ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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オラリオに魔界から罪人が来るのは間違っているッスか?

 夜の闇よりも暗く、海の底よりも深い場所。欲望渦巻く悪魔共の住まう世界『魔界』。幾多も存在するその中の一つの王が住む魔王城に俺は住んでいる……ッス。

 

「ゼットー! ゼェッート!! 早く来ぬかー!!」

 

 昼食後、特別に与えられている個室で魔法薬の実験に勤しんでいた時に自分を呼ぶ声が聞こえて手を止める。いや、今は手じゃなくて羽だけど気にしない気にしない。え? どんな姿をしているかって? ウエストポーチを付けた黄色のペンギン、但し足は棒。それが俺、ゼットの種族であるプリニーの姿ッス。

 

 さて、早く行かないと怒られるッスね……。

 

 

 

「遅い! 俺様が呼んだら五秒で来ぬかっ!!」

 

「いや、七秒で来たんだから勘弁して欲しいッスよ、殿下ー」

 

「陛下と呼べ、陛下と! ったく、エトナといい貴様といい、何時までも殿下殿下と……」

 

 この怒ってる半裸の少年こそ魔王ラハール様ッス。まだ千三百そこそこの子供だけど先代のクリチェフスコイ様が饅頭を喉に詰まらせて死んだ……事になってるので僅か千三百そこそこで王に就任したッスよ。

 

「それで何用ッスか? 俺、今日はオフッスよ、オフ。雑用なら普通のプリニーに任せれば良いじゃ……そう言えば他のプリニー達が居ないッスね」

 

 二十時間労働で休日無しが城での待遇ッス。俺は先々代の頃から仕えていて既に貯めるべき金額は数千年前に貯まっている事もあって待遇は違うッスけど、流石にアレは無いッス。プリニー界にでも逃げたのかと思いきや話を聞けばどうも違う様子。側近のエトナ様が全員連れて他の世界に行ったそうで……。

 

 

「たかがプリンを食べた程度で出て行くなどあの大馬鹿者めっ! 帰ってきたらただじゃおかんっ!」

 

 ……帰って来るッスかね~? 二人共千そこそこのお子ちゃまッスし、意地になって相手が謝るまで喧嘩が終わらない気がするッスよ。

 

「じゃあプリニーの教育施設に連絡入れて追加を派遣して貰うッスよ。……やれやれ、言っておくけど俺は雑用はしないッスからね? 魔法研究室室長って地位は先代から貰った物ッスし……」

 

「違う違う。貴様に任せるのは別の仕事だ。どうも親……中ボスの城の辺りで時空の歪みが起きてるそうでな。分かるのは時空ゲートの管理者と管理者代行のお前位だろ。早く行ってこい」

 

「……休日ッスし、適当に調べて手当ては貰うッスからね?」

 

 どうせ拒否しても五月蠅いだけなので何か言われる前にさっさと出掛けると知っている俺は、途中でローゼンクイーン商会魔界支店で適当に食べ物を購入した俺は装備は一応揃えて中ボスの城ことバイアス城に向かったッス。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そして現在に至るッス」

 

 発見した時空の歪みが急激に膨張して、そこに吸い込まれた俺は見知らぬ洞窟っぽい所に居たッス。どうも知らない世界っぽいし、座標を確認しないと帰還は難しいッス。出来れば愛読している週刊誌の発売日までに帰りたいんッスけど……うん? 向こうから武装した集団が来たッスから取り敢えず出口の方向を聞いてみるッスね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとお訊ねするけど入り口はどっちッスか?」

 

「なんだ此奴、新種か?」

 

「ってか喋ってる!?」

 

「なんか縫いぐるみみたいな見た目だね」

 

 どうも俺に対して友好的な感情を抱いていない人ばっかりで喋ってる事に驚きながらも武器から手を離さない。中でも金髪の女の子は風を纏って切りかかって来たッス。いや、当然切れる筈もなく簡単に皮膚に弾かれたッスけどね。

 

「……嘘!?」

 

 どうも信じられないって顔ッスけど、精々レベル五十程度の雑魚がレベル千八百の俺にダメージを与えられる筈が無いッス。さて、此処で皆殺しにするのは簡単だけど世界について調べないといけないから選択は慎重にするべきッス。よく見れば何人か怪我してるみたいだし、さっきの女の子も体を痛めてるみたいだから……。

 

 

「ヒール……ッス」

 

 体を包む淡い緑の光を警戒する集団。でも一瞬で怪我が治った事でざわめきだした。

 

「モンスターが魔法を使った!? それに詠唱も無しにこの広範囲の回復魔法は……」

 

「これでこっちに敵意がないって分かったッスね? 事を荒立てる気は無いッスから話を聞いて欲しいッス」

 

 さて、両の翼を上げて無抵抗を示しながら一番立場が上っぽい少年……いや、多分そんな種族……だろうに話し合いを求める。武力行使に出るかどうかはあっち次第ッス。まあ、よっぽどの何かが無い限りは世界ごと吹き飛ばすって手も有るッスけどね……。

 

 

 

 

「神であるウチには分かる。確かに此奴の中身は人間の魂やし、さっきから言っとる事に嘘は無い。……アカン、頭痛くなって来た」

 

「そんなんじゃ魔王神とか宇宙最強魔王とか超魔王とか来たら身が持たないッスよ? 幼い娘に魔王の座を奪われたから支配する世界を探してる魔王も居るッスし、新天地を求めて一度魔界を征服しに来た人間の世界も有るッスよ」

 

 あの後、さっきの回復魔法のようにノータイムで数ランク上の攻撃魔法も使えるって正直に教えたら苦虫を噛み潰した様な顔で外に連れ出して話し合いの席を用意してくれたッス。やっぱり誠意を持って正直に交渉するのが一番ッスよね。殿下とか直ぐに戦いに持ち込むんだから困り物ッス。

 

 取り敢えず新種のモンスターを手懐けたって事にして都市……オラリオの住民には説明して拠点まで来たら神が居たッス。男っぽいけど多分女で封印してるけどレベルは千位ッスね。レベルは俺が上だけど基本値が違うから複数で来たら拙い。だから正直に全部話した上で忠告までして好感度を稼ごうとしたんッスけど……。

 

「なんか不吉なキーワード来たっ!?」

 

 思った以上のリアクション。これは楽しい世界に来たみたいッスね~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いけど君を信用した訳じゃない。見張りを付けさせて貰うよ?」

 

「別に良いッスよ。強者が弱者に警戒されるのは当然ッスから」

 

 あの後、座標が特定できるまで居候させてもらえる事になったけど警戒されている様子。あの風を纏った女の子や胸部以外は似ている双子が側に立って俺を見張っているけど、此処は理解を示しておく。親交の第一歩は相互理解ッス。何故か不機嫌な顔を向けられたけどどうしてッスかね?

 

 こうして与えられた部屋で過ごしていた時、風を纏った女の子……アイズちゃんが口を開いたッス。

 

「……一から其処まで強くなったって聞いた。どうやって強くなったの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「経験値増加屋を入れた装備を身に付けてひたすらアイテム界に潜る事ッスかね?」

 

 え? アイテム界を知らない? 武器や薬の中のダンジョンで、潜れば潜るほどに敵とアイテムが強くなる上に階層の敵を全滅させればボーナスで金やアイテム、経験値が貰えるッス。……え? 潜ってみたい? 仕方ないッスね~。




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