Muv-Luv Alternative ~take back the sky~   作:◯岳◯

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何とか更新できました。絶好調です。


それでは、23話最後の話となります。



23ーⅢ話 : ☆嘘ネタ☆ しょうき ~ いんさにてぃ ~

 

 

日が過ぎたので。

 

 

 

 

 

 

 

フールネタです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶叫と共に放たれた36mmは、音になった。そして青の不知火、その損傷していた機体の脚に直撃すると、破壊の痕跡をまき散らした。

 

それが絶対的な決定打となった。この勝機を逃すSu-37ではない。追撃はつつがなく行われ、短刀が跳躍ユニットに。脱出する暇もない、損傷して漏れでた燃料がエンジンに引火し、炎の艶花が咲いた。後に残ったのは、残骸と黒煙だけ。

 

『………あ?』

 

ユウヤ・ブリッジスは自分の行動によって起きた結末を、確認し。

そして、何かのスイッチが入るような音が聞こえた。

 

正確には音ではない。だが、そう錯覚する程の殺意が向けられていた。

直後に動いた殲撃10型、殺気の主である衛士――――葉玉玲は周囲に居る何もかもを置き去りにして、突撃砲を構えた。

 

ユウヤも、一流の衛士である。すぐに動けば、回避はできただろう。だが、あまりにも想定外の結末を前に、不知火・弐型はただの案山子であること以外に出来ることはなかった。

 

そして120mmの砲弾は、薄い第三世代機の装甲を越え、乗り手に死の報せを伝えるのに十分だった。

 

直後に、次なる死が産まれた。殲撃10型が背後からSu-37に短刀で貫かれたのだ。その成果を示すように、黒い短刀の切っ先は血で赤染まっていた。

 

だが、Su-37の中に居る姉妹は予想外の出来事に見舞われていた。貫いた短刀、衛士も絶命している筈なのにどうしてか腕が抱え込まれていて、そのせいで抜け出せないのだ。

 

身動きのできない戦術機など、ただの大きい的である。その隙を逃す筈もない。何より、この惨状を引き起こした元凶なのだ。その憎悪のままに、倒されていた2名が――――タリサと亦菲が、倒れこんだ機体を動かし、突撃砲を斉射した。

 

2発、3発で事は足りた。それでもなお、弾は撃ち続けられた。

当たり、散らばり、血に、臓物が。

 

絶叫が鳴り止んだのは、弾倉が空になってから。戦術機の指はまだ引き金を引き続けてはいたが、発射される物の無いまま、虚しい音だけが響いた。

 

 

『………BE………TA、が………』

 

 

唯依が、息も絶えだえにつぶやく。引き寄せるものが引き裂かれた今、帰巣本能に導かれるBETAを押しとどめられる要素はない。

 

 

そうして――――点在していたBETAが、デッド・ラインを越え。

 

数千の水爆が、何もかもを。ユーコンの中から周辺にある全てのものを、慈悲無く容赦なく区別することなく、粉々にして吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「副司令………」

 

「………終わる時は案外あっけないものね」

 

 

夕呼の元には、あらゆる情報が集まってくる。オルタネイティヴ計画の中枢とは、そういう場所だ。認識したくもない情報まで、絶え間なく、区別なく、認識させられることになる。

 

――――ソ連、大東亜連合、統一中華戦線、欧州連合がアメリカに宣戦布告。

――――アメリカは徹底抗戦の構え。世界は2つに分かれ、殺しあうことになる。

――――日本は海岸沿いの地域が想定以上の被害を受けて壊滅状態。食料生産プラントの半数が壊滅。戦争状態にある各国から食料の輸入は受けられず、二ヶ月後には国民の1割が餓死する目算。

 

「………盛大な自殺劇ね。敗北も滅亡も理解している、勝てないのも分かってるけど………舐められたままでは終われないってわけ?」

 

この状況において、人は殺しあう事を選択した。アフリカ大陸と南米大陸の各国は静観の構えだが、欧州連合の動きが怪しいとのこと。統一中華戦線も、ベトナムとの国境線に戦力を集中しているとの動向あり。

 

かくして、世界は戦国時代に入ったのだ。かつての日本と異なるのは、勝利した所で何も得られないこと。BETAはユーラシアに健在であり、まだまだ余力を保持している状態にあるのだから。

 

 

全てが悪い方向に。

まるで予め定められていたかのように、人類は坂道を転げ落ちていく。

 

空は、水爆によって巻き上がった粉塵で覆われている。

黒く、暗く。まるで影の反逆であると、光の全てを覆い隠した。

 

その空が示すように、未来は閉ざされてしまった。各国に、人としての理性があるかどうか。十中八九、ラグランジュ点で建造している大型宇宙船にも手は伸びるだろう。

 

その果てにある星にも、希望はあるのかもしれない。無数に存在するBETAが、その星にやってこないという確証を信じられる夢想家ならば。

 

仮初の希望に縋る、道化達の芝居が始まる。果てに待つものが死であると知らず。大海の中央で船から脱出するネズミのように、いずれは沈んで溺死する定めのままに。

 

 

かつては人類の希望の中枢が集まっていた部屋の中。

今は嘘のように静まり返ったその中で、銀色の少女は、社霞は、ぽつりと零した。

 

 

「………うそつき」

 

 

天井に向けられた言葉は空に届くこと無く、虚空に消えて散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________________Muv-Luv Alternative ~ take back the sky ~ THE END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     *      *

  *     +  うそです

     n ∧_∧ n

 + (ヨ(* ´∀`)E)

      Y     Y    *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





今年のお題

 “嘘でよかったと思わせる嘘”

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