ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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悪魔と秘密道具

とある所に一人の天才が居た。彼女は物心着くころには人生設計を終え、十代になる頃には全ての学問を極め切った。彼女は知識欲の方が三大欲求より強く、人間らしい感情など無い……筈だった。そう、とある男性に出会うまでは。

 

「驚いた? 私、魔法使いなの」

 

今までの価値観を崩壊させる出会いをした彼女は彼と恋に落ち、やがて一人の子を成した。子供の名は己道 因果(おのれどう いんが)。この話は両親の才能(と悪い所)を受け継いだ彼の物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

此処は駒王街の一角にある研究所。此処には所長に雇われた助手は居ない。理由は簡単、足手纏いにしかならないからだ。その研究所内のとある研究室、電気を消されて真っ暗になった部屋にスポットライトが灯る。ライトで照らされているのは白衣を着た一人の少年。その後ろには白衣を着た黒髪の女性と小柄な白髪の少女が控えていた。

 

「……完成だ! 完成したぞ! やはり私は天才だっ!」

 

「博士、今回の発明品はどんなのにゃ?」

 

「ふふふ、聞いて驚くでないぞ? 名づけて『タイムふろしき』! 包んだ物の時間を最大五分間戻し、あるいは進める事が出来るのだ! はっはっはっ! どうだ? 凄いだろう!」

 

「……これお願いします」

 

少年、因果は時計の模様が書かれた風呂敷を自慢げに掲げる。すると小柄な白髪頭の少女が進み出る。おして、その手に持っていた食べかけの冷えた肉まんを包んで少し待つと、一口も囓られていないホカホカの肉まんが其処にあった。

 

「……久し振りのまともな発明ですね」

 

少女はモキュモキュと肉まんを頬張りながら褒め、因果は不満そうな顔をする。

 

「何だ、その言い方は。私の発明品に文句でもあるのか、白音?」

 

「……夢確かめ機、おしり印の吉備団子、苦労味噌」

 

白音に呼ばれ少女は淡々とい最近の発明品を上げていく。夢かどうか確かめる為に頬を抓るマジックハンド(キャタピラ付き)や巨大な動物にすら効く強力な下剤団子、そして舐めたら舐めるほど苦労する味噌。どれも役に立つとは思えない。

 

「く、苦労味噌は凄いだろう。運勢に干渉するんだぞ!?」

 

「役に立ちません。むしろ使ったら迷惑なので無い方が良いです」

 

「にゃはははは! 白音は相変わらずにゃ。まぁ、因果の発明品は魔法を一切使っていないのよ?」

 

黒髪の女性は笑いながらフォローを入れる。彼女の言う通り、因果の発明品は魔法を一切使っていないにも関わらず魔法に匹敵するような効果を持っている。それが彼が天才たる所以。父から習った魔法の理論を天才的頭脳によって再現したのだ。

 

「流石は黒歌だっ! よく分かっているじゃないか!」

 

「にゃん♪」

 

二人はガシッと抱き合うが身長差から因果の顔は黒歌の巨乳に埋まる。その様子を白音は不満げに見つめ、肉まんを握りつぶす。中から丸々一個入っていたホタテの貝柱がこぼれ落ちた。

 

 

 

 

 

 

「……白音。それ、私が中華街から取り寄せた高級肉まんじゃ……」

 

「……にゃん」

 

 

 

 

 

所でこの二人は何者なのか? それは因果の幼少期まで遡る。両親と旅行に行った先で因果は二匹の衰弱した子猫を発明品の実験体にする為に拾った。それによって助けられた二匹の正体は猫の妖怪である猫又で、魔法使いの父の勧めと母の知的好奇心を刺激した事もあって居着く事になったのだ。

 

なお、とある悪魔が二人を引き取りたいと言い出し、断った時に強引な手段に出たが、研究所内に微生物が一匹増えただけに終わった。

 

 

なお、その日の前日に因果の母親は『進化・退化光線銃』なるものを発明していたが、三日後に危険すぎるということで父親の手によって封印されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ちなさい、変態共~!」

 

「「「うわぁぁぁぁぁっ!!」」」

 

今日も彼が通う駒王学園では追走劇が繰り広げらている。追われているのは兵藤・松田・元浜の通称変態三人組。追っているのは学園の体育教師で因果の父親である己道 摂理(おのれどう せつり)。その見た目はモジャモジャ頭にケツアゴのオカマだ。ジャージが何故か囚人服風で、一撃で怪人を倒すヒーローの漫画に出て来そうな見た目である。なお、体力馬鹿に見えるけど超一流の魔法使いだ。

 

「……相変わらずですね」

 

「……変態共には気を付けろよ? もし何かされたら色々な意味で抹殺してやるから」

 

なお、白音と黒歌は同居している従姉妹という設定になっており、因果が二年生、白音が一年生だ。なお、黒歌は大学部に所属しており、放課後となれば三人で寄り道をしたりしている。なお、既に海外で飛び級で大学を出ている因果であったが、インスピレーションの足しに、と普通の学園生活を送りたがり、一番家に近かった所に今通っているのだ

 

 

 

 

 

 

「あら、朝から会うなんて奇遇ね。ちょっと話でもしない?」

 

そんな中、話しかけてきた女子生徒が一人。彼女の名はリアス・グレモリー。この学園の三年で二大お姉さまと呼ばれている美少女だ。彼女が通り過ぎれば男女問わず振り返るほどの美貌なのだが、因果と白音は明らかに迷惑そうにしている。

 

「また勧誘か? それに何が奇遇だ。待ち伏せしておいてよく言う」

 

「……眷属にも部員にもならないとも言ったはずです」

 

実は彼女は悪魔で、二人を下僕として悪魔にしたいと何度も勧誘を繰り返しているのだ。やれ、上級悪魔になれば下僕が持てる、やれ、悪魔は長寿、やれ、貴方達は強い力を持っているから管理を任された者として放っておけない、等だ。そしてせめて彼女が部長をやっているオカルト研究部に入部しろとも迫っている。

 

 

はっきり言って二人にとって迷惑だった。

 

「あら、そんなに嫌わなくたって良いじゃない。此処を管理する悪魔として、貴方達は気になるのよ」

 

「……私達は正式な手段で入学しました。兎や角言われたくありません」

 

「大体、それを言うなら悪魔が人間の世界に来ないで貰いたい。小競り合いに巻き込まれて迷惑だ。……それと、私達一家が貴様の兄がやっている事業の筆頭株主だという事を忘れないように。そして、母の伝手で国家運営の異能者組織にも顔が利く。……あまりしつこいと潰すぞ?」

 

因果はまるでピストルを突きつけるかの様にリアスの眉間に指先を突きつける。それにリアスがたじろいた隙に二人はさっさと校舎に入っていった。

 

 

 

 

数日後、変態の一人である兵藤が彼女が出来たと騒いでいた。

 

 

 

 

 

「あの彼女、堕天使だな」

 

「……そうですね。神器が目的でしょうか?」

 

「ん~、危険な代物が一般人に宿ってたら拙いから殺す気かにゃ? 異能者の組織に知らせとく?」

 

「……不確実過ぎて動かないだろ。まぁ、同じ学園の生徒も遠国の病人も同じ人間だ。私は直接関わっていない相手なら、死んでも精々可哀相としか思わない。実際に何かできるのはごく少人数だ。……しかし、話し出したら気になって来た。……閃いた!」

 

三人は自室でスナックとジュースを囲みながら駄弁っている。暫く考えていた因果だが、突如立ち上がると研究室に向かい、三十分後にマルとバツの形をした何かを持ってきた。

 

「……スイッチオン」

 

白音が呆れた様子で壁のスイッチを押すと同時に因果はその二つを掲げる。

 

「○×占い~!!」

 

そして効果音が鳴り響いた。

 

「……どういう効果ですか。まぁ、予想は付きますけど」

 

「聞きたいにゃ~」

 

黒歌はノリノリで反応してくれ、因果は特捜に胸を張る。

 

「ふふふ、これはあらゆる問いにマルがバツで答えてくれるという道具だ! その正解率100%!」

 

「……相変わらず凄いですね。ネーミングセンスは無いですけど」

 

因果はその言葉に落ち込み、立ち直るのに要した時間は三十分。それから堕天使の目的を調べる事にした。

 

「堕天使の目的は強力な神器を持った兵藤を殺す事?」

 

『ピンポンピンポ~ン』

 

床に置かれたマルが飛び上がり、正解のファンファーレが鳴り響く。

 

「……リアス・グレモリーは彼が命を狙われている事を知っている?」

 

『ピンポンピンポ~ン』

 

再び鳴り響くファンファーレ。既にリアスは堕天使が彼を殺そうとしていること知っている事を知り、白音は不快そうな顔をする。

 

そして、最後の質問。一応するが不正解だと思いながらされた質問だ。

 

「この街に侵入した堕天使の目的は兵藤を殺す事だけ?」

 

『ブッブー!!』

 

 

するとバツが飛び上がり、三人は顔を見合わせた。




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