ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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従者が金ピカと青タイツと半裸だったら…… ⑥

「さて、エクソシストのお二方。依頼内容は伺っておりますよ。聖剣の奪還のお手伝いでしたね? さぁ、コーヒーでもどうぞ」 

 

「ああ、貰おう」

 

「あの~、砂糖は無いのかしら? 私、ブラックはどうも……」

 

柳は訪ねて来た二人にコーヒーを出しながらそう告げる。砂糖が入っていないブラックコーヒーを躊躇いなく飲むのは青髪の少女、ゼノヴィア。砂糖を欲しがったのは栗色の髪の少女、イリナ。だが、柳は彼女のことを無視し、自分もコーヒーを飲みだした。

 

「ああ、やはりコーヒーはブラックに限りますね。砂糖を入れるんなんて邪道! 貴女もそう思いますよね? え~と、イリナさん?」

 

「え、ええ。そうよね」

 

イリナは笑顔でそう言い切る柳から発せられる迫力に押され、仕方なくコーヒーに口を付ける。そして、依頼について話を進めていた時、キッチンの方から芳醇なカレーの匂いが漂い、その途端、部屋の中に腹が鳴る音が響き渡った。音の主はイリナとゼノヴィアの二人。思わず腹を押さえて赤面する二人に対し、柳は笑みを浮かべながら告げた。

 

「さて、そろそろ夕食時ですし、お二人もどうぞ。今日は私特製のマーボーカレーですよ」

 

 

 

 

 

 

 

「旨い! 旨いぞぉ!!! おかわり!」

 

「あぁ! 幸福が全身を駆け巡るわ! おかわり!」

 

ゼノヴィアとイリナの二人はカレー皿を掴み、中身を必死で掻き込んでいる。彼女らが夢中になっているのはマーボーカレー。柳がバルバトスから教わったこの料理は体力を回復させる奇跡の料理。かって食事に招かれたミカエルとガブリエルが最後の一杯を巡り、危うく堕天しかねた程の絶品だ。瞬く間に食べ終わった二人はすぐにお代わりを要求し、柳は笑顔で新しいカレーを注いでいく。そんな様子を見てアーシアは唖然としていた。そんな中、ようやく満足したらしいゼノヴィアが彼女に声をかけてきた。

 

「さっきから気になっていたが、君は『魔女』アーシア・アルジェントか? まさかこのような場所で……」

 

「いえ、彼女は『只の』アーシア・アルジェントですよ。とある堕天使に殺されかけてましてね、縁が有ったから助け、今もお世話をさせて頂いています。……それにしても彼女は運が良いと思いませんか? 本来なら死んでいたのに、たまたま私と出会って助かったのですから。これも彼女の信仰深さの現れですね」

 

ゼノヴィアが言った魔女という呼び名にアーシアが身をすくませた時、ゼノヴィアの言葉に柳の言葉が割って入る。最初は顔を顰め、何か言おうとしたゼノヴィアだったが、アーシアの顔を見て何かを考え、すぐに表情を柔らかいものへと切り替えた。

 

「……そうだな。どうやら人違いのようだ。職業柄、信仰心がある者は分かるのだが、彼女からは強い信仰心を感じる。さて、アーシアさん。主も貴女を見守っていらっしゃるだろう。その信仰心を忘れない事だな。君に主の導きがあらん事を祈るよ」

 

「は、はい! 貴女にも主のお導きがありますようお祈りします」

 

「……ところで、君の仲間は三人いると聞いていたんだが、何処に居るんだい?」

 

「……旅行です」

 

 

 

 

 

とある旅館の一角で、ギルガメッシュ達はがマッサージチェアを使い寛いでいた。ちなみに旅費を全額出しているのはギルガメッシュだが、彼はどこか落ち着かない様子で貧乏揺すりを繰り返している。

 

「むぅ、やはり柳達を二人きりにすべきではなかったか? だが、……」

 

「そう心配するな、ギルよ。あの二人が簡単に間違いを犯すものか。なぁ、バルバトス?」

 

「ぶるあぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ……柳を育てたのは俺達だろうぉ。少しは息子を信じてやれぇ」

 

「しかしだな! しかし此処の料理は食事はイマイチだったな。やはり、奴の料理で肥えた舌では、この程度の旅館の食事では物足りんな。まぁ、我の宝物庫には事前に作らせた料理を収めておるがな。旅行前の深夜に起こして作らせたら、禁手に閉じ込めて、飯で釣ったゼノンとシドーをけしかけてきよった……あの時は流石の我も死ぬかと思ったぞ。魔王って……、破壊神ってお前……」

 

そう語るギルガメッシュの顔は平静を装ってはいるが少し青ざめ、体は小刻みに震えていた。そして、そんな彼を二人は呆れてような目で見ている。

 

「いや、それはお前が悪いだろぉ。当然、俺等の分もあるのだろうなぁ?」

 

「まぁ、柳の事だから、当然多めに作っておるのだろうが……さて、英霊らしき気配が集まりだした。そろそろ開幕したようだぞ。第四次聖杯戦争がな」

 

エネルがそう告げるなり、三人は表情を切り替え、部屋に戻ると浴衣から着替えた姿で外へと出ていく。その手にはビデオカメラが収められていた。

 

 

 

 

 

事の発端は数日前の酒宴まで遡る。バルバトスの失恋話でエネルとギルガメッシュが大いに盛り上がっていた時、料理を運んできた柳がふと思い出したように漏らした。

 

「そういえばギルさんも、求婚した相手にフラれた上で負けたんですよね? 第五次には終わり頃に参加したらしいですし。第四次の時は圧倒的だったって言ってましたが……」

 

「……何だ、その疑うような目は! 良いだろう、今すぐ我の居た世界の過去に行って戦争の様子をビデオに撮ってきてやる! バルバトス! 今すぐ我を過去に飛ばせ!」

 

「ふむ、面白そうだ! バルバトス、たしか過去に干渉しても並行世界が増えるだけで、今は変えれんのだったな? なら、英霊とやらと戦うのも一興。ヤハハハハ!」

 

「……この、戦闘狂共めぇ。柳、お前はこうなるなよぉ」

 

「……いや、貴方が言う権利ないと思いますよ。異世界回って英雄達と戦ってきたんでしょう? では、私は残りますので行ってらっしゃい」

 

「ああ、行って来る。それと、何かあった時はこの携帯電話を使え。異世界だろうが過去だろうが通信可能だ」

 

そう言ってギルガメッシュは携帯電話を柳に渡すと旅行の支度をし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぅ、やっとる、やっとる。あの小娘が貴様をフッた女か。ヤハハハハ、中々の美女ではないか!」

 

「……頼むからその話は止せ。さて、征服王が来たという事は……。ってバルバトスはどこへ行った!?」

 

「ヤハハハハ! 英雄殺しの奴が英霊を前に黙っていられる筈がなかろう? ほれ、戦闘に乱入しておる」

 

エネルが指差した先では槍兵と剣を持った少女に対し、斧を振りかぶるバルバトスの姿があった。

 

「あの馬鹿者が! 彼処には過去の我が……いや、奴なら丈夫か。過去の我ごとき、バルバトスの敵ではない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶるあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「くっ! 何だ此奴は!? この気迫に狂気じみた目……バーサーカーか!」

 

「狂戦士めが、一騎打ちを汚しおって! ただで済むと思うなよ!」

 

突如乱入してきた巨漢にセイバーとランサーは押されていた。一騎打ちの邪魔だとばかりに二人から振るわれた一撃は、確かに目の前の男に命中したにも関わらず、男は気にした様子もなく向かってきている。バーサーカーだから傷を気にせずにかかって来ているのかと思ったが、その体には傷一つ無い。そして、男が斧を振り下ろした衝撃により二人が吹き飛ばされた時、彼を観察していたライダーのマスターから驚愕の声が上がった。

 

「あ、あいつ、サーヴァントじゃない!」

 

「……確かか? 小僧。 しかし、人間がサーヴァントを圧倒するとは……おや? 彼処の男はそろそろ我慢が出来なくなったみたいだな」

 

ライダーが見つめた先にいるのはアーチャー。この時代のギルガメッシュである。不快そうに顔を歪めた彼の背後には無数の空間の歪みが現れ、そこから様々な武器が出現する。

 

「……目障りな、雑種め。これで消えるが……っち!」

 

そして、その武器を男目掛けて射出しようとした時、何かに気づいたかの様に立っていたポールから飛び退く。その瞬間、轟音と共にポールに雷が落ち、太鼓を刺した半裸の男が舞い降りた。

 

「ヤハハハハ! そうカリカリするな、ギルガメッシュよ」

 

「ギルガメッシュだって!? って、またサーヴァントじゃない奴が乱入してきた!?」

 

ライダーのマスター……ウェイバーがそう驚愕の声を上げ、ギルガメッシュの名前に残りの面々も動揺を隠せないでいる中、アーチャーの顔が怒りに歪む。

 

「貴様ァ、王の中の王たる我の名を気安く呼ぶとは……楽に死ねると思うなよ!」

 

アーチャーがそう叫んだ瞬間、先程展開されたのとは桁違いの数の武器が現れる。その一つ一つが彼の財であり、宝具だ。その数に一同が動揺する中、エネルは耳をほじり、バルバトスはアクビをしている。アーチャーから何かが切れる音がした……。

 

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 

そして、その宝具全てがエネルとバルバトスに向かって放たれた。その一つ一つが命中すればサーヴァントでも即死しかねない威力を秘めている。そんな物が無数に放たれたのだから、その場に居た者達はふたりの死亡を確信した。だが……

 

 

「……遅いな。それでは蠅が止まるぞ」

 

半裸の男は目を瞑ったまま全ての宝具を避け、

 

「ジェノサイド……ブレイバァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

巨漢の斧から放たれた赤い波動が向かってきた宝具を吹き飛ばす。そして、その波動は勢いそのままにアーチャーに向かって行き、その体を包み込む。波動が通り過ぎた時、アーチャーは片膝をつき、自慢の黄金の鎧はヒビが入っている。その光景に誰もが唖然とする中、反対側から彼の声が聞こえてきた。

 

 

「……二人共、その辺にしておけ。さて、騎士王に征服王。そして、英雄王よ。我の仲間が邪魔したな。ああ、取るに足らん雑種もいたか」

 

「ア、アーチャーが二人ぃ!? ど、どうなってんだよ!?」

 

「黙れ、小僧。……さて、いきなり現れたのだ。王の御前である、貴様ら名を名乗れ。それと、我らの戦いに水を差した訳も言ってもらおうか?」

 

「王? それがどうした? 我が名はエネル。我は神なり! 不届きなるぞ、面を下げい!」

 

「ぶるあぁぁぁぁぁぁっ!! 俺の名はぁ、バーババ、バーババ、バルバトス・ゲーティアだぁ!」

 

「……やれやれ、我も王だと言っておろうに。我が名は英雄王ギルガメッシュ。……まぁ、この時代のではないがな。貴様らの戦いに乱入した理由? そのような事、暇つぶしに決まっているだろうが。さて、そろそろ腹も減った事だし、我達は帰らせてもらう。さらばだ!」

 

「待て! 貴様ら、その様な理由で……」

 

セイバーの制止の声も虚しく、三人は光に包まれて消えていった。

 

 

 

 


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