ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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俺の眷属がこんなに変人ばかりなはずがない  ③

「……気に入らないねぇ」

 

 おっといけない、つい愚痴を零しちまったよ。此方は世話になる身便なんだから多少は我慢しないとね。アタシは顔に出かけていた不満を抑える。どうやら目の前のはぐれ悪魔祓いには聞こえなかったようだどうもアタシが世話になってる堕天使達は何か企んでいるようだし、怪しいよ。……にしても、退屈だねぇ。

 

 アタシの名前はアーシア・アルジェント。これでも少し前までは『聖女様』とか呼ばれてたんだ。ま、ムズ痒くって仕方なかったが、人助けになるってんでお偉いさんに利用されるのも我慢してたんだよ。でもさ、ある日それが一変しちまった。大怪我をして現れた悪魔、どう考えても怪し事この上ないんだけど、それはあくまでアタシが生きてきた狭い世界での常識の範囲内。もしかしたら本当に危ないのかもしれない。だから見捨てれなかった。悪魔祓いの皆さんにゃ悪いと思ったけどアタシは悪魔を助け、『魔女』として追放されちまったんだ。

 

 でもま、アタシはアタシの信念に従ったまで。最後まで貫き通した信念に偽善も偽悪も存在しない、ってのがアタシが世話になっていた孤児院の先生の言葉だからね。別に後悔はしちゃいないさ。……そういや先生の名前って何だったんだろうね。キャプテン・ベラボーとか名乗ってたけど。

 

「おーい、アーシアちゃん。ちょ~っと仕事に付き合ってほしんだけどさ」

 

 アタシに頼んできたのは白髪頭の少年神父。名前はフリード・セルゼン。先生から聞いたんだけど、あの白髪は特殊な訓練施設の出身の証らしい。先生が若白髪なのもその為だって言ってたけど、少々異常なコイツを見ていると異常な所だったのが伺えるねぇ……。

 

「はいよ。飯代くらいの仕事はさせて貰うさ」

 

「……なあ、君って本当に元聖女?」

 

 はっ、此奴もまだまだだねぇ。アタシも一人前には程遠いけどさ。人間ってのは話を聞くだけじゃなくって自分で見聞きしてから判断しなきゃいけないよ。

 

「アタシはアタシさ。聖女なんてお偉いさんが付けた宣伝文句に過ぎないよ」

 

「・・・・・・そんなもんかい?」

 

 フリードは呆れながらアタシを目的地まで案内する。どうやら悪魔との契約の常習犯を懲らしめるから結界を張っておいて欲しいんだけど、どうも焦臭いね・・・・・・。案内されたのは小さいアパートの一室。待っているように言われたアタシがこっそり覗くとフリードの奴が一人の男に切り掛かろうとしていた。

 

 

「なぁに、やってんだい!!」

 

「ぶべっ!?」

 

 アタシが跳び蹴りを食らわすとフリードは壁に激突して気を失う。ったく、これでも手加減した方なんだけど情けないね。アタシはフリードが本当に気絶しているのを確認すると殺されそうになっていた男の方を振り向く。怯えきった男の足下には魔法陣の描かれたチラシが落ちていた。

 

「……ウチのモンが悪さして済まなかったね。でもさ、アンタがよく呼び出してる悪魔には此奴や私みたいに堕天使の手下やってる人間やて神様に仕えてる悪魔祓いもいるんだ。……だからさ、こういう事は控えな。世の中、悪魔と契約しないで生きてる奴がいくらでもいるんだ。危ない橋は渡らなくて良いのなら渡らないほうが良いんだよ」

 

 アタシの言葉に男は黙ってコクコクと頷く、どうやら恐怖から口がきけない様だけど大丈夫そうだ。っと、ここに勘付いた悪魔が来る前に帰らないとね。アタシはフリードを担ぎ上げると本拠地の教会まで帰っていった。

 

 

 

 

「どういう事だよ、アーシアちゃん!」

 

「……黙りな」

 

 目を覚ましたフリードがアタシに食って掛かってきたが、反対に腕を掴んで捩じ伏せる。今のアタシは機嫌が悪い。腕を捻りながら目の前の馬鹿の背中を強く踏みつけた。

 

「アンタが悪魔や天使を殺そうと、それはアンタが生きてきた世界がそうだった、それだけの話さね。平和な国で両親に愛されて育った餓鬼と戦争中の国で孤児として育った餓鬼の価値観が違うのは当たり前。アタシにそれを否定する権利はない。でもさ、堅気のモンを殺すのは違うだろっ!」

 

「痛い痛いっ! アーシアちゃん、腕が折れるっ!!」

 

「……その辺にしておきなさい、アーシア」

 

 アタシが力を入れた時、横合いから止めに入る声が一つ。この教会のリーダーであるレイナーって堕天使で、一応アタシを保護してくれた恩人だ。……ま、コッチを見る目が所属してた教会のお偉いさんと同じに見えるから警戒しちまうけどね。

 

「まったく、あまり騒ぎを起こさないで欲しいわ。今、悪魔と揉めるのは面倒だもの」

 

「確かこの街を縄張りにしてるのはクレーリア・ベリアル、だったかい?」

 

「ええ、そうよ。もう直ぐ計画を実行に移すから、それまで大人しくしてなきゃいけないっていうのに……」

 

 どうも急な妊娠発覚、それも下級悪魔との間ってんでゴタゴタが起こって、その隙に前起きた揉め事で管理者が居なくなった廃教会に侵入したらしいけど……どうも怪しいよ。アタシは怪しみながらも笑顔を取り繕う。ま、なる様に成るだろうさ。そうそう、噂じゃ子供は無事生まれることになったらしい。あくまでも赤ん坊が生まれてくる事を望まれないなんて悲しいからねぇ。

 

 

 

 さ、そろそろコッチも計画を実行にに移すとするか。

 

 

 

 

 その夜、66のベラボー技の一つ”ベラボータヌキ寝入り”で監視者を騙したアタシは商に合わないけど、もし勘違いでレイナーレ達が良い奴だった時の為にコソコソ隠れながら調査する事にした。台所に向かうと明かりが漏れており、中からレイナーレの手下の声が聞こえてくる。

 

「で、アーシアの神器は何時抜くの?」

 

「ああ、三日後が一番時期的に良いらしい」

 

 さて、尻尾巻いて逃げるに限るね。此処でアイツ等全員を相手にするのは別に構わないんだが、騒ぎを聞きつけた堅気のモンが巻き込まれるかもしれないし、悪魔まで駆けつけたら大変だ。……流石に裏切ったとして堕天使から狙われ、悪魔からも敵として狙われるのは面倒だからね。さて、どうしたもんかねぇ。

 

 

 悩むアタシの脳裏を過ぎったのは数日前に出会った親切な悪魔。……仕方ない。レイナーレ達が勝手に行動してるって保証はないし、堕天使の本部も分からない。……それに、裏切ったのは向こうが先だ。

 

 アタシはそのまま気配を殺しながら教会から一目散に逃げ出した。シスター服? んな目立つ格好は変えてるし、髪だって塗料を使って染めたよ。だって、髪が痛むよりも発見される方が嫌だろう?

 

 

 

 

 

「……それで、連れて来たと」

 

「仕方ないだろう? マスター。一誠はこういう馬鹿者だ。だが、そういう部分を気に入っているのは君ではないか」

 

 あ、はい。リアスです。今、目に前にはアーシア・アルジェントを名乗る女傑が立ってケラケラ笑っています。どうやら一誠と祐斗が組手をしている所にやって来て投降を申し出て来て……。

 

「アンタが一誠の主かい? ふ~ん、中々強そうじゃないか」

 

「頼みます! 彼女の投降を認めてやって下さい」

 

 この後、代理で管理しているクレーリアさんの眷属に連絡したら別に良いって帰って来たので眷属にしました。あ、一応原作通り『僧侶』です。レイナーレ? アーシアに囮になってもらって調べたら独断行動だって直ぐにわかったので小競り合い扱いできるからクレーリアさんの眷属が始末をつけました。

 




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