ストライク・ザ・ブラッド 〜同族殺しの不死の王〜   作:國靜 繋

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戦王の使者2

槇村を拘束後、那月の影の中に入って、学校にある那月の部屋へと戻った時だった。

那月の部屋の前に一枚の豪華な装飾がなされた封筒が落ちていたのだ。

那月も気づき拾い上げると、宛名も差出人な名さえなかったので、仕方なしに封筒を開けると、一通の折りたたまれた紙が入っていたので、開いてみると招待状だった。

差出人の名前にアルデアル公ディミトリエ・ヴァトラー、宛名にダアトと三文字がデカデカと書かれていた。

 

「戦王領域の貴族様が俺に何の用だよ」

 

悪態を付けながら、手紙の内容を読み進めた。

手紙の内容はダンスパーティの招待上でパートナー同伴で、とまた七面倒な物だった。

 

「那月ちゃんどうしよう」

 

「お前宛ての手紙何だ。お前が決めろ」

 

「えっ、つまり那月ちゃんパートナーとして出てくれるの」

 

一瞬、那月にしては珍しく呆けた表情を取った。

 

「何故私が出なくてはならん。アスタルテ辺りを連れて行けばよかろう。曲がりなりにもお前の眷属なんだから」

 

「え~俺としては、那月ちゃんと一緒に出たいな~」

 

これは、ダアトにとって数限りない本心だろう。

言葉からは、一切誠意と言うものが感じ取れないが。

 

「なら、私は行かなくていいな」

 

その言葉を聞いた瞬間、ダアトは日本に古くから伝わる最上の敬意の示し方、DOGEZAをしながら、那月の影から出て来たのだ。

 

「どうか、私目のパーティのパートナーとして同伴しては頂けないでしょうか」

 

ダアトの土下座に気分が良くなったのかふむと、思考する余地を与えてくれたようだ。

 

「聞こえんな、何か言ったか」

 

訂正、思考の余地どころか、聞き入れる気すら毛頭なかった様だ。

流石、天上天下唯我独尊を地で行くだけはあるなと、ダアトが思った時だった。

 

「おい、失礼なこと考えなかったか」

 

日傘の先端をダアトの頭の真横に突き刺してきた。

勘が良過ぎにも程があるだろ。

 

「いえ、そのような事は一切考えておりません」

 

 

 

このやり取りが続く事一時間、何とか那月を説得するに至ったが、その際払った代償は、幾億に等しい命を持つダアトにしても大きかったとだけここに記する。

 

 

 

 

パーティの開始時刻午後十時。

大勢の招待客たちが、タラップを上がって、船の中へと乗り込んでいく姿が見える。

 

洋上の墓場(オシアナス・グレイブ)か。中々愉快なネーミングセンスを持ってるな」

 

船体に刻まれている船名を見ながら、ダアトは面白そうに呟いた。

 

「にしても面白いくらいテレビで見かける顔ぶれだな」

 

パーティの主催者が主催者なだけに不自然ではないが、もしここで不測の事態に陥ったらその瞬間人質に為るのにと思ったのはダアト位だろう。

 

「あ、古城に姫柊みっけ」

 

「何……!?」

古城と雪菜とダアトが言った時、那月は渋い顔をした。

古城が第四真祖である以上、来る可能性は十分に考えられたことだが、那月としては、面倒な事に為る可能性の中心人物には来て欲しくなかったらしい。

ダアトとしては、古城+面倒事=楽しいと言う本人が聞いたら嫌がりそうな方程式が成り立っている以上大歓迎な事だ。

無論、那月が聞いても嫌がるだろうが、否定はしないだろう。

 招待状のチェックを済ませ人の波と一緒に船内に乗り込むと、煌びやかな照明に豪華な料理。

そんな会場に集う無駄に偉そうな大人たち。

その中で那月の容姿は異常なまでに浮くはずだが、那月の持つカリスマ性の成せる業か、一切この雰囲気の中違和感を与えなかった。

 

「お、那月ちゃんもいたのか。」

 

いきなり声を掛けられた那月は振り返るとそこには第四真祖、古城が雪菜を連れ添った形でそこにいた。

那月に合わせて俺が振り返ると、二人は一瞬警戒を示したが、場所が場所なので警戒の意思を持つだけにとどまった。

 

「教師をちゃん付けで呼ぶなと何度言えばわかる暁古城。それで、何故お前たちがここに居る」

 

「いや~俺がヴァトラーって奴に招待されて」

 

「それで、転校生のお前もいると姫柊雪菜」

 

「そうです。それで、南宮先生は何故?」

 

「私は此奴の付き添いだ」

 

那月は嫌々そうな表情だったが、古城と雪菜は驚いた風だった。

 

「それにしても那月ちゃんもそう言う服を着るんだ」

 

「どういう意味だ。暁古城」

 

「あ、いや~その~」

 

古城の言いたい事も分からなくもない。

今那月が来ている服装は、何時ものゴスロリとは違い、清楚な白いドレスだ(ただし容姿的な関係もなり女児用だが)。

 

「まあ、まあ那月ちゃんも変に突っかからない。大人なんだし。それで、君たちはヴァトラーに会いに行かなくていいのかい?」

 

「そうでした。先輩行きましょう」

 

「姫柊、場所分かるのか?」

 

「はい、上です。アルデアル公はおそらく外のアッパーデッキに」

 

剣巫の霊視で居場所を見たのだろう。

全く持って便利な力だなと思った。

 

「では、私たちはこれで。こっちです先輩」

 

広間の隅の階段を指さした姫柊が、招待客で込み合う通路を歩きだし、それを追う形で古城も言った。

二人の後姿を眺めながら、何だかんだで仲良いな~と思い、昔の那月はあんなに可愛かったのにどうして今は、こうも唯我独尊な性格になったのかと思っていた。

 

 

 

 

 

暫くすると、古城たちがパーティへと戻って来た。

そして、暫くするとヴァトラー本人もパーティに参加した。

ヴァトラーが来ると直ぐに利権目的の人間どもがヴァトラーの元へと群がり、ヴァトラー本人はあくまで笑顔で対応していたが、終始ダアトから視線を外す事はなかった。

 


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