ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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従者が金ピカと青タイツと半裸だったら…… ⑦

聖杯戦争中に突如現れた謎の三人組に参加者達が騒然となる中、更なる知らせが教会から届く。

 

『異常殺人者がマスターとなってキャスターと共に暴走。二人を始末せよ。なお、あの三人についてはそれぞれの陣営に判断を委ねる』

 

何故かセイバーをジャンヌ・ダルクだと思い込んだキャスター、ジル・ド・レェは贄とするべく子供を誘拐していると言う。その事に義憤を募らせる者、報酬目当てぬ動く者、興味ないと傍観を決め込む者と三者三様の動きを見せている。そして、その事件を思い出したギルガメッシュは

 

 

 

 

「わ~、このお船、空を飛んでる。すっご~い」

 

「こら、危ないから走るな! おい、其処! オシッコはトイレでしろ! あ~、もう! 身を乗り出すな!」

 

さっさと二人を始末し、子供達を預けるべく教会へと向かっていた。救出された子供達は空を飛ぶ船、ヴィマーナから見る景色に興奮してはしゃぎまわっている。比較的大人しかった柳と違い、騒ぎ回る子供らに振り回されて辟易としているギルガメッシュは自分の袖を引く赤毛の少年に気づいた。

 

「何だ、雑種。貴様の遊び相手になる気はないぞ」

 

「違うよ。助けてくれて有難う。ねぇ、オジさんは正義の味方なの?」

 

「いや、我は我の家臣と民の味方だ。貴様らを助けたのは気紛れに過ぎん」

 

少年の問いにギルガメッシュはそう答えたが、少年()には彼の姿に紛れもなく『正義の味方』に見えていた。その後、魔術の秘匿の為に記憶を消されながらも彼らの心の奥底には黄金の英雄の姿が刻み込まれた。そして、この世界の未来には正義の味方として人々を守る者達が現れる。彼らは仲間というわけではなく、掲げる正義や信念はバラバラだったが共通する事がある。出身地と世代、そして黄金の衣装であった。

 

 

 

 

 

 

なお、今回彼が子供らを助けたのは、目当ての店の主人が子供を攫われた為に仕事が出来なくなっていたからだけであり、彼が単独で助けたのはジャンケンで負けたからである。

 

 

 

 

 

「キャスターとそのマスターが始末された!? それも、もう一人のアーチャーに!?」

 

「ええ、そうですわ切嗣。子供全員を無傷で救い出した彼は子供達を教会に預け、そのまま何処かへ消えたそうよ。足取りを追ったんだけど見つからなくて……」

 

「……もう一人のアーチャーに謎の男二人。しかも戦闘能力は最優の英霊たるセイバーと最速の英霊たるランサーを凌駕するか。しかも、残りの二人の戦闘力は不明。……厄介な奴らだ。暇つぶしと言っていたが、何が目的なんだ……」

 

セイバーのマスターである衛宮切嗣は得体の知れない者達に警戒を募らせ、対策を練りだした。

 

 

 

 

 

 

「時臣! まだ我の偽物達の所在は分からんのか!」

 

「はっ! 使い魔で探索してはおりますが未だ見つからず……」

 

傷の癒えたアーチャーは苛立ちを隠そうともせずにマスターである遠坂時臣を怒鳴りつけた。彼が力任せに握り締めたグラスは割れ、酒が床を濡らす。自分にソックリの者が現れ、雑種と見下していた相手に宝具を破壊されたばかりか、逃走せざるを得ない状況まで追い詰められた。かって世界をその手中に収め、王の中の王を自称する彼にとってそれは耐え難い屈辱だったのだ。時臣は彼の怒りを買わぬようにただ平伏すばかりであり、彼には対策を考える余裕などなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガハハハハハハ! まさか手柄を横取りされるとはな。しかし、子供らを迅速かつ安全に救出する手際といい、あの強さといい、何としても吾輩の軍門に下らせたくなったわ!」

 

「何言ってんだよ、ライダー! お前だって見ただろ!? あの大男だけでもセイバーとランサーを一人で圧倒しただけじゃなく、アーチャーの無数の宝具を真正面から破ったんだぞ! 他にも変な奴やもう一人のアーチャーも居たし、幸いサーヴァントじゃないなら無理に戦わなくていい相手なんだ。変に刺激するような事すんな」

 

「坊主も分かっておらんのぅ。困難だからこそ挑みがいがあるのだろうが。……ふむ、奴らを勧誘する前に他の王の器を見定めるか。よし! 酒を買ってくるぞ」

 

「……また変な事思い付いたのかよ」

 

豪快に笑って何処かへ出かけていくライダーの背中に向かってウェイバーは疲れきった声でそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

「ケイネス殿! 何とぞ私めにあの三人の討伐をご命じください! この槍に誓って必ずやあの三人の首をお持ち致します!」

 

「……セイバーと二人掛りでロクな手傷も負わせられなかったのにか?」

 

「ッ! し、しかし!」

 

「それに、あれだけの力の持ち主がサーヴァントを狙っているなら好都合。我らが姿を隠していれば勝手に競争相手が減るではないか。話は以上だ」

 

ランサーのマスターであるケイネスはランサーの申し出を無視し、用件だけ告げると背を向けた。その事にランサーが歯噛みした時、彼らが居た屋敷の門が吹き飛んだ。

 

「ぶるあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 探したぞぉ! さぁ、来いよ! 俺の乾きを……癒せぇぇぇぇぇっ!!」

 

バルバトスの叫びと共に屋敷の空気が震えガラスが割る。放たれる闘気にケイネスどころかランサーさえも息苦しさを感じて冷や汗を流した。

 

「ケイネス殿! 数秒間だけ時間を稼ぎます! 奥方様と共にお逃げください!」

 

「……ランサー。此処は頼む。残った令呪をすべて使って命じる。全力で奴を打ち破れ! ……これは命令だ。必ず生き残って我に聖杯を捧げよ!」

 

「……ケイネス殿」

 

ケイネス・アーチボルトは今までランサーの事を信用していなかった。元々疑り深い性格であり、特に裏切りの伝承を持つ己のサーヴァントには強い不信を抱いていたのだ。それゆえにランサーがいくら彼に忠誠を誓っても彼らの間には信頼関係が生まれる事はなかった。そう、この瞬間までは。命の危機に瀕した時に交わされたやり取りにより、確かに二人の間には信頼関係が生まれようとしていた。だが、遅すぎた。バルバトスの前では一瞬の判断が生死を分けるのだ。

 

「……俺様を前にしてペラペラと……余裕かましてんじゃねぇ!! ヘルヒート!!」

 

バルバトスから計32発の赤き炎の弾丸が放たれる。全ての弾丸はランサーの最高速度を遥かに超える速度で二人に向かっていった。

 

 

 

 

破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルク)ゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

 

ランサーはその凶弾から主を守るべく宝具を解放する。触れた物の魔力を打ち消す其の長槍の力は術への対処法としては最適だっただろう。だが、その術は英霊たる彼の力量を持ってしても対処できる存在ではなかった。一発の弾がランサーの足に命中し、その部分は炭となって崩れ落ちる。もう一本槍を杖代わりに体勢を整えて対処するも今度は長槍を持った右手が炭化。術に対処する為の槍は床に落ち、数発の弾が彼に命中した。

 

「ケイ…ネス殿…。申し訳…御座いませんでした…」

 

力なく倒れるランサ-に容赦なく弾が襲いかかり、やがてランサーは光となって消えていく。彼が最後に願ったのは主であるケイネスの生存だった。

 

 

 

 

 

「……ランサーの反応が消えた。くっ!」

 

ランサーが稼いだ僅かな時間を使って屋敷から逃げ延びたケイネスはランサーの死を悟り歯噛みする。そんな中、彼に近づいてくる足音があった。振り向いた彼の後ろに居たのはバルバトス。逃げる暇もなく首を掴まれ、片腕だけで持ち上げ合れる。そんな苦しい体勢からでも彼はバルバトスに向かって魔術を放つが、正面から食らったに関わらずバルバトスにはかすり傷一つもなかった。

 

「言い残すことは有るかぁ? 今日の俺は紳士的だ。ちゃんと聞いてやるぞぉ」

 

「……ランサー、今まですまなかったな」

 

 

最後に彼が残した言葉は命乞いでもなく謝罪。その言葉を聞いたバルバトスは彼の首に掛けた手に力を込め、一気にへし折る

 

 

 

 

かと思いきや、その手を離す。落とされた時に腰を打ち、先程まで掴まれていた喉を押さえて咳き込む彼にバルバトスは視線を向ける。

 

 

「今日の俺は気まぐれだぁ。特別に生かしておいてやる」

 

そう言ってバルバトスは消えて行き、その場所にはケイネスのみが残された。

 

 

 

 

 

 

一方その頃、切嗣の拠点では三人の王による聖杯戦争ならぬ聖杯問答が行われようとしていた。騎士王であるセイバーの元に酒を持ってきた、征服王ことライダーは街中で誘ったアーチャー、英雄王にも酒を渡す。だが、その酒が気に入らなかったアーチャーは自分の財の一つである極上の酒を提供する。そして、今まさに酒盛りが行われようとした時、新たに別の二人が現れた。

 

「おお、やっとるな。さて、我らも混ぜて貰うぞ。ちゃんと土産は用意してきた。我が家臣に作らせた、魔王すら魅了する極上の馳走だ」

 

「ヤハハハハ! そういえば我も王だったな。その問答に混ぜて貰うぞ!」

 

かくして、5人の王による問答が行われようとしていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それで、極上の馳走とは?」

 

「……直ぐに出すから待っておれ。腹ペコ王よ」

 

「腹ペコ王!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~オマケ~ アサギ・妲己・つけもの編

 

 

ゲームセンターに新入荷したシューティングゲームの周りには人集りが出来ていた。彼らが注目しているのはひと組の男女。彼らは難易度が高い事で有名なそのゲームをやっており、完全に息の合ったプレイをしていた。二人の銃は次々に敵を倒していき、一つのミスもなくゲームを進めていく。やがて、終盤へと差し掛かり、目を合わせて頷いた二人は同時に引き金を引く。最後の敵を倒した時、画面にはパーフェクトの文字が表示されていた。

 

「……こんなもんね。次行きましょ。私、新しい服欲しいな」

 

「ええ、良いですね。行きましょう」

 

二人は他の客の注目を気にした様子もなくゲームセンターから出ていった。

 

 

 

 

 

 

「いや~、ありがとね柳。下着まで買って貰って」

 

「いえいえ、お気になさらずに。……流石にランジェリーショップの近くで待つのはキツかったです」

 

服を買った後、二人は街中を散策していた。アサギは柳の腕に抱きつき、柳もそれを気に下様子もなく歩いている。美男美女のカップルという事もあり二人はとても絵になっていた。

 

「それにしてもゲーセンでは注目されたわね。まるで主役になったみたいで嬉しかったわ」

 

「……そうですね」

 

嬉しそうなアサギに対し、柳はどこか機嫌が悪そうだ。それを見たアサギは不満げに頬を膨らませる。

 

「なによ、私が注目されるのが不満? 良いじゃない、私だって主役になりたいのよ」

 

「……アサギさんには皆に注目される主役より、私だけのヒロインになって欲しいんですよ」

 

柳は顔を真っ赤にしながら顔を背け、それを聞いたアサギの顔も耳まで真っ赤になった。

 

「……馬鹿。ねえ、帰ったら買って貰った服を着てみせるから見てくれない?」

 

「……下着もですか?」

 

「仕方ないわね。……柳のスケベ」

 

アサギはそう言うとより強く柳に抱きついた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い森の中に怪物の叫び声が響く。地面にはどす黒い血が撒き散らかされ、グチャグチャになった怪物達の死体が転がっている。此処で死んでいるのはハグレ悪魔の群れ。最低でも中級クラス、群れのリーダは最上級クラスという大規模な群れだったのも関わらず、ほぼ全滅していたる。今生き残っているのは群れのリーダーだけ。それの命も、もう直ぐ尽き様としていた。腕は乱暴に引きちぎられ、足はありえない方向に折れ曲がっている。そして、その正面にはこの惨状を作り出した人物……柳がいた。

 

「た、助け……」

 

「煩い」

 

柳は命乞いを無視して怪物の顔に蹴りを入れる。怪物の顔は熟れたトマトの様に潰れ、怪物は息を引き取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらん、おかえりなさぁい♡」

 

「……なんですか、その格好」

 

家に帰ってきた柳を出迎えた妲己は素肌の上から小さめのエプロンだけを着ており、豊満な胸が横からはみ出している。口では呆れている様子を見せる柳だったが視線はしっかりとその姿を捉えており、その事に気付いている妲己は悪戯そうに笑った。

 

「お仕事ご苦労様。アサギちゃんは明日の朝に戻るそうよ。つけものちゃんも例の組織に潜入中で、さっき中間報告があったわ。……それで、ご飯にする? お風呂にする? それとも、わ・た・し?」

 

「……じゃあお風呂と妲己さんで」

 

「あらん、昨日もアサギちゃんとお楽しみだったのにお元気ねぇ。……『改造』の効果かしら? さ、行きましょう♡」

 

 

 

その後、風呂場では柳の体を妲己が自分の体で洗っている内に興奮して押し倒そうとし、逆に押し倒されるという場面が繰り広げられていた。

 

 

 

 

 

「……いい、柳ちゃん? 女の子はもっと丁寧に扱うものよん。貴方がそこまでなのは私の『改造』のせいもあるんでしょうけど、毎回毎回気絶したり泣き叫ぶまで攻め続けるなんて……。二回に一回にしなさい」

 

「あ、それ自体は別に構わないんですね」

 

風呂場で足腰が立たなくなった妲己は暫くしてやっと回復し、今は自室のベットに座り、柳を床に正座させて説教をしている。なお、柳はパンツ一丁で彼女は未だに裸のままだ。数十分程過ぎた所で満足したのかそっと右手の甲を差し出し、柳は無言でそこに口付けをする。何度もしているかの様に慣れた動作でそれをし終えた時、柳の鼻腔を甘い香りが擽る。

 

「しまっ……」

 

柳がそれに気付いた時には遅く、彼の瞳から焦点が失われ、熱に浮かされている。何時の間にか妲己が纏っている布の名は傾世元禳(けいせいげんじょう)。仙人が使う宝具(パオペエ)と呼ばれる道具の一つで魅了の効果がある。普段の彼なら抵抗できるが、コトを終えた後の為に油断していたのだ。その様子を見た妲己はうまく行ったと言わんばかりにほくそ笑む。

 

「うふふ♡ これで普段はできない事をして貰おうかしらん。さて、まずは足をお舐めなさい」

 

「……はい」

 

妲己がそう言って足を投げ出すと柳はそれをそっと掴み、舐め出す。その感触に妲己は思わず身悶えた。

 

「あっ…。いい…。くっ…、クセになりそう……♡。……もう良いわん。これ以上は後戻りできなくなりそう。次は口づけよん♡ 優しくね?」

 

「……はい」

 

柳はそう返事をすると妲己の肩に手を置き、一気にベットに押し倒す。いきなりの事態に妲己からは何時も絶やさない余裕の色が消えていた。

 

「えっ? ちょっ!? 魅了は効いてるはずじゃない。何で押し倒して……」

 

「……そりゃまぁ、直ぐに解けますって。何故すぐ解けたって? 私が既に貴女に魅了されてるからですよ。普段からされているんですから耐性も付きますって。じゃあ、頂きます」

 

「……優しくねん♡」

 

その後、暫くの間ベットの軋む音と、艶っぽい女性の喘ぎ声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レオナルド、神器の訓練は上手くいってるかい?」

 

「……うん」

 

「そうか。これからも頑張れよ」

 

レオナルドと呼ばれた幼い少年に声をかけた青年は満足げに頷くと訓練場から出ていった。訓練場に残ったのは少年一人。彼は人目がないのを確かめ、そっと髪に手を置き

 

 

「……ふぅ」

 

 

変装を取って本当の姿を現す。少年の正体はつけものだった。ようやく一息付けた彼はホッとする。だが、いつの間にか目の前に黒い服を着た幼女が立っていた。

 

 

 

「我、オーフィス。お前、なにもの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つけものです」

 

 

 

その瞬間幼女の手が彼の体を貫き、つけものは天に召された……。


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