ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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霊感少年 Fate編 ②

とある場所に建てられた、とある高校の校舎の玄関。其処で一人の少女が倒れていた。足元近くまである紫の長髪に白衣を着た美少女だ。時刻は放課後で、帰っていく生徒は大勢居るものの、見るからに様子のおかしい彼女を気にかける者は居らず、踏み越えていく者までいる始末。明らかに異常な光景が繰り広げる中、彼女に話しかける者が居た。

 

「お姉ちゃん、だいじょうぶ?」

 

「あ…貴女は?」

 

「わたし、ありす! 保健室までつれて行けばいい?」

 

其処に居たのは高校の校舎に似つかわしくない幼い少女。そのまま倒れていた少女を小柄な体格からは考えられない力で持ち上げると保健室まで連れて行った。

 

 

「有難う、ありすちゃん。おかげでだいぶ楽になりました」

 

「うん! お兄ちゃんが”困ってる人が居たら、損しない範囲内で助けなさい”っておそわったの!」

 

「へ…へぇ、変わったお兄さんですね。あ、そうだ。ありすちゃん、お茶でも飲んで行きませんか? 良い茶葉が有るんですよ」

 

先程倒れていた少女……桜はありすをお茶に誘うが、ありすは首を横に振った。

 

「ううん。早くお兄ちゃんの所に行きたいから。ねぇ、お姉ちゃん。せいはいせんそー、って何処に行けばいいの? 教えてもらったの忘れちゃって」

 

「……そっか。此処に居るって事は参加者ですよね。あのね、この部屋を出て左に行って、突き当たったら右に行くの。そうしたら入り口が見つかるから」

 

「ほんと! ありがとう、お姉ちゃん。またね!」

 

ありすは桜に眩しい笑顔を向けながら保健室まから出ていく。桜は自分に手を振って廊下を走って行き少女にの姿をジッと見ていた。

 

「……あの子、知らないんでしょうか? お兄さんも参加してるって事は何時か……」

 

 

 

 

 

 

「わぁ、不気味な人形」

 

ありすが桜に教えられた場所に行くと、一体の人形が置かれていた。聞こえてきた何者かの説明によるとこの人形を護衛にして進め、という事だ。奥にある扉の先には長い長い道が続いていた。

 

「……歩くの面倒くさい! ジャバウォック!」

 

ありすは頬を膨らませるとジャバウォックを呼び出し、片方の肩に自分、もう片方に人形を担がせると奥を目指して走らせ始めた……。

 

 

 

 

一方その頃、一誠達は気付くと知らない部屋に移動していた。

 

「此処が異世界か。……なんか変な感じだね。記憶や自我があるけど自分が偽物ってのはさ」

 

「気にする事はないですよ、主。難しく考えるより楽しみましょう。……私なんて新婚だったんですよ?」

 

ランスロットは遠い目をしながら天井を見つめる。ロスヴァイセには適正がなかったので彼女の分身は造らず、ランスロットだけ分身を異世界に送る事となったのだ。他のメンバーがどう声をかけていいか戸惑う中、幼い少女の声が聞こえてきた。

 

「お兄ちゃ~ん! 終わったよ~!」

 

「あ、漸くありすが来たみたいだね」

 

「……しかし、貴方を差し置いて彼女が主とは……」

 

「いやいや、そうでもしないと全員同じ勢力に出来なかったでしょ? マユリンも其の辺考えてくれたんだよ、きっと」

 

一誠が扉を開けて出て行くと、大勢に人が倒れている部屋に通じており、その部屋の中心にありすの姿があった。

 

「あっ! お兄ちゃん!」

 

ありすは一誠の姿を見るなり飛びつき一誠もそれを受け止める。しばらく一誠に甘えていたありすだが、急に瞼が重くなるのを感じた。

 

「あ…れ…?」

 

「ああ、大丈夫だよ。目が覚めたら戦争が始まるから、今はゆっくりお休み」

 

一誠のその声を子守歌にする様にありすは目を閉じ、やがて深い眠りについた……。

 

 

 

 

「起きたみたいだね、ありす」

 

ありすが目を覚ますと其処は先ほど桜を運んだ保健室のベットの上。隣には椅子に腰掛けた一誠の姿が有り、死神としての服装をしてフードで顔を隠している。

 

「おはよう、お兄ちゃん」

 

「ああ、おはよう。あ、そうそう。少しこのままお話をしようか。聖杯戦争についてなんだけど……」

 

一誠がありすに掻い摘んで説明した内容を纏めると、

 

①一週間毎に一対一のトーナメント形式で行われる。全部で七回戦

 

②互いに英霊(サーヴァント)の情報を探り合う。

 

③ダンジョンに潜り、決戦の場への鍵を手に入れる。その時相手と遭遇する可能性有り

 

④決戦の場以外での戦いは原則禁止

 

「ってな感じなんだけど……どうせ七人居るんだから、一人一回戦ごとに戦おうよ。……そっちの方が相手が混乱しそうだし」

 

この戦争では情報線が鍵となる。自分で手に入れるだけでなく他人が漏らした情報も重要となる中、相手の対戦相手から手に入れた情報と連れている英霊に違いがあったらどうなるか。一誠はそれを見越してこの提案をしたのだろう。

 

「そのイタズラおもしろそう! やろうやろう!」

 

アリスも直ぐに賛同し、決定する。二人の会話が終わった頃、一人の少女が近づいてきた。

 

「どうやら体調は問題ないようですね」

 

「あれ? さくらお姉ちゃん?」

 

「あ、はい。私は桜ですが……ああ、そういう事ですね。私は聖杯戦争を円滑に行うために用意されたA・Iですので、貴女が会ったのが別の桜だと思います」

 

「ふ~ん? ……ま、いっか。お兄ちゃん、行こ?」

 

アリスはよく理解していないのか首を傾げて保健室から出ていく。一誠も霊体化して姿を消しながら後に続いた。

 

 

 

「おや、君も参加者ですか? これは可愛らしいお嬢さんですね」

 

「お兄ちゃん、だれ?」

 

ありすが参加者に与えられたマイルームがあるという二階に上がると金髪の少年が話し掛けて来た。少年は赤い制服を身に付けており、何処か気品を感じさせる。ありすに名を問われた少年は笑顔を見せた。

 

「おや、これは失礼しました。僕はレオナルド・ビスタリオ・ハーウェイ。レオとお呼び下さい。そして彼が僕のサーヴァントの……」

 

レオが後ろを指し示すと白い鎧を着た青年が現れる。

 

「クラス・セイバーの……」

 

「あっ! ガウェインおじさん!」

 

「ガウェ……なっ!?」

 

レオが自らのサーヴァントとして紹介しようとしたのは紛れもなく北欧に所属しているガウェインだった。だが、レオばかりか、当の本人であるガウェインも名前を言い当てられた事に驚きを隠せない。レオはもともと圧倒的な自信から自分のサーヴァントの名を隠すつもりは無かったが、人前に晒すのは今回が初めてなのだ。にも関わらず目の前の少女は名を言い当てた。

 

「……リトルレディ。なぜ私の名を?」

 

「あれ? 前会ったよね? へんなおじさん! おなかすいたから、もう行くね」

 

ありすはそのままマイルームへと駆けて行く。その姿をレオは興味深そうに眺め、ガウェインと影から見ていた黒髪の男は警戒した眼差しを送っていた。

 

 

 

「……恐らくこの世界のガウェインでしょう。だから貴女の事を知らなかったんですよ。もしかしたら私やメディア殿もサーヴァントとして呼ばれているかもしれません」

 

マイルームに到着するなり姿を現した一行は、殺風景な部屋の改造を唯一ネットに精通したグレンデルに任せ話をしていた。手始めに用意されたソファーを円形に並べ、一誠の膝の上にいち早く座ったありすはランスロットの話を大人しく聞いている。

 

「ふ~ん。ありす、よくわからない。……ねぇ、お兄ちゃん。わたし、何か食べたい」

 

「では、私が何か買ってきましょう。確か地下に購買がありましたね」

 

「じゃあ、財布渡すから適当に買って来て。あ、ドリンクバーは既に作ってるから飲み物は別に要らないよ」

 

グレンデルのハック技術により、電脳空間に作られたマイルームがどんどん豪華な外装になって行く。予定では今居る大部屋以外に一人一部屋まで空間を広げる予定らしく、グレンデルは内装やインテリアのバランスに悩んでいる。そんな元邪龍に後を任せたランスロットは購買に向かっていった。

 

 

 

 

 

「……ランスロット? サー・ランスロットではないですか!?」

 

「はぁ、確かに私はランスロットですが……貴女は?」

 

そして、本日最後の一個となったカツサンドを買おうとし、手が重なったアホ毛の生えた金髪の少女に話しかけられた。

 

 

「そんな!? 私の事が分からないのか、友よ!」

 

「(……いや、本当に誰でしょう?)」

 

悲壮感に包まれた表情をする彼女を尻目に、ランスロットは本気で誰か分からなかった……。

 

 

 

 




さて、アホ毛の少女は誰なんだ~?(笑)

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