ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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死神憑きの少女

とあるマンションの一室で一人の少女がまどろんでいた。ウェーブの掛かった艶のある髪にそれほど大きくはないが形の良い胸。綺麗というより可愛いという言葉が似合う中々の美少女だ。彼女の枕的に置かれている、目覚まし時計の針は数十分前にセットされており、彼女が寝坊しているのは明らかだ。にも関わらず彼女は起きようとしない。

 

「ふみゅぅ……」

 

窓から差し込む朝日に彼女は眩しそうに眉をひそめ寝返りを打つ。その時、彼女しか居ない部屋に若い男の声が響いた。

 

『おい、起きろ相棒! 遅刻すっぞ!』

 

その声の主は部屋におらず、なぜか少女から聞こえてきた。別に彼女が男の声を出しているわけでも、人面瘡がある訳でもないのに確かに彼女から男の声がしたのだ。そしてその声を聞き、彼女は漸く目を覚ました。

 

「……おはよう、ギグ」

 

『おう! おはよう相棒! って、呑気に挨拶している場合じゃねぇぞ! 早く支度しろ! 遅刻すっぞ!』

 

「……分かった」

 

少女は眠そうな目を擦りながらベットから這い出る。着崩れたパジャマから下着が覗いていても彼女は気にする事なく寝室から出た。彼女が部屋から出ても家族からの朝の挨拶が聞こえてこない。部屋の隅には仏壇があり、そこには彼女の両親らしき二人の遺影があった。

 

 

 

彼女の名は神無月 理沙。死神に憑かれた少女である。そしてただ今一人暮らしの真っ最中だ。

 

 

 

 

なぜ彼女が死神に憑かれたか。それは彼女が幼い頃まで遡る。友達とツチノコを探しに入った山奥で彼女は不思議な女性に出会った。話す杖を持っているその女性は少女のような話し方をしたかと思うと突如鬼軍曹のような話し方へと変貌した。そんな彼女から理沙は一本の黒い長剣を渡されたのだ。なんでも理沙の体質がどうとか言った彼女は、異世界の神から盗んできた死神が封印されているという剣を渡すなり何処かへと消え去り、その剣を理沙が手に取った瞬間、建が彼女の体に吸い込まれていき、彼女の体から声が聞こえてきたのだ。

 

 

 

『あぁん? 此奴が贄か? まだ餓鬼じゃ……って! おい、クソババア! どこ行きやがった!? ……まぁ、良いか。おい、餓鬼。超抜無敵な俺の名はギグ様だ。覚えておきな。あ・い・ぼ・う』

 

ギグが言うには自分は三体の巨人を操って世界を破壊していたがレナという女に封印された。俺がお前に力を貸したら徐々に体の支配権が移るからジャンジャン力を使いな。っという事らしい。

 

 

 

なお、一般人の彼女にはそんな力など使う機会など無く、ギグの声も彼女が許可しなければ他の人には聞こえないので特に問題がなかった。そして何年か一緒にいたら情が移ったのかギグはあっさりデレた。両親も怪物に殺されたのではなくただの事故死であり、祖父だという任侠の世界の老人の援助もあって彼女は普通の生活を送っている。祖父とはたまに会うだけらしい。こっちの世界に引き込まない為っと言われたからだ。

 

 

 

なお、

 

『相棒がのんきに生活してたから俺が丸くなっただけで、本当の俺は残酷なんだからな!』

 

 

っとギグは言ったが、世界救済の旅でも世界破壊の戦いでも彼は結局デレる。

 

 

 

 

 

 

 

『おい、相棒! 寝癖はちゃんと直せ! 全くそんなんじゃ嫁の貰い手がねぇぜ?』

 

「……ギグに貰ってもらうから別に良い。感覚共有しているからお風呂もトイレも見られてるし……責任とって」

 

『ば、馬鹿野郎! からかうんじゃねぇよ!』

 

登校中、寝癖をそのままにして外を歩く理沙に対し、ギグが苦言を呈するも帰ってきた返事に照れくさそうな声を上げる。なお、理沙は直接ギグの姿を見たことはないが、彼の昔の所業を夢で見た事がある。そのため彼の姿は知っていた。なお、丁寧な言葉を使う、ヴィジランスと呼ばれているギグの姿も見た事があるが、

 

「キモイ」

 

っと一蹴して終わった。

 

 

彼女が学校に向かって歩いていると友人の姿が見えてきた。

 

「……おはよう、元ちゃん」

 

「ん? 理沙か。おはよう」

 

彼の名は匙 元志郎。理沙とツチノコを探しに行った幼馴染である。そしてギグの事を知っている唯一の人間。いや、人間だったっと言うべきであろう。彼は今は人間をやめ、悪魔になっているのだ。

 

「そういや会長が言ってたんだがよ、グレモリー先輩がお前に会いたがってたらしいぞ。お前を眷属にしてぇんじゃねぇの?」

 

「……面倒くさい。ギグはどう思う?」

 

『ケx! ゴミ虫が俺と相棒を良いように使おうってか? そんときゃ皆殺しにすれば良いじゃねえか。まぁ、無視だ、無視!』

 

「分かった。そうする」

 

そんなこんなしている内に予鈴のチャイムが鳴り、匙は慌てて走り出す。理沙も小走りに走り出すと匙をアッサリと追い抜き、校内に入っていった。

 

 

 

 

「……おはようございます。あの、放課後部室に来るように部長が言ってました」

 

「……行かない。今日は早く帰って時代劇の再放送見るから」

 

一時間目の科目は体育。更衣室で着替える理沙に一人の少女が話しかけてきた。彼女の名は塔城小猫。先程言っていたグレモリーの眷属悪魔である。なお、理沙と彼女は二人揃って小柄な美少女な為、学園のマスコット扱いされていた。彼女の誘いを断って着替えをする理沙であったが、ギグにも見えていることなど気にせず他の女子生徒の着替えから視線を逸らさない。あまり他人に興味がないようだ。そんな時、彼女の耳にギグの声が聞こえてきた。

 

『おい、相棒! あの空きロッカーの中! 覗かれてんぞ!』

 

「……うん」

 

すると彼女はカバンに入れていた痴漢撃退用のスプレーを手に取るとロッカーの中に吹き付ける。すると中から変態三人組と呼ばれる二年生達が飛び出し、他の生徒にボコボコにされていた。理沙は彼らを無視して着替えを終え部屋を出ようとし、その背中に小猫の声がかかる

 

「……着替えたし、早く行こ」

 

「……今日のお菓子は駅前の一日限定二十個のワッフル」

 

「行く」

 

『相棒!?』

 

どうやら甘い物にに弱いようだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の放課後、理沙は旧校舎にあるオカルト研究部に向かった。案内に祐斗という女子に人気の男子を付けるっと言われたが、

 

 

「キモいギグに話し方が似てるから嫌」

 

っと断った。彼女が部室に入ると中に部員が集まっていた。その中には変態三人組の一人である兵藤一誠の姿もある。今朝のスプレーの影響か両目が赤く腫れ上がっていた。そして彼らの中心にいるのは紅髪の少女、リアス・グレモリー。理沙を呼び出した張本人である。

 

「……変態がいるから、オヤツ食べたら帰って良い?」

 

とりあえずダメ元で聞いてみた……。


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