ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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我道のイメージは暗殺教室の理事長です(笑)


悪魔と秘密道具 ⑦

「さて、今回はゲームの申し出を受けて頂き、有難うございます」

 

我道は通された観覧席でサーゼクスに手を差し出す。内心では妹の婚約がかかった茶番(ゲーム)と一緒に行われる事を憤慨していたが、そのような事など少しも感じさせない笑顔だ

 

「……あれが八咫烏の鬼将か」

 

「……忌々しい」

 

観覧席に居た貴族達は彼に侮蔑の視線と殺気を送る。その原因は彼が支部長を務める八咫烏の業務にあった。有能な神器持ちの勧誘や保護。此れによって優秀な眷属が集めづらくなっている。そして、もう一つ理由があった。

 

 

 

「いやぁ、それにしても先月は大変でしたよ。優秀な人間を無理やり眷属にしようとする者が多くてね。おかげで上級悪魔を七匹も駆除(・・・・・)する事になったよ、はっはっはっ!」

 

貴族達が彼を嫌う最大の理由。それは八咫烏が人間に危害を加えようとした上級悪魔を抹消するっというもの。既に四大魔王達を弁舌で丸め込み了承させており、表だって組織に攻撃を仕掛けられない。そしてそんな彼らから更に戦う意志を削ぐ為に悪魔との若手同士の戦いを行うことになったのだ。

 

「駆除…ですか?」

 

「何か問題でもあるのですか? さて、そろそろゲーム開始の時間ですね」

 

周囲の貴族達から送られる殺気を気にした様子もなく我道は人の良さそうな笑みのまま画面に目をやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいか、二人共! 俺達八咫烏は人外から人間を守る為の防波堤だ! 俺たちが無様な姿を晒す事はさらなる犠牲者をうむ事に繋がる。俺達は此処に試合をしに来たんじゃない。圧勝しに来たんだ!」

 

「「はい!」」

 

青年の演説に一誠とアーシアは返事をし、因果は持ってきた道具の最終調整を行っている。リアスは四人を作戦会議に誘うも断られ、眷属二人と作戦を練っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お時間になりました。制限時間は人間界の夜明けまで。それでは、ゲームスタートです』

 

「さぁ、私の可愛い下僕達。準備はいいかしら?相手は不死身のフェニックスだけど関係無いわ。消し飛ばしてあげましょう!」

 

「「はい!」」

 

リアス達は気合を入れる。眷属でない四人はそのまま陣地から出ていこうとしていた。

 

「あ、言い忘れておった。貴様らは邪魔だから自陣から出てくるな。間違ってやられたらゲームが終わってしまう」

 

「なっ!? いくら貴方の発明品が凄くても、人間が十六人もの悪魔を倒せる訳ないじゃない!」

 

「もう一度だけ言う。足手纏いだ、何もするな」

 

因果は三人にピストルを向けると引き金を引く。銃口から放たれた白い物体が命中し三人を床に貼り付けた。

 

「瞬間接着銃~! この銃から放たれる接着剤は下級の龍の成体程度なら動きを封じられる。暫くそうしていろ」

 

「あ、あの~、あんな事して大丈夫なんですか?」

 

アーシアは不安げな顔をしているが、青年はその肩にポンッと手を置いた。

 

「何、気にする事はない。ライザーはゲームで味方を囮にしたりしているんだ。それが許されるなら暴走しがかねない王を縛り付けるのも良いはずだ。最も、俺達は部下ではないけどね。君のような犠牲者を出さない為だ。さぁ、行くぞ」

 

青年に促されたアーシアはそのまま本拠地から出て行き、そのまま因果、一誠とアーシア、青年といった三組に分かれた。

 

 

 

 

 

 

「さて、此処から気配がするな。重力調節機~!」

 

相手と自分達の陣地の中間地点にある体育館は重要拠点になる場所で、既にライザーの眷属が入り込んでいるようだ。因果は体重計のようなものを取り出すとメモリを最大にする。その瞬間、辺りの木々がへし折れ、体育館が地震にでもあったかのように崩れる。ただし、因果の周囲だけは無事だった。

 

「熱線銃~!」

 

続いて腰に下げた取り寄せバックから取り出したのはスナイパーライフル。その引き金を引くと体育館は一瞬で煙に変わった。

 

『ラ、ライザー・フェニックス様の『兵士』二名 『戦車』一名リタイア』

 

解説役のグレイフィアもその威力に動揺しており、観覧席の悪魔達も唖然としている。その様な中、がどうの拍手が鳴り響いた。

 

 

 

「いやぁ、素晴らしい威力だ。我が甥っ子ながら恐れ入る。どうですか、皆さん? 優秀な悪魔でも一瞬であの威力は出せないでしょう? 出したとしても暫くは同じ力は出せない しかもあれは道具だ、誰にでも扱えるし、疲れない」

 

「……八咫烏はあれを導入する気ですか」

 

サーゼクスも少々顔を強ばらせながら尋ね、我道は笑顔で返した。

 

「ええ、そのつもりです。我々人間は脆弱ですからね。その分、強くなることに手段は選ばない。その一つが強力な武器です。今回のゲームで色々試させて頂きますよ」

 

我道は大げさな動作で自分を睨む貴族達に振り返った。

 

「貴様っ! 悪魔を侮辱する気かっ!」

 

その時、一人の悪魔が彼に近づいて来た。その手には人間一人殺すのに十分な魔力が握られている。

 

「人間如きが先程から口が過ぎる! 貴様も、あの小僧共も殺してくれるわっ!」

 

「やめっ……」

 

サーゼクスが慌てて止めようとするも間に合わず、その貴族は魔力を放つ。放たれた魔力は我道へと向かって行き、その貴族ごと切り裂かれる。我道の手には聖剣が握られていた。

 

聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)。それが私の神器だ。……所でルシファー殿。奴は私と彼らを殺すと発言し、実際に襲いかかって来た。殺したが問題あったかね?」

 

「……いや、無い」

 

「サーゼクス様っ!?」

 

「結構。私達八咫烏と全面戦争になれば君達が最終的に勝つだろう。だが、全体の七割は削ってみせる。そうなれば君達悪魔は……詰みだ。後は他の勢力に皆殺しといった所だな」

 

周囲の貴族達は驚愕するが、サーゼクスは苦虫を噛み潰したような表情でそう言うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、アーシア。本当に大丈夫なのか? 無理に戦わなくてもサポートに回ってくれれば……」

 

「いえ、わ、私も戦います!」

 

一誠は戦いに向いていない性格のアーシアを心配してサポートに回るように提案するも、アーシアはそれを拒否する。なぜ彼女がそのような結論に至ったのか。それは数日前、支部長室での事……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、相手を傷つけたくないんだね?」

 

「……はい」

 

アーシアはたとえ悪人相手でも相手を傷つけるのは嫌だと我道に告げる。彼は相変わらず人の良さそうな笑みを絶やさずアーシアに近づき、こう囁いた。

 

「その分、味方が傷つくことになるけど良いんだね? 君が倒せたのに倒さなかった敵に味方が傷つけられ、手を汚さなかった分だけ仲間が手を汚す。それでも君は敵を傷つけたくないと。おかしいねぇ。君が敵を傷つけなくても仲間がその分傷つけ、仲間は余計に傷つく。君の優しさは仲間を傷つける為のものなのかい?」

 

「……そ、それは」

 

この性格こそが因果が叔父である我道を恐れる理由。普段は聖人君子の様に振るまい、その笑顔のまま相手の心を蝕む毒を吐く。その性格と知能、そしてたぐいまれな戦闘能力により彼は三十代で組織の幹部まで上り詰めたのだ。しかも、悪魔や神器の事を知ったのは十代後半に関わらずだ。その事から彼はこう呼ばれている。

 

 

 

『鬼将』、と……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、たった二人で来ましたのね」

 

二人が敵の本拠地である新校舎まで向かうと、金髪ロールが率いる計五人が待ち構えていた。

 

 

 

「……アーシア。作戦は分かってるな?」

 

「はい。フェニックス家の長女は傷つけない方法で倒し、残りは此方を傷つけさせずに倒す、でしたよね」

 

「何をブツブツ言っているのかしら? さぁ、やってしまいなさい!」

 

金髪ロールが指示を出すと四人が一斉に向かってくる。連携の様子が見られないが、人間だからと侮っているのだろう。一誠は四人に指を向ける。そして、

 

「バン! バン! バン! バン!」

 

四人は見えない弾丸に弾き飛ばされて気を失った。

 

『ライザー・フェニックス様の『騎士』二名 『戦車』一名 『僧侶』一名リタイア』

 

「な、何が起きてっ!? か、体が動かないっ!?」

 

呆然とする金髪ロールは体の異変に気付く。強い力で縛られたかのように体が動かないでいた。そして、アーシアは先端に指を突き出した手がついた帽子を被っている。

 

「四人を吹き飛ばしたのは『空気ピストルの素』。そしてアーシアが被っているのは『エスパーぼうし』だ。……今すぐリタイアしてくれ。じゃないと俺達は君を苦しめなきゃいけない」

 

「ふ、ふんっ! 私はフェニックス家の者。貴方方には倒せませんわ!」

 

「……知ってるよ。事前に調べたら簡単に分かった。公式のゲームに出てるから当然だよな。……ごめん」

 

一誠は懐からドライバーを取り出すと金髪ロールに当て、そのまま捻る。次の瞬間には体がバラバラになっており、彼女は頭だけで表情を変えていた。

 

 

「ななななっ!? 何ですの、その道具はっ!?」

 

「『分解ドライバー』。物だろうが生物だろうがバラバラにできるドライバーだ。中心に当てる必要があるけど、アーシアが押さえていてくれたから簡単だったよ。……アーシア」

 

「は、はい。この『らくらくシャベル』があったので楽に掘れました」

 

シャベルを持ったアーシアの足元には魔法を使って水を溜めた穴が空いており、一誠は無言で金髪ロールの頭を掴む。彼女はその瞬間、何をされるのか理解した。

 

「ちょ、ちょっと待って……」

 

「……俺は警告した。こんな状況で見逃していたら、何時か見逃した敵に殺される。見逃す理由になる前例を作りたくない。……ごめん」

 

一誠はそのまま彼女の頭を穴に投げ込んだ。暫くの間泡が出ていたがそれも次第に収まっていく。

 

 

 

 

 

 

 

『ライザー・フェニックス様の『僧侶』一名リタイア』

 

 

 

 

 

 




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