コカビエルの一件から開かれる事となった三すくみの会談。一歩間違えれば戦争になる会場では警備の悪魔。天使・堕天使達がピリピリとした空気を醸し出す。そんな中、場違いに見える集団が会場に入ってきた。先頭を歩くのは日本の対人外組織『八咫烏』の支部長で鬼将の称号を持つ殺生院我道。数年前まで一般人だったにも関わらず今回の重要な案件を一任された男である。その後ろを曹操やジャンヌなどの支部でも指折りの実力者が歩き、他の者達も聖剣を手に一糸乱れぬ動きで動く。
「さて、全員揃ったようだし会談を始めようか」
ネクタイの歪みを直した我道は人の良さそうな笑みで椅子に腰掛ける。見下している人間が自分達のトップと同等に振舞った事に警備の者達から殺気が送られるも涼しい顔を崩さず参加者の顔を見回した。
「さて、今回の会談は参加者全員が聖書の神の死を知っているという前提条件で始めます」
トップ陣の顔に緊張が浮かぶ中、我道は特に気にした様子もなくニコニコとしている。その様子に天界のトップであるミカエルは恐怖さえ覚えていた。
「それで我々天界は……」
会談は揉める事なく進み、堕天使のトップであるアザゼルへの質問が始まった。
「今回の件はコカビエルの独断行動だ。奴が馬鹿やって八咫烏に消された、それだけだよ。報告書にもそうあっただろ?」
「説明としては最低の部類ですね。では次の質問ですが、ここ数年で神器所有者を集めだした様ですが戦争を行いたいと思われても仕方ありませんよ。何の理由があるのですか?」
「研究だよ研究。何なら資料を渡そうか? ……ったく、俺の信用は三すくみ最低か」
「ハッハッハ、それは仕方ないさ。君達堕天使は欲望のままに主を裏切ったのだからね。旧魔王を追放した現魔王同様に信用できないだろう?」
我道の言葉に堕天使陣営と悪魔陣営のから殺気が送られる。流石にトップ陣営は殺気を送らないが少し不快感は感じているようだ。
「……そういうお前の所がどうなんだよ。神滅具持ち数人に超一級品の聖剣を何本も持ってやがんじゃねぇか」
「私達の目的はあくまで人間を君達人外から守る事。君たちが戦力増強を行っているのだから私達も同じようにするしかないさ。何せ我々はか弱くて寿命も短い下等な人間だ。まあ、その人間に寄生しなければ生きていけない君達よりも上等な生物だがね。さて、無駄話は此処までだ。本題に入ろう」
「……ああ、そうだな。んじゃ、提案だ。和平を結ぼうぜ」
アザゼルのその提案に天使や悪魔陣営のトップからも賛成が上がり、我道は笑顔で拍手を送る。彼が指を鳴らすと後ろで控えていた隊員も拍手を贈っていた。
「いやはやめでたい事だ。これで君達の縄張り争いに巻き込まれる人間が減る。今まで悪魔を殺せ、堕天使を殺せ、と教育され、その為に死ぬなら本望だと洗脳されたまま死んだエクソシストも喜んでいるだろうね、ミカエル殿。はっはっはっはっはっ!」
「……その事については言い訳のしようがありません。彼らへの説得は困難でしょうが……」
「ああ、エクソシストを辞めたくなったら私達の所に来るように言っておいてくれるかな? 私達は天界と違って彼らを裏切ったりはしないからとも言っておいてくれると有難い。さて、和平が決まった所で我々人間からの要望だ」
我道の後ろではスクリーンに三すくみへの要求が映し出される。悪魔には過去に遡って理不尽な眷属化や契約を行った貴族を駆除する権利と今後眷属を増やす際はその地を管轄する八咫烏及び対人外組織の審査を受ける事。堕天使には危険な神器持ちは殺さずに八咫烏の保護を受けさせる事と構成員を増やす際は悪魔同様に審査を受ける事。天界には宗教が絡むので他国の対人外組織と会談が終了次第要求を行う、という事だ。
「……まあ、俺の所は問題ねぇよ」
「私達の所もです。ですが……」
アザゼルとミカエルが視線を送ったのは悪魔陣営。会談に参加しているサーゼクスやセラフォルーは困惑した顔をしていた。この要求を飲むと大勢の貴族から反発が起こる。彼らが把握しているだけでも対象になる貴族は大勢いるのだ。
「随分迷っているようだが目先の危機にばかり目をやっていたツケが回って来ただけだよ。君達が今迄きちんと管理していれば私達も此処までの要求を出さなくても良かったのだが。……ふむ。ならば後押しをしようか」
次に映し出されたのは宇宙の映像。画面の中央には大きな星が見える。
「これは実際の映像だ。私の甥っ子の発明した転移装置で遥か遠くの星が見える所まで来ていてね。さて、確か冥界はあの星と同様に地球と同等の大きさだが……始めろ」
次の瞬間、大爆発が起きて星は粉々になる。破片が映像を撮っているカメラの方に向かってくるも見えない壁によって防がれた。
「『地球破壊爆弾』、これを造った妹はそう名付けたよ。冥府には影響がないように出来るし、既に冥府からの許可は取り付けている。なに、三勢力が力を合わせれば反乱した貴族など取り押さえられるさ」
我道はあくまで人の良さそうな笑みを崩さずサーゼクス達の顔を見る。悪魔は要求を飲むしかなかった……。
そしてその頃、因果の目の前には重傷を負った女性悪魔が倒れていた。彼女の名はカテレア・レヴィアタン。旧魔王の末裔である。
「……中々手ごわかったです」
「ま、仙術無しでのハンデ戦ならこんなもんかにゃん♪」
「やれやれ、助かった。私は頭脳労働専門だからな。流石に魔王の血族の相手はできん。二人共怪我はないな?」
「……足を挫きました。オンブしてください」
「私も足が痛いにゃん。白音はオンブで私はお姫様抱っこをして欲しいわね」
先程まで元気だった二人は急に蹲ると足を押さえる。そして因果をチラチラと見てきていた。
「どちらかと言うと黒歌の方をオンブしたいのだが。白音では背中に当たってもあまり嬉しくない」
「……真顔で言う事ですか?」
「じゃあ、早速♪」
黒歌は因果の背中に抱きつき、白音は照れながらも抱っこをしやすい体勢を取る。三人が居るのは自宅の庭。玄関まで数メートルの場所だった。
「我、オーフィス。グレートレッド倒すのに力貸して欲しい」
「ふ~ん。大変ねぇ」
己道家のリビングでは休日で家に居た摂理はゴスロリドレスの幼女を持て成していた。なぜか壁にセロハンテープが貼られ壁があるべき場所には地平線が広がっている。
「じゃあ、彼処の先に良い物があるんだけど自由に持って行って良いわ」
「分かった」
オーフィスは素直に地平線の向こうに向かって行き、摂理がテープを外すとオーフィスが居る空間は世界から完全に切り離された。
「さて、ハニーは徹夜だったみたいだし、夕飯は胃に優しい物でも作りましょ」
摂理は鼻歌を歌いながらキッチンに向かい、卵を切らしていた事を思い出した……。
活動報告でも言いましたが誰かからの助言が欲しいです メッセージとかでご助言欲しいです
意見 感想 誤字指摘まっています
霊感フェイト編 メンバー少し変えてゼロ編とか・・・・・・ 英雄王は強敵