ストライク・ザ・ブラッド 〜同族殺しの不死の王〜   作:國靜 繋

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原作読んでないと分からない位、飛んでます。
むしろ、書く事ないからこそ、”かなり短く”こんな事に為りました。
先に謝っておきます。
マジで、すみません。
これ読まなくて、次の章から読んだ方がいいんじゃないかなぁ~と思っていたりする作者です。



蒼き魔女の迷宮4

監獄結界の鍵である那月の居城――聖堂内で一つの決着がついた時だった。

 

「……まったく、これだけの騒ぎを起こして置いて平和なものだな、おまえたちは」

 

古城たちの背後から、懐かしい声が聴こえてきた。

舌足らずなようでいて、奇妙なカリスマ性を感じる不思議な声音だ。

振り返ると、そこには眠り続けていたはずの南宮那月が立っていた。

今の彼女は、魔術で作り出した分身ではなく、監獄結界に封印されていた本物の体のはずである。

しかし、あまりに普段通りなので、古城は小難しく考えるのがばかばかしく覚えてくる。

本物だろうが分身だろうが、結局、那月は那月ということだ。

 

「南宮先生、やっぱり起きてたんですね」

 

雪菜が、安堵したように言う。

監獄結界の鍵である那月が目覚めてくれれば、封印を再度張り直すなり、新たな防衛システムを組むなり、幾らでも手の打ちようがあるからだろう。

その防衛システムの一つとして数えるべきダアトは、那月の命令で未だ眠った(封印された)ママである。

事実、ダアト一人いればどのよな装備を持った者でも、あらゆる知識を持った者でも、容易に蹴散らす事が出来るからだ。

 

「……仙都木阿夜の娘。どうする、まだ続けるか?」

 

優麻が静かに立ち上がって首を振る。

 

「やっめておくよ。あれだけ強烈だった焦燥感が消えてる。ボクにはもう、監獄結界をどうこうする理由はないみたいだ……”(ル・ブルー)”もこの有様だしね」

 

「そうか」

 

優麻が実体化させた”守護者”を眺めて、那月はうなずいた。

顔の無い青騎士は、過剰な魔力の逆流や雪菜との戦いによって、満身創痍の悲壮な姿をさらしていた。

 

「……”(ル・ブルー)”?」

 

そんな”守護者”の実態化を解こうとした優麻が、不安気に声を震わせた。

顔の無い青騎士が、カタカタと全身の甲冑を震わせる。

金属と金属がぶつかり合うような、奇怪な騒音。

それは笑い声だと、古城は唐突に理解する

 

「やめろ、”(ル・ブルー)”」

 

優麻が悲鳴のような声で命令する。

しかし青騎士の動きは止まらない。

腰に提げていた剣に手をかけ、青騎士が初めてそれを抜き放つ。

鞘の下から現れたのは、鋭く研ぎ澄まされた真新しい刀身だ。

古城と雪菜が飛び出して、それぞれ那月をかばうように立つが、青騎士の次の動きは、古城たちの予想を裏切り、優麻の胸へと突き立てたのだった。

優麻の口から、ごばっ、と鮮血がこぼれ出す。

そんな、優麻の姿に誰もが目をやっていたからこそ、誰も気づけてはいなかった。

こぼれ落ちた鮮血が、血溜を作る事無く、聖堂の中の空っぽの中に在って、最も異彩を放つどこまでも黒く、昏く、観ているだけで絶望してしまうそう思える棺に自然と流れ込んでいる事に。

 

「……お母様……あなたは、そこまで……」

 

自らの”守護者”に手を伸ばし、優麻が絶望の声を漏らす。

彼女の胸には、深々と剣が突き刺さっていた。

だが、優麻の体を貫通したはずの剣の切っ先が、彼女の背中に現れる事はなかった。

優麻の肉体を空間転移の門に使って、剣をどこかに転移させたのだ。

 

「待チワビタゾ……コノ瞬間ヲ。抜ケ目ナク狡猾ナ貴様ガ、ホンノ一瞬、気ヲ抜ク瞬間ヲ」

 

顔の無い青騎士が、錆びた声を紡ぎだす。

 

「ブービートラップ……か。まさか、自分の娘を囮にするとは……外道め」

 

那月が突然、蔑むようなうめきを洩らす。

彼女の息から漂う血の臭いに、古城は表情を凍らせて振り返った。

レースで美しく飾られた那月の胸元から、禍々しく無骨な鋼鉄の塊が生え、鮮血が滴り落ちいた。

 

「南宮先生!」

 

「那月ちゃん!?」

 

あまりに歪なその光景に、雪菜と古城は愕然と立ち尽くすしかない。

呆然自失な古城を少し怒ったように睨み付け、弱弱しく笑う。

 

「担任教師を……ちゃん付けで呼ぶな……馬鹿者」

 

人形のように小柄な担任教師の体が、ゆっくりとその場にくずれおれていく。

顔の無い青騎士の、不気味な笑い声が途切れることなく聞こえてくる。

あまりにも軽い担任教師の体を抱きかかえながら、

 

「うぉおおおおおおおお――――っ!」

 

古城はただ声を嗄らして絶叫した。

壊れかけの薄暗い聖堂の中、第四真祖の咆哮響き渡るが――

しかし、未だ誰も気づいていない。

那月の事をこよなく愛している存在が、この場にいない違和感に――

誰よりも那月が傷つことを許さない吸血鬼の事を――

否、気づけていないのだ。

目の前の光景が、その事まで思考させるに至らせられないのだ。

それが那月の傍を片時たりとも離れない事を誰もが忘れている。

聖堂内に滴り落ちた那月の血は、棺へと吸い込まれる様に流れゆく。

そして、那月の血が棺に吸収された時誰にも気づかれず、物音立てずに本当に僅かに揺れ動いた。




感想にボロクソ書かれない様にする為に、前書きで凄く保身に走りました。
マジですみません。
文句あるにしても、かなりオブラートに包んでください。
シャボン玉ハートなので……

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