ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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イリナ回で思ったこと 迷惑かけてる自覚はあるけど重要施設を置きすぎて今更移転できない? 最初から予想しろ! 先見の目も計画性も無い奴ラ! ・・・トップとしては


とある悪魔祓いの憂鬱

 ふぁ~あ、っとすまねぇ。どうも飛行機ってのは退屈でかなわねもんでな。狭ぇ所で何時間もジッとして、全く人間ってのは妙なもんを拵えるもんだ。え? 俺は誰だって? なぁに、ただのくたばり損ないの爺いだよ。でもよ、そんなくたばり損ないをま~だ働かせようてんだから教会の連中ってのは本当に人間かね? 俺からしてみりゃ、奴らの方が悪魔に思えてくるよ……。

 

『まもなく当機は日本に到着致します』

 

 やれやれ、漸くか。俺は狭いゲージの中で何度目かの欠伸をすると横たえていた体を起こす。ああ、言い忘れていたな。俺はあんたら人間が『犬』って呼ぶ生き物だ。

 

 

 

 

 

 

「ご苦労様、マーロゥ。早く行きましょ」

 

「確か動物が泊まれる宿は……」

 

 飛行機から下ろされてう漸くユックリ出来ると思っていた俺を連れて歩き出したのは栗毛の嬢ちゃんと青髪の嬢ちゃん名前はイリナとゼノヴィアってんだ・。どっちもそれなりの実力者とされているが俺から見ればまだまだヒヨっ子だな。頭にカラが乗ってらぁ。

 

 

 

 

 

 俺が生まれたのは今から三十年以上前。ああ、犬がそんなに生きれるはずがないって意見はわかる、まぁ、年寄りに話は最後まで黙って聞きな。まだ耄碌はしてねぇから同じ話は繰り返さねぇよ。

 

 

 俺の飼い主は……犬からすれば群れの仲間でしかないんだが、そちらさんに合わせて飼い主と呼んでおこう。飼い主は教会所属の悪魔祓いだったんだ。んで、俺の親と兄弟どもを育ててたんだが、どうも天使ってのと恋に落ちたらしくってな……教会に所属してる奴ってのは神様と結婚してるんじゃなかったのかい? え? 宗派によって違う? 教会所属なのにそんなことも知らないのかいって? おいおい、俺は犬だぜ? 宗教ってのは人間とかだけのもんだ。犬には関係ねぇよ。ただおマンマを食いっぱぐれねぇために言うこと聞いているだけさ。

 

 っと、話が逸れたな。んで、その天使との間に餓鬼が産まこんとき既に俺は爺だったんだが、縄張りの見回りに行った先の森で変な猿と仲良くなってな、そいつに仙術ってのを教えて貰ったんだ。そしたら人間共は長生きして妙な力を使える様になった事に対して神の奇跡だとかんだとか言い出して俺を更に扱き使うようになりやがった。ったく、神様の恩恵ってのを受けてるって思ったのなら爺を働かせるなってんだ。

 

 

 

 

 

「ねえ、悪魔に会う前に寄りたい所があるのだけど」

 

 イリナ嬢ちゃんが言う事には幼馴染ってのがこの街に住んでるらしい。ゼノヴィア嬢ちゃんも許可したし俺は面倒くさいからホテルで待ってるって言ったんだが、ホテルに行く前に連れて行かれちまったよ!

 

 

 

「……あれ? なんで犬が?」

 

 ああ、此処の奴が帰って来やがったか、流石に家の中には上がれないので庭先で寝ていた俺を見て近づいてくる餓鬼が二人居た。まあ、年頃からして龍の気配を持つ雄が幼馴染だろうな。

 

 

「あれ? マーロゥちゃん?」

 

 !? おいおい、なんでアーシア嬢ちゃんがこんな所にいやがるんだ? 確か追放されたって聞いてたけどよ。まあ、悪魔になってるみてぇだが俺には関係ねぇな。犬からすれば人間も悪魔も天使も堕天使も自分達以外の生き物で適当に媚びてりゃ食物にありつける便利な存在でしかねぇよ。

 

『よう、久しぶりだな。そっちの坊主はダチかい?』

 

「犬が喋ったっ!?」

 

 俺が一応挨拶すると坊主の方が驚いてやがる。正確には頭の中に直接話し掛けてるんだが、まぁ、どうでも良い。

 

「はい! お久しぶりだね」

 

 嬢ちゃんは何度か会った事があるので俺が頭の中に話しかけても動じやしねぇ。それどころか頭を撫でできやがる。やれやれ、別に嬉しくもねぇんだがな。喜ぶのは触れ合って楽しいっと感じる相手だけだ。俺はどうなのかって? 俺は一匹でのんびりする方が良いねぇ。

 

『にしても悪魔になってるとは驚きだ。ちょうど教会のモンが幼馴染を訪ねて来てるんだが……そっちの坊主の知り合いかい? イリナって言うんだがよ』

 

 俺の言葉にアーシア嬢ちゃんは少し顔を強ばらせるが、そういう感情はよく分からねぇな。群れから追い出されたけど住む場所や新しい仲間がいるみてぇだし、何を悩んでるんだ? これだから人間は分からねぇ……。

 

「ああ、俺の幼馴染だ」

 

 坊主……確かイッセーとか言ったか? は慌てて家の中に入っていく。アーシア嬢ちゃんはどうもはいりづらいようだ。

 

「あの、マーロゥちゃん。私……」

 

『あ~、グダグダ悩んでぇじゃねぇよ。教会にいた頃より生き生きしてんだし、今が楽しんだったら其れでいいじゃねぇか』

 

 ……俺なんざ老骨に鞭打ってガキ二人のお守りだぜ? やれやれ早く隠居させて貰えねぇかね? 神様さんよぉ、居るってならこのちっぽけな願いくらい叶えてくれや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして悪魔祓いさん達。……その犬は? どうもタダの犬じゃないみたいだけど」

 

 俺達が向かったのはガッコって犬からすれば何の為にあるのか分からねぇ建物。そこにこの地を管理する悪魔が居るってんだ。

 

「彼かい? 彼の名はマーロゥ。こう見えても一流の悪魔祓いさ」

 

 此処から先は特に話すことはねぇ。さっきからコチラを睨んできてる餓鬼は気になるんだが、まぁ簡単に言うとエクスカリバーってのが盗まれて、犯人が此処に逃げ込んだから此方で対処する。だから手を出すなって言いに来たんだ。んで、向こうさんも其れを了承したんだが、

 

 

「……さっきから気になってたんだが、其処に居るのはアーシア・アルジェントか?」

 

 ったく、こちとら早く眠りたいってのにゼノヴィア嬢ちゃんが喧嘩売りやがった。神を信じてるなら今すぐ神の所に送ってやるとか……こっちは縄張りに入り込んで無理言ってんだぜ?

 

 

 

 

 

 んで、売った喧嘩を向こうさんも買って、今から決闘の真似事って訳だ。

 

「……行きます」

 

 な~ぜか俺まで駆り出されてな。俺の相手をするらしいのは猫だか悪魔だか分からねぇ嬢ちゃん。ああ、面倒臭ぇ。ちなみにこの戦いは三対三って形式にして貰った。何故かって?

 

「それでは始めっ!」

 

 そりゃ簡単だ。そっちの方が早く済むからな。俺はイリナ嬢ちゃんの手元から奪ったエクスカリバーを口に咥え、三人が同時に瞬きした瞬間に走り出す三人が目を開けた時、それは三人が崩れ落ちた時だった。何をしたって? 視認できねぇ速さで動いて急所避けて切っただけだ。悪魔は聖剣に弱いらしいからな。

 

 

『おう、悪魔の嬢ちゃん。これで終わりだ。帰って良いかい?』

 

「え、ええ……」

 

『じゃあ帰るぞ、嬢ちゃんら。俺は早く眠りたい』

 

 さてと、悪魔が呆然としてる間に帰るとしますかね。明日から忙しくなるからな……。

 

 

 俺は二人を引き連れてホテルへと帰っていく。嬢ちゃんらが風呂に入れようとしたが眠ったふりで誤魔化した。勘弁してくれ、俺は風呂が嫌いなんでねぇ……。

 




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