「さて、どうしようか?」
「敵の様ですし、全滅させればよろしいのでは?」
一誠は腕組みして頭を傾げ、すっかり染まったランスロットは事も無げに言い放つ。彼らは今、悪魔に囲まれていた。
「我々の根城に乗り込んでくるとはその対価、おいくらかおいくらか!」
「え? 入場料いるの? もしかしてテーマパーク? あっ! 警備員まで特殊メイクしてるんだ。そりゃ怒るわ。え~と、団体割引ある?」
「違うっ!」
こうなった原因は数時間前に遡る。
「異世界に分身送る機械が完成したから試そう」
と、マユリが言った。以上で回想終了。ちなみに大勢が一誠と共に異世界に行き、イキナリ宙に放り出されたかと思えば空飛ぶ妙な乗り物に降り立ち悪魔に囲まれたのだ。
「……流石に此処で彼らを殺すのは心が痛む、かなぁ?」
「良いんじゃねーですか? ご主人様。向こうはどうも殺る気みたいですしぃ。氷天よ、砕け!」
玉藻は襲いかかってきた一体を凍り付けにする。なんか”不死の~”とか名乗っていたが芯まで凍らされては動けないようだ。だが、幹部っぽいのが負けたにも関わらず悪魔達に大して動揺は見られない。逆にニタニタ笑っていた。一誠がふと不死のなんちゃらに目をやると黒い霧の様な物になっていた。
「我らは冥王との契約により何度でも復活する。だが、キサマらには我らには向かった報いを受けて貰おう」
「え? 君以外も復活するなら”不死”の異名は意味ないんじゃ?」
「これが何か分かるか? 魔障粒子だ。魔道士が吸い込めば深刻な病を引き起こす」
「あ、ガンスルーだ。ねぇ、其処の仮面のお姉さん。他のも蘇るのにこの人なんで”不死”とか名乗ってるの?」
「愚かな人間め。なぁっ!?」
幹部の一人であるキョウカは一誠の言葉を無視して話そうとし、驚愕の声を上げる。魔障粒子は球体状の結界に包まれて遥か上空に登っていった。
「コノママ宇宙マデ上ゲテオクヨ」
「……貴様ら何者だ?」
どうやら目の前に現れた奇妙な姿をした者が結界を創り出したと判断したキョウカは下手に飛び掛らないように仲間達を手で制する。その時、何処からか声が響いた。
『マルド・ギールは其奴らと話がしてみたい。案内しろ』
「……だそうだ。ついて来い」
キョウカは一瞬迷ったあとで部下を引かせ、一誠達を案内した。
「え? 一人称が
「無駄口を叩くな。……失礼の無いようにな」
キョウカが一誠を連れてきた部屋には一人の青年が座っており、手に持った本からはそれなりに強力そうな力が放たれていた。
「では、お言いつけの通り私は此処で」
キョウカは青年”マルド・ギール”に言われた通りに部屋から出ていき、マルド・ギールは一誠達をしげしげと眺める。
「マルド・ギールは知りたい。お前らは何者だ?」
「異世界の最上級死神とその部下。ちなみに上司の名は冥王ハーデス」
「ふむ、やはり異世界の存在か」
マルド・ギールは疑わず、逆に納得した様な表情になる。どうやら何か根拠となる物を感じていたらしい。そして彼が立ち上がった瞬間、拠点が本性を現し一誠達を取込もうとした。それと同時に無数の茨が一誠達を締め上げる。
「あれ? これは何のつもり?」
「マルド・ギールは計画の邪魔になる存在が嫌いだ。キサマらは全員がマルド・ギール並みの力を持っている。だから今此処で消す」
「あっそ。えいや」
そして一誠達は特に力も入れずに脱出した。
「力抑えすぎてたね。……だからこんな雑魚に舐められる。皆、力開放しても良いよ」
その力を感じ取ったマルド・ギールは明らかに狼狽し出し、なにか言葉を発する前にランスロットによって一刀のもとに切り伏せられた。
「
真上に向けられたアスカロン・ミミックの刃は天井を貫き遥か上空まで伸びていく。そしてランスロットが縦横無尽に剣を振るうと一誠達が居る場所を除いてマルド・ギール達の拠点は完全に破壊される。そしてアーロ・ニーロは曹操を取り込んだ時に手に入れた
これが黒魔道士ゼレフが生み出した悪魔の集団”
「じゃあ、何か美味しいものでも食べに行く?」
「ん~それは構いませんがお金がありませんよ?」
「……あいつらから奪えばよかったかな? どうせ殺すしお金なんて必要なかったよね」
地面に降り立った一誠達は偶然その近くにいた坊主頭で頬に傷のある男が隠れて見ているのも気にせず話を続ける、その時、遠くから竜の気配が近付いて来た。
「……俺が戦うか?」
「いや、俺が戦うよクロちゃん」
「クロちゃんと呼ぶな」
クロウクルワッハが不満そうな顔をした時、一匹の竜が舞い降りる。全身真っ黒で放たれる力は魔王よりやや下程度。
『我、目覚めるは覇の理を求め、死を統べし赤龍帝なり』
『無限を望み、夢幻を喰らう』
『我、死を喰らいし赤き冥府の龍となりて』
『死霊と悪鬼と共に、汝を冥府へと誘わん!』
「
つまり、一誠の敵ではない。竜の名はアクノロギア。黙示録に記された恐怖の象徴。そしてアクノロギアは一誠の覇龍に恐怖を感じて一目散に逃げ出した。
「あれ? 何処に行く気かな? ……殺意丸出しで向かって来ておいてさ、逃がしてもらえると思ってたの?」
一誠はアクノロギアの尻尾を掴んで動きを止めるとそのまま地面に叩きつける。そして動き出す前に右の翼を掴むと簡単に引きちぎる。アクノロギアは吐血と共に悲鳴を上げ、左の翼も引きちぎられた。ドクドクと血」が流れる中、一誠の拳がアクノロギアの体にめり込み、その度に骨が砕け肉が弾け飛ぶ。それでも死なないのは一誠が手加減しているからだ。
「あはははははは!」
「……もうその辺にしておけ。相手を甚振るのはお前の悪い癖だ」
そしてアクノロギアはクロウクルワッハの一撃で頭を潰されて絶命した。
その一ヶ月後、
時は784年。ララバイの強奪事件が終わった数日後の事だった……。
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