それはエルザとナツが評議会の牢屋から帰った翌日の事、ギルド内は一つの話題で持ちきりだった。
「おいおい、見たかよ。あの新しいギルドのマスター。すっげぇ美人。もうボンっ!キュっ!ボンっ! って感じでよ!」
「他にも美人が沢山居るらしいぜ。ロキがその内の一人をナンパしたんだけど振られたってよ。ざまぁ見ろってんだ、ギャハハハハハ!」
「なあ、じっちゃん。何の話してんだ?」
ナツが近くに居たマカロフに尋ねると週間ソーサラーを渡される。そこには新規ギルド”
「ほれ、この前噂になってたじゃろ。バラム同盟の一角である
「……ああ、そんな噂あったな。まっ! 俺の力なら同じ事が出来…る…」
ナツは何時もの根拠のない自信を出しながら週間ソーサラーをパラパラと捲る。そしてメンバーの集合写真を見た所でギルドから飛び出していった。
「こら、扉を壊すなっ! ……なる程」
エルザは床に落ちた雑誌を拾い上げてナツが見た写真に目を留める。其処には
「おい! 写真の竜は居るかっ!?」
数分後、街の人にギルドの場所を聞いたナツは不死者の王のギルドに飛び込む。仕事に行っているのか殆ど人がおらず、何人かが座っている程度だ。カウンターの中ではランスロットがグラスを磨きながらナツを見ていた。
「あの二匹ならば今は居ませんよ。仕事に行っていますので帰りは何時になるか・・・」
「ならお前は二匹から何か聞いてねぇかっ!? 俺、イグニールって竜を探してんだっ!」
「おや、貴方もですか。そちらのお二人も同じ目的で居らしていますよ」
ランスロットが指さした先には不機嫌そうにテーブルに座るガジルと居心地が悪そうにしているウェンディの姿があった。
「あん? テメェも来たのかよ。妖精のケツの火竜さんよぉ」
「あぁ? テメェはファントムの奴だな。ケツじゃねぇ、尻尾だ」
「あ、あの、お二人共。人のギルドで喧嘩は良くないですよぉ~」
元々二人のギルドは仲が悪く睨み合う二人の間に挟まる形になったウェンディはそそくさとその場を離れる。そしてナツとガジルが喧嘩を始めようとしたその時、横から伸びてきた足に蹴り飛ばされた。
「五月蝿いなぁ。食事時に他人のギルドで喧嘩しないでくれる?」
「ごしゅ……ダーリンの食事を邪魔するとは許せません。即・天・罰! きゃっ✩ 私、ダーリンって呼んじゃいましたぁ♪」
一誠と玉藻に蹴り飛ばされた二人はギルドの外まで飛んで行き、ナツは面倒事を起こさないようにと迎えに来たエルザに受け止められた。
「むっ。どうやら遅かったようだな。ウチの者が迷惑を掛けたようだ」
「……ふ~ん、君面白ろいね」
「ダーリンっ!? ままま、まさか新しい女を作る気ですかっ!? くっそぉぉぉぉぉ!! よし、ぶっころ✩」
「いや、違うよ? ……俺のこと信じられない?」
「ぐっはっ!? ももも、申し訳ございません」
「うん、分かってくれれば良いんだ。……でも、少し怒ったからお仕置きね。さて、家に行こうか」
「きゃっ✩ どんなお仕置きか楽しみです♪」
「……え~と、帰るか」
存在を忘れられ甘甘空間を見せられたエルザはナツを引き摺って帰ろうとする。その時、上空から巨体が舞い降り土煙を舞い上げた。降りてきたのはグレンデル。魔法によって二メートル程に縮んだ彼が現れた瞬間、ナツとガジルは目を覚ました
《グハハハハハ! 楽勝だったぜ!》
「おいお前っ! イグニールって竜の事知らねぇかっ!?」
「メタリカーナって竜の事もだ」
「あ、あの、ぐらんディーネって竜について知っていたら何か教えて頂きたいんですが」
《何にも知らねぇな。俺はこの大陸の竜じゃねぇから答えれることなんか何もねぇよ》
グレンデルは三人に素っ気ない態度を取るとギルドの中に入っていく。納得できないナツであったがエルザに諭され一旦帰る事にする。ガジルも帰り出し、ウェンディも迎えに来たシャルルと一緒に帰ろうとした時、グレンデルがギルドの窓から顔を出した。
《テメェラが言っている竜かは知らねぇけどよ、目と鼻の先に三匹居るぜ》
「本当かっ!? まさかこの街に居るのかよっ!?」
《ああ、今、街に居るな。後はテメェらで探しな》
グレンデルはそう言うなりギルドの奥に引っ込み、ナツ達は育ての親の竜を探すために街を走り回った。だが、当然のごとく見つからず、そのまま数ヶ月が過ぎた。その間、ファントムと妖精の尻尾の抗争やラクサスが起こした騒ぎ等があったが不死者の王は傍観を決め込み、やがて闇ギルドの一つ
「……来ていないのは”不死者の王”の者共。……二人だけと聞いているがどの様な奴らが来るか分からんな」
「あっちも二人だけっ!? 彼処は本当にヤバイのが来そう……」
「ああ。最近、討伐系の依頼は殆ど持って行かれているそうだ。ギルド間の調整の会合にも彼処のマスターは出ねぇらしいぞ。……にしても遅過ぎだろ」
グレイが不機嫌そうに時計を見上げたその時、強風による衝撃で集合場所の別荘が揺れる。襲撃かと思い一同が外に出ると
「……なる程。あちらは竜を出してきた訳か。これは心強い」
「おい! お前はイグニールの事知らねぇかっ!?」
「知らんが竜の気配はすぐ傍からするな。距離にして一キロ以内といった所だ。……それと参加者は俺ではない。二人と伝えているだろう? 俺は送り届けに来ただけだ」
クロウクルワッハはそう言うなり背中に手を回し乗せていた二人を地面に下ろす。二人の少女は手を繋いで彼の手から飛び降りた。
「こんにちわ。あたし、ありす!」
「こんにちわ。わたし、アリス!」
「では俺は帰ろう。夕食前には迎えに来る」
余りにも幼い少女二人の登場に一同が固まる中、クロウクルワッハは飛び立っていく。数秒後、回復した青い天馬の一同が二人に近づいてきた。
「こんにちわ、お嬢ちゃん達」
「君達可愛いね。双子?」
「てか、可愛すぎだろ」
「ん~、いい
自分達を取り囲む彼らに対しありすとアリスはヒソヒソ話を始める。
「ねぇ、この変な
「しっ! ”ぺどふぃりあ”の変態オジサン達は相手をしたら喜ぶから構っちゃ駄目。あそこのハゲのオジさんの後ろにでも隠れましょ」
「……容赦ねぇな」
青い天馬一同は心を折られ地に手を付いて項垂れている。その光景をグレイは引いたようにしながら見ていた。
「あっ! あそこにも半裸のへんたいだぁ~!」
「駄目よ、ありす。露出狂は見られて喜ぶんだから。きっと全裸になって追いかけてくるわ。わたし達みたいな子に裸を見せて興奮するのよ、きっと」
グレイも心を折られた。
「にしてもあんな小さな女の子二人って……」
「……いや、侮らぬほうが良い。あの二人、只者ではないぞ。もしかしたら儂達全員を相手に出来る程かもしれん」
そして作戦が決まり決行しようとした時、六魔将軍から襲撃を掛けてきた。だが、
「「おいで、ジャバヴォック!」」
討伐隊には最凶の幼女達が居る事を彼らは知らなかった……。
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