「ふぃ~! やっぱ温泉は良いなぁ」
「そして雪を見ながら温泉に浸かって飲む酒は格別にゃ」
万能の(一応)邪龍グレンデルの手によってマイルームに併設された温泉は山中で眺める満天の月や、小雪が舞う北国などの壮観な景色が楽しめる作りとなっており、一回戦を初日で終わらせた一誠達は余暇をのんびりと過ごしていた。
今は黒歌と一緒に風呂に入り雪を眺めている。黒歌は温泉に浮かべたタライの中に徳利と盃を入れて雪見酒を楽しんでいた。
「ねぇ、イッセー。お酒飲む?」
「……そうだね.でも、盃は一つだし口移しで頂戴」
「オッケー♪」
そのまま二人は抱き合い唇を合わせようとする。その時、脱衣所に続く扉が開いた。
「お兄ちゃん、たいへん! お化けがいたの! わたし、ドッペルゲンガーにあっちゃった!」
「いや、ありすもお化けだからね?」
「あ、そうか。……
そう言うなりありすは出ていった。
「……流石グレンデル。ゲームまで作るか」
そして最初の七日間が過ぎ、
「……はぁ」
「あまり気に病むな、奏者」
白野は何度目かになる溜息を吐く。何時もは十個だろうが二十個だろうが食べられるカレーパンも今日は八個食べた所で限界が来た様だ。
彼女の心に突き刺さっているのは一回戦の対戦相手であるシンジの事だ
「どんな理由であれ聖杯戦争に参加したのならば、死ぬとは思っていなかった、まだ子供、などは言い訳にもならん。お主は自分が生き残る事だけを考えよ」
「……うん」
セイバーが励まそうとするも白野の表情は曇ったままだ。そんな時、場違いな程明るい声がかけられた。
「やっほー! ひっさしぶりだね!」
「……何の用だ? 奏者も余も貴様等に関わっている暇はない。早々に立ち去るが良い!」
セイバーは怒気を顕にして一誠を威嚇するが、一誠は子猫が唸っているとさえ感じていないような表情でニヤニヤ笑っている。
「いやいや、御免ね? 自分が生き残る為に相手を犠牲にする事を気に病んでるみたいだけどさ……それ、無駄だから。どうせ最後は
「!? どういう事だ!?」
「貴様、何を訳の分からぬ事を! ……っち、消えたか」
動揺する二人に対し、一誠はニヤニヤ笑いながら姿を消した。
「……さぁて、次の組み合わせわっと」
一誠は対戦表が表示される掲示板の前まで移動して次の対戦相手を確かめる。その時、向こう側から駆けてくる者が居た。
「こんにちわ、お兄ちゃん」
「どうしたの、ありす?」
他人行儀な態度を取るありすに対し一誠は首を傾げ、ありすは驚いたような顔をしている。
「えぇ!? なんでお兄ちゃんは私の名前をしってるの?」
「……何故って……ああ、そういう事か。目つきの悪い神父さんから聞いたんだ。今度見つけたら、ロリコン神父さん、って呼んであげて。きっと喜んでお菓子をくれるよ」
「本当?」
「うん、本当。できるだけ多くの人の前で言うんだよ?」
「うん!」
ありすは元気よく返事をすると駆け出して行き、急に姿を消す。それを見送った一誠は自分側のありすの対戦相手の名前を探した。
二回戦 ありす 対 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
廊下の向こうから騎士の誇りと王の風格を兼ね揃えた少女と白い髪をした少女が歩いて来た。
「あら、次の相手は噂のあの子なのね」
「……ガウェインを初日で倒した彼女ですか。むっ! 貴方もサーヴァントのようですね」
一誠の姿を見た騎士は警戒するが少女が手でそれを制した。
「止めておきなさい、セイバー。ここで騒ぐとペナルティを喰らうわ」
「了解しました、イリヤ。其処の貴方、クラスは何かしら? まぁ、私のセイバーの敵じゃないだろうけど」
「……俺? まぁ、別に良いか。キャスターだよ」
一誠は
「ランスロット。次の相手もセイバーみたいだし、君が出る? ちゃんと戦わせてあげるよ」
「はっ! 必ずや主に勝利を捧げてみせます!」
ランスロットは一誠の前に膝ま付いて騎士の構えを取る。それを見ていた一誠は何か思いついたように手を叩いた。
「あ、そうだ! 相手の前では能力使ってね? ありす。ランスロットの事はバーサーカーって呼ぶんだよ」
「はーい!」
ありすは一誠の言葉に素直に返事をする。その間、ランスロットは少し葛藤していた。
「バ、バーサーカー。いや、主の命令ですし能力的にも。ですが、ロスヴァイセが戦いを見ている……」
「……まぁ、頑張れや。暴走しつつもカッコ良い所見せたらイイじゃねぇか」
「そうですね! 有難うございます、グレンデル殿!」
「アレが次の相手か。随分と隙だらけなこった……」
緑の外套に身を包んだアーチャーは対戦相手である白野をジッと観察していた。そして弓を引き絞ると毒を塗った矢を白野めがけて放つ。
「はい、スト~プッ!」
「なっ!?」
だが、その矢は横から伸びてきた手によって掴まれて捨てられる。一誠はニヤニヤ笑いながらアーチャーを見ていた。
「オタク何? あの女が気に入りでもしたの?」
「うん! 弄ったら面白そうだから気に入ったんだ。え~と……アーチャー君?」
「敵に君付けされたくねぇな」
アーチャーは足元に唾を吐き捨てると外套を翻してその場を去ろうとする。だが、次の言葉を聞いた瞬間、驚いて振り返った。
「毒矢に緑の外套……ああ、そうか。君の真名はロビンフットか」
「!?」
真名は絶対に隠し通すべきもの。知られれば伝承を調べられて対策を練られ、弱点や宝具の予測すらされてしまう。その真名をあっさり看破された事に何時もは冷静なアーチャーが動揺してしまった。
「っち! よく見破りやがったな」
「まぁ、確信があったって訳じゃないけど? 伝承からして宝具は姿を消すのと毒矢、かな? ……あれは俺が見つけた暇つぶしの道具なんだ。つまんない手で殺す気なら君の真名を触れ回るよ。別に真正面から戦えば文句は言わないからさ」
「おいおい、俺から不意打ち取ったら何が残るんだよ」
アーチャーは流石に焦り、至近距離で一誠を狙ってくる。だが、弓を構えた手を上に蹴り上げられてしまった。
「じゃあ、代わりにセイバーの真名を教えてあげる。暴君ネロだよ。後は君次第。楽しみにしてるよ、同類さん」
一誠はそのまま消えて行き、アーチャーは汗を拭う。
「……ああ、分かったぜ。アイツを一目見た時から感じてたのは嫌悪だ。アイツは俺と同類。同族嫌悪って奴だな。……とりあえず旦那に相談だ。説明が面倒くせぇな……」
そのまま緑衣のアーチャーはマスターの下に帰っていった……。
原作設定は無視です
意見 感想 誤字指摘お願いします
あと、最近オリジナル始めました。気が向いたらこの後に読んでください