ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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もしオバ もしもアンノウンがオーバーロードの世界に行ったら 2

ユグドラシルから異世界に転移したモモンガは悩んでいた。家族も友も居ない世界に何れ程の価値があるのかと。

 

(あれ? そういえばアンノウンさんはどうなんだろう?)

 

 まだメンバーが揃っている時に聞いた話だが、それなりに大きい組織のナンバー2だったと言っていて覚えがある、トップは実質的にお飾りなので他の者が指揮を取っている、とも言っていた。

 

(あの人は戻りたいって思うんだろうな……)

 

 そんな事を考えながらアイテムを使ってナザリック周辺の様子を探るモモンガ。すると騎士風の者達に襲われる村を発見した、しかし、人が殺されている様子を見ても何も思わない。

 

(心までアンデッドになってしまったのか。見捨てよう。助ける義理も価値もない……)

 

 そのまま何の気なしに動かすと少女二人に襲い掛かる騎士達と前方から大量のバナナを担いで自転車を漕ぐアンノウンの姿が映し出されていた。

 

「なっ!? 何をやっているんだ、あの人はっ!」

 

「モモンガ様、恐れながら申し上げます、あのお方は人ではなく熊、正確に言うならば大熊猫(パンダ)で御座います」

 

 隣に居たセバスは冷静な声でそう告げた。

 

 

 

 

 

 

 

(せめてこの子が逃げる時間だけでも稼がないとっ!)

 

 突如村を襲った騎士達から妹を守る為に逃げ出したエンリだが、直ぐに追いつかれ背中を切り付けられてしまう。焼け付くような痛みに足が縺れ、そのまま妹を庇う様に蹲った彼女に剣が振り下ろされようとした時、調子外れな歌声が聞こえてきた。

 

「アン、アン、アンノウン! アアンア、アアンア、アンノウン!」

 

 左前足で大量のバナナを抱え、右前足でそれを口に運びながら近付いて来たのは奇妙な乗り物に乗る奇妙な熊のような姿の獣姿勢を正した状態で体を左右に揺らしながらもバランスを崩さず、そのままバナナの皮をばら蒔きながらエンリ達に近付いて行き、そのまま横を通り過ぎた。

 

「アレはなんだったんだ?」

 

「さぁ?」

 

 その奇妙な姿に唖然とした騎士達は直ぐにエンリに意識を戻し切りかかろうとしてバナナの皮で足を滑らせて転び、頭を打って気絶した。

 

「え?」

 

「……迂闊に行動しすぎだ。早く後を追わないと」

 

「アインズ様、お待たせ致しました」

 

 

 

 あまりの事態に呆然とするエンリの背後の空間が歪み、今度は骸骨が現れる。骸骨は気絶した騎士達を見て何が起こったのか訳が湧かないという風に振る舞い、その背後から全身鎧の女性らしき人物が現れる。

 

 

 

 そして二人もバナナの皮で足を滑らせて気絶した。

 

「え? えぇーーーーーっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ! 安いよ安いよ! この何処かに行ける『何処だかドア』が今なら金貨三枚っ! ほらほら試しに入って入って!」

 

 ある者は生きたまま世界の外側に連れて行かれ、形容しがたい者に捕まった。装備を代金替わりに取られたのでパンツ一丁であった為に下着の中に何か入ってきた。

 

「ほーら、お客さん。この汚染されきった泥、お肌が真っ白になるよ」

 

 またある者はこの世全てもアクを押し付けられた村人によって汚された聖なる杯に溜まった泥の泥パックを無理やりさせられて全身から血の気が消え失せた。

 

「お金っ! お金をあげますから助けてください」

 

「じゃあ、五百ペソ。今すぐ!」

 

「ペソ?」

 

「くれないんだったら……宇宙旅行をプレゼントっ!」

 

 そしてある者は騎士達の鎧兜とバナナの皮に残った繊維を組み合わせて作った有人ロケットに乗せられ、この世界で初めての宇宙飛行士になる。後に帰還した彼はこう語った。

 

『この世界はパンダ色だった』

 

 

 

 

 

 

「戦士長、見えてきました!」

 

 夕暮れになった頃、王国戦士長ガゼフ率いる一団が襲われていたカルネ村に到着する。すると其処では驚きの光景が広がっていた。

 

 

「竹輪いかがっすかー?」

 

「ハリキリムカツクー!」

 

「ワテは名古屋県民だぎゃあ」

 

「吾輩、楽しかったであります! ……なーんちゃって」

 

 カルネ村では村人全員参加の肝試し大会(ただし全員お化け役)が開かれていた。その中心となるのは白黒の奇妙な熊。逆立ちをしながら鼻からカレーを食べる彼の姿にガゼフ達は感激し万雷の喝采を送る。其の音は迫っていたスレイン法国の本隊にまで届き馬の足を止めさせた。

 

 

「貴方ならこの村を任せられる、どうかお願いします」

 

「まっかせてー!」

 

 

 そして何だかんだあって村の恩大熊猫(パンダ)となったアンノウンと漁業権について話し合ったガゼフは大食い対決の末に竜王国に大量の沢庵を送りつける事で合意し、近所の広場で拾ったレアカードの所有権がアンノウンに移る。

 

 しかし彼らはこの時知らなかった。このカードが原因で数百年の時を生きる吸血鬼とナザリックが世界の覇権を賭けたしりとり対決の末に第十五ラウンドでシャルティアが決めたアッパーカットがカッパ巻きを打ち砕くなど……。

 

 

 

 

「全員突撃っ! 奴らの喉笛を噛みちぎってやれっ!!」

 

 大根片手に天使の群れに向かっていくガゼフ達。普通ならばその様な物で戦える相手など、龍を殺す者の英雄伝説のボス達くらいだ、だが、この大根はチョコレートでコーティングしていた。瞬く間に撃退されていく天使達。だが、一人の魔法が戦況を一変させた。

 

炎の雨(ファイヤー・レイン)

 

 たった一発の火の魔法でチョコレートのコーティングが溶け、ただの大根は砕け散る。瞬く間に窮地に陥ったガゼフ達。だが、彼らを助ける為にヒーローが立ち上がった。

 

「行くぞ合体だっ!!」

 

「「「「おう!」」」」

 

 アホウドリ型ロボットを先頭に飛び上がったロボット達。登場順に胴体頭右腕左腕右足左足と変形していき、巨大ロボットになって地面に降り立つ。その手に持っているのは芝刈り機だ。

 

『魔獣機神ナザリーン!』

 

 それはナザリック内部に出現した謎の戦隊ヒーロー達。彼らが操るロボから放たれたビームはガゼフ達を助けようと飛び出したアンノウンに命中し爆発炎上。黒焦げになったアンノウンは倒れたまま前足を伸ばす。

 

「お、弟よー!!」

 

 アンノウンを中心に爆発が起き、声優の無駄使いな隊長とその部下は巻き込まれて全滅する。後には山の向こうから走ってきた巨大なアンノウンと肉襦袢を着込んだガゼフだけが残り、巨大ロボは違法駐車でレッカー移動させられていった。

 

 

 

 

 

「ってな訳で解決して来たよ。一期だと出てきた意味が見いだせないコンビ(コキュートス&デミウルゴス)。あっ、出迎え有難うね、チョイ役双子(マーレ&アウラ)。そしてラスボス」

 

「わたしだけ包み隠さずストレートっ!?」

 

「あれ? モモっちとED詐欺(アルベド)は?」

 

 

 

 まだ気絶していた……。

 

 

 

 


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