ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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死神憑きの少女 ③

「……眠れない」

 

理沙は不機嫌そうにベットから起き上げる。窓を開けた彼女は駒王学園の方をジッと睨んでいた。ギグと融合して既に十年以上が経った彼女は超常的な力の察知能力が過敏となっており、たとえ結界で覆われていても魔力や何やらの力を感じ取る事ができるのだ。彼女は知る由もないが、学園ではエクスカリバーを強奪した堕天使幹部コカビエルとその手下を打倒すべくリアス達が戦っていた。そしてその戦いのせいで理沙の安眠が妨害されてしまったのだ。

 

『あ~あ、怒らせちまった。眠るのを邪魔された相棒は怖ェぞ』

 

ギグは原因となった者達に少しだけ同情の念を送った。

 

「ギグ。五月蝿いの黙らせに行こ?」

 

『……へいへい。このままじゃ街もヤバイしな。相棒は俺が守るけど、駅前のパン屋のアップルパイが食べれなくなるのは惜しい。んじゃ、行こうぜ』

 

ギグがそう言うなり理沙は窓から学園めがけて飛び立っていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……くっ、そろそろ結界が」

 

リアス達が校庭で戦っている頃、ソーナ達はコカビエルが逃げ出さないように結界を張っていた。しかしコカビエルの力の余波で結界は軋み、元々一般人が中心の眷属達には限界が訪れていた。特に魔力も少なく経験の浅い匙は大量の汗を流しながらこらえている。このままでは援軍の到着まで持ちそうにない、そうソーナが判断した時、すぐ後ろにパジャマ姿の理沙が現れた。

 

「元ちゃん。こんばんわ」

 

「おう、こんばんわ。って!? 何でこんな所に居るんだよ!? さっさと帰れ!」

 

『うっせぇぞ、ゴミ虫! 幼馴染だからって相棒に指図すんな!』

 

「……さっきから五月蝿くて眠れない。五月蝿い奴らこの中だね?」

 

理沙はそう言うと匙を無視して剣を振り上げ、結界を容易く切り裂くなり中に飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……所詮はこの程度か。期待はずれだったな」

 

コカビエルは煙が上がる腕を前に差し出した格好のまま残念そうに呟く。一誠の神器によって力を大幅に上げたリアスの滅びの魔力も防がれ、ゼノヴィアの聖剣や祐斗の禁手で作り出した聖魔剣も防がれてしまう。

 

「雷よ!」

 

「鬱陶しい!」

 

そして朱乃の雷も指先で払われ霧散してしまう。コカビエルはその光景を見て心底失望していた。教会から派遣されたエクソシストも、魔王の妹や伝説のドラゴンを宿した転生悪魔。そして戦友の血を引く娘。少しは楽しめると思っていたのに結果は腕に少々の傷をつけただけ。はっきり言って期待はずれも甚だしい。

 

「(そういえば異界の神に憑かれたという小娘が居たのだったな。だが、どうせ雑魚だろう)」

 

もうリアス達に興味の失せたコカビエルはリアスの仲間を殺し、リアスを犯してから殺す事で魔王の怒りを買うという目的を果たそうと光の槍を作り出し、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サンダーロッド」

 

「!? がぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

 

 

 

 

突如聞こえたその声とほぼ同時に途轍もない規模の雷に襲われ地面へに叩きつけられた。全身を黒焦げにしながら立ち上がると背後に居たのは日本の龍を模した様な仮面をつけた魔術師らしき男。彼が杖を振るうとコカビエルの足元に魔方陣が出現した。

 

「(何か知らんがこれはヤバイ!)」

 

培われた経験によってそれの危険を感じとったコカビエルは直ぐに脱出しようとし、足元で起きた爆発によって吹き飛ばされた。

 

 

 

「『ダメージサークル』。下手に動けば危険じゃぞ。まぁ、動かんでも危ないがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おのれぇぇぇっ!!」

 

ボロボロになりながらも魔方陣から脱出したコカビエルは相手が魔術師なら接近戦に弱いはずっと判断し、次に行動される前に殺しにかかる。だが、又しても突如現れた男によって防がれる。紫色の髪を逆立てたその男はコカビエルを片手で受け止めるとそのまま宙に投げ飛ばし両手を向ける。そしてその両手から無数の気弾が放たれた。

 

「欧米!」

 

その技の名は『絶斗連弾』。その見た目は某野菜王子の得意技のごとし。すべての直撃を受けたコカビエルは自慢の羽が全てボロボロになり、息も絶え絶えだ。そしてその背後に黒い剣を持った理沙が立っている。

 

「……貴方のせいで夢から覚めた」

 

その言葉と共にコカビエルの右側の翼が全て宙を舞い、

 

「せっかく良い夢だったのに……。ギグとの結婚式の途中だったのに……」

 

次に左側の羽が鮮血と共に宙を舞う。

 

『おい、相棒! コイツもゴミ虫の中では少しはできやがる。今回は無償で力貸してやっからさっさと決めろ!』

 

前も書いたがギグは一度も代価を受けとていない。今回は、ではなく今回もっと言うのさえ馬鹿馬鹿しい。

 

「……ギグパワー大注入!! 殺・神・遊・戯!!!」

 

その瞬間、理沙の力が増大し、理沙はコカビエルを四方八方から斬り付ける。そのスピードは既に祐斗を超えていた。そして理沙の体が黒いオーラに包まれ、剣と一緒に宙に浮く。

 

「もっと…もっと力を……」

 

『……おい、相棒。そのセリフは辞めてくれ。何か寒気がしやがるんだ』

 

やがて理沙の髪が灰色に染まり、両肩に宙に浮く黒と赤の肩当てが出現する。そして剣を横薙ぎに振るうと赤色に包まれた黒いオーラが彼女を包むと同時に無数の矢となってコカビエルを貫く。そしてそのオーラはコカビエルの体に留まり、理沙は先程までとは比べ物にならないスピードで残像を残しつつコカビエルを何度も斬りつけた。やがてオーラに包まれた剣は巨大な赤い鎌となり、

 

 

 

 

「……消えなよ」

 

 

コカビエルの体を真っ二つに切り裂いた……。

 

 

 

 

 

 

 

「……眠い」

 

「ちょっ、ちょっと待って!」

 

元の姿に戻った理沙は眠そうに目を擦りつつ校庭から出ようとする。その時、リアスが大声で呼び止めた。

 

「……何? 私早く帰って寝たいんだけど……」

 

理沙から放たれたのはコカビエルに向けられたもの以上の殺気。彼女にとってコカビエルもリアス達も安眠妨害の犯人でしかなく、むしろ終わったと思った所を呼び止められた事に怒りを募らせていた。

 

「……ちょっと聞きたいだけよ。先まで居た彼らは誰? どこへ行ったの!?」

 

「……私は質問ばかりする人が嫌い。対価も払わずに相手が何でも答えてくれると思っているから……」

 

さらに強まる殺気にリアスは怯み、アーシアは息すらままならなくなる。その時、小猫がそっと近づいていった。

 

「……駅前の屋台のタイ焼き全種十個ずつ」

 

『はっ! その程度で今の相棒が……』

 

「ギグの力で創ったお人形。いつもは部屋に置いているけど呼んだら出てくる。……たこ焼きも付けて」

 

理沙はそう言うと家に帰って行き、後からやってきた堕天使組織の使いである白龍皇は気まずそうにコカビエルの死体を回収していった……。あと、エクソシストの片方が悪魔になった。




基本ヴァーリはオチ担当

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