ストライク・ザ・ブラッド 〜同族殺しの不死の王〜   作:國靜 繋

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最近評価が下がる一方だ。
どうしたらいいだろうか?


天使炎上3

「さて、行くか。ダアト、アスタルテ」

 

那月が徐に立ち上がり言った。

現在の時間は、8時を過ぎた辺りだ。

どう考えても遅れる時間だ。

だけど、那月だからなで済ませる辺りダアトも十分駄目だと思う。

 

「しかし、古城にああいって、結局アスタルテ連れて行くんだな」

 

「人手が多いに越した事はないからな」

 

「まあそうだろうけど」

 

アスタルテを連れて行くことにダアトは、表面上消極的だったが、内心喜んでいた。

両手に(幼女)だ。

これで喜ばない訳がない。

 

「何をぼさっとしている。さっさと行くぞ」

 

那月に急かされる形で、部屋を後にした。

 

 

 

 

古城との待ち合わせのテティスモールに向っている途中だった。

電車から降りると、商店街で祭りがあっているとポスターが貼ってあったのだ。

 

「アスタルテ、あれに行ってみたいか?」

 

「――否定、第四真祖との予定が最重要事項です」

 

「お前は硬いな、アスタルテ。もう少し柔軟に考えろよ」

 

柔軟に考えすぎて、遅れるのもどうかと思うが、ダアトは思いはしたが口にはしなかった。

 

「なら、興味はあるか?」

 

那月の質問に、アスタルテは数瞬考え込んだ。

アスタルテにしては、いい傾向だ。

 

「――肯定」

 

「よし、なら行くか」

 

「いやいやいや、待ち合わせは良いの?」

 

「暁古城など、待たせておけばいいんだ」

 

相変わらず自分本位だなと思ってしまった。

 

「それに、浴衣のレンタルもあってるぞ」

 

「さて、祭りに行こうか。那月ちゃん!」

 

相変わらず、現金なダアトだった。

 

 

 

 

 

那月とアスタルテは浴衣を借りて、着替えて来た。

途中、何度か着替えを覗こうとしたら、壁抜けなどの方法は那月の結界によって阻止され、物理的な覗きは、店員の手によって阻まれた。

あの店員、本当に何者だ。

まあ、そんな事もあって、現在に至るのだが。

 

「浴衣って、型崩れしないために下着を着けないって聞いたけど……」

 

「何だその目は」

 

「いや何も」

 

思い返さずとも分かる通り、二人とも幼児体型だ。

付ける下着が、無いから関係ないよねっと、那月に言わなかったのは英断だっただろう。

 

「行くぞ、アスタルテ。その馬鹿(ダアト)は置いて行くぞ」

 

命令受諾(アクセプト)

 

那月とアスタルテは、離れないように手をつないで、祭りの方へと向かって行った。

二人とも見た目は、幼女の為とても微笑ましい光景であり、そこにダアトがいるのは、如何せん犯罪臭しかしない。

警察関係は、関係を知っているから捕まる事はないが、新人だったら、間違いなく逮捕するだろうな。

 

「って、ちょっと待って。待ってください」

 

完全にダアトを置いて、祭りの在っている商店街の中に消えて言っている二人にダアトは叫んだ。

こんな祭りの中で二人を見失ったら本当に見つけられなくなる。

それにこんな場所だからこそ、誘拐が起きるかもしれない。

二人とも特に美幼女だから、その手の(ダアトの様な)人からはたまらない存在だ。

もし本当に誘拐なんて起きた日には、違った意味で、あの戦争を繰り返す事に為る恐れがある。

 

「いやほんと、待って那月ちゃん」

 

ダアトの声は祭りの熱気によって那月の元までは届かなかった。

 

 

 

 

何だかんだあったが、祭りを楽しんだ三人は、古城との合流場所であるテティスモールへと向かった。

 

「かなり時間過ぎてるんだけど」

 

「なに構わん」

 

いや、構わんって、人として遅れるのはどうかと思うのだけど。

どうせ言った所で、今更変わらないかと、ダアトは若干諦めきった目で那月を見た。

 

「何か失礼な事を考えているだろ」

 

「まさか」

 

ハハハハと笑って誤魔化した。

 

そんな些細な会話をしていたら、テティスモールに着いた。

古城はどこにいるかと探したら、案の定すぐに見つかった。

こんな場所でパーカーを着こんでおり、更にギターケースを持った女の事一緒にいるのは古城以外では、そうはいないからだ。

 

「――遅ェよ!ていうか、何だよ、その恰好!?攻魔官の仕事じゃなかったのかよ!?」

 

周囲の迷惑も顧みずに叫んでいる古城に対して、ダアトは放課後の事は棚上げして迷惑な奴だなと思った。

ついでに言うと、ダアトが魔力を現状持てる全てを発したため、幾つかの魔力検知器が異常をきたすか、破損している。

それを考えたら、どう考えても叫んでいる古城の方が、まだ迷惑ではない。

 

「騒ぐな、小僧。この近くの商店街で祭りをやっているのを見かけてな。アスタルテに夜店を堪能させてやろうと思ったのだ」

 

「それならそれで連絡くらいしろよ」

 

「何を怒っている?お前の分のたこ焼きも買ってあるぞ。ほら、食え」

 

「……それはどうも」

 

那月にたこ焼きのパックを差し出されて、古城は憤然とそれを受け取った。

 

そんな古城の前にアスタルテは、静かに頭を下げた。

 

「合流時刻に一時間五十六分の遅延がありました。謝罪します、第四真祖」

 

「アスタルテ、お前が謝る必要はない。どうせ第四真祖なんだから」

 

「確かに、アスタルテは謝る必要はないけどな、お前らは謝れよ!!……それより、楽しかったか?」

 

「――肯定」

 

アスタルテは、短く告げた。

まだまだ、機械的な口調だが、最初のころに比べたら表情が出る様に為って来ている。

いい傾向だ、このまま行けばきちんとした恥じらいを持ってくれたら、覗きやスキンシップも遣り甲斐があると言うもの。

その間に那月は、古城の背後に迷惑そうに一瞥をくれて、

 

「どうしておまえがここにいるんだ、転校生」

 

「わたしは、第四真祖の監視役ですから」

 

雪菜は、無感情な声で言い返した。

古城が那月の仕事に付き合わされると知って、雪菜は、当然の様に自分も行くと主張したらしい。

意味不明の緊張感が漂う二人のやり取りを、古城は鬱々とした気分で眺め、ダアトは面白そうに観ていた。

 

「まあ良いじゃん。人手が多すぎる事には困らないでしょ那月ちゃん」

 

「まあ、そうだな。せっかくだからお前も浴衣を着るか?駅前でレンタルしていたぞ?」

 

「……いえ、結構です」

 

微かな未練を感じさせよる様な短い沈黙を挿んで、雪菜はきっぱりと首を振った。

折角だから着たら古城も喜ぶと思うよ、とダアトが雪菜に耳打ちしたところ更に考え込んだが、結果はNOだった。

その際、真っ赤に為って考え込んでいる雪菜を見て面白かったからダアトとしては目的を果たしたともいえる。

 

「そ、それよりも、どうしてこんな物騒な任務に、暁先輩みたいな危険人物を連れ出したりしたんですか?こんな街中で先輩の眷獣が暴走したら、一体どんな大参事に為るか……」

 

未だ顔を赤らめたままの雪菜が、話を元に戻そうと話を切り出した。

 

「だからと言って、此奴が何も知らないまま戦闘に巻き込まれたらどうする気だ、剣巫。そっちの方が危険だとは思わんのか?」

 

「そ……それはそうかもしれませんけど……」

 

何時もの那月は、常に考えが自分中心だからこそ、珍しくまともな那月の反論に、強気だった雪菜の勢いは削がれる。

那月は、更にたたみかける様に、

 

「危険人物だからこそ目の届かない場所に遠ざけるよりも、手元に置いておく方が安全だろう。それにこの馬鹿(ダアト)は、何だかんだで使えるからな」

 

いきなりあっさりと論破されて、雪菜は悄然と肩を落とし、ダアトは珍しく那月が褒めてくれたことに有頂天になっていた。

那月は特に勝ち誇るでもなく、古城たちを引き連れてエレベーターへと乗り込んだ。

夜店で買った買った林檎飴を舐めながら、思い出したように古城に訊いた。

那月の林檎飴を舐めているのが、様に為っているなとこの場にいる全員が感じたが誰もその事は口にしなかった。

 

「メールで送った資料は読んだか?」

 

「まあ、いちおう。”仮面憑き”だっけ?そいつを捕まえればいいんだろ」

 

「正確には”仮面憑き”を二体とも、だ」

 

答え合わせをする教師の様な口調で那月が勝手な事を言う。

”仮面憑き”とは、絃神市の上空で戦闘を繰り返す謎の怪物の通称だ。

過去の目撃例では、”仮面憑き”達は、常に二体ずつ出現し、どちらかが斃れるまで戦闘を続けたらしい。

那月は当然、今夜も二体同時に出現する可能性が高いと考えている。

 

「那月ちゃんが、捕まえろではなく、消せと言ってくれたら俺が直ぐにでもやるのに」

 

「お前の消すは、絃神島諸共、消すの間違いだろ」

 

「そっちの方が、楽で確実じゃん?」

 

「だから、お前が使えないんだよ馬鹿が」

 

あまりにも物騒な話をしていたもんだから、古城と雪菜は会話に着いて行けてなかった。

アスタルテは、何時もの事だからと耐性が着いていたようで、スルーしていた。

 

「で、空を飛んでいる奴らを相手にどうすれば――」

 

「気にする事はない。撃ち落とせ」

 

那月は、迷うことなく即答した。

 

「空に向かってお前の眷獣をぶっ放す分には、市街地に影響が出ないからな」

 

「いや、それはそうかも知らないけど――」

 

「相手もそれなりに化け物だ。そう簡単にくたばりはしないから安心しろ、うっかり殺してしまっても、刑務所に差し入れ位はしてやるからな」

 

「ハハハハハ、だってよ。良かったね殺して、刑務所に入れられても寂しくないな、ハハハハ」

 

「安心できねえよ!なんだそれ!?無罪に為らないのかよ」

 

あまりに身勝手な那月の物言いに、ダアトは爆笑し、古城は頭を抱えて叫んだ。

 

上昇し続けているエレベーターが最上階に到着した。

そこでさらに作業用のエレベーターに乗り換えて、古城たちは屋上へと移動する。

十階建のテティスモールは、この辺りでは最も高い建物である。

飛行能力を持つ、”仮面憑き”を監視するには最適な場所だ。

 

「それはともかく、変ですね」

 

「ともかくじゃねーよ……何もかもがおかしいだろ」

 

「いえ、先輩の処遇ではなく、あの建物」

 

雪菜が指さしたのは、交差点の向こうに見えるオフィスビルだった。

真新しい建物の上半分がごっそりと抉られて、飛び散った瓦礫は今も路上に山積みに為っている。

隕石でも直撃したかのような凄惨な光景だが、ダアトはこの程度の景色凄惨とは思えなかった。

あの戦争を体験した者にとって、あれ以上に凄惨な光景を思い描く事は出来ないだろう。

「あんな巨大な爆発が起きていたのに、わたしは気づきませんでした。魔術や召喚術であれだけの破壊力を生み出したのなら、相当な魔術が放出されたはずですけど」

 

「獅子王機関の剣巫でも感知できなかった、ということか……やはりな」

 

那月が奇妙に納得したような表情でつぶやいた。

 

「絃神島内に設置されている魔力検知器も、”仮面憑き”には反応しなかった。特区警備隊(アイランド・ガード)が異変に気付いたのは、ビルが倒壊して、民間警備会社が騒ぎ出した後だ」

 

「どういうことだ……?」

 

「古城、君は馬鹿かい?ああ、そう言えば馬鹿だったね」

 

「何だと……」

 

古城は、一応否定してはいるが、実際の成績を出されると勝ち目がないので、ダアトを睨みつけるだけ睨みつけた。

 

「可能性としては、特殊な魔術か、物理攻撃か、考えられる可能性だけでもいくつかあるんだけどね。それを検証するよりかは」

 

ダアトは、不意に攻撃的で狂気的な笑みを浮かべた。

 

「御本人達に訊こうと言う訳だよ」

 

「殺すなよ、暁」

 

ダアトと那月が睨みつけているのは、繁華街のはずれにある巨大な電波塔の上空だった。

禍々しい光に包まれた何かが、暗い夜空に舞っている。

航空機などではあり得ない不規則な動き。

人型に近い奇妙な影が、激しい空中戦を演じていたのだ。

 




投降後に気付きました。
次こそは戦闘シーンと言いながら、戦闘シーン入れませんでした。
本当に申し訳ないです。

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