ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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悪魔と秘密道具 ⑥

己道家の研究所の地下深くの工房。其処で無数の作業用ロボットが作業をしていた。高度な人工知能にマジックアームによる精密な動作など、使われている技術のドレもコレも世に出回っていない新技術で、中には特許使用料だけで大企業の年間利益を遥かに超えるものが複数使われている。

 

「……完成したな」

 

「うん、完成だね」

 

そのロボット達を監督しつつ、緻密な作業を進めていた束と因果は完成した発明品を眺め、ハイテンションでハイタッチした。

 

「「いえ~い♪」」

 

若作りな束と母親似の因果では親子と言うよりも姉妹にさえ見える。そのまま手を握り合ってくるくると回りだす二人の正面には巨大なロボットが直立していた。機体色は白と赤と青で所々に黄色が使われている。高度な人工知能と高機動性を持ち合わせたこの一体だけで小国の国家予算程の値段が付くだろう。当然、世に出ていない技術がふんだんに使われている……。

 

「さて、此奴の名前はどうするのだ、母さん? 私はジュドという名を思いついたのだが……」

 

「う~ん、私はクリスマスの時期から造り始めたから、ザンダクロスが良いかな?」

 

二人はああでもない、こうでもない、とロボットの命名論議を続ける。そして束の付けた名前で決定した時、空中に映像が映し出される。まるで高画質のテレビの様に鮮明な映像には我道の姿が映っていた。

 

『やぁ、束と因果。久しぶりだね』

 

「あ、お兄ちゃん! も~! 私と因果ちゃんの共同作業の途中だったんだよ。邪魔しないでよ~」

 

『はっはっはっ、まぁ許したまえ。……所で私達の組織と寄生ちゅ……悪魔達との交流試合の事なんだが人手が足りなくてな』

 

彼が支部長を務める異能者集団『八咫烏』は神器所有者の保護や危険な人外の討伐などを行っており、舐められないようにと各勢力に若手の実力を示す為の試合を行っているのだ。そして、今回は悪魔との戦いが決まっていた……のだが。

 

『若手が忙しくてね。出られるのはアルジェント君や最近正式加入した兵藤君以外には若手ナンバーワン候補の彼しか居ないんだ。……対戦相手はフェニックス家の馬鹿息……三男だ。新発明の実験相手には丁度良いだろう?』

 

「……封印指定の道具を試す良い機会か? 口実には十分だな」

 

「……むぅ。因果ちゃんに危ない事させる気なら怒るよ?」

 

束は不満げに画面を見つめるとリモコンのような物を取り出す。スイッチを押した途端に我道の顔以外の映像が切り替わり、サンバ衣装(女性用)で踊っている体に我道の顔がくっついていた。

 

『……どうかしたかい?』

 

映像がどうなっているのか分からない我道は首を傾げ、二人は必死で笑いを堪える

 

「ぷっ! い、いや、何でもないよ」

 

「くくく……似合ってるぞ」

 

『……まぁ、良いとしよう。あっ、何故かグレモリーの馬鹿娘と組む事になったから』

 

そのまま一方的に通信が遮断された……。

 

 

 

 

「……今から拒否したい」

 

「……駄目。お兄ちゃんとの約束を破ったら後が怖い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ! 今日から十日間の強化合宿よ!」

 

「帰れ」

 

次の日の朝、妙に気合を入れたリアスは大荷物を持って家の前に現れ、起きたばかりで機嫌の悪い因果は半眼で睨む。その後ろでは白音が箒の向きを反対し、塩を撒いていた。

 

 

「だいたい、学校はどうするのだ?」

 

「あら、学校なら大丈夫。公欠扱いにするわ」

 

実はリアスの家が学園を支配しているのだ。平然とその事を言い、因果の彼女を見る目は段々冷え切っていく。

 

「……屑が。俺は学校に行く。試合には出てやるから会いに来るな」

 

リアスの足元に唾を吐いた因果は呆然とするリアスを放って家に中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……非常に不快だ」

 

「どうしたのかしら、因果? はい、味噌汁」

 

不機嫌そうに朝食を食べる因果に味噌汁を差し出した摂理は自分も朝食を食べだす。因果は受け取った味噌汁を一気にすすった。

 

「グレモリーの事だ。叔父さんが言うには、今回の試合であいつらが勝ったら縁談は破棄らしい。その為の訓練をする為、家の力で公欠にしたらしい。義務は嫌だが家の力は使い放題か……はっ!」

 

「貴族としての義務を果たしたくないから、家の力を使ってズル休みして特訓? ……私が領民なら憤慨ものね」

 

摂理も呆れたような顔になる。その日、因果は普通に登校した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はひ~! ま、まだ着かないんっすか~?」

 

「も、もう限界です」

 

一誠とアーシアは急な山道に耐え切れずその場に座り込む。組織の一員としての訓練を受けてはいるが、まだ新人の二人は訓練期間が短く大した成果は出ていないのだ。

 

「……やれやれ、仕方ないな」

 

そんな中、大荷物を持った青年が二人に近づいていく。服装は二人が来ているのと同じ八咫烏のジャージ。青年は二人を担ぎあげると平然と山道を登っていった……。

 

「す、すいません先輩」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「気にするな。……頂上に着いたら俺が鍛えてやるからな。くくく、超ハードコースが良いか?」

 

青年は嗜虐的な笑みを浮かべ、二人は顔を真っ青にしながら震えている。リアス達は青年の姿を興味深そうに見つめていた。

 

 

「凄いわね。あの大荷物に人間二人を担いて山を登るなんて……眷属に欲しいわね」

 

「あらあら、只者じゃありませんわね」

 

「あの身のこなし、かなりの手練のようです」

 

 

 

 

 

 

 

リアス達が頂上に着いたのは青年が頂上に着いた十分後。青年はペンションのような建物の前で訝しげな顔をしていた。

 

「……おい。まさか此処に泊まるつもりか?」

 

「ええ、そうよ」

 

「……そうか。おい、二人共帰るぞ」

 

「えっ!? ちょ、ちょっと待ちなさい! 訓練はどうするの!?」

 

青年は一誠とアーシアを担ぎ上げるとそのまま山を降りようとする。慌てて追いかけたリアスだが、青年は彼女に侮蔑の視線を送り、そのまま止まらずに歩き続ける。

 

「建物に寝泊まりするなら山でやる意味がない。野営によって鍛えられる物があるから山篭りすると思ったのだが……所詮は貴族のお嬢様か。野営をしないのなら専門のトレーニング施設を使った方が効率が良い。それとも君達はその方面の専門知識があるのかい?」

 

「え? ないけど、この山で十日間きっちり訓練すれば強くなれるでしょ?」

 

「今回の試合の目的は勝つ事だ。それに訓練なんて漠然とすれば良いというものじゃない。……修行ごっこに付き合う気なんかないよ」

 

青年はそのまま山を降りて行き、リアスたちは三人だけで修行を行う。そして十日後、試合の日がやって来た……。

 

 

 




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