近づく必要があり――――それは注意が武機に逸れることを意味する。

 

そして食ってかかってはいなされるBETAは、良い的である。武が取りこぼした相手は、漏れ無く後衛の4人に蜂の巣にされていった。前衛が引きつけ、後ろがしとめる、正しく必勝のパターンだ。

 

『乱戦になったら、とてもついていけないと思ったけど………』

 

『固定砲台なら実質的な差は無いな』

 

技量が高い武達は陽炎やF-18といった第二世代機に乗っており、技量がその3人より低い九十九達は撃震という第一世代機を駆っている。だから九十九や風花は純粋な性能差から戦術運営に問題が、枷が出ることを危惧していた。しかし、これならば問題はないかと思っていた。

 

『擦り切れるまでは配られた札で。知恵と経験で不足なく、十分にするか。随分と大きく出たものだと思ったけど、妥当だったんだな』

 

そして、二人はこうも言っていた――――具申した所で、ホイホイと高性能の機体を貰えるようなら、苦労はないと。その時のことを思い出した九十九は複雑な顔をした。武も、そしてマハディオも無表情で、それでいてどこか遠い目をしていた。まるで昔に経験があったように。

 

『………そろそろ移動するか』

 

戦術としての理想。それを実践していた武達の撃墜速度は早く、周囲のBETAの密度は既に薄くなっていった。ならば、次の過酷を。武は告げながらも、死体が転がるBETAの上を移動していった。

苦戦している友軍の援護のために。第二世代機乗りとしても相応しい戦場に、敵の密度がより多い方へと移動していった。

 

そして――――最初が九州の基地で訓練をつけた中でも、素直な性格をした衛士だったのも幸運だったと言える。援護に向かった最初の部隊。武は彼らの前に立ち、抗戦しながらも事情を説明し、直後に自ら敵中へ飛び込んでいった。後は言葉よりも目で見た光景が説得力をもたせた。

 

武は自ら持つ最も優秀な武器である機動を最大限に活かし、所狭しなどと泣き言を言わずに、相手を泣かせ続けた。障害物などないという鋭い動きで撹乱し、相手の陣形を乱す。BETAとて、近接する戦術機に対して、反応せずにはいられない。しかし攻撃するも、既に相手はそこにおらず。そこに生じた隙を、背後からの突撃銃で一網打尽にされていった。

 

有用な戦術であるということ。衛士も馬鹿ではなく、直に見せられては理解するしかなかった。すでに自分の隊の前衛は、要塞級相手の立ち回り方が分からず、堕とされたか機体を損傷している者が多いから尚更だ。

 

ならば、と15の少年の背中に意義を見出した。反発心はあったが、命令に従うだけの理由がそこにはあった。そうして気づけば、6人の中隊は、18人になっていた。

 

武は増えた面子を見回しながら、どうするかと考えた。

 

『増えたな………っと、2時の方向。孤立している中隊がある、援護に向かう』

 

『りょ、了解』

 

戸惑いながらも、武以外の14人が了解と答えた。援護の後、人数は20の大台に乗っていた。2中隊に等しい数である。武はまずいな、と。一端留まれと命令し、告げた。

 

『密集し過ぎたら逆に危ない………二つの隊で動いた方がよさそうだ。周囲警戒しつつ、指示を待ってくれ。陣形を組み直した後に移動する』

 

反論は、出なかった。武威に封殺された形である。何より、動揺の欠片も見せていない武が、誰よりも上官として見えたからでもある。その上、シミュレーションでさんざんに叩きのめされた衛士も多かった。

 

『………プライドよりも、生き残りたいと願うか』

 

『バドル中尉?』

 

『優秀だと言ったんだよ、橘少尉』

 

生存本能が高い証拠だ、とマハディオは笑う。技量も高い、とは慢心を呼ぶかもしれないので黙ってはいたが。そう、態度には示さなかったが、マハディオは舌を巻いていた。

 

『飲み込みが早いな。日本人は生真面目だと聞いていたが、納得だ』

 

『必要なことをしているだけです』

 

そうか、とマハディオは苦笑する。ちなみにマハディオは武を日本人にカウントしていなかった。父である白銀影行も同様に、白銀一族という生き物であると解釈していた。やがて、そんな少年の指示が終わる。武は2隊に陣形を組み直した面々に向け、宣言した。

 

『休憩は終わりだ。これより移動を開始する』

 

敵の密度が高い場所に移動しようとする。その直前、待機していた助けられた内の一人が、おずおずと武に問いかけた。

 

『あ、あの鉄少尉。無理をさせている自分たちが言うことではないですが、体力は大丈夫なのですか』

 

『えっ』

 

『えっ』

 

変な声のあと、沈黙が流れた。再起動した武が、不思議そうに答えた。

 

『………いや、昨日の戦闘は短かったし、今日も。まだ戦って1時間程度しか経っていない』

 

『ま、まだ?』

 

『程度って………あの機動を一時間も、いやでも……』

 

また、沈黙が流れた。今度は気まずい雰囲気が。

 

(………常識とはあくまで言葉であり、万人に共通する認識ではあり得ないか)

 

九十九は脳裏に、知り合いの祖母が言ったそんな一文を浮かべていた。

一方で操緒は、戦々恐々としながらも聞きたいことを口にした。

 

『そ、そうですね、余裕があるように見えます。それは無理を………無理をした上での戦闘ではないと、だからですか』

 

『ああ。単機で気張る状況じゃないから、長引くことも考えた。無駄なく無理なく、節度ある機動を意識したつもりだったけど………………何でそんな訝しげな目を? 九十九中尉、碓氷少尉もかよ』

 

聞いていた全員。マハディオと王を除く、全ての衛士がたまらず感情を顔に示していた。

曰く、何を言っているんだこいつは。対して武は心外だ、と返した。

 

『光州の、あの光線級吶喊よりは遥かにマシな機動だったろう。そんなに驚くような事か――――と、しゃべくってる暇もない。休憩は終わり、友軍の援護に行く』

 

今は数を保持して、何よりも部隊の形を維持するべきだと主張した。

残弾数が敵より少ないかもしれない現状、それを更に減らすのは得策ではないと。

 

『迅速に移動を開始する。各自、仲間との連携を常に意識。焦った上でのミスだけは避けろ、敵の数が多くて無理と思えば一時的に退け。そして、無理だと思ったら恥と思わず助けを呼ぶこと』

 

命令に、若い――――とはいっても武よりは年上の――――衛士が反応した。

 

『了解です! “助けを呼ぶのは恥ではなく、無駄死にこそが恥である。そして仲間の仕事は、死角を補うことにあり”と………そういうことですね!』

 

何故か敬語になっている、恐らくは10代であろう男の衛士の言葉。武は聞き覚えのあるその言葉に頷きながらも、顔を引き攣らせた。マハディオも同じくだ。二人の頭の中に、連携の重要さを説く女性の拳士が描かれた。

 

『階級は同じですが、従いますよ。“荒れる波に向かうなら、船首は頑強な一つである方がいい”、とも言いますしね』

 

『そうだな………ちなみに聞くけど、二人の愛読書は?』

 

また聞こえた、とても覚えのある言葉を前に武は問いかけて――――“クラッカーズ・バイブル”という返答に、視線を逸らした。小声で教典かよ、とツッコミはいれていたが。

 

一方で、マハディオは目の前の衛士達の飲み込みの良さについて、理解していた。

 

前衛に弾を当てず、後衛として援護するタイミングの良さ。前の味方に当てるは後衛最大の恥であると言って聞かなかった戦友が居た。待つことが大事なのだと主張した二人。それはマハディオも知っている人物だった。恐らくは、アルフレード・ヴァレンティーノとサーシャ・クズネツォワ。後衛きっての高練度衛士達が謳った、戦術観によるものだ。

 

そしてマハディオはひと通り目を通した中に、あの二人が共通して認識していた言葉を読み上げた。

 

『………“後衛の仕事は敵を無駄に多く倒すのではない。必要な時に必要なだけ、隊の生を考えながら弾をばらまくことにある”だったか』

 

『そうです! 中尉もお読みになられましたか! 生き残ったら、最強の衛士の形の討論会を―――』

 

『あー、全機傾聴だ!』

 

何か興奮し始めた衛士に、武は時間がないと移動を指示した。

助かったというマハディオの顔と共に、二つの中隊が動き始める。

 

そのまま、苦戦している味方の援護に入っていった。やがて戦域が広くなりはじめる。範囲が武が全てをカバーできる状況になっていったが、損耗は増えなかった。生き残っている前衛も、先の武の動きを見ていたからだ。そのまま真似することはできないながらも、要点を掴むことはできたようで、味方機との連携を上手く回し始めていた。

 

ガキも多いが、精鋭と呼ばれるのは伊達ではないか。王は、そんな感想を抱いていた。

 

武も同様だ。しかし、これでも勝ち切ることは出来ないと気づき始めていた。

 

『くそ、敵の数が………!』

 

相も変わらず数が多いBETAを前に、悔しげに呟く。戦い始めてから2時間あまり、かなりのペースで削れてはいるが、一向に赤の点には途切れが見えない。東に流れていないことを見ると、向こうの部隊が奮戦していることは分かったが、BETAの赤はまだまだ健在である。これで機甲部隊や艦隊の援護があれば、一気に減らせる。だが、両方ともにまだ援護できる状況にはなかった。

 

打撃力が不足している。武はそれを痛感しながらも、目の前の敵を倒し続けることしかできない。助けた味方機も、集中を途切らせることなく戦い続ける。今回の戦場は激戦であり、多くは命令を前に拒絶こそしなかったが、死を覚悟していた者も多かった故に身体は固く。戦い始めた時には動きも鈍かったのだが、こと今になっては違っていた。

 

言葉にはできないけれど空気が――――なんだか、勝てるような気がすると思い始めていた。

可能性を見たのだ。それを知らせた衛士が、戦っているからこそ。特別な事はしていない。斬って走って、跳んで撃たせて、助けて逃がして。弱音を一切吐かない少年を前にして、先に諦めることが出来るかと。全てではないがそう考えた衛士は多く、考えない衛士をも引っ張ってBETAの壁に抗い続けた。

 

BETAは強い。それは知っていた。

 

BETAは多い。それも知っていた。

 

だけど、勝てるかもしれないと思い始める者が出てきた頃だった。

 

気づけば武達は部隊の中央に、連隊長が見える位置まで来ていた。通信が開く。その顔は、青を通り越して土気色になっていた。

 

『大佐殿、一体何が………?』

 

『………噂をすれば影、というがな。今回だけは例外であって欲しかったよ』

 

赤穂が答え、また続きの言葉を言おうとした瞬間、通信の連絡が入った。

 

島根側のHQだろう、その担当官の声は暗かった。

 

『諸君、落ち着いて聞いて欲しい』

 

不吉な出だしだと、武が思う暇もなかった。

話す直前に、広域データリンクよりレーダーのデータが更新される。

 

島根の赤はやや薄れているが、しかし問題はそこにはない。更新の前後で、明らかに変わった箇所があったのだ。

 

それは現状武達がいる島根の西、山口県は萩のあたり。九州よりやってきた武達の部隊の、ちょうど後方の色が変わっていた。

 

『こっ、くそ、まさか…………!!』

 

思い当たる可能性を並べ、そして気づき、同時に戦慄いた。間も無くして報告が入る。

 

 

『沿岸警備隊より報告! BETAの一団が別の地点より上陸、場所は―――ま、待って下さい!』

 

 

見れば、赤の点が。萩よりも更に島根より。後方約30kmの地点にある浜田港に、赤の点が増えていた。気づいた武が、叫ぶ。

 

『ここに、来て新手だって!?』

 

『はい、更に報告が!』

 

悲鳴のような報告。見れば、下関のあたりにも赤い点が生まれつつあった。そして、更に西にも。

 

『きゅ、九州より報あり! 長崎にも多数のBETAが上陸したとのことです!』

 

『く――――!』

 

武が歯噛みする。地理も、戦力の位置関係も把握していたからだ。

 

『艦隊の砲撃は!』

 

『光線級、多数! 全て迎撃されてます!』

 

『重金属雲があるだろう! 太平洋に展開している艦隊に………いや、この強風下では無駄か!』

 

『さ、更に西! 師団規模のBETAが上陸してきます――――!』

 

先にまで優勢だった戦況が、一転していた。

その上で、人類側は打つ手を完全に封殺された形になった。

 

何より天候の悪化がここに来て響いていた。一方で対するBETAの驚異的存在たる光線級のレーザーは、この風雨などものともしないというのに。上陸してくる数とその中に含まれている光線級の割合を考えれば、航空機による援護も最早絶望的と言える状況になっていた。

 

完全に、立場が逆に――――挟撃を受ける側に、退路を絶たれてしまった。

 

どうすればいいのか。自問自答する武は、ふと赤穂を見た。すると、そこには血の気の色が戻った軍人の顔が。やがて彼は、口を開くと武に向けて言葉を発した。

 

 

『………鉄少尉』

 

 

頼みが、あると。

 

 

その声色は、武の声を揺さぶって消えた。

 

 

 


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