ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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さて、この話の前に一話追加してます 11・7 22;28


ラスボス番外編 ラスボスだけじゃなかったら 毛玉と魔女とマザコン

 早朝の事、セットされた時間までまだ少し有り、部屋の主はベットの中で眠っていた。すると部屋のドアがそっと開けられて一人の少女が入ってくる。少女は部屋の主が眠っている事を確かめると服を脱ぎ、起こさないよう静かにベットに潜り込んだ。

 

 

「うわぁああああっ!?」

 

そして目覚ましの音で目を覚ました部屋の主はベットの中の少女に気付いて大声を上げ、少女は眠そうに目を擦りながら起き上がった。

 

「うふふ。お早う御座います、やっくん」

 

「お、お早う御座います、朱乃さん」

 

部屋の主の少年である柳は恥ずかしそうに顔を逸らしてはいるが、チラチラと視線を朱乃の方に向けている。勿論その事は気づかれており、朱乃はイタズラッポイ笑みを浮かべるなり柳に抱きついた。その時である。ドアが開いてエルフ耳の女性が顔を覗かせたのは。

 

「ちょっと、柳。早朝から騒がない…の……避妊はするのよ?」

 

ドアはゆっくり閉じられ、鍵が勝手にかかる。防音の魔法まで掛けられ、部屋でナニをしようとも外には漏れなくなった。

 

「メディアさん公認という事で……優しくしてくださいね?」

 

「母さんっ!? ちょ、誤解ですすってばっ! 朱乃さんも朝から色仕掛けは止めてくださいってばっ!」

 

「……夜なら良いんですね? では、今晩お邪魔しますわ♪」

 

少女…朱乃はクスクス笑うと服を着て部屋から出ていく。後に残された柳はドッと疲れた顔をしていた。

 

 

 

 

「おや、お早いですね。……色々な意味で」

 

「……お早う御座います、マザコン(兄さん)

 

柳が部屋から出てくると平安貴族風の装束を身に纏った青年が挨拶してくる。品の良さそうな笑みを浮かべているが朝から下ネタを言ってくる彼に柳は満面の笑みで返した。

 

「おはよう、柳兄さん、晴明兄さん」

 

「ええ、お早う御座いますベクトール」

 

柳達の後ろから近付いて来たのは西洋人の少年。ニコニコと無垢な笑みを浮かべながら二人に近づいてくる。彼の名前はベクトール。柳と青年…安倍晴明の弟の様な存在だ。そして柳の部屋にやってきた女性…メディアを合わせた四人は家族の様な関係を築いていた。

 

 

 

「貴方達、今日は仕事や学校が休みだからってノンビシし過ぎちゃ駄目よ」

 

「ええ、分かっていますよ母さん。取り敢えず今日は魔術工房の作成を試してみようかと思います。兄さん、手伝って下さいますか?」

 

「良いですよ、柳。そうだ、ベクトール。今日は午後から遊園地にでも行きますか?」

 

「本当っ!? やった! 幸せだなぁ…シアワ…セ…」

 

嬉しそうな顔をしたベクトールの体は徐々に変化し出し、やがて巨大な毛玉の化け物のような姿になっていく。鋭い牙が生え目は血走り、明らかに正気を失っていた。しかし三人は少しも慌てず、とりあえずこぼさない様にと味噌汁を飲み干すとジャンケンを行い、負けた柳が額を蹴り飛ばすと先程までの姿に戻った。

 

「えへへ、またやっちゃった」

 

「母さん、どうにかなりませんか?」

 

「そうね。ベクトールの場合感情が高ぶると怪物化するけど、感情を抑える訳にもいかないし……」

 

「まあ、私達が押さえつければ良いだけですよ」

 

「「「「ははははははは!」」」」

 

生まれた国や種族が違う四人だが、今は上手く家族をやっている。ある日突然家族を失った柳、半霊として生まれ母親に捨てられ我慢をし続けて生きてきたベクトール、夫に裏切られ自ら産んだ子を殺したメディア、そして不死の体で苦しみながらも母の愛を求め続けた安倍晴明。無くした物、求めた物の代わりを見つけた四人は互いに支え合い、今では本当に血が繋がった家族のようになっていた。

 

 

四人が暮らしているのは堕天使の組織グリゴリの本部近くに建てた家。先ほど柳に朝這いを行った朱乃も親子三人で暮らしている場所だ。彼女の父であるバラキエルのミスが原因で家族を失った柳だが、生きていく上では妥協も必要と諭され堕天使の保護を受け入れた。流石にバラキエルには蟠りがあるのだが幼馴染の朱乃とは上手くやっており、彼女の家が強襲された時も母親の朱璃と仲の良いメディアと遊びに来ており刺客を退けたのだ。

 

 

 

 

「そういえば言ってたっけ? 赤龍帝が目覚めたよ。しかも、転生悪魔」

 

「ヴァーリもハーフ悪魔ですよね。神の遺産が悪魔の手に渡るとは皮肉な話ですが、今度は剣呑な話にならなけらば良いのですがね」

 

「あの子も戦闘狂だから困ったものだわ。下手すれば三すくみの戦争になりかねないし神器との接続を断とうかしら?」

 

メディアの手には歪な形をした短剣が握られており魔女を思わせる笑みを浮かべている。その時、本部からの電話が鳴り響いた。

 

 

「コカビエルが聖剣を奪ってグレモリーに縄張りに? ああ、彼にも霊根を付けているので煉を全て奪い取らせて始末すれば良いのですね? え? 違う?」

 

総督のアザゼルからの電話を終えた柳は面倒臭そうな顔を三人に向けた。

 

「生け捕りにしたいので私達に言って欲しいそうです。ヴァーリだと赤龍帝との戦いが起きるかも知れないからだそうですよ。ついでに四人で遊んで行きましょう」

 

「わーい! お出かけだぁ!」

 

「駒王街よね? 何か良いお店はっと……」

 

皿の片付けをしだす柳に外出を喜ぶベクトール。そして雑誌を手に取るメディア。マトモなのは晴明だけ。

 

「皆さん、緊張感が有りませんね」

 

今日も胃がキリキリと痛む晴明。不死の体が恨めしいとある日の事だった。

 

 

 

 

 

「さて、そろそろ終わりにするか」

 

そして数日後、コカビエルは領地を任されているリアス達を追い詰めていた。力を譲渡されたリアスの渾身の魔力も防がれ打つ手が無くなったその時、学園の屋上から声がかけられる。

 

「ひと~つ! 人の生き血を吸い!」

 

「ふた~つ! 不埒な悪行三昧!」

 

「みっつ! ……なんだっけ?」

 

「……みっつ! 醜いこの世の鬼を退治してくれよう、ですよベクトール」

 

「あっ、そうか」

 

なんとも締まらない台詞で現れた柳達はケーキ屋の箱や話題のお惣菜店のコロッケ。それと少なくなっていたトイレットペーパーを入れた袋を下げていた。

 

「キサマら、何をしに来た?」

 

「見て分かりませんか? 貴方を捕まえに来たんですよ」

 

「何処がだっ! どう見ても買い物がメインだろう!」

 

「いや、貴方如きなら買い物後で済みますし。……少し買い物に夢中になり過ぎてましたけど。さて、観たいテレビもあるし終わらせましょう」

 

柳はコカビエルに向かって飛び蹴りを放つ。コカビエルは反撃しようとするが、ベクトールの手が消え去り、突如コカビエルの周囲に現れて体を拘束した。柳の蹴りはコカビエルの眉間を捉え校庭に叩き落とす。

 

「えへへ~♪」

 

「では私達は同時に行きましょう」

 

「ヒット数が少ない方が明日のトイレ掃除当番よ、晴明」

 

何とか立ち上がったコカビエルに二人の術が降り注ぎ、後には虫の息のコカビエルだけが残った。

 

「では、母さん。深夜にやる映画を録画してないので早く帰りましょう」

 

「ちょっと! ウチで機械が得意なの貴方だけなんだから録画は任せてたはずでしょ! ああ、もう! 早く帰らなきゃ!」

 

メディアが手を軽く振るとコカビエルと四人を魔法陣の光が包み、リアス達が何か言う前に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、新聞昨日のでした。レンタルしてませんしどうします?」

 

「……主演の子役が好きだから楽しみにしてたのに。トイレ掃除変わって貰うわよ? 柳」

 

 




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