「良いかぁっ! キサマらに足らぬものは相手をぶっ殺す殺意だぁっ!! ぶるぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
レーティング・ゲームでリアスチームの助っ人になるバルバトスは一同を集め叫ぶ。その気迫にリアス達の中に口を開けるものはいなかった。
「戦いで負けても獲れるものは有るぅ? くだらぁん! 負け犬の遠吠えに過ぎぬぅ! 強いて言うならばぁ、敗者が獲れるのは負ければ払った犠牲が全て無駄になるという知識、それだけだぁっ!! 勝てば負けた時に得られるものなど敗者の姿を見ることで手に入るぅぅっ! 殺せ! 殺せ! 敵は徹底的に殺せぇ! 蹂躙し尽くすのだぁぁぁぁぁっ!! ぶるぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
バルバトスは背負った斧を抜くとリアス達に向ける。斧からは膨大なエネルギーが発せられ今にも爆発しそうだ。そしてバルバトスは斧を振り上げる。
「良いぜ、鍛えてやるよぉっ!! 死にたくなけりゃ死んでも走れぇぇぇっ!! ジェノサイドブレイバァァァァァァァァアアアアアアアアアッ!!!!!!」
放たれた光は山々を貫通し吹き飛ばしながら地平線の向こうへと消えていく。そして次の瞬間には衝撃で真空状態になった空間に空気が一気に入り込み上昇気流が発生しリアス達を飲み込んでいく。
「何処へ逃げるぅっ! テメェらに……俺に鍛えられる資格はぬえぃぃぃぃぃぃぃいぃぃっ!!!!」
再び放たれた光は遥か上空へと向かい、大爆発を起こす。偶々上空で偵察していた旧アスモデウス家の末裔と黒髪無表情ロリっ子の服が消し飛んだ。
「……むぅ。我、帰る」
「さて、我がキサマらに教える事などないな。と言うより、期間が短すぎる。
「彼にさせていた訓練ですか……お願いします」
ソーナは寝転んだままリンゴを齧るエネルに対して頭を下げる。匙は何かを言おうとしたがソーナに手で制された。
「やめなさい、サジ。彼に鍛えられれば私達は必ず強くなれます」
「でも、会長っ!」
「……夢の為に私達は強くならなければなりません。文句は言わせませんよ」
「さて、話は終わったか。では、早速始めよう」
立ち上がったエネルは黄金製の三叉槍を手に取ると放電し、姿を消す。次の瞬間にはソーナの横面を逆立ちした状態で蹴り飛ばし木に叩きつける。怒って殴りかかった匙の頭に手を置いて跳び箱を飛ぶように後ろに回ったエネルは椿姫と仁村に手を向ける。
「三百万V
「「きゃぁぁぁぁぁああああっ!!」」
エネルは匙の背中を殴り飛ばし、残ったメンバーを槍で薙ぎ払うと首に手を当てコキコキと鳴らす。その目は虫螻を見る目であった。
「弱いな、キサマら。大方”悪魔だから最初から強い”と今まで鍛錬を怠っていたのではないか? 悪魔家業と学業と生徒会、そして鍛錬の四つを全てこなして強くなれるとでも? ヤハハハハハハ! 愚かな事よなぁ」
「ま…まだです!」
「このままやられてたまるかよっ!」
エネルは立ち上がってくるソーナ達を見て口角を僅かに釣り上げると片手で槍を回転させる。舞い上がった土煙が払われエネルは腰布に付いた汚れを手で払う。
「さて、準備運動は終わりだ。今からキサマらには柳が十歳の時にしていた訓練をして貰うぞ」
「おい、雑種。さっさと酒を注がんか」
「は、はい!」
ズタボロのゼファードルは膝を地につけながらギルガメッシュの手に収まった黄金の酒盃にワインを注ぐ。ギルガメッシュが助っ人になった彼だが出会い頭に侮辱して両手両足を消し飛ばされ、少々甘くなったギルガメッシュの気紛れで復活させて貰った。そのあとはキレて殴りかかり返り討ちにされて今に至る。
「ほれほれ、速く走らないと死ぬぞ雑種ども。死ぬ気で走らぬと死ぬぞ」
『ぎゃぁああああああああっ!!』
眷属達は上空から降り注ぐ聖剣の原典に追われるように必死に逃げる。一番後ろの者の背中ギリギリを掠めるように降り注ぐ聖剣は先程から降り注ぐ頻度が少しずつ上がり、一番後ろの者が先頭に行くと先程まで後ろから二番目だった者の背中を掠める。そして偶に正面の者の数メートル先の空間に剣が出現して高速で飛んで来ていた。
「……やれやれ情けない事だ。柳なら九歳の頃にはその倍速をこなしていたぞ」
「アンタ九歳児に何してんのっ!?」
「ククク、良いリアクションだ雑種。そのリアクションに免じて先ほどの不敬は特に許す」
ギルガメッシュは酒を煽ると宙に手を翳す。空間に歪みが生まれテーブルと皿が出現した。
「さて柳の料理と雑種共の苦しむ光景を肴に至高の酒を……む?」
皿の上には料理はなく綺麗に洗われているのでどうやら既に食べた後らしい。酒盃が握り潰されギルガメッシュはプルプルと震える。彼が徐に立ち上がると座っていた黄金の玉座も消え失せた。
「あ、あの、英雄王、何方へ?」
「
理不尽な理由で激高しているギルガメッシュはヴィマーナに乗って飛び立っていく。向かったのはアガレス大公家の領地だった。
「ディオドラの眷属はウィザードタイプが多いようですね。それも物心着いた頃から戦っている生粋の戦士ではなく聖女が殆どですか。コチラは元からの人外が多いですし地力では勝っています。後は戦略が大切ですね」
朝の訓練を終えたアガレス陣営は柳と共に彼の料理を食べながら戦略を練っていた。シークヴァイラは一流の専属シェフを超える腕に驚きつつも冷静に食し優雅さを崩さない。だから眷属におかわりをされても彼女は出来なかった。
「あの、シークヴァイラさん。私がディオドラを倒してはいけませんよね?」
「ええ、当然ですね。今回のゲームは実力を見るものですから助っ人ばかりに活躍されては評価に関わります。今回貴方方は緊急時の指揮能力を計る為に参加していますので。……しかし貴方が戦いたがるとは珍しい。何か理由でも?」
シークヴァイラが尋ねた時、柳は笑顔でテーブルにフォークを突き刺す。分厚いテーブルをフォークが貫通していた。
「奴は私の恋人を狙っています。しかも、くだらない理由で。……二度と近づけないようにズタボロにして後継としての価値をいろいろな意味で喪失させてやりたいんですよ。ほら、潰したり切り落としたりして」
この後、重圧に耐えきれなくなったシークヴァイラは柳の申し出を許可した。
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