ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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悪魔と秘密道具 ⑨

その日因果が起きたのは何時もより遅い時間で、既にキッチンには黒音と白音の姿があった。

 

「お早う二人共。……父さんと母さんは居ないのか?」

 

「……お早うございます。お二人はデートだそうです。あの、朝食が出来上がりました」

 

その日の白音は『年の泉ロープ』を使ったらしく大人の姿だ。黒歌と並ぶと体型がソックリで姉妹だということが良く分かる。

 

「そんな事よりも因果ぁ。この格好、どう?」

 

黒歌はノリノリで、白音は少し恥ずかしそうにしながら今の格好を見せびらかす。全面はフリルの付いたピンクのエプロン。背中側を見せると白い肌と引き締まったお尻。そして黒と白の尻尾が丸見えだった。簡単にいうと裸エプロンだ。

 

「まぁ、悪くはないな。私も年頃だ。朝から目の保養になって良い」

 

「……喜んで貰えたのなら、幸いです」

 

「にゃはははっ! じゃあ、もっと良い思いさせてあげよっか? ほら、白音も」

 

黒歌は座った因果の横から抱きつくと首に手を回して体を密着させる。白音も反対側からそっと抱きつく。

 

「ねぇ、今日は休日だし、二度寝しようか?」

 

「……お二人は今日は遅くまで帰って来ないそうです。あの、この体なら問題なく……」

 

二人は因果の腕を胸で挟みながら立ち上がらせ、そのまま寝室へと運んでいく。その時、因果の携帯が鳴り響く。着信音は我道からである事を示していた。

 

 

 

 

「……二人共、放せ。どうやら仕事のようだ」

 

「……はい」

 

「じゃあ、気分が削がれちゃったしまた今度ね。……この埋め合わせば朝風呂で背中を流す事で我慢してあげるにゃ。まぁ、因果が我慢できなくなくなったら先に進ませてあげる」

 

「もしもし、叔父さん。何の用だ?」

 

因果は黒歌の言葉を無視して電話に出る。電話の向こうからは愉快そうに笑う我道の声が聞こえてきた。

 

「いやいや、休日の朝から済まないね。もしかして黒歌君と白音君と不純異性間交友でもしていたかい?」

 

「……要件を話せ」

 

盗聴器も隠しカメラも設置していないのに、まるで見ていたかの様に察してきた叔父に薄ら寒いものを感じた因果は手早く電話を済ませることにした。

 

「ああ、簡単だ。熱線銃などの武器を大量に生産してくれ。そっちにコカビエルが侵入した」

 

「そうか。あの戦争狂、魔王の妹どもを犯した上で殺して戦争でも引き起こす気か?」

 

「まぁ、そんな所だろうね。教会からエクスカリバーも盗んだらしいよ」

 

「確定だな。あの無能どもは……気付いているはずがないか」

 

因果は苦笑しながらラボに向かっていった。

 

 

 

「……しかし面倒臭いな。一個を二個にする道具でもあれば……」

 

因果はブツブツ呟きながら、ふと鏡を見て立ち止まる。そして何やら慌てた様子でラボに駆け込んだ。

 

「……また何か思いついた様ですね」

 

「さて、お風呂の用意しに行こうかにゃ」

 

 

 

 

 

 

 

「さて、これから会議だ」

 

その日、八咫烏の会議室に呼び出された一誠は戸惑っていた。この場にいるのは若手ナンバーワンの曹操や将来を期待されているレオナルド。暴走しがちな二名の抑え役のジャンヌなど、実力者揃いだ。一誠も最近になって譲渡の力と禁手の足掛かりが掴めてきたが。、それでもまだ訓練生。本来ならこの場に呼ばれる存在ではない。

 

「さて、各自資料は行き渡ったかい? 単刀直入に言う。教会からエクスカリバーが強奪され、駒王町に持ち込まれた。主犯の名はコカビエル。十中八九、戦争を引き起こす気だ」

 

「……厄介な。また関係ない人間が巻き込まれるな」

 

曹操が苦々しげに言う通り、戦争になれば戦力補給の為に無理に悪魔にされる者が増えるだろう。元々悪魔や堕天使に協力している者や教会のエクソシストが死ぬのは別に構わないが、関係ないものが巻き込まれるのは気に食わない。他の者達も同じ様な顔だった。

 

「あの、支部長。教会側はなんと?」

 

「いや、今回の件は我々の独自の情報源から手に入れたものだ。その後、潜入するだろう場所を張っていた所、駒王町に侵入した事が分かった。……教会側からは何も聞かされていない。まぁ、私達とは仲が宜しくないからね」

 

八咫烏と教会の仲はかなり悪い。教会側が悪魔を全て殺そうとしているのに対し、八咫烏は無理に悪魔にされた者や迫害されているハーフの保護も行っている。その他にも聖遺物である曹操の神器が自分達以外の手にあるのも気に入らないらしい。

 

「さて、今夜襲撃をかける。兵藤、譲渡は何回できるかい?」

 

「ご、五回が限度です。五回譲渡すると倒れてしまって」

 

「……十分だ。さて、そろそろ頼んでいた物が届いた頃だね」

 

我道の背後のモニターにはどこでもドアを通って支部内に入ってくる因果の姿が映っていた。

 

 

 

 

 

「……私は武器を頼んだはずだが。いや、この鏡が何かあるのかね?」

 

我道は顎に手を添えながら考え込む。目の前にあるのは名の変哲もない縦に長い鏡。だが、持ってきた因果は自信満々だ。

 

「ふふふ、よく聞くが良いっ! この鏡こそ、私の発明品に中でもトップクラスの出来を誇る物っ! 名付けて……フエルミラー」

 

「ああ、なるほど。写した物を増やすのか。では、使い方を教えてくれたまえ」

 

我道は何事でもないように発明品の内容を言い当て、その内容に曹操たちが驚愕しているにも関わらず平然と操作説明を受ける。間違いなく世紀の大発明なのだが、我道にとっては便利な道具程度の認識しかなかった。

 

 

 

 

 

 

「さて、エクスカリバーの性能実験が済み次第計画に映るぞバルパー」

 

その日の夜、コカビエルはアジトで酒を飲みながら協力者と話を進める。その時、アジトに何者かが侵入した。エクスカリバーを取り戻しにエクソシストでも侵入してきたと思ったコカビエルは暇つぶしに出向き、そこで奇妙な生物達を発見する。なんとも形容しがたい人型の生物で、手には爆弾の様な物を持っている。そしてコカビエルが反応するよりも早くアジト内を爆発が襲った。

 

 

「まだ息があるぞっ! 撃てっ!」

 

コカビエルがボロボロになりながらも飛び出すと、アジトの周囲を囲んでいたヤタガラスのメンバーが一斉に熱線銃を発射する。ビル一つ消し去る熱線を受けたコカビエルは地面に墜落し、

 

 

「お前には死すら生温い。消滅しろっ!」

 

曹操の聖愴によって完全に消滅した。

 

 

「お、終わったぁ」

 

曹操とレオナルドに力の譲渡をくり返し行った一誠はその場に膝をつく。今秋の作戦中、周辺住民には不発弾の処理と銘打って退避させており、幻覚も使っているので目撃者は居ない。こうして大戦争に発展しそうな事件は一晩の内に解決した。

 

 

 

 

「何っ!? コカビエルがやられたっ!? ……よりにもよって八咫烏にかよ」

 

コカビエルの行動に頭を痛めていた堕天使の総督であるアザゼルは報告によってますます頭を痛める。自分達を敵視する組織に大きな借りを作ってしまったからだ。

 

 

 

 

 

「あ、はい。日本に到着いたしました。……はっ!? 今すぐ帰って来いっ!? ……もう解決したっ!?」

 

「えぇっ!? どうなってるのよっ!?」

 

そして次の日、聖剣奪還の為に飛行機で日本にやってきたエクソシスト二人は到着の報告を終えるなり本部に帰る事となった。

 

 

 

 

 

 

「そういえば昨日、不発弾の暴発があったそうよ」

 

「あらあら、怖いですわね」

 

リアス達には未だ何も教えられていない……。




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