ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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番外編なので移転しました


霊感少年 Fate編

冬の美味し食べ物といえば、焼き芋に肉マン、そして鍋だろう。大晦日の昼間、兵藤家のコタツの上に置かれたカセットコンロの上では美味しそうな鍋がグツグツと煮えていた。

 

「ひっく! 何奴も此奴も年末進行、年末進行、五月蠅いってのよ。玉藻~、熱燗もう十本追加~」

 

友人は殆どが既婚者か仕事で忙しく、年末を一緒に過ごす相手が一誠達以外に居ないメディアは兵藤家に上がり込み、鍋を突く。彼女の前には空になった徳利やビールの空き缶が散乱しており、かなりの量を飲んでいる事が伺える。その正面では物凄い勢いで鍋を掻き込んでいる一誠と、彼の肩を枕にウツラウツラしているベンニーア、それを羨ましそうに見ながらも小猫の世話を焼く黒歌の姿が有り、先程行われたゲームでイカサマがバレた玉藻は一人給仕に勤しんでいた。

 

「ひ~ん! 折角の鍋パーティなのに何で私だけ給仕なんですか~!?」

 

「イカサマするからだよ。イカサマってのはバレないようにしなくちゃ意味ないんだからさ。ほら、玉藻の分は取ってるから熱燗の用意が出来たら食べなよ。にしてもアンコウ鍋って美味しいね」

 

一誠は玉藻の分のアンコウや野菜を器に入れ、そのまま自分の分を食べだす。メディアもアンコウをタップリ盛ると美味しそうに食べだした。

 

「アンコウにはコラーゲンがたっぷり入ってるから明日はきっとお肌プリップリよぉ♪ ……まぁ、私有幽霊だから関係ないけどね」

 

「だから肉体を作ろうかって言ってるじゃん。オリンポスに所属しなくても提供するよ?」

 

「別に良いわ。永遠に若いままなんて最高じゃない。この世に飽きたら坊やに成仏させて貰うしね。……にしてもこの味付け絶品ね。玉藻が作ったんでしょ?」

 

「うん、そうだよ。俺の自慢のお嫁さんだからね」

 

一誠が惚気けた様に言うと左右の二人が膨れ面で腕に抱きついてきた。

 

《あっしは自慢にならないんですかい? 散々あっしの体を堪能しておいて酷いでやすねぇ》

 

「私も違うのかにゃ? 夜中にあれだけご奉仕してるのに酷い夫にゃ」

 

「いやいや、二人共も自慢だよ? ほら、機嫌直して」

 

一誠が二人の肩を抱き寄せると二人共直ぐに機嫌を直して一誠にしなだれかかる。そんな中、メディアが注文した熱燗を持った玉藻がジト目で戻って来た。

 

「ぶぅ~! いくら別ゲームだからって、本妻差し置いて側室達とイチャつくなんてどうかと思いますよ?」

 

「まぁまぁ、給仕もひと段落着いたし座りなよ」

 

一誠はそう言いながら膝を指差す。次の瞬間には玉藻が膝の上に座っていた。

 

「えへへ~♪ やっぱ此処、良いですよね」

 

「そういえば狐の時から俺の膝の上が好きだったよね。……今夜は君が上になる?」

 

「きゃあ✩ 今年最後の子作りですね! ついでに姫初めの相手も致しますよ、ご主人様♪」

 

「ちょっと! 年初めは三人同時って約束だったでしょ!」

 

《抜けがけは許さないでやんすよ!》

 

たちまち修羅場がまい起こり、最後には三人共一誠に甘え出す。その光景を恋人が居ない二人(小猫とメディア)は疲れたように見ていた。

 

「……爆発すれば良いのに」

 

「……全くだわ。気が合うわね、ウチの子にならない?」

 

「……なりません」

 

 

 

 

 

 

 

「でさ、年越し蕎麦の具はどうする? 俺は後乗せサクサク天ぷら派」

 

「私はジューシーお揚げ派ですねぇ♪」

 

《月見が一番でやんす》

 

「肉こそ至高っ!」

 

仲の良い四人だが食の好みはバラバラのようだ。其々が好みの具の良さを語っていると、廊下から慌ただしい足音が聞こえ、マユリがリビングに入って来た。

 

「おい、ちょっと協力してくれたまえ。なぁに危ない目には合わせないヨ」

 

「……信用できない」

 

「信用できませんねぇ」

 

「信用できる訳ないにゃ」

 

《絶対危ないでやんす》

 

「絶対嘘ね」

 

「?」

 

即座に疑いの視線を向ける五人に対し、小猫だけは首を傾げる。そんな中、マユリは得意そうな顔で書類を取り出した。

 

「今回は本当に安全だヨ。装置に適合する者の分身を異世界に送るだけで、本体には影響はないヨ。私の学者生命を賭けようじゃないか!」

 

「……まぁ、そこまで言うなら」

 

一誠達は顔を見合わせ相談を始め、協力する事にする。そして適合者試験は他の者に対しても行われ代表者八人が決定した。

 

 

 

「じゃあ、始めるヨ!」

 

装置に取り付けられた椅子に座りヘルメットを被った被験者は体からなにか抜けていくような感覚に襲われる。数秒後、その感覚は収まり全員装置から解放された。

 

「……所で、どんな世界に送ったの?」

 

「ふふふ、なんと願いを叶える聖杯ってのがある世界だよ。どうやら魔術師がマスターとなって英霊の類を呼び出して戦うらしくネ、君達の内一人がマスターで、残りはその英霊……サーヴァントになって貰ったヨ。おい、ネム」

 

「はい、マユリ様。……皆様、この画面をご覧下さい。此処に戦いの様子が映し出されます」

 

ネムが運んできた大型のモニターには人形同士の戦いと、その後ろに立っている小さな少女の姿が映っていた・・・・・・。

 

 

 

彼らが送り込まれたのは月で開催される殺し合い。魔術師達の思惑が飛び交う中、紛れ込んだイレギュラー達は何をなすのか。

 

 

霊感少年の幽雅な日々・『Fate/EXTRA』編 プロローグ 終

 

 

 

 




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