「さて、神は泥から最初の人を作った。つまり、泥を生命に変えたという事だね」
我道は巨大なゼンマイをヌイグルミのライオンに当てて回す。するとライオンは本当に生きているかの様に、いや、本当に生きているので動き出した。
「さて、布と綿から出来たヌイグルミはこの通り生き物となった。ちなみにそしてキリストは石をパンに、水をワインに変えたというが……発泡酒とグラタン」
我道は次にテーブル掛けをした机の前で料理の名を言う。すると本当にその料理が現れた。
「これは空気と酸素などを好きな料理に変えているんだ。そして最後にこれは絶対に他人に話さないで欲しいものだが……」
我道は最後に床に置いた機械のスイッチを入れる。すると機械の中央が開き、中には宇宙が広がっていた。
「神が世界を作るのに約一週間の時間を掛けた。さて、これも一週間かけて地球を作る機械だ。まあ、子供でも作れる様になっているんだけどね。ははは、これ全部で制作費用が約三百万、正確には二百九十七万七千五百二十三円らしいよ。さて、私は君達を歓迎しよう。此処は君達の信仰を否定しないよ」
我道は三大勢力の同盟を受け、自分達の行く末を悲観して八咫烏に入ってきたエクソシスト達に笑顔を向ける。満面の笑みの我道に対し、神が起こしたとされる奇跡を簡単に模倣した機械に驚き信仰心を折られていた。
「うわ~、やってますね。私も初日で心を折られました」
「……私もよ。ほら、私ってジャンヌ・ダルクの魂を受け継いでるじゃない? でも、アレはキッツイわぁ~」
自分達も彼らと同じように死んだ目になった事を思い出し笑うアーシアとジャンヌ。その視線の先では我道による
「ジャンヌ先輩、今日は何にしますか? 私は親子丼の気分なんですが、ピザも食べたいんですよ」
「あ~、私もそのドッチかね。どうせなら両方頼んで半分こしない?」
その日の訓練も終わり、食事を用意してくれる家族が居る者を除いたメンバーは食堂へと向かっていた。八咫烏の食堂は好きな物を頼んで良く、因果の発明品による料理なので料金は無料だ。アーシアとジャンヌはピザの種類を何にするか話し合いながら食堂へと向かう。すると後ろから声が掛けられた。
「すまない。食堂は何処だろうか」
話し掛けて来たのは青い髪の少女。エクソシストを辞めて八咫烏に入って来た新入りの一人だ。
「私達も今から食堂に行くから付いて来て。あ、私はジャンヌよ」
「私はアーシア・アルジェントです」
「む、その名前は……いや、今の私の変わらんか。私はゼノヴィアだ。よろしく頼むよ、先輩達」
そのまま三人は食堂に向かい、直ぐに意気投合した。
「さて、今回の一件、どう責任を取るつもりですか? 身内の贔屓目を考えても束と因果は今の世界にとって重要な人材だ。それを条約違反で身内が罰せられた憂さ晴らしに殺そうとは。ああ、この件は既に北欧やギリシアの神々に通達済みだけど、上手く同盟を結んで貰えると良いですね」
「……誠に申し訳ございません。此方で話し合ってしかるべき賠償を致します」
先日の己道一家への襲撃について呼び出されたサーゼクスは我道に深々と頭を下げる。すると我道はテープを一個取り出した。
「これは”地平線テープ”といって、これを壁に貼ると何処までも地平線が続く空間に繋がるが、其の世界に襲撃犯と先日襲撃してきた旧魔王のカテレアも閉じ込めているらしいですよ。なお、これを使わないとその世界とは絶対に行き来できないんだそうです」
「では、それを使って彼らを迎えに……」
「だが、其処にはオーフィスも閉じ込めている。どうやらテロリストの親玉らしい。さて、どうしましょう? このままだとオーフィスは兎も角、食事が必要な彼らは餓死するしかない。でも、彼らを助けようとしてオーフィスをこちらに戻す訳にもいかない。では、三日以内で結論を出してください」
貴族悪魔達はどう足掻いても見捨てるしかない状況に追い込まれ、それでも見捨てれば他の貴族の反発を買う。サーゼクスの胃がキリキリ痛み出した。
「それはそうと、若手同士のレーティングゲーム、楽しみにしていますよ。ああ、でも一人足りないんでしたね。なら、こういうのはどうでしょう? 私達の代表者数名が死んだディオドラ君の代わりに出るというのは。私達も支援者の皆様や同盟が決定した神々に力を見せておく必要が有りましてね。宜しければ同盟の申し込みの際の口利きでも致しましょうか?」
「……はい。お願いします」
それは実質的な脅しであり、サーゼクスはその条件を飲むしかなかった。八咫烏のメンバーは毎回変更し、ディオドラと戦うはずだった若手が相手をするという条件で双方が合意する。そしてゲームの当日、招かれた神々は他の若手のゲームは観戦せず、八咫烏の試合だけを観に来た。
「ふぉっふぉっふぉっ。さて、八咫烏の若造共はどのような戦いをするのかの」
「オーディン様っ! どさくさに紛れて私のお尻を触らないでくださいっ!」
「HAHAHA! おい、オーディン。お前の所はどんな贈り物貰ったんだ? 俺は”グルメテーブル掛け”と”自在に夢見る機”って奴だ」
「儂の所は”自在に夢見る機”と”ケロンパス”じゃな。渡されたリストの中でその二つが興味を引いたのでな」
オーディンと帝釈天は八咫烏の相手であるシーグヴァイラ・アガレスを紹介する映像には目もくれず談笑する。そしていよいよゲーム開始の時間がやってきた。
「ふむ。今回のゲームは短期決戦か、もしくは私達を確実に潰す為に一部の貴族が暴走したか。……どちらにせよ都合が良い」
「……な~んか嫌な感じっすね、支部長」
今回のゲームフィールドは逃げる場所も隠れる場所もない室内。全面を壁と天井に囲まれた半径五百メートルほどの円形の部屋の両端に両チームが転移している。そして今回ゲームに参加するメンバーは支部長である我道と一誠だけであった。
『それでは只今よりゲーム開始です』
「では、プランCで行こう」
「はい!
一誠は本来ならば禁手化までの時間が必要にも関わらず瞬時に全身鎧に変化する。それを観ていたアザゼルは口をアングリ開け、隣りのヴァーリは楽しそうに見ていた。
「おいおい、どうなってんだ? てか、あいつが神器に目覚めたのは最近だろ」
「……面白いね。興味がわいたよ」
「……帝釈天殿。例の”グレードアップ液”とかの影響かの?」
「だろうな。惜しい事したか?」
高速での禁手化の理由に思い当たる節のある二人は小声で話しモニターを見詰める。フィールドではシーグヴァイラが勝負に出ようとしていた。
「長引いては拙いですっ! 上司であるあの男の方が王でしょうから即効で倒しますよっ!」
一誠を数人で足止めし他の主力メンバーで一気に我道を倒す。確かにそれは良い作戦であっただろう。
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!! 』
一誠の実力が彼女の予想を遥かに超えるものでなかったら、の話であったが。計十五回。一誠の力は八咫烏の訓練によって三万二千七百六十八倍もの倍加を可能とし、
『Transfer!』
其れが我道へと譲渡される。部屋の壁と天井と床一面に魔法陣が出現し、数百数千数万の聖剣が豪雨の様に放たれ続けた。
『シ、シーグヴァイラ・アガレス様の『女王』一名 『戦車』 二名 『騎士』 二名 『僧侶』二名 『兵士』八名 リタイア。そしてシーグヴァイラ・アガレス様の投了を確認しました』
「さて、帰ったらミーティングだ」
「は、はい……」
四方から降り注ぐ聖剣全てを一本の聖剣だけで叩き落とした我道は涼しげな顔で乱れたスーツを直す。その横では作戦を知っていながらも腰を抜かしてしまった一誠の姿があった。
気になった事が トリコのネイルガンって体内で衝撃を受け流されないための技でしたよね? でも、ネイルガンのダメージを体内で受け流されたって……未完成? 呟きたかった
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