ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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悪魔? いいえ、付喪神です(嘘)

神様転生―――まぁ、ネットの二次小説ではよく見るジャンルだろう。神のミスで死んだ主人公が漫画とかの力貰って漫画とかの世界に行く。というものだ。

 

「……まさか自分が体験するとは」

 

そう、俺は今まさにそれを体験していた。先ほどトラックに轢かれ、見知らぬ空間で神を名乗る爺さんから力を貰い、今はその力を使いこなす為の修業中だ。

 

「おらぁっ! 何サボってんだぁ!」

 

目の前にいるのは青色のプルプルとした謎生物。存在自体が巫山戯ている彼の名前は『ところ天の助』。そう、俺が貰った力は『ボボボーボ・ボーボボに登場した真拳全般』だった。

 

「……だけど、なんで指導者がコイツなんだよぉぉぉぉぉっ!?」

 

別に栄養とかは大丈夫だけど腹が減るから飯は必要だ。そして既にお分かりの方も居るとは思うが3食全てトコロテンだった。しかも寝具の模様も当然『ぬ』。……まぁ、魚雷ガールとかよりはましだったけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうお前に教える事は何もない。今すぐ山を降りろ」

 

「ここ、山じゃないけどね!? ……お世話になりました」

 

修行も終わり、俺は殆どの真拳を使えるようになっていた。まぁ、プルプル真拳等の一部の技は無理だったけど、体の問題だから仕方がない。そしてランダムで行く世界が決められるという段階になって天の助は思い出したように言った。

 

「あっ、向こうではランダムで体が決まるから」

 

「そ、それを早く言えぇぇぇぇぇっ!!」

 

「メンゴ♥」

 

テヘペロっと反省した様子もない様子の奴を見て思った。コイツとの別れを惜しんだ先ほどの自分をぶん殴りたい! と……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むぅ、夢か……。懐かしいのぅ」

 

俺は……いや、儂はベットからゆっくり置き上がって呟く。この世界に来てから早数十年、肉体に精神が引っ張られてか性格や口調も変わってしまった。まぁ、そのような事などどうでも良い。過去は過去、今は今じゃからな。

 

「おい、朝じゃぞ。早く起きんか!」

 

「ん……。後、十分……」

 

「バカモンがっ! ……足の裏真拳『即死し……』」

 

「! お、起きるさ」

 

儂が足を同居者の小僧に向けた瞬間、奴は飛び降りる。……やれやれ、手間のかかる小僧だ。この小僧を拾ったのは数年前。親に虐待されていたらしく死にかけていたのを気紛れで拾ったのだ。その後、儂の弟子になりたいと言ってきたので弟子にしてやった。

 

 

 

 

 

 

「全く、朝の修行の時間に遅れるところじゃったぞ、ヴァーリ」

 

「すまないね、マスター・ハンペン」

 

そう、儂の新しい肉体は旧毛刈り隊Aブロック隊長のハンペンだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の獲物はどんなのだい?」

 

「雑魚じゃ雑魚。欲望のままに人を食うだけの獣と同じじゃな」

 

その日の夜、儂はヴァーリと共に廃屋に入り込んでいた。儂の仕事は請負人。今回の仕事ははぐれ悪魔バイサーの討伐だ。まぁ、この前に会った奴のように仕方ない理由があって主を裏切った奴ではない事だし、容赦は無しで良いじゃろう。強い奴との戦いが好きなヴァーリは儂の言葉を聞いて興味を無くしておる。やがて儂らに気付いたのか獲物がやって来た。

 

「不味そうな匂いがするぞ。美味そうな匂いもするな。……お前、何者だ?」

 

現れたのは人間の上半身の獣の下半身を持ち、両手に槍を持った異形。コヤツが今宵の獲物のバイサーだ。奴は儂を見て戸惑っているようじゃ。まぁ、頭がデカいハンペンで出来ている奴を見たらそうなるじゃろうなぁ。

 

「なんじゃ、見てわからんのか? 練り物じゃ」

 

「……いや、アイツはそういう意味で言ったんじゃないだろう」

 

……分かっとるわい。この場面でこう言うのはお約束じゃろうに……。そんな呆れた様な目で見るな。まぁ、良い。早く終わらして寝るかの。

 

「無視するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

儂がバイサーに背を向けていると怒ったのか襲いかかってきた。

 

「オナラ真拳『皐月』!」

 

「ぐっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

儂の尻から出た屁が奴を吹き飛ばして息の根を止める。ヴァーリは不快そうに鼻を押さえていた。

 

「……相変わらず下品な技だな」

 

見るな! そんな目で儂を見ないでくれ!

 

儂がヴァーリの避難するような目を避けようとしたその時、若い女の戸惑った声が聞こえてきた。……ちっ、ここを管理しとる悪魔のようじゃな。

 

「これはどういう事かしら? それにこの異臭は何?」

 

……儂の屁ということは黙っておこう。ん? ヴァーリの奴がつまらなそうな顔をしておるのぅ。

 

「どうした、ヴァーリ」

 

「……いや、宿命のライバルを見つけたのは良いんだが、余りにも雑魚過ぎて」

 

ヴァーリの視線の先に居るのはいかにも一般人といった感じの小僧。この状況につ入れ行けずにオロオロしており、身のこなしも弱者といった感じじゃな。あの小娘、もしや……。

 

「……ヴァーリ。あの白い小娘なんじゃが」

 

「ああ、分かっているさ。色気の欠片もない、ぐへぇ!?」

 

「ボケとる場合か! ……すまんの。して、何用かな? 言っておくが討伐は早い者勝ちじゃぞ」

 

全く、どうしてこのような奴になったのか。……教育、間違ったかのぅ。儂の言葉にやって来た小娘はたじろぎながらも睨んできた。

 

「ここは私の縄張りよ。悪いけど話を聞かせてもらうわ。抵抗するなら拘束させて貰うわよ」

 

……不快じゃの、なぜ儂がこんな小娘の言う事を聞かなければならぬのやら。力の差も分からぬのか小娘の周りの剣士らしい小僧と黒髪の小娘、そして白髪の小娘は臨戦態勢を取った。愚かじゃなぁ。

 

「師匠。ここは俺が……」

 

ヴァーリはそう言って神器を出す。ヴァーリの背中に儂の顔同様に真っ白な翼が出現した。奴の神器は『白龍皇の光翼』。その威圧感に小娘達は飲まれてしまっていた。

 

「俺の神器は神滅具の一つ『白龍皇の光翼』。命とプライド、どちらが大切か考えてから掛かってくるんだな」

 

「……行きなさい。最後に聞かせて、貴方、何者?」

 

「練り……」

 

「言わせないよ! 彼の名はハンペン。ハンペンの付喪神して至高の武術家さ」

 

……ふむ、分かっとるの。此処で戦っても勝敗は明らか。ヴァーリは天性の才能と神すら殺せる神器。そして儂が仕込んだ、あの真拳があるからの。儂らはその場がら去ると拠点へと転移していった……。

 

 

あと、ヴァーリ。ギャグくらい言わせて欲しんじゃが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おう! ご苦労だったな』

 

拠点にあるモニターにははぐれ悪魔の討伐を依頼した男が映っていた。奴の名はアザゼル。堕天使の総督じゃ。

 

「今回は雑魚じゃった。次はもう少し強い相手をよこしてくれんか?」

 

「俺も強い奴と戦いたいな。……折角ライバルと会ったのにあの程度とはな。悪魔になってあの程度とは」

 

ヴァーリがそう言った途端、アザゼルは眉をしかめた。

 

『……ちょっと待て。赤龍帝と会ったのか? 報告ではまだ殺してないはずだぞ。悪魔になったという報告も受けてねぇしよ……』

 

ほぅ、どうやらあの小僧は抹殺対象じゃったか。まぁ、危険な神器を宿してる奴が暴走すると厄介じゃからな。……だが、部下に不審な動きがあるのか。

 

『悪ぃが調べて来てくれるか? 報酬は弾むぜ』

 

……仕方ないのぅ。さて、もう一人の居候が帰ってきたら向かうとするか。




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