ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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死神憑きの少女 ②

「もきゅもきゅ」

 

オカルト研究部の部室では理沙が美味しそうにワッフルを頬張っている。。その姿はまるでリスのようであり、見ていて癒されるものがあった。彼女は最後のひと欠片を飲み込むと朱乃がいれたお茶を飲み込む。その姿を見たリアスは口を開いた。

 

「……もう良いかしら?」

 

実は先ほど食べている途中に話しかけ、

 

『いま相棒が食べてる途中だろうがっ! 話しかけんじゃねぇ、ゴミ虫野郎!』

 

っとギグからお怒りの言葉を貰い、苛立ちながらも黙る事にしたのだ。

 

「……うん。いいよ」

 

「そう。それじゃあ単刀直入に言うわ。私は貴女の力に興味があるの。異世界の神の力ってどんなのか教えてくれないかしら?」

 

「よく分からない。ギグ、どんなのだっけ?」

 

『またかよ相棒……。ったく、しっかりしてくれ』

 

リアスの言葉に理沙は首を傾げながら答え、それに対してギグから呆れたな声が上がった。もう何年も前から何度も説明しているにも関わらず覚えないのだ。

 

『……ちょっと待て。そもそもなんで俺様の力の事を教えなきゃいけねぇんだ? 帰るぞ相棒』

 

「うん」

 

「ちょっ!? 待ちなさい! 少しくらい……」

 

理沙はそう言うなり立ち上がって部室から出ていこうとする。それを止めようとリアスが声をかけた時、理沙がクルリと振り向く。その手には黒い剣が握られていた。

 

「……鬱陶しいなぁ。ギグは嫌だって言ってるでしょ?」

 

その瞬間、彼女から発せられる殺気によってリアスの身は竦み、気の弱いアーシアなどは息が苦しそうにさえしていた。

 

『おい、相棒。その変にしておいてやれ。じゃねぇと後々面倒だ。こういうゴミ虫どもは仲間の仇だ、メンツだ、とか何とかうっせぇからな。まぁ、そん時は特別に無償で力を貸してやっても良いけどよ……』

 

「分かった」

 

だがギグが諌めた途端殺気は綺麗に消え去り、そのまま理沙は部室から出て行った。なお、これまで何度か理沙は力を借りているが、毎回特別に無償で力を借りている。もう、無償で貸すのが普通になっていた。人はソレをツンデレという。なお、ギグの場合は0.1:9.9である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数日後、理沙は駅前の噴水で人を待っていた。まだ相手は来ておらず、先程からナンパ目的の男達が話しかけてきている。

 

「ねぇ、俺達と遊びに行こうよ」

 

「嫌」

 

「まぁまぁ、そんな事言わずにさ!?」

 

そして遂に一人が強引に連れて行こうと彼女の腕に手を伸ばす。そしてそのまま力尽くで連れて行こうとするも何故か動かすことができず、彼らが困惑した時、後ろからドスの効いた声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイ、アンちゃん達。俺の孫に何か用か?」

 

「ひっ!?」

 

男達が振り返ると其処に居たのは、明らかに任侠の世界の大親分といった感じの大柄な老人。その後ろにはサングラスを掛けたガラの悪い男達が睨みを効かしていた。

 

「まぁ、何だ。別に此処辺でナンパをするなとは言わねぇ。だがな、俺の可愛い孫娘に手ェだそうってんななら……少々社会勉強して貰う事になるぜ?」

 

「ご、ごめんなさ~い!」

 

老人に脅しを受けた男達は逃げ出して行き、周囲の人達も恐れをなして逃げ出す。すると老人は後ろの男たちの方に振り返った。

 

「おい、テメェら。もう帰って良いぞ。ってか、隠居した爺に何時までも付き纏ってんじゃねぇ」

 

「「ウッス! では失礼させていただきます! お嬢もお元気で!」」

 

「……私、お嬢じゃないんだけどなぁ」

 

理沙のその呟きは誰の耳にも届く事はなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、行くか。なんか食いてぇモンはあるか?」

 

「……ファミレスの新メニュー。あと抹茶パフェ」

 

老人は先程までとは違って柔らかな笑みを理沙に向ける。彼の名は剛田次郎吉。先程のやり取りから分かる通り、ヤのつく組織の先代であり、理沙の実の祖父である。彼女の父親が一度勘当した彼の息子なのだが、彼の死後孫を見つけたものの、堅気の世界を望んだ孫娘のために離れて暮らし、こうしてたまに一緒に出かけているの家族連れも多くくる店という事で用意していた車は帰らせ、二人は目的の店に向かって歩きだした。

 

 

 

 

その時である。二人の視界に異様な光景が飛び込んで来たのは。

 

 

「えー、迷える子羊にお恵みを~」

 

「どうか、天の父に代わって哀れな私達にお慈悲をぉぉぉぉ!!」

 

そうやら異国の少女二人が街中で物乞いをやっているようだ。その異様な光景に通行人は唖然としながら逃げるように避けていく。やがて二人の会話は物騒なものになっていった。

 

 

 

 

 

「こうなったら通行人を脅して金を奪うか?」

 

「そうね! 異教徒相手なら主も許してくれるわ!」

 

どうやら二人は空腹がピークに達しているらしく正常な判断ができなくなっているようだ。そんな時、二人の後ろから声がかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、嬢ちゃん達。物騒な話じゃねぇか。この辺をウチの組の縄張りとしってそんな事しようってのか? それにな、神さんが許してもお巡りさんが許しちゃくれねえぞ」

 

声を掛けたのは次郎吉。彼は財布から万札を数枚出すと彼女達が地面に置いた箱に放り投げた。

 

「腹が減ってんならソレで何か食いな。無駄使いするんじゃねぇぞ」

 

「「あ、ありがとうございます!」」

 

そう言って通り過ぎた時にかけられた二人のお礼の声に対し次郎吉は振るリ向かず手だけ軽く振ってこたえた。なお、今までの会話は英語で行われており理沙にはチンプンカンプンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お前もよく食うが、あの嬢ちゃん達もよく食うなぁ……」

 

その後、次郎吉の視線の先には大量の料理を掻き込む二人の姿。そして目の前には彼女達二人の三分の二程の量の料理を食べている孫娘の姿があった。

 

「?」

 

「あ~もう。いいから好きなだけ食いな。ちゃんと爺ちゃんが支払い済ますから。……まだなんか頼むか?」

 

「うん♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なぁ、相棒。最近変な気配すっからよ、警戒しておけよ? そろそろ新しい人形作っとけ』

 

「うん。そうする」

 

数日後、ギグの忠告を受けた理沙は机に向かった。机の上にあるのは3×3マスの台座とその上に置かれた人形。人形は兵士のような物からドラゴンやグリフォンのようなもの。ドラグソボールの主人公の変身した姿のようなものまである。そして理沙が手を翳すと杖を持ち仮面を被った魔術師の様な人形が出来上がった……。

 

「……上手くいった」

 

『相棒それ好きだよなぁ……。それで何体目だよ?』

 

理沙はその人形を手に取り満足げに笑う。そしてギグの呆れたような声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……確か十五体目。大丈夫、私が一番好きなのはギグだから」

 

『俺も相棒が好きだぜ!』


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