ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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自由な大熊猫の聖杯戦争 ㊦

ディルムッドにとって聖杯など興味がなく、願いは生前果たせなかった主への忠義を貫くという騎士道に基づく物であった。

 

「わーい! 成功だ成功だ~」

 

 だから、召喚したのがどう見てもパンダであったとしても忠義を貫く気でいた。ディルムッドは体に流れ込んでくる膨大な魔力に驚きながらもこちらを無視してクルクル回りながら燥ぐアンノウンに向かって頭を垂れて跪く。

 

「ところでさ、君の真名ってなんなの? 勝手に持ってきた触媒で召喚したから分からないんだ」

 

「はっ! 我が真名はディルムッドに御座います、主よ」

 

「……ディルムッド?」

 

 その名を聞いた途端、黒子や他のキグルミが楽器を奏でる中で歌舞伎を行っていたアンノウンの動きが止まる。マイナーな自分の名前を知っていた事に驚くディルムッドは裏切りの騎士である事にアンノウンが心配したのだと判断した。

 

「ご安心下さい。この双槍にかけて忠義を貫くと誓います」

 

 そしてアンノウンの瞳を見た瞬間、ディルムッドはある人物を思い出す。アンノウンが向けた瞳はかつての主であるフィンが死ぬ寸前の自分に向けた物と同じである事に。

 

「……主?」

 

「僕ってさ、これでも長生きしてるんだ。君が生きていた時代に丁度君が騎士としていた国に滞在しててね・・・・・君に殺された森の巨人シワバーンは僕の友達だった」

 

「ッ!」

 

「だから、僕は君なんか信用しない。遊びで参加したこの戦争だけど目的が出来たよ。主を裏切り、恩人を恩仇な理由で殺した君のご大層な騎士道ってのがどんな物か見せて貰うね~」

 

 最後の方は巫山戯たようにいうアンノウン。だがディルムッドはまるで大蛇に睨まれた蛙のように体が固まるのを感じ、其れと同時にアンノウンがどれだけの化け物なのか理解してしまった・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「って事があったから令呪三つ使って”『寝盗り騎士でございます! 輝く美形のディルムッドどぇす!』って言いながら裸踊りで市内十周”って命令しておいた。まあ、僕って優しいから例のホクロは無効化して同じ騎士のセイバー陣営には見えなくしてあげたけど」

 

「……ふむ。一度辞書で『優しい』を調べるべきだと思うがな。のぅ、アーチャー」

 

「我が知るか。此奴に人間的考えを求めるでない」

 

 ランサーとセイバーの決闘の翌日、約束通りに酒盛りをしに集まったアンノウン、アーチャー、ライダーは適当に選んだアインツベルン城の庭で知恵の実などアンノウンが各神話から勝手に持ち去っていった物をツマミにアーチャーの用意した酒を飲んでいた。

 

「しかし、令呪を使ってしまってはマスター権を失うのではなかったのか?」

 

「大丈夫、大丈夫。さっき百均で買ったクレヨンで上書きしたら使える様になったから」

 

「んなわけわるかぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 この時、ライダーのマスターであるウェイバーは思わずツッコミを入れてしまった。その場の全員の視線がウェイバーに集まり、彼は拙かったかとたじろいだ。

 

「小僧……アンノウンのやる事に一々たじろいでいては身が持たんぞ。特に胃がな」

 

「なぁに、我も同様に散々ツッコミを入れさせられたのだ。ならば仕方あるまい。逆に我ら二人が諦めて言わなかった事を言ったのだ。褒めてやるぞ、雑種」

 

 何故かアーチャーからの評価が上がったウェイバー。その頃になってセイバーが帰って来た。

 

 

 

「だからですね、ジャンヌ似のセイバー殿とそのマスター。貴殿達も仏門にお入りなさい」

 

「そうだぜ、そうだぜ。仏様の教えはとてもCOOLなんだぜ」

 

 何故か剃髪して法衣を身に付けたキャスターとそのマスターと共にだが……。

 

 

 

「アンノウン、これは貴方の仕業だっ!」

 

 仕業ですか、でも無く、仕業ですね、でもない。だが、アーチャーもライダーも同じ事を思っていた。

 

「酷いっ! 僕はただ精神汚染していた彼らを洗脳して記憶を弄って、あらゆる興味を仏の教えに向けさせただけなのにぃ~!」

 

「充分悪いだろぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 ウェイバーは腹の奥から叫ぶ。この時、彼の胃はセイバー同様にキリキリ傷んでいた。

 

 

 

 

 

「……ったく! おい、ライダー。私にも酒をっ!」

 

 数分後、酒宴に加わったセイバーはガブガブと酒を飲み続ける。そのスピードは早かったが、アーチャーが用意した酒を飲む瞬間、アンノウンの手によってライダーが強奪してきた酒と入れ替えられていた。

 

「そうそう、ギルギル。僕、本篇で正体バラしたからこっちでも正体バラシ解禁ね」

 

「随分とメタな発言だな。まあ、いい。此処で騎士王と呼ばれる小娘の絶望した顔を肴にしたかった所だ」

 

「僕の正体は黙示録の獣でギルギルの最大宝具や君のエクスカリバーでも痒いくらいにしか感じないんだよ」

 

「貴様がバラすのかっ!? ……ああ、疲れる」

 

「とりあえずお代わり! 酒の肴ももっと用意しろっ!」

 

「じゃあ、この激辛麻婆豆腐」

 

「頂こうっ! ……辛ぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 セイバー脱落。

 

 

 

 

「……舞弥。僕は正義の味方になりたかったんだ。あっ、このヒーロー変身ベルトを買おうかな?」

 

「切嗣、しっかりして下さい!?」

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、旦那。俺は自首してくるぜ。最高にクゥゥゥゥゥゥゥゥゥル! な説法を振りまきながらの自首をなっ!」

 

「では、私は心静かに英霊の座に帰りますね」

 

 キャスター陣営脱落。

 

 

 

「……あっ! 自害しよ。俺ってランサーだし」

 

 ランサー自害。

 

 

 

 

 

 

「でさ、やる事なくなったからどうしようっかな?」

 

「私に聞かれても困るな」

 

 ランサーを失ったアンノウンは規定通り聖堂教会に保護を求めた。はっきり言って無駄なのだが。神父も聖書に記された神の敵なので殺したいがアーチャーさえも勝てないと言い切るアンノウンには挑めなかった。

 

「とりあえずお酒でも飲んで漫画でも読も~っと。あっ! 聖杯って僕の友達のアンラマユ君に汚染されてるから気を付けてね。使ったら世界滅びるかも知れないから~」

 

 そのままアンノウンは与えられた部屋に向かっていく。途中、帰りに買った麻婆豆腐で同じく保護された神父と意気投合して彼の酒を飲み尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それは出来ない。僕は生きろと命じられた」

 

「忠道大義である! その生き方を忘れるな」

 

 ライダー陣営、原作通りに脱落。

 

 

 

 

 

 

 

「は~い。貴方はだんだんマトモになる~マトモになる~」

 

「よし! 儂はこれまでの罪を償う為に自害するぞ!」

 

「私は狂化が解けたけど願いがもう無駄なので自害しますね」

 

「俺も勢いに任せて旅に出るぞ! なんか体も元に戻ったし」

 

「……じゃあ、私も」

 

 バーサーカー陣営、そろそろ終わりなので脱落。

 

 

 

 

 

 

 

「取り敢えず聖杯から溢れた泥は水で薄めたから大丈夫だよ~。じゃあ、ガンバっ! それとさ、英霊って最後自害させないと聖杯が完成しないから。僕は用事があるから帰るね」

 

 アンノウンは暇潰しが終わったから帰っていく。その際、アーチャーの宝物庫から酒とか高く売れそうなものを適当にちょろまかして行った。

 

 

 

 

 

「あっ! もう終わりなので私達も自害しますね」

 

 アサシン陣営脱落。

 

 

 

 

 

「さて、我も暇潰しに受肉して遊び尽くすか」

 

 アーチャー受肉。

 

 

 

 

 そしてステイナイトに……続けられるはずがない。


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