ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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不死鳥の王と収集家の戦車 ⑥

「ほら、起きなさい。もうすぐ朝ご飯出来るわよ」

 

「ふわぁ~い」

 

 それは取る日の早朝の事。心地よい睡魔に身を任せていたアーシアはケリィによって揺り起こされた。アーシアが欠伸を噛み殺しながら起き上がると、ケリィは手早く寝癖を直す。既に制服の準備もされており、ブラッシングも完璧だ。リビングに向かうと自家製の焼きたてパンの良い香りが漂ってきた。

 

「あら、起きましたのね。お早う御座いますわ、アーシア」

 

「あ、お早う御座います、レイヴェルさん」

 

 レイヴェルはケリィが入れた紅茶を飲みながら新聞を手にする。すると新聞はケリィに取り上げられた。

 

「ほら、早く顔洗ってらっしゃい。その間に卵を焼くわ。目玉焼きの焼き加減は半熟で良いのよね?」

 

「あ、はい。お願いします」

 

「ケリィ、私は……」

 

「はいはい、分かっているわ。両面にしっかりと火を通すのでしょ?」

 

「あら、分かってますわね」

 

 やがてアーシアも食卓につき、その日の朝食が開始された。

 

「ほら、ちゃんと三十回噛んでから飲み込みなさい。それと三角食べをする事」

 

「あのレイヴェルさん。ケリィさんってお母さんみたいですね」

 

「……身近に手間の掛かる子供(お兄様)が居ますから」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、ケリィ。お前、アーシアさんの風呂とか覗いてないだろうな?」

 

「嫁入り前の子のお風呂を覗く訳ないでしょ。それよりも神器は使用できるようになったの?」

 

 レイヴェルの眷属になったアーシアは駒王学園に入学。オカルト研究部の所属となった。一年生のレイヴェルだけでなく、アーシア登校した事で男子から妬みの視線を送られたケリィだが、その性格や話し方で女子とは仲が良くなっており、それが抑止力となって特に手出しされないでいた。

 

 

「……まだだ」

 

 未だ自分の神器の本当の名も発動のさせ方も把握していない一誠は気不味そうな顔をする。そんな時、ふと思いついた様な顔を見せた。

 

「そういえばよ、お前の主が部長の……こ、婚約者なんだろ? どういう奴なんだ?」

 

「お調子者のシスコンハーレム野郎よ。妹に悪い虫が寄り付かないようにって眷属にして。アタシとレイヴェル様以外の眷属全員をハーレムに入れてるわ。後は才能豊かね。……それと、もうすぐ婚約者じゃなくなるわ」 

 

それを聞いた一誠は嬉しそうな顔をする。どうやらハーレムを作ったのが原因で婚約解消になったと思い込んだようだ。

 

「うっしっ! やっぱ部長みたいな美女にハーレム野郎は……ああ、フェニックスだから焼き鳥野郎は似合わないぜっ! 婚約解消されて当然だな」

 

「……ああ、違うわよ。婚約は部長が大学卒業後って話だったけど、急に早まったのよ。それと、今のセリフはフェニックス家に報告させて貰うわ。ハーレム願望とハーレムを容認する主を持った下級悪魔さん。……とりあえずその事で部長の機嫌が悪いから、暫く部室はお休みするわね」

 

 ケリィは一誠の足を踏み付けると校門の方に歩いていく。既にアーシアとレイヴェルが待っており、そのまま三人で帰っていった。

 

「くそっ! 美少女二人と下校かよ。イケメン爆発しろっ! ……さっきのは不味かったか」

 

 

 

 

 

 

「ケリィさん。今日の晩御飯は何ですか?」

 

「あらあら、今から餡蜜を食べに行くのに晩御飯の話? アーシアは本当に食べるのが好きね。今日はすき焼きよ。もちろん割り下も手作りで。肉は最高級のミノタウロスなの」

 

「あら、仕方ありませんわ。ケリィのご飯は美味しいんですもの。ほんと、貴方と結婚できる相手は幸せですわね」

 

レイヴェルはケリィの腕に抱きつきながらチラチラと視線を送り、アーシアは何かブツブツつぶやきながら赤面している。

 

「あらあら、アタシは上級悪魔になっても主夫なわけ? まぁ、家事は好きだから良いけど」

 

ケリィはそれに苦笑しながら応えた。

 

 

 

 

 そして数日後、オカルト研究部部室に険悪な空気が流れていた。その場にはリアスとその眷属。リアスの兄であるサーゼクスの女王であるグレイフィア。そしてライザーと眷属達とアーシアだ。結婚式場を下見に行こうというライザーにリアスは反発。彼とは結婚しないとまで言い出した。ライザーはそれでもヘラヘラしていたが、ついに我慢の限界が来たのか力尽くでも冥界に連れて帰ると言い出し、それを止めたグレイフィアによって両家当主からの提案が伝えられた。

 

「レーティング・ゲームで決着を付けたらどうか」

 

 ライザーは先日、タイトルを取った程の実力者で、リアスはゲーム未経験。無理やりでも納得させようとさせていると激怒したリアスはそれを了承した。

 

「へぇ、了承しちゃうんだ。……ふむ、ただ勝つだけじゃ詰まらないな。ハンデとして特訓期間を十日間と……そうだっ! こういうのはどうだろう」

 

 ライザーが提案したのは三種類の試合形式。まずは王を除く眷属で一対一の試合を行い、引き分けでもリアスの勝ち。次はリアス以外の眷属とケリィのみとのゲーム。最後にライザー対ランダムで選ばれた代表者二人との戦い。制限時間内にライザーが敵を倒せなければライザーの敗北とする。それで一回でもリアスが勝ったら婚約破棄で言いと言うのだ。

 

「……舐めているのかしら、ライザー? ケリィがどれほど強いかは知らないけど、私の眷属全員とだなんて」

 

「そっちこそタイトルホルダーを舐めているのか、リアス? それと、ケリィは俺より強い。君と一緒でも過剰戦力なくらいさ」

 

「あらん、褒めすぎよぉ」

 

「はわわっ!? ケリィさんってそんなに強かったんですかっ!?」

 

「ええ、そうよ。これでも次期最強の戦車候補の一角に数えられてるの。……まぁ、ホントの切り札がライザー様に使用禁止されてるけどね」

 

 最後の台詞は誰にも聞こえないように呟くケリィ。そしてリアスは悔しそうにしながら申し出を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

「うまく行ったわね、ライザー様。後は貴方次第よ」

 

「ああ、分かってる。上手い事やるさ。お前も頑張れよ。上級悪魔昇進試験の受験生に選ばれそうだって聞いたぞ。後は観客にどうアピールするかだな」

 

「ええ、そうね。ねぇ、知ってるかしら? 魔王クラスの最上級悪魔である元龍王のタンニーン様のブレスって、隕石の衝撃と同じくらいらしいわ。怖いわねぇ」

 

 ケリィはクスクス笑いながらライザーが持ってきた包みを開ける。中には特注のエアガンであるスナイパーライフルとガトリングガンが入っていた。

 




今週中にスーパーモデルになるのが夢のちびっ子の能力を知っていても、感想で黙秘ですからね!
(笑)


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レベル2 いろいろ考えるのは大変だ

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