ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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霊感少年 Fate編 ⑥

「ねぇ、セイバー。次の対戦相手の事、貴女はどう思うかしら?」

 

 それはイリヤが迷宮を探索中の事、徘徊しているはずのエネミーが一匹も見当たらないのに退屈したイリヤは何の気なしに話しかける。それに対しセイバーは難しそうな顔をしていた。

 

「そうですね、やはり強敵ではないかと。彼女の一回戦の相手は最有力優勝候補のレオナルド・B・ハーウウェイ。そしてサーヴァントのガウェインの実力は私に匹敵……いえ、昼間なら彼の方が強い。にも関わらず一日目で倒したという事は……」

 

「反則級に強いサーヴァントか、よほど厄介な能力を持っているってあたりでしょうね。それにしても、”ありす”なんて聞いて事がないのよね」

 

 無名にも関わらず底知れぬ実力を感じさせる”ありす”にイリヤが眉を顰める中、二人は開けた場所までやってきた。

 

 

「あ、いらっしゃい。ようこそありすのお茶会へ。ラン……バーサーカー。お茶のしたくをおねがいね」

 

『aaaaaaaaaaaaa!』

 

 其処ではお茶会の仕度がされており、ありすの横には黒い魔力に包まれて姿がよく見えないサーヴァントが控えていた。

 

「……セイバー。呑気に茶会なんかしてる暇はないわ。戦って情報を得るわよ」

 

「はい!」

 

 セイバーは剣を構えるも、ありすは少しも慌てず、お茶を飲みケーキを食べる。バーサーカはマスターであるはずのありすが指示も出していないのに剣を構えセイバーをジッと見ていた。

 

 

「行くぞっ!」

 

 セイバーは魔力を放出して速度を上げながらバーサーカーに迫る。その剣は不可視で、バーサーカーは一瞬固まったが、すぐに剣を構える。するとセイバーの剣を受け止めた剣が姿を変え、まるで蛇が獲物を絞め殺すかの様に絡みつく。

 

「くっ!」

 

 

 セイバーはバーサーカーを蹴りつけて距離を取ろうとするが、バーサーカーは右手で剣を持ち、左手でセイバーの足を掴んだ。なお、セイバーはスカートなので当然中が見えそうになる。

 

 

 

「あ~! ランスロットオジさんのスケベ~!」

 

「!? ランスロ……」

 

 ありすの口から発せられたランスロットの名前に気を取られたセイバーの首に伸びてきたアスカロン・ミミックの切っ先が突き刺さり、勝者と敗者を区切る壁が出現した。

 

 

 

 

「……申し訳ありません、イリヤ。まさかこの様な所で負けるとは…」

 

「ううん、気にしないでセイバー。それより、話したい相手がいるんじゃないの?」

 

 イリヤの言葉に頷いたセイバーはランスロットの方を見た。

 

「サー・ランスロットですね? なぜバーサーカーの真似事など? 購買で会った時は正気だった貴方がバーサーカーな訳はないでしょう」

 

「ええ、まぁ、主の趣向でして。バーサーカーのふりをしろと頼まれたのなら従うしかありません。……所で、本当にどちら様でしょうか?」

 

「……忘れてしまったのですか? 私です、友よ。ア…」

 

 そのままセイバーは消えて行き、最後まで名前を言うことが出来なかった……。

 

 

 

 

「……本当に誰だったのでしょうか?」

 

 

 

 

 

「おやおや、また一日目で対戦相手を倒してしまうとは。少しは自重して貰いたいものだがね」

 

 ありすがアリーナから出ると、監督役のNPCである言峰が苦言を呈してきた。多分、ロリコン神父呼ばわりされた仕返しではなく、七日目の決戦を執り行うためだろう。

 

 

「え~! ありす、セラフのかいにゅう前にまける方がいけないとおもうの」

 

「……ふむ、それを言われるとこちらも反論出来ん。まぁ、次からは決戦の場で倒してくれたまえ」

 

「またね! ロリコンしんぷのおじさん!」

 

 

 

 

 

 次の日の事である、一誠が保健室に暇つぶしに行くと岸波白野がベットで眠っていた。どうやら対戦相手であるアーチャーの毒矢を受けてしまったらしい。いま保健室には他に誰も居らず、一誠はグレンデルに渡す為にお茶菓子のデータがないか探し出す。すると、白野のすぐ側に緑衣のアーチャーが迫っていた。

 

「あれ? 暗殺?」

 

「……ちっ!」

 

 アーチャーは一誠に気付いていなかったらしく、声を掛けられるなり舌打ちしながら振り向き、短剣を向けてきた。

 

 

「あ、別に邪魔する気ないからどうぞ続けて」

 

「いや、アンタ、この娘っ子が面白いからって狙撃邪魔しただろ、説得力ねぇよ」

 

「その時はその時。今はお茶菓子のデータ探してるからさ。ほら、人を誂うより、お菓子探す方が重要でしょ。玩具は別に探せば良いし……あ、ごめん。邪魔者が入っちゃったみたいだね」

 

 

 

「其処までだ、外道共がっ!」

 

 赤い服を着たセイバーが二人目掛けて斬りかかった。一誠はヒラリと躱すとそのまま窓から脱出し、アーチャーはセイバーに短剣を向ける。その時、アーチャーのマスターが入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(……にしても、あの野郎。俺と同類と思ったが、それ以上の外道だぜ。ありゃ、身内以外には何の価値も見出していないって感じだな)

 

 

 

 

 

 そして他のマスターは戦い合い、中にはトリガーを手に入れられずに絶望の中七日目を迎える。そして白野とセイバーはアーチャーを下し、三回戦の出場を決めた。

 

 

 

「……それにしても、ありすって子。何者かしら?」

 

「イリヤって子も優勝候補だったのだろう? かなりの実力者なのだろうな」

 

 偶々会った凛と一緒に歩いていた白野は掲示板の方が騒がしいのに気付き、覗き込む。一人目の名前は”ありす”となっており、

 

 

 

 

 

 

「……あれ?」

 

三回戦 ありす 対 ありす

 

もう一人も”ありす”だった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ、キャスターさん。つぎの遊びあいてもありす(あたし)なんだって。遊んでくれるかなぁ?」

 

「そうね、ありすちゃん。楽しく遊べると良いわね」

 

 もう一人のありすの側に居るローブの女性はありすの頭をそっと撫でた……。

 

 




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