ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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この魔人はディスガイア無印の魔人(最高ランク)だと思いください


暴虐の魔人 (お試し)

 世界と世界の間にある”次元の狭間”。その中を一枚の紙が漂っていた。紙には魔法陣と奇妙な文字が記されており、何かの契約書のようだ。

 

「?」

 

 その紙を一人の少女が手に取り無表情で眺める。少女が引っ張っても破こうとしても紙はビクともせず、興味を失った少女は紙を捨てる。その時偶々空間に穴が空き、紙はその穴に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

「……イッセーさん」

 

その少女、アーシアが兵藤一誠と言う少年と友達になったのはつい先程の事。だが、彼女の上司である堕天使レイナーレによってアーシアは教会に連れ戻され、今は儀式の準備が終わるまで自室で待機している。そして、儀式の末にはアーシアは死ぬ。逃げ出そうにも外には見張りが居て、そもそも逃げる気力すら残っていない。アーシアは大きく溜息を吐いた時、背後から何か軽い物が床に落ちる音が聞こえてきた。振り向くと其処に有ったのは先程の紙。

 

 

「これ、なんでしょうか……きゃっ!?」

 

アーシアが触った途端に紙に書かれた魔法陣が輝き、中から一人の男が現れる。鎧のようなコートを羽織り、逆立つ髪に鋭い眼光。そして、人とは思えない皮膚の色と威圧感を発していた。

 

 

 

「俺を喚んだのは貴様か? 虫ケラ」

 

「は、はひぃっ!?」

 

男から発せられる威圧感に耐え切れなかったアーシアは腰を抜かし呂律も回らない。男はそんな彼女の姿を見て見下す様に鼻を鳴らすと紙を拾い上げた。男は新たに紙に現れた文字を眺め、不機嫌さを隠そうともせず髪を握り潰す。放たれる威圧感は益々増し、アーシア排気すら満足に出来ず壁にはヒビが入り始めた。

 

 

 

「……契約内容は”助けて”か。随分と漠然とした願いだな。……っち! 虫ケラが死ぬであろう八十年間の警護となっている。まぁ、良い。契約は契約だ。おい、虫ケラ」

 

「わ、私の事でしょうかっ!?」

 

「この場所に貴様以外に誰が居る。……貴様、もしかして俺を喚びたくて喚んだ訳ではないな? ふん! 無償で契約せねばならぬ上に、相手がこの様な小娘とはな。さて、まずは此処を出るか」

 

男は一方的に話すとアーシアを片手で担ぎ上げ、壁に向かって拳を振るう。それだけで壁は吹き飛び、直線上に居たはぐれ悪魔祓い達は赤い霧になって風に飛ばされる。

 

「貴様っ! 何も…」

 

「黙れ羽虫」

 

教会内に居た堕天使ドーナシークが光の槍を出して襲いかかるが男が掌を向けると光弾が放たれ、着弾した場所が半径五メートルに渡って吹き飛びドーナシークは影すら残っていない。アーシアはただ恐怖し黙っている事しかできず、そのまま男が宙に浮かんだ事で浮遊感に襲われる。男はアーシアの状態など気にした様子もなく指先を教会に向けた。

 

「クール」

 

協会の敷地全体が凍りつき音を立てて砕け散る。教会の廃材に混じって人の体の様な物がチラホラ見て取れた。

 

「ひっ!?」

 

「黙れ殺す……ああ、出来ないのだったな。まったく、酒の席とはいえ馬鹿な物を作った物だ。おい、虫ケラ。俺の名はゼオン。特別に名で呼ぶ事を許してやる」

 

「は、はい。私は…」

 

「虫ケラの名など覚えん。故に貴様が名乗る必要はない」

 

ゼオンはアーシアに一方的に言葉を告げ、そのまま地面に降り立つ。彼が指を鳴らすと宙に穴が空き、ペンギンのヌイグルミもどきが飛び出してきた。

 

「おい、プリニー共。金が無いか探せ。一時間以内だ」

 

「ラジャーッス!」

 

ペンギン、プリニー達はゼオンに敬礼すると瓦礫をひっくり返し始める。ゼオンは木を背にして居眠りを始め、三十分程経過した頃に一匹が金庫を持ってきた。ゼオンは金庫の中身を全て取り出して小さな袋に全て入れるとアーシアの襟首を掴んで歩き出す。

 

「あ、あの、ゼオンさん? そんな小さい袋に何であれだけのお金が? それと、今から何処に行くのでしょうか?」

 

「腹拵えだ。……それと言っておくぞ虫ケラ。俺は契約で貴様の身を守るが、従者になった訳ではない。精々肝に銘じておけ。寸の間しかない人生を謳歌したければな」

 

その声を聞いいた瞬間、アーシアは生きたまま心臓を引き抜かれるかの様な感覚に襲われた……。

 

 

 

 

 

 

 

「二人共、サンキュ!」

 

その日の夜、堕天使に殺されそうなアーシアを救う為に一誠は教会に乗り込む事を決意し、同じ眷属のメンバーである小猫と祐斗も助力を申し出る。

 

 

 

 

 

 

 

「……何の騒ぎでしょう?」

 

教会が見える場所にあるハンバーガー屋の近くまで来た時、小猫は教会の方を指差す。その場所から見えるはずの教会は見えずパトカーが集まっている。そして、近くに有るハンバーガー屋では百個を優に超す量のハンバーガーをハイペースで食べ進む強面の男と金髪でシスター服の少女の姿があった。

 

 

 

「アーシアっ!?」

 

一誠は慌ててハンバーガー屋に飛び込みアーシアに駆け寄った。

 

 

 

「アーシア! 無事だったのかっ!」

 

「イッセーさん! はい! この通り無事ですっ!」

 

二人は再会を喜び合い、途端に寒気に襲われる。ゼオンが不快そうな視線を送っていた。

 

 

「黙れ虫ケラ共。今は食事中だ」

 

放たれる殺気に一誠は震え、一般人である店員や他の客は気絶する。実戦経験のある祐斗や小猫でさえ顔を青褪める中、残ったハンバーガーは全てゼオンの腹の中に収まった。

 

 

「おい、行くぞ」

 

ゼオンはアーシアを連れてその場から立ち去ろうとし、漸く我に帰った一誠達が立ち塞がった。

 

「待てよ! テメェ、堕天使の仲間か? っていうか、アーシアを何処に連れて行く気だっ!」

 

「悪いけど、貴方をこのまま黙って行かせる訳にはいかないんだ。ついて来て貰うよ」

 

「あ、あの、皆さん。この人は……」

 

アーシアは途中で言葉を切る。ゼオンからは濃密な怒気が放たれ、一誠達はその場に膝を付いて喉を抑えていた。強烈なプレッシャーに耐えられなかった三人は呼吸が出来ずに苦しそうな顔をしている。

 

 

 

「……先程から耳元をブンブンと飛び回りおって。やはり、虫ケラは巣ごと駆除せねばならぬか。おい、虫ケラ。貴様は俺の直ぐ傍に来い。この街を吹き飛ばす」

 

「そんな!? なんでそんな酷い事をっ!?」

 

「黙れ虫ケラ。弱き者には生きる価値など無い。故に俺が殺す。それの何がいけない?」

 

ゼオンの周囲は崩壊を始め、天に向けた手の先には巨大な魔力の塊が浮かんでいる。それが言葉の通りに街を吹き飛ばす事が出来る威力を持っている事をアーシアは本能で悟った。そしてゼオンはアーシアの服の裾を掴むと強引に引き寄せ魔力を放とうとする。その時、空に穴が空き、中から巨大な赤い龍が出現した。

 

 

「……アレと殺りあってみるか」

 

ゼオンは嬉しそうな顔をすると龍に向かって飛び上がり、ゼオンが龍を穴に蹴り入れると穴は塞がる。その場に静寂が訪れた。

 

 

 

「……た、助かったのか?」

 

「……その様ですね」

 

「そうだ! アーシア! 部長の所に行こう! 何か知恵を出してくれるはずだ!」

 

ゼオンが消えた事に安堵した一誠達はアーシアを連れて旧校舎まで向かう。出かけていたリアス達も戻っており、アーシアから事情を聞き出した。

 

 

 

 

 

 

「……そう。多分それは契約用のチラシね。多分、他の家のチラシが何らかの理由で私の管轄地に紛れ込んだんだわ」

 

「でも、部長。ゼオンなんて聞いた事がない名前ですわ」

 

「多分新人の転生悪魔じゃないかしら? 強力な神器を持っていて得意になってるのよ。実家の方に連絡して罰して貰うわ。……それよりアーシア。貴女、行く場所がないんでしょ? 私の眷属になる気はないかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

「それは困るな。護衛が面倒になる。……あの龍、少しは楽しめたな」

 

リアスがアーシアを勧誘しようとした時、天井からゼオンが降り立つ。その服には少々の返り血が付いているが、ゼオン自体には傷一つ見受けられなかった。

 

 

 

「……此処はグレモリー家の管轄地。貴方、それを知っていて侵入したのかしら? 悪魔の様だけど、誰の下僕なの? 家間のルールくらい知ってるわよね?」

 

「下らん! 力無き悪魔が違う悪魔に全てを奪われるは世の摂理。弱肉強食こそが悪魔の全てであろう? 詰まらんルールなど口にするな、虫ケラ」

 

「……そう。敵と言う事でいいのね?」

 

「何を馬鹿な事を言っている? 羽虫が龍の敵になれる訳がないだろう?」

 

「巫山戯ないで! 馬鹿にしているのっ!?」

 

「至極真面目だが馬鹿にはしているな」

 

直後、ゼオン目掛けて滅びの魔力と雷撃が同時に放たれる。その結果、ゼオンは無傷で佇んでいた。

 

「……今ので攻撃したつもりか? 実に下らん。これならプリエの兵の方が百倍強いぞ。この世界の悪魔は随分と弱いのだな」

 

「その言葉、貴方が別の世界から来たように聞こえけど?」

 

目の前の相手には敵わないと悟ったリアスは情報だけでも引き出そうとする。対するゼオンは目を丸くして驚いていた。

 

「……いや、世界が幾つもあるのは常識だろう? ……本当に知らんのか?」

 

「……世界って冥界と人間界と天界の三つでしょ?」

 

 

 

 

 

「……違うな、貴様の言った冥界、悪魔の棲む魔界は俺が知っているだけで数百万は存在する。無論、魔界によって強さはバラバラだがな。俺はその中の一つからやって来た……魔人だ」

 

 




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