私が殺した彼女の話   作:猫毛布

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生きる、という事は辛いことなのです。
生きる、という事は正しい事なのです。

治す、という事は正しいコトなのです。
治す、という事は間違った事なのです。


55.俺が生かした彼女の話

「…………」

 

 俺は一人でとある扉の前に立っていた。

 日本語ではなく、べつの言語で書かれていたこの部屋にいる人物の名前。そこにはしっかりと『RUANA』と書かれていた。

 苗字も、ファミリーネームも一切無い彼女の名前。

 今朝に束さんから「目が覚めた」という報せを受けて今、ここにいる訳だ。

 起きている、という事に俺は緊張した。

 きっと彼女は俺を責めるだろう。彼女が怪我をしたのは……彼女が瀕死になったのは俺の責任でもあるんだ。

 

「……よし」

 

 一度瞼を下ろして、深呼吸を二回ほどして、瞼をあげて俺は目の前の扉を三回叩く。

 四秒ほどして束さんの声が中から聞こえた。

 

「どぞ~」

 

 そんな気の抜けた声に俺は五度目になるかという溜め息を吐き出して扉へと手をかけた。

 扉を開けばソコは個別の病室で窓際に束さんがニッコリと笑顔を作っていて、ベッドには彼女が座っていた。

 ボーッと窓の外を見ていた顔は俺が入って六秒ほどの間が開いて、俺の方向を向いた。

 俺が見ていた笑顔でもなく、あの時の様な嗤いでもなくて、そこに表情など元々なかったかの様な、無表情がジトりと俺を見ている。

 

「……なに?」

「ごめん」

 

 彼女の声に、俺は咄嗟に謝ってしまった。

 俺のせいで彼女は怪我を負ったのだ。謝るのは道理だろう。

 

「……なにが?」

「君に怪我をさせた。俺が攫われなかったら、俺がもっと強かったら」

「…………」

 

 頭を下げていた俺は俺の中の気持ちを吐き出す。

 吐き出して、俺の耳にバサリと布団が宙へと舞い上がる音が聞こえた。

 視界が回転して、床を見ていた俺は天井と彼女の顔を視界に入れている。

 

「ふざケるな!!」

 

 俺に跨っている彼女が叫ぶ。怒りの篭った声で。そうだろう。俺は責められるべきだ。

 

「おまエ!! どうして私を生き返らせた!!」

「え?」

「どうして死なせて(・・・・)くれなかった!!」

 

 え? どういう事だ?

 生きてるんだぞ? 死なずに、生きているのに、どうしてソンナコトをイウンダ?

 

「ッ、ガァァァアアアアアアア!!」

「おい、どうした!?」

 

 突然彼女が自分の体を縮こめて床へと転がる。俺は急いで起き上がり彼女の体を支えようとする。

 

「だめだよ、キミ」

「束さん!?」

 

 ニッコリと笑っていた束さんはそんな表情がなかったかの様に冷たい瞳で彼女を見下していた。

 

「いっくんに手を出すのはいただけないなぁ」

「束さん! コレはどういう事なんだよ!」

「やだなぁ、いっくん。私は君の願いを十全に叶えてあげたよ。それこそ非人道的だと言われたとしても、医学界に革新的な一手を加えたと言ってもイイ程正当な方法であることは神様……いや、ちーちゃんに誓おうかな」

「何をしたって聞いてるんだよ!」

「彼女……えっと、ルアナちゃんだっけ? まあ、どうでもいいけど、彼女をISへと改造したんだ」

「あい……えす」

「ああ、今いっくんが思ってるような事じゃないよ。丸々全部を改造した訳じゃない。正確には彼女としての原子構成と情報を丸々移したんだ。彼女は彼女ではないかもしればいけれど、れっきとして世界は彼女を彼女と認めている。

 ま、難しい話かもしれないけど、人間としての死を迎えようとしていたコレを助けるにはこうするしかなかったんだ。だから、私は手を加えた」

 

 待て、待て待て。つまり、どういう事だ?

 ISへと改造したのは束さんで、でもそうしないと生きる事が出来なくて、俺がソレを願って、でもそうするとISになって。

 でも、ソレと彼女がいま痛がっている理由には繋がらない。

 

「それと、ソレはちょっとしたリミッターだよ」

「りみったー?」

「人間で言えば痛覚だね。例えば指を逆向きに折り曲げようとすると痛いでしょ? 脳が警告を出しているんだけど、ココまでは大丈夫かな。

 この子はいっくんに危害を加えようとしたでしょ? だからリミッターが起動して痛みがあるんだよ」

 

 俺を押し倒したから、そのぐらいのことでこんなに痛がるのか。

 

「ッァァア!」

「束さん! どうにか止めれないのかっ?」

「んー、その子が死ねば止まるけど?」

 

 そんな事、出来る訳が無い。

 せっかく助けたのに、せっかく救えた命なのに。

 

「ま、所詮は抑えるための痛みだからね。スグ、とは言わないけれど収まりはするよ」

「でも」

「コレに関しては、そういうモノだ、って理解しなくちゃいけないよ」

 

 そう言われて、俺は病室から追い出された。

 その扉の前で自分の膝を抱いて、まるで泣く様に縮こまった。

 

 

 

 

 

 

 

 きっと数時間程たって、束さんが病室から出た時に俺は病室の中に入った。

 束さんは俺に何かを言おうとしたけれど、口元に笑みを浮かべるだけで何も言わなかった。

 

 俺が病室に入ると、そこにはベッドに座っていた彼女がいた。彼女はやはりゆっくりと俺を見て、今回は溜め息を吐き出して窓の外を見つめた。

 

「……イチカ・オリムラ。わたしハ、ヒトとしテ、死にたかった」

「…………」

「ワタシは、オマエが憎い。殺したいホド、憎い。女として死んだワタシを、ムリに生きながらえさせた、オマエが憎い」

「……俺を殺すか? 殺して、君はどうするんだ?」

「死ぬ」

 

 

「じゃあ、ダメだ」

「は?」

 

 俺は声を出した。

 どうしようもない俺の単純な気持ちが喉を震わせて彼女の要望を否定した。

 俺は、彼女に生きていて欲しいのだ。

 その為なら、俺は自殺してもいいし、彼女に殺されても文句は言わない。

 言わないが、ソレで死ぬのなら、話は別だ。

 

「俺は生きててほしい」

「…………」

 

 彼女は思いっきり眉を顰めて俺を見た。

 ありえないモノを見るように、意味の分からないものを見るように。

 

「俺は君に生きててほしい。だから、俺は死なない」

「……」

「君が生きたくない、って言っても、俺は君に生きててほしい。君を治した事も恨まれる。だけど、生きててほしい」

「……イチカ・オリムラ。ワタシは君を殺す為に生きるぞ?」

「それでも、俺は殺されてやらない。君に生きててほしいからな」

「…………ソウか」

 

 溜め息を吐き出した彼女はまた窓の外を眺めいて、表情は分からない。

 取り返しの付かないことをした。でも、生きていれば、とも思った。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇

 

「だから、俺はルアナを生かした」

 

 少しだけ長い独白。ソレを全部吐き出した一夏は息を吐き出して、しっかりと前を向いていた。

 その表情は喜怒哀楽のどれでもなくて、けれど無表情という訳でもなかった。

 

「これで俺の話は終わり。これが俺が殺したルアナの話で俺が生かしたルアナの話だ」

「……だから」

 

 一夏の過去に納得がいったようにセシリアが呟いた。一夏はきっとルアナを生き返らせたことに後悔をしている。

 いや、生かした事は悔やんではいない。ソレこそ一夏は正しい事をしたのだ。けれど、ソレが人間としての生ではなくISとしての生であることは予想していなかった。

 だから一夏はルアナに償うために色々と世話を焼いているのだろう。

 

 ソレを理解した面々は一夏の行動をようやく納得し、ルアナへの意識を改める。

 一見して我侭な姫様が悲劇のヒロインへと格上げされてしまった。簪なんて表情にこそ出していないがボロボロと泣いているのだ。

 簪から言ってみれば、ルアナの行動は憧れそのままであるし、ISとして生き返ったルアナを可哀想だとも思えた。一夏の過去? 知りませんね、そんな事。

 

「一夏」

「なんだ? ルアナ」

 

 そんな悲劇のヒロインであるルアナが少し重々しく声を出した。

 

「アイスが食べたい」

 

 いや、出てきた言葉はいつも通りで何か安心した。彼女は彼女である。

 そもそも、周りの印象が変わった所でルアナが今の状態を変えるか、と言われれば絶対に無理というかしないだろう。

 我侭な姫様は変わらずも我侭なのである。

 

「冷凍庫に入ってただろ?」

「夜に全部食べた」

「……太るぞ?」

「ISって便利」

 

 しかもその悲劇とは何だったのか、と言わんばかりに自分の利点にしている。美味しいものを無限に食べれるのだ。

 一夏は溜め息を吐き出して立ち上がる。その動作に買い物に行くのだと察したセシリアと箒は反応した。

 

「私も行きますわ!」

「私も行くぞ!」

 

 声を出したのは同時。立ち上がったのも同時。

 一夏はそんな二人を見て、仲がいいなコイツら、と思った。呟いたら折檻されるのは目に見えていたので口には出さなかったが。

 

「一夏一人で行けばいい」

「いえ、ルアナさん。アナタの為に私が色々と買ってきますわ!」

―一夏さんと二人きりで買い物!

「バーネットには何かと恩があるしな。私と一夏が行こう」

―一夏と二人きり!

 

 そんな内心が聞こえてきそうな二人に黙っていた鈴音が溜め息を吐き出した。

 

「ちょっとは一夏を一人にさせてあげなさいよ」

「な!?」

「あんまり一夏の前でこう言うのもなんだけど。過去を喋るって結構疲れるのよ。しかも自分が攫われた話だとか、ソレでルアナが死んだ事とか、結構ヘビーな話題だったんだから」

 

 だから、一人で行かせてやれ。

 そう鈴音は二人を抑えた。そう言われれば、押すことも出来ず二人はバツの悪そうな顔をして椅子に座った。

 

「なんか気を使わせて悪いな、鈴」

「いいわよ。長い付き合いでしょ」

「はいはい。ソレを気にするなら貸し一で覚えといて。アンタは早く買い物に行ってきなさい」

「おう」

 

 ニカッと笑ってから一夏は玄関扉へと向かった。

 リビングから出なかった面々は耳に扉の音と足音を入れて、一夏が外出するのを把握した。

 

「さて……それで、話してもらおうかしら?」

「何を言ってますの?」

「あのねセシリア。一夏が帰るって事、誰に聞いたの?」

「え? ……ルアナさんと模擬戦の予定を決めている時に呟いていたのを聞いて……」

「篠ノ之は?」

「む? 私はこの前バーネットと戦闘技術の会話をしている時に」

「そういう事よ」

 

 鈴音はしっかりとルアナを見つめて溜め息を吐き出した。ルアナはその瞳をしっかりと見つめて、僅かに口に笑いを携えた。

 

「察しがいい」

「何年友達やってると思ってるのよ」

「二年」

「その程度ならわかるって事よ」

「どういう事だ?」

「全部ルアナの仕組んだ事よ。ちなみに私はルアナにメールで『この日は一夏と家に戻るから遊ぶならソッチに』って連絡が来たのよ」

「朝に来るとは思わなかった」

「朝ならアンタは寝てるでしょ?」

「むぅ……」

 

 少し納得してなさそうな顔でルアナは鈴音を睨んだ。その睨みもなんのその、慣れたような顔でふふんと息を漏らした鈴音。無い胸も張っている。

 ルアナは長く息を吐き出して、今一度全員を見る。

 ここに居る人間になら、任せることが出来るだろう。少なからず、一夏の為に朝から来ているのだから。

 

「まず、皆の誤解を解く」

「誤解?」

「私の性格についてよ、篠ノ之」

 

 唐突に出てきた女性らしい言葉に箒とラウラが身構える。両手を挙げてルアナはソレを制した。

 

「誤解を解くのよ、落ち着きなさい二人とも」

「どうしてバーネットが」

「ソレが、誤解よぉ」

「ばーねっと?」

 

 キョトンと声を出したのは簪だった。

 簪にしてみれば、こうして女性らしい言葉を扱うルアナは珍しいことだけれど、目にしている。

 首を傾げた簪にルアナは微笑んで口を開く。

 

「私にバーネットという人格は無いの」

「は?」

「え?」

「私はルアナ・バーネット。ずっと言ってる事よ」

 

 そうである。彼女は偽っていない。ずっと言っていたのだ。自分は『ルアナ・バーネット』である、と。

 唖然としている面々でシャルロットと簪だけは納得の顔をしていた。

 簪はそもそもルアナのことを二重人格者だなんて知らなかった。知っていたならちょっとテンションが上がっていただろう。

 シャルロットは薄々ながら、気がついていた。男装時に自分を襲ったバーネットに違和感を感じて、そして自分の買取の時にその疑問が解消された。

 尤も、ルアナ本人から宣言された訳でもなかったし、もしも二重人格者だっとしてもそれはソレでシャルロットからすればよかったのかも知れない。

 愛らしくも毒を吐くルアナと艶っぽく蟲惑的なバーネット。一粒で二度美味しい、とは言わない。

 

「鈴音」

「何よ」

「ごめんなさい。少なくとも二年。私は友人であるアナタを騙したわ……ごめんなさい」

「……どうせ必要なことだったんでしょ? なら私が言えることはないわよ」

 

 自身の中にあった気持ちを鈴音はお茶と一緒に飲み干した。

 その態度にもルアナは微笑み、一つだけ深呼吸をする。

 

 大きく吸い込み。

 少しだけとめて細く吐き出していく。

 

「さて、じゃあ……一夏が殺して、一夏が生かした私の話をしましょう」

 

 ルアナが取り出したのはナイフと、そしてもう一つ。銀色で鈍く輝くリボルバー型のピストル。

 

「私は、殺す事を仕事にしていた……所謂殺し屋なの」

「ちょっと待てぇい!!」

 

 思わず鈴音は声を出してしまった。思わずでたツッコミ。その反動か座っていた椅子が大きな音を立てて床へと倒れた。

 その様子を見ながらルアナは変わらずも無表情で鈴音を見つめている。

 

「何?」

「殺し屋って、そんなモノいる訳ないでしょ!? どこのライトノベルよ! どこの漫画よ! どこのアニメよ! あと、更識簪! 目を輝かすな!」

「ひぅっ、ごめんなさい!」

「……いや、うん、その私も悪かったわ……」

「さて話が纏まったから先に進むけど」

「纏まってないわ! 何をどうしてまとめたの!」

 

 ルアナは口をニヤニヤと笑いに歪めて鈴音を見た。その表情に鈴音は顔を顰めたが何も言わずに溜め息を吐き出して椅子を戻して座る。

 

「私は殺し屋。ソレは事実よ」

「バーネット。その証明はあるのか?」

「無いわ。私の主張だけ……けれど、意味の無い嘘は吐き出さないわ」

「……そうか」

「アンタ、それで納得するの?」

「否定する材料もないからな。バーネットが強い理由にも説明がつく」

「そりゃぁ……まあ、そうだけど」

 

 箒の言葉に鈴音は徐々に落ち着きを取り戻していく。それでも眉間には皺が残っていて、溜め息は尽きない。

 

「よろしくて?」

「なに?」

「殺し屋、というのはイイのですけれど。第二回モンドグロッソ時には既になっていた、という事ですの?」

「イエス。私はその時点で両手の指以上には人を殺している」

「……そう、ですか」

「ラウラは驚いてないね」

「ん? ああ、私は知っていたからな」

「は?」

「いや、正確には予想だったが……殺し屋、という職業に関してはわからなかったぞ?」

「いやいや、なんで分かるのよ?」

「ルアナの動きはシステマやクラヴ・マガ……軍で教えている格闘術を使ったモノが多かったからな」

「? ISでの戦闘でそんな事してたの?」

「む? ISでの戦闘ではしてないぞ? 格闘術がISに通用するのか?」

「はぁ……ラウラとは時折白兵戦、組み手をしてたの」

 

 頭を抱えてラウラとの組み手のことを喋るルアナ。その言葉に得心したのか、何度か頷いたセシリアや鈴音。

 ラウラはといえば、頭の中で何度模擬戦を繰り返し、軍事格闘術をIS戦闘に用いれるかを検討する。

 

「どうしてルアナは殺し屋になったの?」

「別の方法でお金を稼いでいたら、拾われたのよ」

「別の方法?」

「コレ」

 

 とルアナはようやく机に置いたナイフの隣のものを握った。銀色の鈍い光を照り返したソレを持ったルアナ。後になるが、フォークではなくピストルである。

 

「ロシアン・ルーレット。最初は二セントから始まるの。一度引き金を引くごとにお金は増えていく。十ドル、二十ドル、ってね。

 銃弾が出てこれば、それでオシマイ」

 

 ルアナは銃を眉間に押し当て、ハンマーを引く。躊躇いもなく引き金を引き絞り、ハンマーがガチンと雷管を鳴らした。

 

「ちなみに幾ら稼いだの?」

「さぁ……」

「さぁ、って」

「それこそ鈴音は知っているけれど、私は運がいいのよ」

 

 人が払える額なんていつの間にか超えていた、なんて今思えば、という話である。ルアナは自身の記録にある回数を指折りで数えてみたが、途中で面倒になって諦めた。

 この世界の『悪』を煮詰めたような世界で、彼女は金を手にしかけた。当然、多大なる金額をあくまで普通の少女なんかに分け与えられる筈もない。

 

「それで私はちょっとした機関に拾われた。機関、と言っても研究施設というべきかしら。

 殺しの技術と持った因果を用いた理論。夢物語を追いかける研究者達。そういう、本当にドコかイカレた小説をそのまま現実に持ってきたような所に拾われたの。

 それで、名無しの私はメデタク殺人者になりました」

 

 パチパチ、と乾いた拍手を自分でして、机に銃を置いた。どうしようもないソレを見つめて、ルアナは溜め息を吐き出す。

 

「私と一夏の関係に戻りましょう。

 私と一夏の出会いは偶然じゃなく必然だった。一夏にしてみれば偶然だったのかも知れないけれど、私にしてみれば必然でしかなかった。

 ま、機関からの命令で私が一夏を殺しにきたからなのだけれど」

「一夏を……」

「そう。織斑一夏を殺せ。コレが私が受けた命令」

「ちょっと待て。一夏の話ではお前が一夏を守っていたのではないか?」

「獲物を取られたくなかったもの。あの場で殺す事も出来たけれど、私は殺しの場に獲物と二人っきりであることが矜持なの。信条でもいいわ」

 

 だからこそ、ルアナは一夏を守った。守った後に、殺すつもりで守ったのだ。

 なんとも滑稽な理由ではあったけれど、ルアナは一夏を助けて、一夏はルアナを治した。

 

「私が治されたのはソレこそ運がよかった……尤も、私としては死にたかったのだから運は悪かったのかしら?

 世間的には運よく生きているのだから、という話になるわね。

 

 リミッターは篠ノ之姉妹、織斑姉弟に危害を加えると発動するみたい。私が二人の模擬戦を嫌っていたのはその為よ」

「……もしかして、先日の戦いの時もか?」

「さあ、どうかしら?」

 

 あえてはぐらかす様に肩を竦めてみせたルアナ。箒はソレに少しだけ申し訳なさそうな顔をして眉を顰めた。以前の箒ならば怒りを顕わにしただろう。

 

 ともあれ、ルアナが殺し屋である。そして一夏を殺す為に一夏と出会った事。そして今現在、一夏が居ないこと。ソレを含めてセシリアが推理したように声を出す。

 

「つまり、一夏さんはこの事を知らないのですわね」

「知ってるわよ?」

「……なんで一夏を買い物になんて行かせたのよ」

「アイスが食べたかったからとしか……」

 

 彼女はどこまで行っても、彼女でしかないのだ。

 溜め息を吐き出した面々を見つつ、ルアナはばれない様に顔を綻ばせる。

 

「一夏はこの事実を知っている。それなのに、私を近くに置くことにした。

 私の事を『バーネット』と呼んで理解しようとしない。私は許している、と口にもしたのに。

 生かしたい、なんて言った一夏が一番私の生を認めていない。だから、一夏はまだ動けないでいるの。

 

 コレが、私と一夏の歪んだ関係。歪で、捻じ曲がった、一夏との繋がりよ」




>>スゴイね! 鈴ちゃん!
 促した理由なんて、一夏の気持ちを察して、ポイント稼ぐ為に決まって……ナイデス! ゴメンナサイ。

>>ロシアン・ルーレット
 親切なオジサマ達がお金に困った幼女達に勇気を支払ってもらう、そんなゲーム。

>>因果と殺人術の研究機関
 そういう機関だと理解してください。実際、殺人術の方は後天的に、研究費用を稼ぐ為の手段として付与されただけです。

>>アイス食べたかったし……
 暑いからしかたない。

>>システマ、クラヴ・マガ
 軍事格闘術。詳しいことは調べればいいんじゃないかな?(責任逃れ



>>次話から
 とりあえず、この日にすべきことはしたので、夏休みを終ります。
 え? この家で起こるだろう日常的ドタバタラブコメ? 原作を読めばいいんじゃないかな(販促

 今のところは簪ちゃんとイチャイチャする要素もシャルロットに抱きついたりする要素も無いので。というか、ルアナが自分のことを喋ってあんまり乗り気じゃないと思うので……。

 次話に人物紹介を書いて、夏休みを終って……次から楯無さんと一夏の会合、文化祭の準備、一夏襲撃……。
 思いつく限りで、新しいキャラ追加かな……やばいなぁ、何かしらの伏線張ってればすんなり加入出来たけど。

 考えなしには辛い出来事です。

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